感情直結涙腺
嫌わないで、生きてけねえ、 泣く男に、一体全体なにをどうしよう。 だってこの男を捨てる理由はいくらでもある。 車も家も、金も定職も、なにも持ってない。 ちょっとした音楽の才能、それさえ疑わしい。 別れるなんて駄目だ、離れるなんて駄目だ。 一緒にいなきゃ、駄目なんだ。 涙やら鼻水やらで汚い顔を、さてどうしたものかと見る。 見て、ついでだからと瞼に口付けて柔らかな脱色し痛んだ髪を撫で オマケに濡れた頬まで拭ってやった。 「あ、コイツかっこいいよな!」 行儀悪く箸で指すテレビのモニターには、ああ、私の嫌いな。 「クールで、成功した男の自信っていうの?」 ふぅん。 でも私は嫌い。 色と音を出す機械に見入っている男を横目に眺める。 ・・・言っておくけど。 「あんたが泣かなくなったら、別れるからね。」 きょとんと口に箸を挟んだまま、言葉の判らない顔をする。 「いつも、泣くなって言うクセに」 「あんたは泣きすぎ」 「どうしろっていうんだよ」 ムッと目に力を込めて私を睨む。 そう、そうしてればいいのよ。 泣かない男なんて、興味ないの。 2003/04/07
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