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 愛と情と愛情 3



 たとえば、私には27年間の生活があった。
 当然、それに付随した人間関係がある。

 ひょいと出てきた男を、いきなりその頂点にできるだろうか。


 「う〜〜ごめん〜〜…」
唸りながらベッドに沈んでいる女は、私の10年来の友人だ。むしろ小学生の当時はなんと10歳(当たり前だけど)だったのだから、10年以上になる。
「いいから寝てなさい」
べちゃ、と濡れたタオルを乗せると気持ちい〜と目を伏せる。
 彼女は自分に厳しく無理をしがちで、だから、たまに大きな熱を出す。 そのたびに心配する身にもなってほしいと口を酸っぱくしても治らないのだから、仕方がない。 仕方がない、が、小言はいわせてもらおう。自分の身体をちゃんと大事にしてほしい。
「も、大丈夫だから…」
彼氏のところへ行け、と言う。
「社会人カップルなんて休日前夜がパラダイスでしょー…」
パラダイスってあなた。
 呆れた声を抑えて、いつもパラダイスだからいいの、と言ってみる。会社も一緒だし。 掛け布団を顎まで引き上げて、ポンポンと胸元を叩くと朦朧とした彼女は苦しげな息をしながら眠りについた。

 世の中には、恋愛体質の人間とそうでない人間がいる。
 友人の寝顔を眺めながらそんなことを考えた。ここずっと考えている。

 これまで、手は抜かずに生きてきたつもりだし、人間関係だってそうだ。 おかげで何かあったときには駆けつけたいと思っている相手や、逆にそう思ってくれているだろう友人たちが、自惚れでもなんでもなく、いる。

 そうなると、恋人に求めるものは何だろう?

 それこそセックスくらいじゃないの?
 目の前にいる友人に話して殴られたことをもう一度思った。 恋人がいなくたってそれなりに幸せだし、別に毎日の生活は楽しい。肉体の快感が伴わないだけで。
 発想が女じゃないね、最低な男のソレだね、と、女の私よりよっぽど乙女思考の男友達にも呆れられた。男ばっかり育ててたから頭が男になってるんじゃないの、と私が共働きの両親よりも弟たちの面倒をみてきたことまで言われる。じゃあ何、あんたはシスコンだから発想が乙女なの。 こんな下らないことばかりを話して長く続いた関係だ。こんな男になったら駄目だと弟たちに言い聞かせてきたソレに私がなっているといわれて少々後ろめたい。
 
 恋はそれなりにしたし、心と身体両方が重なる目眩をおこすほどの恐ろしい幸福も知っている。 病み付きになるものだって、それはわかる。

 でも歳を増やして、大切な人たちの重みは増して、恋人が世界の中心にいる状態にはなれない。


 「あんたは頭で考えすぎなのよねえ〜」
卵粥をはふはふと口に運びながら、困った幼子を見るような顔を向けられた。
 好きか嫌いか、それだけでしょ。結局のところ。 恋愛なんて理由もなくて制御がきかなくて感情は暴走。自他ともに認める恋愛体質の現在募集中は言う。
「…ああ、理性がきいている段階で、あんたはまだ恋じゃないのかな」
したり顔で悟られた。

 ということは。

 あのとき、でも、手を取ったのは、つまり。

 つまり理性がきかなかったってことになりますか。もしかして。






あいとじょうとあいじょう
2004/09/26




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