理想の展示場を作ろう
目次に戻る
利便施設その2(売店)

売店の運営方法についての考え方は2種類あります。

子会社による運営

一つは、独自に子会社を設立し、そこに売店の運営を委託する方法です。
ビッグサイトでは、この方法をとっています。
そのメリットは、会場側との二人三脚による運営が実現されることで、子会社としては、あまり儲けが見込めず、導入に躊躇する営業分野でも、会場運営からの要請で承諾してくれたりもします。
しかし、これが行きすぎると、会社の経営を危うくすることになりかねません。

たとえばビッグサイトの場合、子会社が外貨の両替業務をやってくれていますし、プリペイドカードの取り仕切りも担当してくれています。
切手やたばこなども利が薄い商品です。しかし、販売してくれるところがないと困ります。

事実、当初、東京国際展示場は、近くに外貨交換のできる場所がなく、海外からのお客様から、「どこが“国際”なんだ」とさんざん文句をいわれました。今では外貨交換もできますし、ビジネスセンター(インターネット利用可)すらあります。

これらは会場の利便性を考えたとき、ひじょうに重要な分野ですが、民間企業としては、なかなかそこまで手を伸ばそうとはしない範疇です。
花屋なども必須要素ですが、そんなに儲かるとも思えません。会場の総合案内窓口の運営なども、文句ばかりいわれる分野です。

子会社だと、このような労多く、利薄いフィールドでも活躍してくれます。結果的には、会場のグレードをあげることにつながりますから、会場全体にとっては必要な部分です。

もちろん子会社側にもメリットがあります。
会場側が業務を委託する形になりますから、会場にしか認められていない分野、例えばロゴなどの使用や、来場記念品の販売なども、可能になります。
これが別会社だと、使用料を取らなければ問題が生じます。たぶん使用料を払ってまでやろうとは思わないでしょう。

しかし、来場者は意外と、そういうものを求めたがるのです。
ちなみに、オープン直後に、ビッグサイトで一番売れたのは、来場記念メダルでした。

コンビニエンスストア等の誘致

ホテルなどが併設されているなら、これと共同で利用できるコンビニなどを誘致することもできます。

あくまでも、一支店に過ぎませんから独自色は打ち出せません。
しかし、他店舗とのネットワークを利用できますし、経営も安定させやすいです(逆に儲かると、その利益を吸い上げられてしまいますが・・・)。

銀行(外貨交換のできるレベルの)も、ホテルに併設してもらうと便利ですね。とっても虫のいい話ですけど。

さて、どっちがいいか

結論からいって、後者がベターです。しかし、実際にやってくれるコンビニを見つけるのは、かなり難しいことだと思います。
でも、子会社方式よりも安全であることは、間違いありません。

子会社の一番の問題点は、会社を作って、売店を任せてですね、実際にそれを経営できる人材をヘッドハンティングできるかです。
そんな人は、おいそれとはいませんよ。

幸いなことに、ビッグサイトでは、経験豊富な方を招聘することができました(その代わり、その人が抜けた元の会社は、さんざんな目にあったようです)。
役人の幹部OBを営業担当に天下りさせたりしたら、それこそ、その会社はつぶれると思います。

民間コンビニを誘致するなら、役所が関与するという危険性も少なくなります。こういった利便施設は、とにかく、できるかぎりお上の支配から離さなければ失敗します。

売店に「ビッグサイトせんべい」なんてもんを置いているのを見て、「会場の品位が落ちる」といった都庁の人がいましたが、だったら店頭に立って、その品位の高い商品とやらを、売っていただきたいと思います(と、つい、自分が都庁の人間であることを忘れて書いてしまいました)。

使用料の徴収方式

子会社方式も民間誘致も基本は同じで、売上高から一定の割合でロイヤリティ(または、店舗面積の使用料)を徴収することになります。

切手など、利の薄い商品は、別基準の徴収方法を考えなければなりません。
でないと、「売ると損をする」という、おかしなことになります。
これらは、商店に導入するPOSシステムの設計に大きく影響しますから、かなり早い段階で決める必要があります。

なお、そのほかに、電気使用料や空調使用料を実費徴収します。

子会社の場合、あくまでも商品の販売業務は会場側がなすべきことで、それを委託しているという形になります。
民間売店だと、場所を貸して商売することを認めているという形になります。
本質のところでは、両者は大きく異なります。

プリペイドカードについて

デパートでは、商品券を発行しています。
展示会の主催者は「食券」というかたちで、出展社の利便を図ります。
当然、展示場のような施設では、場内で使えるプリペイドカードを発行したいところです。事実、それは可能で、やってもいます。
しかし、プリペイドカードを発行するためには、乗り越えなくてはならない、さまざまな障害があります。券がカードになっただけなんですけどね。
多くは語りませんが、規制緩和の推進を、強く願いたいと思います。

→次のページへ