理想の展示場を作ろう
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間接光を徹底的に利用しよう
ビッグサイトの共用部分は、全体がガラスの屋根に覆われています。
このため、日光が直接入る構造になっていて、照明などに利用する電気代が大幅に節約できる、はずでした。

ところが、いざ開業してみると、お客様からは「暑い」というクレームの山です。
結果、夏場は空調がフル回転となります。しかし、直射日光があたるサンルームにいくらクーラーを利かせたところで、間に合うもんじゃありません。

じゃあ、実際どれくらいの暑さなんだろうと、温度計を持って会場の各部分の温度を実測しました。
ところがです、実際の気温は、そんなに高いものではなかったのです。

原因は、「体感温度」というものの影響でした。

ガラス張りの屋根の下で、直射日光を浴びると、人は実際よりもはるかに気温が高いように感じるのです。
理想の展示場を作るためには、設計段階からいろいろな工夫を盛り込む必要があります。


まず、ガラス屋根の下に、半透明のシェードを設置するという方法を取ります。
体感温度を下げるには、かなり大きい効果を上げることが期待できます。
私たちは当時、こんなことなら、自動開閉式の覆いを全館に渡って設置しておけばよかったと反省しました。
空調経費はたいへん高いです。費用がかかっても、空調経費を浮かすための設備をケチってはいけません。

ガラスを通して入ってきた日光を、1回バウンスさせて間接光として利用する方法もいいと思います。
ちなみにビッグサイトでは、展示ホールの屋根がこれで、窓を開閉操作することができるようになっています。直射日光は展示会の敵ですが、搬入出の際には、灯りが必要です。

窓を広くとって、その外に植栽を設けるというのも手だと思います。
展示場はどうしてもコンクリートとアルミ系金属で壁や柱が作られますから、緑がちょっとでも目に入るようにしておくと、たいへん心が安らぎます。
実はビッグサイトでは、場内の公共空間そのものに樹木を配置しようという試みがなされました。しかし、結果は大失敗でした。
やはり、閉鎖された空間では、樹木がうまく育たないのです。

だったら、太陽光の入らない施設を作ればいい、と考える方もいるかもしれません。

しかし、会場を未使用時の日光の入らない展示場は、まったくの倉庫で、あまりにも寂しいです。
下見に来た主催者が、嫌気をさしてしまいます。夢を与えられない展示場は、展示場ではないのです。

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