理想の展示場を作ろう
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利用者が求める情報を的確に提供するには

インターネットがもてはやされていますが、そのメリットは、人々の欲しがっている情報が、必要とされているまさにそのときに手に入ることにあります。

展示場とて、同じことでして、来場者は自分の求めている情報に最短距離でアクセスしたいと要望しています。

ということは、目的地にまっすぐ到着できなければなりません。

今回、試作した「理想の展示場」のホール配置が、入場導線から向かってアーチ型をしているのも、実はそういった意味があってのことです。

展示会の来場者は、たいがい事前に出展社の情報を吟味し、「こことここは必ず見よう」と、事前に勘所を押さえてからやってきます。

したがって、展示会情報については、イベントスケジュールなどを作成し、事前に来場者にPRしなければなりません。そんなのイロハです。

また、会場側としては、場内案内板(いわゆる現在位置表示)を複数箇所に設置しなければなりません。もちろん、それもABCです。

ここからが大切なんですが、来場者がスムーズに入場できるための手だてを、会場側としては主催者に提供しなければなりません。
来場者の目を追いながら、実現可能性のある手だてをあれこれ、想像してみましょう。
(実際のところは、なかなか難しいんですけど)

(1)事前にWebで展示会の情報を提供する

主として展示会のPRは主催者の仕事になります。
だからといって、展示場としては、会場そのものの周知をすればいい、ということにはなりません。主催社側だって、今はPR資金が潤沢ではないのです。
展示会というのは、3日間くらいしか開催されませんし、せいぜい年1回しかありません。
「そんな、おもしろいものがあるのなら、事前に日程調整して行くのだったのに・・・」というため息を聞くことも、しばしばあります。

とはいうものの、特定の主催社ばかりの利便を図るわけにはいきません。
そこで、Webベースに会場情報誌を作ります。
定期的に開催される展示会について、ここに基本となる情報を掲載します。読み物形式にする必要はありません。

性格としては、「個別展示会の基礎知識」といったもので、その展示会が、一般人向けなのか、商談目的なのか程度でいいです。「この展示会を活用するためには、○○についての知識が必要です」と書いてあれば、素人が行ってもわからないんだなと、伝わります。

また、主催社のページとのリンクや、主催社の出しているチラシなどの転載くらいは、サービスしてもいいでしょう。
また、出展社だけが記載できる電子掲示板を用意します。有効期限付きの共通キーワードを知らせれば、実現可能だと思います。

(2)混雑予報

展示場運営の経験を積んでくると、展示会の組み合わせによって、混雑の度合いも分かってくるものです。
たとえば、即売会の場合は早い時間帯にめちゃくちゃ混みます。ビジネスマン相手なら、午後の方が混みます。
こういった情報も、事前にWebに掲載してみてはいかがでしょうか?
といっても、「この展示会は人の入りが少ない」と公表したのでは、主催社からどなられてしまいます。

専門展=2に対し、一般展=3、販売会=4くらいのウエイト付けを基準として、稼働ホール数とクロスさせ、その日の来場者状況を推測します。
たとえば、専門展が1ホール、一般展が4ホール、販売会が1ホールなら、合計点が、2×1+3×4+4×1=18で、「やや混雑」などと予報します。これに「道路の混雑が予想されます」などのコメントを少し添えてWebに載せれば、それを見て、来場日やアクセス経路を変更する人も出るでしょう。

あるいは、アトリウムにライブカメラを設置して、会場の状況をWeb放映してみてばどうでしょう。入場口にどれくらいの列ができているか一目瞭然ですよ。

(3)主要交通機関との連携

交通機関のターミナルには、展示会用のポスター掲示板を設置するよう、要望します。また、ホームへの通路などがあれば、垂れ幕広告などがつり下げられるよう、お願いします。
そうすると、来場する人たちの気分が高まります。

