謎でも何でもない、地下空間
▼ 昔からの常識
先般、豊洲の新しい市場の建設で、地下に謎の空間があり、化学物質を含んだ地下水が溜まっているというのが問題になった。
東京ビッグサイトの地下にも空間があり、私は見たことがないが、駐車場や機械室、雨水の貯蔵タンク(トイレの水に使う)などが納められているそうである。
地べたにコンクリを打っただけの晴海会場とは、かなり違う。
平米5tの展示物を置く場所の地下に、なぜ空間が必要なのか? 私は技術担当に質問した。
「そんなの今じゃ常識だよ」との答え。
埋立地は地盤が軟弱だ。国際展示場建設の際も、たくさんの杭が打たれ、徹底的に土地改良が行われた。
建物は、固い地盤まで地下に柱を伸ばし、地盤から直接立つ形でできている。地中の高床式建築なのだ。
これなら表層の地盤が沈下したって影響はない。
逆に、土を盛ってその上に建物を建てたりすると、地面の動きで建物が歪む。
ちなみに、関西国際空港などでは、最初から地盤の沈下を見越して、地下にジャッキが設置され、
建物の傾きを補正する仕組みになっているという。
建物構造が地下高床式になると、地下空間が生じる。そこが利用できるようになる。
豊洲市場の場合、配管のメンテンンス用ピットとの説明があった。
いろんな議論がされていたが、あの空間は“謎”でもなんでもない。四半世紀前でも“常識”だった。
地盤強化のためには膨大な費用がかかる。しかも、立派な建物部分と違って、そこのところは目に見えない。
東京ビッグサイトの場合、平米5tの重量物が持ち込まれるから、建物を支える柱や梁には、それなりの強度が求められる。
バブルによる潤沢な資金がそれに役だった、と考えられる。
一般的に「役所の庁舎は空調がうまく効かない」と言われることが多い。
空調部分も地下と同じく目に見えない。だから、予算が足りなくなると、そういうところが予算削減の対象になってしまう。
▼ 車は重量物ではない
ところで、幕張メッセも地下は空洞になっている。
床荷重は同じく平米5tだ。しかし、重量物の搬出入・据付について制約があり、開業当初に様々な規制が示された。
晴海の馴染みである工作機械や印刷機は、かなりの重量がある。また、展示会はきわめて短時間で手際よく搬出入が行われなければならない。
このため、重量物の展示が多い展示会は、幕張への会場変更に躊躇した。
これが、晴海会場の延命に繋がったと聞いている。
幕張メッセは、明らかに「モーターショー」用に作られた会場である。自動車工業会からも役員を招聘している。
自動車は展示物としては“軽い”。
その後だいぶ経ってから、幕張メッセは、重量物に強い別棟を建てた。
▼ 地下施設の役割
東京ビッグサイトの地下には、自己発電装置がある。これを稼働させることによって、ピークの電力需要をカットする。ま、めったに動くことはないが。
発電装置があることによって、点検が義務づけられ、年に1回、停電になる。
当時、8階のレストランは、ここにしか店を持たないレストランだった。停電になると食材がダメになってしまう、と救済を求められた。
最終的には、他のレストランがそのレストランの保管する食材を預かってくれた。ライバル同士でも、そういうところは協力し合っていた。
初めてのコミックマーケットの時、トイレの水が流れないというアクシデントがあった。
前述のように、トイレの水は地下の雨水保存タンクから供給される。不足する場合は水道の水を足すシステムになっている。
しかし、開業当座はまだ不慣れで、水道からの供給バルブを開くのをうっかり忘れていた。
あまりにも来場者が多かった。想像を絶する混雑ぶりだった。
天上の監視カメラから見ていたが、床が見えないくらい人であふれていた。
この時は、会場のCO2濃度が上がりすぎたので、会場外部の搬出入口を開いて対処した。もう、ホントにすごい盛り上がりだった。
コミケ史上でも、忘れられない1回だったに違いない。