第4章 至純   

後悔しない。

私は 私が選んだ道を後悔していない。

この一年 本当に幸せだったのは事実なのだから。

はくの 私に対する想いは、とても大きくて

時々、その想いをきちんとうけとって、はくに返してあげる事が

できているか、とても不安になるけれど。

はくが、全てを私に注いでくれているように、

私も私の全てを はくに注いであげたい、

そんな 気持ちで過ごしてきた一年だったのだけれど。

 

お披露目の最後の日 あさひ様に見抜かれていたように

私の心は いまだ はく以外のことにも 囚われていて。

幸せの裏側にある、たくさんの不幸をいつも意識していて。

ごめんなさい。

たくさんの人に ごめんなさい。

はくは、私が幸せであるように いつも 心を砕いていてくれるのに。

お父さんも お母さんも 私が幸せである事を いつも 願っていてくれたのに。

あんなに大勢の神様方が 私の幸せを祝福してくれていたのに。

私の心は、幸せだけではなく、いつも どこかで悲しみを感じていて。

それは、はくに対してもお父さんやお母さんに対しても

たくさんの神様に対しても、とても、不誠実なことなのに・・・

そんなそぶりを、ちらっとも見せずに ただ幸せであることだけを 

表に出して、それが全てのふりをしている。

私という存在は そんな愚かな存在なのに・・・

 

なのに、

そんな私であったのに、

はくは、私の不幸をきちんと解かってくれていたのだ。 

 

今日、はくは 二度と会えないと言った筈の 

お父さんとお母さんのところへ 

連れて行ってくれた。

そうして、きちんと

お別れを言う事を許してくれたのだ。

 

ごめんなさい。

そして、

ありがとう、はく。

あなたの心を欺いて 幸せの 幸せだけの

振りをしていた 私を 許してくれて。

 

そうして、はくは 私の中に 本当に

幸せの 気持ちだけを 

残してくれたのだ。

 

ああ、はく。

わたし もう 過去を振り返らない。

思い出だけは、大切にするけれども 

お父さんもお母さんも 未来に向かって歩き出したように

わたしも 未来へ歩き出す事ができる。

はく、あなたとともに、

あなたの 手をとって。

ああ、はく。

わたしは もう あなただけでいい。

あなたが わたしとともに いてくれさえすれば

それだけで いい。

 

はく、私 今度こそ 心の底から 本当に誓います。

 

存在のすべてをかけて

 私を愛し もとめてくれたあなたに、

私の全てを捧げ、

永遠に あなたの そばにいる事を

誓います。 

 

 

 

 

龍神情話 完

 

前へ  あとがきへ  目次へ