あとがき
ども。Thorです。
さて、シルバーレイク物語第14巻「禁じられた火遊び」をお届けします。
13巻の「太陽と魔法のしずく」が2016年だったりするので、あれからまた5年経ってますね。でも今回はその間に新米秘書官編上下とハビタルの48時間とかが挟まっているので、その前ほど間に何もしてないわけじゃありませんが、まあのんびりしていることには変わりありません。
さて、前回はやっとこさ呪いを解いてアキーラを奪回したら、敵はさらなる秘密兵器を繰り出してきたという所で引いてましたが、今回はその秘密兵器を何だかアレな方法で撃退し、さらにはこちらの秘密兵器で相手をギタギタにするというお話です。
今回のお話の主役は間違いなく名実ともにプチ・アウラとなったサフィーナちゃんで、結末あたりのオチはまあ多分予測は付いていたとは思いますが―――実は当初の予定ではメイちゃんの初のお相手はフィンにするかなとも思ってたのですが、まああんな王女様と長らく付き合っていたおかげで、やっぱりこんなことになってしまったようです。
さらには真の大おっぱい魔導師として覚醒したアラーニャちゃんとついでにその相方アルマーザなども見過ごせない活躍をしていますが、彼女たちはこの後もさらに重要な役割を果たしていくことになりそうです。
そんな一方で、せっかく来ているのに何だかとても影の薄い子達もいて、どうしてくれようかと思案の最中だったりもしますが……
というわけで次の話は、まずは目先の危機が去ってしまって、そうすればあとやることといえばやっぱり息抜きで―――としばらくドタバタしていると、またぞろよく分からない急転直下のトラブルに見舞われて一体どうするよ? といった感じの話になるでしょう(もしかしたら1巻には収まらず上下巻になるかもしれません)
そしてお話の主軸がフィンとメルファラ、ティアとカロンデュールといった始まりのキャラ達の物語に回帰していきます。
何だかんだでここまで書き続けたシリーズなので、やはり完結まで続けていきたいと思っていますが、まあこんなマイペースなのでのんびりだらだらと追っかけておいて下さいw
ところで、本作のタイトルにも関わるメイの秘密兵器ですが「メイちゃん、危ない! それ危ないから!」と突っ込んでくれてた人も多いと思いますが、主に高校の化学の時間に寝ていたとか、そもそも取ってないとかいう方はぽかんとしてるかもしれません。
しかし作中でぐだぐだ解説しても仕方ないので、この場を借りて何が起こっていたか説明しておくことにしましょう。
まずメイが爆発させたフランマとは六十度のウイスキーみたいなお酒―――要するに60%エタノールで、これが1500本分=約1000リットル=1立方メートルくらいになります(何故かこの世界も酒瓶一本が720mlだったりする勘定でw)
ここでさすがに誰でも液体が気化して気体になると、ものすごく体積が増えることはご存じでしょう。計算すると60%エタノール1立方メートルを気化させると、体積は約766立方メートル(0℃1気圧)に増加します。
さて液体にはまた沸点というものがあって、その温度以上に加熱すると液状を保つことができず気化してしまいます。
これがゆっくりと暖めたのならお湯が沸騰している状態になるわけですが、瞬時に全体を沸点以上に加熱すると全部が一気に気化して膨張し、爆発を起こします
これが水蒸気爆発というもので、例えば溶岩が海に流れ落ちたりとかした場合、その周囲が爆発している動画とかを見たことがあるかもしれません。
作中ではまずニフレディル様がファイヤーボールみたいな魔法を酒の中に発生させて急加熱し、この水蒸気爆発を起こしたわけです。
さてこれだけでもかなりの威力はあって、隣の宿屋が半壊するくらいにはなったでしょうが、あれほどのことにはなりません。
ここでヤバかったのはアルコールが可燃性だったことです。
水蒸気爆発した酒というのは可燃性ガスの塊そのもので、そんな中にファイヤーボールがあったりしたらもちろん引火して燃え出します。
メイは飛び散ったお酒に火が付いて大変なことに―――程度のつもりだったようですが、ここでは水蒸気爆発で高速度で四散する可燃性ガス全体に一気に火が付いて、さらに大きな爆発を起こしてしまったわけです。
この場合ガスが燃えるためには外部の大気から酸素を得なければならないので、正しくは爆発ではなく“爆燃”という現象になりますが、その燃える速度はもちろん走って逃げられるとかそういうレベルではありません。
この爆燃の場合、通常の爆弾に比べて爆発の衝撃力は弱いのですが、長時間持続するという特性があります。そして燃焼時には炎の温度が2000~3000℃にも達し、そんな高温・低酸素の爆風に直接巻き込まれたらもちろん、爆発で生じた爆風衝撃波が更にその外側に広範囲の破壊をもたらします。
さて、ここで知っておくべき重要なポイントは……
爆風は距離の三乗に比例して弱くなるが、気体相の爆発はこの距離の基点が爆轟する気体相の界面点になるため、燃料を半径10メートルの気体相になるように撒けば、半径10メートルの爆弾が爆発したのと同様の状態となる(Wikipedia)
―――ということです。
すると先ほどの766立方メートルのガスが球状だとすれば半径5.58m、直径は約11.16メートルの可燃性ガス塊となりますが―――すなわち作中ではこのサイズの爆弾が爆発していたと思えばいいわけです(本当は温度がもっと高いので更に大きなサイズですが)
さてここに直径1メートルの爆弾があって、そこから20mのところで爆発を見物したい人はいないと思いますが、上の理屈だと直径10メートルの爆弾から200mのところがちょうどそれと同じ規模の爆風を食らうということなので―――作中で三人があんな場所で余裕ぶっこいていたのは、まさに命知らず、知らぬが仏なのでしたw
こういった原理の爆弾はすでに「燃料気化爆弾」という名前で実用化されていて、その威力とコスパから貧者の核爆弾とも言われている代物だったりします。
―――ということで、魔法が使えても真似するのは大変危険なので止めておきましょう
お暇ならちょいとアンケートなどに答えてもらえると更新が速くなるかもしれません
2021/7/12 by Thor