実はビッグサイト開業の折りも、私たちはそういったことを頼み込みました。
しかし、ゆりかもめの改札への通路は、公共道路の取り扱いなので、交通機関側では自由に使えないとのことです。
また、りんかい線の改札上部に広告掲示板を作ってもらいたいと訪ねたときは、「そういった場所に人目を引くものを作るのは安全上好ましくない」との返事で、納得して引き下がりました(でも、気のせいか、新宿南口には・・・)。

一方、退場の時間帯はというと、今度は交通機関の大混乱が心配です。
そこで、会場最寄駅の切符販売所を俯瞰する位置にライブカメラを設置させてもらいます。
その様子を、場内の案内用ディスプレイで放送します。
そうすれば、帰宅途中の来場者が分散され、交通機関の混雑が平準化されます。
「ただいま○○線はたいへん混雑しております・・・」などと放送するより、よっぽど説得力があるし、時間調整で、場内の喫茶店を利用してくれる人も増えるかもしれません。

(4)入場口への誘導をどうするか

大型の誘導看板が複数必要です。
また、これで、どのホールで何をやっているかを、来場者に道すがら確認させます。
アトリウムに来たときには、迷わず指定のホール方向へ進めるわけです。
もっとも、この理想の展示場の場合は、形状から目的のホールが簡単に見つかります(ビッグサイトでは、残念ながらこうはいきません)。

(5)総合案内所の設置する

ビッグサイト開業の際も、総合案内を設けるかどうかで議論はありました。
事実、晴海にはそういったものはありませんでした。
誘導案内さえしっかりしていれば、不要とも思われます。

しかし、開業してみて、あらためて思い知らされたのは、来場者のニーズを把握するアンテナとしての、総合窓口の必要性です。
案内の女性たちにはたいへん申し訳ないのですが、クレーム受付所としては、たいへん有効に機能しました。

新しい施設を作った場合には、総合案内所は必須と考えた方がいいでしょう。そして、さらに大切なのは、そこに寄せられた指摘を黙殺するのではなく、少しでも会場を良くしていくために活用しようという運営側の姿勢です。

理想的な展示場をほんとうに理想的にしようとするなら、その関係者は全員、交代で、来場者案内の業務を体験することが必要だと、強く主張したいと思います。

(6)主催者が利用する場内案内板の提供する

たくさん案内板を用意し、それを安い料金で貸し出します。

見苦しいから場内看板はやめろという人もいます。
また、電光掲示板で事足りると思っている人もいます。
そういう人は、1日でいいから、大きな展示会がある日に、総合案内所に立たせてあげてください。
もう、そんなことはいわなくなるはずです。

(7)登録ゲートのためのスペースを用意する

理想の展示場案で、私が、ホール前にアトリウムを配置した理由は、実はここにあります。展示会は、たとえ入場料がタダであっても、入場のための登録は必要です。

このホールのゲートはここと、予め設定しておいて、必要とされる電源なども、床に仕込んでおきます。

(8)ホール入り口付近で、さらに詳細な案内を

実際に目的とするブースがどこにあるかという案内板は、ゲート入り口付近に立ちます。
毎回、そうなんですから、会場側でキャスター付きの案内板を入り口の数と同じだけ、用意してみたらいかがでしょうか。

(9)レストランの混雑状況の提供

食事時のレストランの混み方は、まちまちです。
食券売場で混雑しているのに、中はとってもすいているレストランもあれば、逆の場合もあります。

そこで、レストラン内を俯瞰する位置にライブカメラを設置し、会場内の案内ディスプレイに状況を映し出します。
仮にイタリア料理を食べたいと思っている人がいたとしても、たまたまイタ飯屋が混雑していたなら、別のすいている料理屋で我慢するかもしれないし、あるいは時間をずらしてからイタ飯屋へ行くかも知れません。

判断するのはあくまでも本人です。
こちらは、できるだけ正確な情報をリアルタイムで提供できれば、十分だといえます。でも、なかなかそれが難しいのですね。

 

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