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東京ビッグサイト誕生秘話

東京ビッグサイト誕生秘話

“秘話”とつけましたが、いわゆる暴露話ではありません。裏方の苦労話です
めったにない大プロジェクトについて、後進の参考にと作りました。
すでに四半世紀が過ぎていますので、記憶違いもあると思います。主観も入っています。

あとを引く駐車場問題


▼ 展示場には駐車場が必要

早くから、東京ビッグサイトの駐車場不足は問題視されていた。
東京ビッグサイトの地下には250台が入る有料駐車場がある。展示ホール周辺にも駐車スペースがあるが、これは一時的なものだ。
この話を聞いたとき、幕張メッセの関係者は「勝った!」と内心思ったそうだ。
展示場には、かなりの面積の駐車場が必要なのだ。

まさかとは思うが、国際展示場の建設計画には、駐車場の設置が抜け落ちていた可能性がある。
東京都は「公共交通機関が整備されているから、世界都市博にはそれを利用してください」としきりにアピールしていた。
たしかに、博覧会の場合、会場の設置が終わるとトラックなどは乗り入れてこない。 来るの来場者だけだから、その人たちが公共交通機関を使えば、駐車場の必要はない。
しかし、展示場には出展社がいる。出展社は自社の車で展示物を持ってくるから、膨大な駐車場が必要になる。

このため、主催者は、東京ビッグサイトの駐車場不足は問題視した。
しかし、急に常設駐車場を増やすと、環境アセスメントのやり直しになる。だから、都庁は私たちの要望を完全に黙殺した。

当時、世界都市博のために、その期間中、国際展示場の北側の土地(現在、がん研病院が建っていて、“有明の丘”と呼ばれていた)を臨時の駐車場とする計画があった。
M室長は都市博担当と直談判して、この土地を東京ビッグサイトの臨時駐車場として活用できるように話を進めた。
それで、その土地が、“暫定的”ではあるが、展示場の臨時駐車場として利用できることになった。

▼ おつりを持って走った

この「有明の丘臨時駐車場」だが、都市博がなくなってしまったので、ゲートなど駐車場然とした施設は、いっさい設置できなくなった。 そこで、入り口に小屋を設け、シルバー人材センターから人を派遣してもらって料金1,500円を徴収することとした。
短時間の駐車でも、何時間駐車しても同料金だ。 細かいところまで決めても対応できなかったためだが、「高すぎる」というクレームが来た。
土地の利用料金だが、東京都は直近の査定を元に土地の値段を算出する。 査定は臨海部がイケイケの頃に行われており、都市博中止も無かった頃の値段。だから、高い。
すでに実際の評価額は値崩れしていたはずだ。しかし、東京都は値下げしてくれない。
土地代はしっかり東京都に取られた。いただいた1,500円の大半は東京都に没収。その残りをシルバーに払うと、見本市協会にはほとんど残らなかった。
そのうえ、たくさんの車が利用すると“おつりの500円”が足りなくなる。

駐車場からの急報を受け、私たちは場内の売店やレストランから、急ぎ500円玉をかき集めて駐車場へ走った。事務局長まで走った。へとへとだった。
技術の職員が言った。「それにしても年寄りは、ほんとうに丈夫だ。こんな炎天下の中で1日中駐車場管理をしているのに“1人も死なない”」

また、駐車場からの出入り口が狭く、さらに交差点の運用もそれに対応していなかったので、混み合うと駐車場内に取り残される車が多数発生。
車内から携帯電話で苦情を言ってくるお客様がいる。「どうなってるんだ、もう何時間も待っている」と、延々と苦情を言い続ける。退屈でそれしかやることがないからだ。 「今すぐここに来て何とかしろ」と怒鳴るので、「お客様のクレームをここで何分も聞いているので、動きが取れないじゃないですか」と答えた。

▼ 急いで埋め立てて確保

取りあえず駐車場は確保できたが、いつ無くなるかわからない。実際、すぐにがん研病院の建設の話が来た。
そこで見本市協会は、東展示場の奧の海側の土地を埋め立てることにした。
にわかに埋め立てた地面はすぐにデコボコになる。落ち着くまで駐車場として利用させてもらいたい、という論法だった。
担当のK君は、「日本の領土を拡げる話ですから、けっこうたいへんでした」と話している。

ビジネスガイド社の回想本にこんな下りを見つけた。
「駐車場に関してはこんなエピソードがあります。 ビッグサイトに駐車場がつくられたのはわりと最近のことで、信じられないことに、それまでは駐車場がなかったのです。
「当時の石原東京都知事は、「見本市なんか電車で行けばいいんだ」と豪語し、それで一体どうやって出展社は荷物を運べばいいのかと、その発言に驚いた覚えがあります。
「そこで我社の今の社長が空撮のビデオを持って都庁にかけ合い、それで都知事もようやく納得し、海を埋め立てて駐車場をつくる方向に動いてくれたのです。」
(「ギフトショー」を創った人 芳賀久枝 BABジャパン」)

▼ もう場所がない

その土地も、今では東の7、8ホールが増設されている。
有明の丘にも、たくさんのビルが建ち、もう利用はできない。
さらに、未使用時は駐車場として利用できた西の屋外展示場にも、南棟展示場が増設されている。
今後、出展者向けの駐車スペースは、どのように工面されるのだろうか。
増設中に南展示棟には立体駐車場も付くということであるが、かなり心配である。
東京モーターショーを開催する会場なのに、「自動車の利用はご遠慮ください」というのも、情けない話だ。
メガフロートを浮かべるとか、抜本的な対策が必要と思われる。

話は関係ないが、都市博側と駐車場の利用交渉した際に、「都市博で使うはずだった電気自動車がある。タダで譲ってもいい」という申し出があった。 断る理由もないので、受けた。
しかし、この電気自動車は、ひら場の都市博会場を移動するだけのもので、レインボーブリッジを渡るパワーもなかったらしい。しかも、すぐに車検が来た。
タダほど高いものはない、といういい教訓になった。


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