少し、熱く語らせて頂きます。
Part2 真面目なお話編
やられた!編 真面目なお話編 あんなこと言われたなぁ~編

吠える1 【生後4ヶ月目から発生】
ビキはとにかく吠えます。仔犬とはいえ、白黒2匹がリードをマックスに引っ張りながら、
一匹はけたたましく吠え、
一匹ははぁはぁ煩ければ、誰でもびっくりして驚きます。
周囲の方々には、大変ご迷惑をおかけし、沢山のご指導とクレームを頂きました。
『飼い主がダメなんだっ!』と。
もう、おっしゃる通りで、なんの反論もできません。
でも、その時は、何がどうダメなのかがさっぱりわからず、文句を言われてもただただ頭を下げ、
恐縮するしかすべがなく、解決方法をひとりで悩み、模索するだけでした。

どうしたものかと考えるより、行動だっ!と訓練所を探し・訪ね、預託で3ヶ月訓練所に彼らは行った訳ですが、
戻って来ても、一向に吠える行為は止みません。
我々が暮らす町はわんこが非常に多く、しかもどのわんこも、どの飼い主さんもマナーがいいのです。
そんな素敵な環境なのに、ビキの雄叫びは毎朝毎晩響き渡り『公害』となりました。

その様子を訓練所の先生方に見て頂き、再度訓練所に1ヶ月間強制返還され、訓練所内だけではなく、犬が多く集まる大会などに頻繁に連れて行ってくださり、犬に慣れる訓練を施して頂きました。
強制返還から戻ってきたビキ。「もう大丈夫ですよ。」と嬉しいお言葉を頂くとともに、
「トレルと一緒には散歩しないように」とだけ助言いただき、1匹ずつの散歩をします。
やはり、ダメです。犬を見ると吠え続けてしまいます。

再度相談を持ちかけた内容は『私に問題があるのでは?』でした。
先生方のこれまでの説明では、「ビキは興奮しやすい性格ではあるが、攻撃性は皆無。
我々(訓練士)が連れている時は、吠える兆候すらなく、大人しく他の犬とすれ違えるし、
一緒の空間に居ることができる。」
ということは、私に足りない何か原因があるのでは?と行き着いたのです。

この問いかけで、ビキと私を我々の暮らす環境のもとで再訓練して頂く事になりました。
大好きだった仕事を辞め、何が何でも普通に歩ける犬にするんだっ!と気合を入れ、
週3回1時間ずつ出張訓練を開始。
人様が聞けば「?」が沢山つくような馬鹿っぷりですが、この訓練中にとても大きな発見をしたのです。

吠える2 【ハウスの意味】
ビキの担当だった先生は出張訓練はなさらないので、同訓練所の別の先生がいらしてくださいます。
明るくて、目に力のある大らかな女性の訓練士さんです。
「さぁビキちゃん、行こうかっ、アトヘ」の言葉の後、
なんと楽しげに、先生を見上げ、寄り添い歩くビキなんでしょう!!目はハートです。
おかあさんは後ろについて歩いているのですが、先生しか見えていません。
他の犬が真横を通っても、先生の目を見て、すっと通り過ぎることが出来るのです。
「完全に私が問題だったんだ・・・と凹んでいる場合じゃないぞ!」と奮起し、
じぃぃーーっと先生&ビキを後ろから見つめていました。

でも、先生の真似をしても私がリードを持つと・・・・・・・・がっくし。

「ビキちゃんは、よく頭の回る子です。その一歩先を読み、コマンドを出す事で彼女は信頼してくれます。
残念ながら今のおかあさんは、びくびくしているだけでその感情がリードを通して彼女に伝わり、
逆にビキちゃんの神経質な部分を引き出してしまう、という悪循環になっているのでしょう。
また、ビキちゃんは異常におかあさんに甘えていますから、少々の『イケナイ』では、
「大丈夫、おかあさんは優しいから真剣に怒っているんじゃないわ」と思っていますよ。」

凄いっ!さすがプロだっ!!ビキだけでなく、思わず私も先生を見つめる目がハートになりました。

「ビキちゃんの甘え部分を強制する為に、ゲージを活用しましょう。
トレちゃんもビキちゃんも、家にいる時はゲージに入れておくのです。
メリハリをつけ、ゲージをおかあさんの手で開けてもらえば外で遊べる。
ゲージに入っている間はゆっくり落ち着いて休む。という方法です。」
最初はどうしても【閉じ込める=可哀想】という甘ちゃん思考でしたが、これは私の勝手な思い込み。
まだ、成長しきっていない彼らには、それぞれの居場所が必要でしたし、
2匹のリーダーが誰なのかを欲していた訳です。

