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ITは相談窓口を越えられるか

最近では、企業元へ専門家を派遣して、相談者に伴走させるという方法が多くなってきています。対象は限定され、経費もかかりますが、問題解決には有効な手法です。

もう一つの選択肢「専門家派遣」

広く浅い職員対応ではカバーしきれない相談に対応する

解説したように、窓口相談は“取っかかり”だけの対応になります。再び訪問した時に同じ専門家に当たるという保障もなかったりします。
こういう欠点を補うのが、専門家派遣事業です。もっぱら経営相談などで活用されています。
専門家派遣の良さは、同じ専門家に継続して何回も相談できるという点にあります。
よく知られているのが、東京商工会議所等の「エキスパートバンク」で、昭和60年から続いています。小規模事業者が対象で、費用は無料です。
もちろん東商の職員自体も経営者の相談に対応できるのですが、技術的な問題や狭い業界に特化した内容だと限界があります。 このため、登録している専門家を現地に派遣して、経営上の相談に対応させるという制度となっています。

東京都中小企業振興公社にも専門家派遣制度があり、対象範囲は中小企業と広くなっており、最大8回の派遣が可能ですが、有料です(半額を公社が負担)。
専門家は、登録者の中から企業が選ぶことができます。ですので「知り合いの〇〇先生にお願いしたい」という経営者が多くなっています。 人気も上々で、予定数があっという間になくなります。

継続しない単発の専門家派遣を受けたある経営者は、次のように話してくれました。この苦情を見ると、継続した専門家派遣の貴重さがわかります。
「専門の先生がいるっていうんで、頼んでみたんですよ。 そしたら、若い駆け出しの〇〇士がやってきて、こっちも時間を取って会社の事業説明をみっちりやったんですよね。 相談の結果もいただきましたが、何やら偉そうなことばかり書かれていましてね、こっちの知りたいことには、あまり踏み込んでくれないのですよ。 それで、別の人に変えてもらったんですけど、また、若い人が来て、それでもって、また最初から事業説明なんですよね。“もう結構”ってなりますよ」

専門家派遣はAI活用に繋がるか

専門家派遣は、同じ専門家が同じ企業と一定期間伴走する事業ですから、それなりの経営向上が図られるはずです。
しかし、これがAIに応用するには、専門家からの働き掛けと、それを受けた企業の改善努力、さらに結果としての経営強化が明らかにならなければなりません。
何がインプットされ、結果としてどのようなアウトプットがあったかということです。
したがって、報告書の仕様をそれに合わせる必要があります。
報告書は専門家へ謝金を払うための根拠となるものであり、実際にその専門家が企業訪問したという裏づけとなるものです。 反面、専門家がどのような助言を行ったか、それによって企業経営にどのような変化がもたらされたか、という観点で作られていません。
そこでまず、報告書の様式を次のように整備する必要があります。
  1. 企業の抱えている問題(またはニーズ)は何か?
  2. その原因(または背景)は何か?
  3. それに対して、専門家はどのような助言を与えたか?
  4. その結果、企業にはどのような変化が生まれたか?
  5. うまくいったのはなぜか?(うまくいかなかったとしたらどこが良くなかったのか?)
こういう情報をAIにたくさん蓄積すれば、新たな相談事が来た時にひじょうに役立つデータとなると思います。
その情報を広く共有すれば、相談体制の強化にも繋がります。

ところがです、本当にそういう情報が得られるかどうかは、かなりの難しさがあります。
第一に、相談者は自分たちの相談事がそのような利用をされるとは思っていません。このため了解をとっておく必要があります。
おそらく、次のような告知が前提とされることになるでしょう。
  1. どんなことでもかまいませんので、お気軽にご相談ください。
  2. 個人情報の秘密は厳守します。しかし、個人情報を除く相談内容は、今後の相談事業の向上のために分析し、業務に活用させていただきます。 ご了解の確認のために、署名をお願いいたします。
  3. ご了解いただいた相談テータについては、関係者に共有させると同時に、AI活用のために役立てていきます。
  4. 集められた加工データは、広く東京都民のために公開し、問題の事前防止のために周知していきます。
こんなことを相談者に事前にお願いすれば、相談者は身構えます。
そうなると、専門家と相談者との間の垣根が高くなり、本音が聞かけなくなります。
つまり、相談事業そのものの効果が減少するということです。本末転倒ですね。


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