理想の展示場を作ろう
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被害を防ぐ様々な知恵
展示会場には1日に10万人規模の来場者が集まります。災害時には、大きな犠牲者が出かねません。

幸いなことに、今の建物はたいへん丈夫にできています。
実際、神戸の大地震の後に現地の展示場を調査しましたが、地盤が大きく沈下しているにも係わらず、建物の躯体には、大きな被害は出ていませんでした。

しかし、そういった場所でいったん災害が生じた場合(あるいは流言飛語が生じた場合)は、それがパニックを呼び、さらに大きな二次災害につながることになります。

したがって、安全対策としてはあらゆる手だてを講じておかなくてはなりません。

 

「すわ、地震だ」というときに、まず心配なのは、ガラスの飛散です。

展示場には採光を取るためにガラスが多用されています。ビッグサイトの例でいえば、屋根もガラスという部分がたくさんあり、来場者の不安は、それが割れて落ちてこないかということです。

このため、ガラスは強化ガラスとし、内部に金網を入れ、表面に飛散防止フィルムを貼ります。

また、ガラスの接続部分には、地震の揺れに耐えられるように、ゆとりをもたせます。

真夏の暑さによるガラスの膨張なども、設計上考慮しなければなりません。


阪神大震災のとき、電気は断線したけれど、電話は通話できた、というのは有名な話です。
ちなみに、その断線した電気を点灯させようとしたときに、いっせいに火災が発生しています。

電話が通じたのは、屋内配線上に「あそび」があったからです。
一方、電気の配線は、ピンと張られていました。
だから、地震の揺れによる建物のゆがみを吸収しきれなくて、振動時に断線したのです。

理想の展示場では、電気設備を含めて、あらゆる電線類にゆとりをもたせることにしましょう。


足元にも要注意です。

展示場を臨海部に建てるとなると、地震の際の「液状化現象」に備えなければなりません。
十分な地盤整備とともに、心配な部分については、矢板などによる補強を施します。

そうでなくても埋立地の地盤は、その後、沈降したり移動したりします。
立地条件としては、しっかりした土砂による埋立地であること、埋立後、十分な年月(15年くらいは必要といわれている)が経過していることなど、確認が必要です。

先般、関西国際空港の地盤沈下が話題になりましたが、これなどは、事前から予想できたことです。
作った公団も承知していたはずです。

ビッグサイトも完成後、地盤が動きました。しかし、ありがたいことに、設計時点で予想された範囲内でした。おかげで、事後の補強は必要ありませんでした。
建物の建設にあたっては、こうした地面の動きも考慮しておかなければなりません。

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