とても適切で、いい方法を教えて頂きました。
この家庭内訓練は後に、移動(車・飛行機)時にも役に立ちましたし、旅行でも、新たな環境でも、
興奮することなく、住み慣れた我が家=ハウスと、落ち着かせてやることができました。

吠える3 【タイミング】
次に行った訓練は『犬の気持ちの一歩先を読む』でした。

吠えそうな表情や態勢をした場合「イケナイ』と先生が指導すると、ピシッと聴くのに、私ではダメ。
その違いは『タイミング』。
怒る時、誉める時、遊ぶ時、訓練する時、全てにタイミングがあるのだと学びました。

しかーーし!頭でわかっていても、最初はどれが吠えそうな態度なのかわかりませんし、うまく言動に移せない。
しかも、トレルとビキでは全くこのタイミングが異なります。何度も何度も練習しました。
ビキの場合は、この『タイミング』が0.1秒でも遅れると、聴くどころか、「やっちゃぇーー!!」と
触発されたか如く吠えたてます。
昔のCMで流行った「今やろうーと思ったのにぃ、いうんだもんなぁ~、もう~」が脳裏に浮かび、
どうにかビキに↑こう思ってもらおうと必死でした。

なかなかタイミングが掴めない愚鈍な私は、先生に
「先生の声だから有効なのでしょうか?テープに録音していいですか?」
「過去ある飼い主さんが試されましたが、1.2回は有効でしたよ。でも、その後は私の姿が見えないので、
ばれちゃいましたけど(笑)」

タイミングが合えば抑止コマンドの場合「ヤラレタ・シマッタ」の表情になりますし、
遊びや誉めるコマンドの場合は「うはっ・えへっ!よくわかってんじゃん・おかあさんっ♪」と
喜びの表情が一層増します。
人間と一緒です。偉そうなことを口先だけで言っていても、誰もその人を尊敬しませんし、耳も傾けません。
適時に一言、これが一番効きます。

先生からは「遊びの中で、ビキちゃんのタイミングを掴んでみてください。
怒るのに必死になると、おかあさんもビキちゃんも楽しくないでしょう?
一緒に楽しんでいる時に、どうしたらこの子をもっと喜ばせてやれるか。それがタイミングの答えです」

もう、有難くて、先生に一生ついて行こうと思いました。
原因、解決方法、そして具体的な習得方法。これらをひとつひとつ丁寧に教えてくださる先生はそうはいまい!
こうしてへたれな私でも、ちょっとちょっと頑張れたのです。


吠える4 【制裁棒】
こうして1ヶ月半が過ぎ訓練を重ねましたが、私が連れている時のビキは吠えるのが止まりません。
寄り添って歩く、服従訓練をする、ボールで遊ぶ、小芸で遊ぶ、などはかなり出来てきたのに。

そんなある日先生から棒を渡され、
「「イケナイ」と言う代わりに無言で顎の下をこの棒でコツンとやってください。手加減しないで思いっきりです。」
・・・・。可哀想で出来ません。と返答するへなちょこ飼い主に、先生は厳しい口調で
「いいですか、この方法は正しいとは言えないでしょう。
でも、ここで厳しくしなければ、おかあさんもビキちゃんもこのままで終わってしまいます。
今は心を鬼にし、一日でも早くこの棒を使わなくて済むビキちゃんにしてあげませんか?」

はい、やりました。心を鬼にして3日間。周囲の人の「ひどぉい」の声も聞こえない振りして、
ビキの為、ビキの為、ビキの為・・、ゴツン・・・。
3日目に手元がずれ、棒の先が口の中を叩いてしまったのです。・・・ぽと。ぽと。
鮮血がビキの口から落ちました。ビキは痛がるわけでもなくきょとんとしています。
その表情を見た時、これまでの緊張や戸惑い、自信の無さ、他力本願やら、
全ての感情が湧きあがり不覚にもその場で大泣きをしてしまいました。
傍から見た人は「なんで自分の犬を棒で殴っておいて泣いてんだ?アホか?」です。

ビキを抱え「ごめんね、ごめんね。おかあさんが悪い、ビキはこんな思いしなくていいんだよね。ごめんね」
恥ずかしいですよね。公道でわんわん大のおばちゃんが犬抱えて泣いていて。
しかも片手には制裁棒を持って・・・。

