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ITは相談窓口を越えられるか

情報公開が進んで、行政情報の「見える化」が求められています。しかし、それでは安心して相談に行けない。この矛盾をどう解決するかが、相談窓口の大きな課題となっています。

情報公開の壁

情報開示への圧力が情報秘匿を強めるという矛盾

相談担当者の立場として、どうしても開示したくない情報というのが2つあります。
ひとつは「クライアントの秘密事項」です。
相談の場でできる限り有効なアドバイスをするためには、相談者がすべてを隠さずに話してくれなくてはなりません。 このため“秘密は厳守します。”と、どんな相談窓口にも掲示されているし、専門家もこれを守ろうとします。
しかし、その一方で、行政に対しては「情報開示請求」というのが行われます。 「秘密は厳守」と言いながら「請求があったので開示します」というのでは嘘つきになってしまいます。
しかし、利害対立が生じている相談事だと、裁判の資料にするため、強行に開示を求めてくる人もいますし、 犯罪が絡んでいる案件では、警察から法に基づいて提供を請求される場合もあります。難しいところです。

聞いた話がすべてとは限らない、だから不足分を補足するが・・・

また、報告書には担当した専門家の主観も入ります。ですので、書かれたものが100%客観的な事実とは限りません。
しかし、いったん書類に書かれるとそれが一人歩きしてしまいます。 専門家なら「情報開示」を念頭に置きながら報告書を作るのが、当然といえば当然となります。
この場合、もっとも有効な秘匿手段となるのは、「書かない」ということになります。
例えば「会社の経営が苦しくて、あと半年もすれば倒産しそうだ」という相談なら、「企業収益の向上についての相談」と書けば、 どこにでもある話になります。 「私も高齢なので事業を息子に譲りたいが、長男は能力的に疑問があり、二男に継がせたい。どうしたらいいか」というもめ事であれば、 「事業承継についての課題整理」と書けば、差し障りのない話にすり替えられます。
こういう風に報告書が漠然とした内容で埋められてしまうと、なかなかAI活用に繋がるビッグデータになりません。

専門家同士も競合するライバルだ

もうひとつの秘匿したい情報は、その専門家が有するノウハウです。
ベテランの専門家は「経験知識の固まり」と言えます。そこに至るまでは、数々の失敗やつらい思いもしてきたに違いありません。
そんな貴重のノウハウを、簡単に若手に教えてくれるでしょうか。ましてや相手がAIとなると、自分の生活基盤を揺るがしかねない強敵になります。 そんなところへ、簡単にノウハウを提供したくはありませんよね。

すでにあるビッグデータなら、すぐにでも活用できる

ひとつだけ、すでに公開されているビッグデータがあります。それは裁判の「判例」です。
判例は長文が多く、事細かに事実関係が述べられていますし、判決の根拠も示されています。すでに判例検索のシステムも存在し、データベース化が進み、公開もされています。
このため、既存の判例データベースをAIにどんどん読み込ませれば、すぐにでもAI化が可能になると思われます。すでに進んでいるのかもしれません。
そのうち、AIが「このレベルのセクハラだったら、損害賠償金は〇〇万円が妥当でしょう」といった答えを出す時代になるかもしれません。
ただし、問題はあります。紛争解決は、判例によって結論が出されたものがすべてではないのです。
その背後には、裁判所の調停によって、いちおう和解ということで決着した案件が厖大にあるはずです。 これらも含めなければ判断の客観性は確保できませんが、どこにも公開されていないのです。
また、現在は弁護士がだぶつきぎみになっています。人材不足ということでたくさん養成してしまったのですが、銀行のグレー金利問題が下火になると仕事が減ってしまいました。 AI化が進むと、そういう人たちからさらに仕事を奪うことになります。困った問題です。


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