Webサイトの善し悪しは階層化にかかっている
ルール1:細かい資料は後回しにする
かつて労働相談のサイトを立ち上げたとき、私はこれに失敗しましたた。当時はそういう知識がなかったのです。私はまず、もっとも簡単な資料として「ポケット労働法」をhtml化し、それにドンドン資料を書き加えていきました。
そうすることで、サイトは厖大なものになりましたが、今度は見つけたいデータが見つからなくなりました。
これを修正するために、サイト内にリンクを張り巡らしたところ、どれとどれをリンクしたのか分からなくなりました
一個人が作っていてもそうですから、ましてや組織的に対応していくには無理があります
だからまず、資料の階層化のルールを決めておく必要があるのです。
まずは全体を統合するポータル(玄関)サイトを用意します。実際のところ各サイトは各部局に管理を任せて、入口だけ一つにまとめます。
ポータルはあまり飾り付けをしないで、軽く立ち上がるようにしましょう。見ばえに凝って動画などベタベタ貼り付けると使い勝手に影響します。
ルール2:ファイル名は見てそれと分かるようにする
各部局にサイト管理を任せる以上、ファイルの名前の付け方には予めルールを作っておく必要があります。例えば、「大文字は使わない」「名前だけで内容が類推できるようにする」「アンダーバーは可、ハイフォンは不可」など。
また、更新年月日(例、190105など、西暦下二桁、和暦不可、月は01、02・・12とする)は本文に入れるようにし、ファイル名には入れない方がいいでしょう (リンクが切れてしまうため)。
ファイル名の頭には番号を振ると並べたときに便利ですが、法律の条文を見て分かるように、後から途中に追加があると枝番が必要になったりして、かえって混乱したりします。
この質問と回答のリストは、照会頻度に応じて順番を変えられるようにしますので(ルール4参照)、順番を整理するための頭の数字は必要ないと思います。
ルール3:補足資料は実務に耐えるものにする
例えば「賃金の未払いがある」という質問に答えるには、賃金の計算はどうやればいいか、という資料が必要です。これが残業代だと、かなり複雑になります。 そういうものを計算するためのExcelファイルなども補足資料として用意します。 「規定を整備したい」という会社側からの質問なら、ひな形をWordファイルで用意しておくぐらいの親切さが求められます。Webサイトには通常「まずは相談においでください」と書かれています。実際、そのとおりです。 ですが、これは「問題解決型」の場合。「情報提供型」の相談はWebで事が済むので、逆にできるだけ詳しい情報を提供しないと不親切になります。
ルール4:本一冊丸ごと載せるのは、使い勝手が悪い
役所では法律の解説書をよく作ります。これをWeb化する際、pdfファイルにして、そのまんま掲載して終わり、という場合が実際には多いのではないでしょうか。もちろんそれも大切ではありますが、現実の相談窓口では使いづらいです。
「よくある質問」のような頻度別に質問を並び替え、よくあるものほど早く見つかるように工夫することが大切です。これには手間がかかりますが、相談に対応しながら使うとなると、 どうしても頻度別にする必要が出てきます。
Webに掲載できる内容には限界がある
とはいえ、公的機関がWebで示せるものには制約があることを忘れてはなりません。私が担当していた頃は「突然解雇された」というものが多かったのですが、最近は「辞めたくても辞めさせてくれない」というのが増えているという話です。
この回答は単純で、いわゆる正社員で<期間の定めのない雇用>の場合、 「労働基準法第5条では強制労働が禁止されている。だから、辞めたいというのを止めることはできない。すぐにでも辞められる」です。
さらに「民法627条には2週間たつと退職の申し出の効力が発生する、と書かれている。だから、2週間前には意思表示しておく方がよい。損害賠償請求を避けるためだ」。
また「会社の就業規則に『1か月前に申し出ること』といった記載がある場合もある。もちろん法律の方が優先されるのだが、 後になって、もめないようにするためには、会社の就業規則に沿った形で退職届を出すのが無難」と補足しておきます。
こういった法律の詳細な説明ならWebに記載することができます。
しかし、実際の相談だと、「・・・そうは言っても、なかなか辞めるのだって簡単じゃないよね。」と続き、「どうして辞めたいと思ったの?」と話が進んでいきます。
こういうことは、なかなかWebには書けません。当然、その成り行きによって、相談者に対する回答は変わってきます。 「引き留められないように毅然として退職した方がいいよ」と答えることもあれば、「もう少し今の会社で頑張ってみてはどうかな」と答えることもあります。
そういう意味でも、Webは完全に窓口相談に取って代わることはできないと、思います。