別設定第2部恋人編その8

 

おまけ話

(拍手小話25として公開済み)

 

年の瀬近い、とある日曜日。

人型に転変した竜の魔法使いは、

何よりも大切な少女が

アメリカに旅立つのを見送った。

年頃の一人娘が初めて海外に行くというのに、

迎えにも来ない両親に対し、

千尋自身は肩を竦めただけであったが、

心配げな顔の奥で竜は静かに怒っている。

千尋に知られれば嫌がられるであろうが、

何事かあった場合、異なる理に支配された

遠い異国まですぐに駆けつける

というわけにはいかないのだ。

まして、自身が為さねばならないこともあって、

ついていくことが出来ない竜は、

愛しい少女を出来うる限りの守りで囲おうと、

飛行機が飛び立つと同時に

竜に転身し上空高く舞い上がる。

そうして、西方からやってくる

風の精の団体を相手取り、とある取引を交わすと、

飛び去る飛行機の隙間から

式を入り込ませ、千尋の守りにつけたのだ。

次第に小さくなっていく飛行機を見送りながら

竜はグルルルとうなり声を発する。

心配と切なさと切望に満ちた光を瞳に乗せて、

いつまでも東の空を見つめていた竜は、

竜の視界からさえも消え去るほど

遠くに行ってしまった飛行機が、

西に傾いた日に反射して

きらりと光ると同時に目を瞑る。

そうして、次にその瞳を開け放った瞬間、

赤い光に満ち満ちた鋭い視線をはるか地上の一点にむけ、

突風でさえも追いつけぬほどの速さで

天から下っていったのだった。

 

おしまい

 

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あ〜あ、千尋さん行っちゃったね。

心配、心配、心配、な竜の魔法使いさんです。

だけど千尋さんと同乗した飛行機の乗客は超ラッキー。

だって超強力なお守りと一緒なんですもの。

なにがあっても落ちないわねん。

おいらも海外に行く時は絶対千尋さんを連れて行こうっと。

 

それにしても、さすがに異国では「はく」と呼ばれても、

すぐには行ってあげられないらしいですねえ。

どうするよおい。

犯罪率がこの秋津島より何倍の高いUSAよん。

んなわけで、どうやら地球規模で

精霊たちを動かしたらしいよ、この魔法使いってば。

やること派手ね〜。

(荒地の魔女風に)

おほほほ・・・

おばかなやつが千尋に手を出したら、

何が起こるかはお楽しみってところで。