理想の展示場を作ろう
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大会議場は多目的利用を考慮しながら設計する
ビッグサイトと国際フォーラムという2つの大規模施設が建築されたとき、多くの人たちは両者が顧客を奪い合うのではないかと、心配しました。

しかし、現実には、そういった競合は生じていません。
国際フォーラムは、コンサートやミュージカル中心に利用されることが多いようです(そもそも、そういったように設計されています)。

さて、一方のビッグサイトには、ピラミッドを逆さにしたような特異な形状の会議棟があります。
あの中には1000人が収容できる国際会議場と、中規模の会議室がいくつか入っています。

国際会議場にはかなり高度な設備が配置されているのですが、展示会場の会議室としてはクオリティが高すぎて、スペックを使い切るのは難しいようです。

ここでは、そうした反省を含め、理想の展示場の大会議場を設計してみたいと思います。

展示場の会議室というのは、多くの場合、セミナー会場として利用されます。
この展示場では、展示ホール内に会議施設を設けました。したがって、主催者はセミナー用として、まず最初にこの部屋を利用するはずです。

とすれば、ホテルと隣接した大会議場は、展示会とまったく関係なく利用されることも多いと、想定しなければなりません。
事実、ビッグサイトの会議施設は、医学会などでよく使用されています。

あまり高い位置に作らない

ビッグサイトのような高床式の構造物の中に会議施設を入れると、来場者導線はどうしても長くなります。大きな会議施設はあまり高いところに設けないほうがいいと思います。資材などの搬入にも不便ですし。
今回の想定は、地上30m〜40mくらいの位置を考えました。高床はやめ、業務ビルの上層階に配置することで、アクセス経路を多数設けます。これで荷物用エレベーターも業務ビルと兼用できるようになります。
また、コミューター交通機関の駅と近接させ、来場者が容易に入場できるよう配慮します。ホテルのレストランなどとの連携も考慮します。

会議以外の利用にも対応できるようにする

たとえばバラエティ番組などの中継にも利用されることがあるかもしれません。
したがって、通路は広めにし、興行法の基準(空調やトイレの配置など)をクリアする必要があります。スタジオは必要ありませんが、通信設備は用意しておきます。回線を配置できるように、防火ドアなどに、開閉式の小窓をつけます。
舞台などの広さには、ゆとりを持たせておきます。映画上映など行われるかもしれませんから、スクリーンも必要かと思います。ただし、映画館ではありませんので、プロジェクターの設置には一考を要します。
むしろ、OHPなどへの対応を考えます。
また、学会などでは、手元に講演者がパソコンを持ち込んで、パワーポイントなどを利用して説明することが多いようです。
こういった使い方への利便をしっかり押さえておきます。

イスは大きめに

講演会には外国人の参加も考えられます。
したがって、イスは大きめのものを用意します。メンテがしやすいように、レザー張り(偽革でも可)にするといいでしょう。
車椅子用のスペースも忘れずに作りましょう(段差等に配慮が必要です)。

窓を作る

会議場そのものには、窓はいりません。しかし、こういった議場に長い時間閉じこめられていると、どうしても開放感が強く求められるようになります。
そこで、会議場の周辺を廊下でぐるっと取り囲み、そこに大きな窓をつけます。

同時通訳ブースは?

外国人も・・・、といっておきながらですが、これは難しいところですね。
ビッグサイトにも通訳ブースは用意されていますが、実際に利用されることは少ないようです。というのも、同時通訳ができるほどの力量がある通訳はそんなにいませんし、経費もかさみます。英語だけならともかく、来ている外国人が英語がわかるとは限りません。
多目的ブースとして用意し、同時通訳が必要になった場合は、それを利用する、という方法がいいのかな、といったところです。

照明・放送用設備は、素人でも使えるものを用意する

本格的な講演会をやろうとすれば、大々的な準備が必要です。とうてい素人には操作できるものではありません。
しかし、専門家を頼めば、単にライトをつけるだけ、単に音を出すだけでも、1日何万円も人件費がかかります。それでは会場が利用してもらえません。
したがって、素人でも使えるような簡易設備も、別に用意しておきましょう。
天井のスポットライトも遠隔操作できるような仕組みがあれば、便利です。

音響に注意する

どうしても閉鎖された空間になりますから、音響への注意が必要です。
コンサート用と会議用とではおのずと違います。両立させられないのなら、会議用と割り切りましょう。

エスカレーターホールを設ける

会議施設には喫煙用のロビーを設けることが普通ですが、忘れてならないのは、エスカレーターの降り口の空間です。これがないと、たくさんの人が押し寄せてきたとき、将棋倒しになります。
いわずもがなですが、非常時の非難通路などにも十分な配慮が必要です。
床にはカーペットをはりますが、特注にしないほうがいいでしょう。たくさんの人が出入りしますから、どんどん汚れてきます。コーヒーなどをこぼされればすぐシミができます。
汚れが目立たない濃いめの色合いで、量販されているものでたくさんです。

その他、会議場には、お金をかけようと思うと、いくらでもかけられるのですが、かけたことで使いやすくなるかというと、むしろ逆だったりすることが、たくさんあります。
過剰設備にならないように、十分注意が必要です。
1000人級の会議というのは、そうそうあるものではありません。少しでもたくさん使ってもらうことが大切です。まったく利用がなくても、維持管理経費はかかってくるものなのですから。

この大会議室の管理ですが、了解が得られるならば、他の中規模会議室(業務ビル内)とあわせて、ホテルに委託した方がベターだと思います。
とにかく、こういった施設の世話には、人手が必要です。運営は主催者中心となる展示場の管理とは、大きく性格が異なる部分なのです。

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