深く考えました。
私がビキを理解してやれず、こんな方法で彼女を心身ともに傷つけているのだとしたら、
もっと私が人に甘えず自ら努力をして、早く彼女と通じる何かを築こう。
自分の犬を自分が守り、信じるんだ、と。

それ以降は制裁棒を使用することを拒否し、
その代わり先生と同じくらいタイミングよく制止できるように努力する決心を伝えたのです。
すると、先生は「そうです。おかあさん!!こんな棒一刻も早く捨てちゃいましょう!」と意外な反応です。
きょとんとしている私の前を通り、とっととごみ捨て場に行きぽいっと捨てるのです。
棒でコツンは大所長さんの案だったそうです。勿論その訓練所ではそんな棒は使用していません。
自分の犬を傷つけて嬉しい飼い主はいない、でも後一歩のところで意思疎通が上手くいかないのなら、
おかあさんの甘えのせいだ。ここは荒療法で、おかあさんの気取りや建前をとっぱらうとしょう。
というお考えあってのことだったのです。

まんまと私はその策略にひっかかったのですが、早くにひっかかっておいてよかった。
人目を気にして遠慮がちな「イケナイ」などは犬はお見通し。体裁よりも本音でぶつかっていく事を学びました。


吠える5 【空飛ぶチェーン】
ここには記載してない方法も試した我々ですが、一番効いたのは「天罰方式」:空飛ぶチェーンです。
チェーンチョークのショックではなく、そのものが当たらないように鼻先に飛ばし
地面に落ちるガシャと音がしたところで、静かな声で「イケナイ」。

他の犬→チェーンが飛んでくる
→えっ?(驚く・興奮が止まる)振り返る
→おかあさんがいる「イケナイ」
→そうだった。納得。(吠えない)
→これでいいの?おかあさん?
→ヨシ、お利口さん!
→誉められた・嬉しい。

これを繰り返して、チェーンを投げずとも、吠えることを抑止できたのです。
ビキが初めて「おかあさん、これでいいの?」と見上げてくれた目を忘れる事が出来ません。
その瞬間、先生と「出来ましたぁ!!」と、手と手を取り合い涙しながら万歳しました(またもや公道で・・)。
とても小さな一歩だったのですが、とても大きな感動でした。

私の大きな発見は、慢心せず、その犬に合った楽しいおかあさんであり、厳しいおかあさんでいることが
どんなに難しいことかを実感出来たことです。

今だもって、2匹はリードをぐいぐい引っ張り競争しては、おかあさんにぶっ飛ばされてます。
ビキは調子こいて、わざと「わん、わん!(訳:あたしのテリトリーよっ!」などと生意気に他のわんこを威嚇します。
そして「おかあさん、ちょっと声が出ちゃっただけなのぉ~」といんちき&ごまかし笑顔を覚えてます。
そんな笑みに誤魔化されるおかあさんじゃありませんから、当然、鉄拳が飛びます。
横でトレルは自分が怒られたぁ~、と降伏のポーズをとってます。
今では、ビキの吠える声よりおかあさんの怒鳴る声で、周囲の方々にお叱りを受けそうです。


吠える6 【お礼と感謝】
こんなへんてこりんな犬と飼い主に、ご協力とご理解を下さったわんこ友達の皆様に大きな感謝をしております。

最初は遠巻きだった飼い主さんも、数ヶ月に渡りビキと訓練している姿をみて、
「頑張ってね」「協力できる事ない?」と、温かいお言葉をかけてくださるようになりました。

また、ビキを見て「興奮症で気が弱いのね」とすぐさま理解くださり、
「かわいいねぇ~ビキちゃん。大丈夫よぉ~、おいで」と優しく撫でてくださり、ご自分のわんちゃんに
「や・さ・し・く。仲・良・し。」と練習させてくださった方。

人目?犬目?を避けるように深夜こそこそ散歩していたら
「気をつかうなよぉ~。自分がまいるぞっ!いいじゃないか」と励ましてくださった方。

「元気がよくていいじゃない?可愛いわよ・ビキちゃん」といつも同じ口調で慰めてくださった方。

皆さん何気なくおっしゃってくださったのでしょうが、心底嬉しかったです。ありがとうございました。

勿論、訓練所の先生方にはとても親身になっていただき、こんな飼い主を放らずお付き合いくださり
深く感謝しております。

そして、ビキにかける時間が多いのに、いじける頭もなく(?)、
毎日楽しげにたくさんのわんこと仲良く遊んでくれたトレル、ありがとう!

でも、一日4時間、1匹ずつ散歩させるのは辛かったぁ~。




Copyright (c)2005 torebikitaishyo All rights Reserved.