本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  



私が考えた対応策〜(m)採択後のハンズオン制度を設ける
今も都公社では、採択後の企業に何度か訪問して、指導しています。
しかし、企業側から、規制が強すぎると言われることもあります。
事務方は、すんなり補助金を出してあげるために、何らかの方策を加えたいのですが、企業としては「あんなに苦労して採択までこぎ着けたのに、何でまたあ〜だの、こ〜だの言うのか」という受け止め方になります。

しかし、何もしないで放置しておくと、最終段階で「もらえるお金ももらえなくなる」という結果になるかもしれません。ですので、途中のハンズオンは必要です。
特に、社会貢献コースを選択した企業には、欠かせません。

この場合のハンズオンも、補助金実務に詳しい中小企業診断士や行政書士などにお願いすることになるかもしれませんが、そのときも、事務担当者は必ず同行します。
専門家の経験が浅いと、地味な書類整理などを飛ばして、いきなり経営診断などされてしまうかもしれません。そうならないように、事前にチェック事項などを確認しておく必要があります。
質問紙などを作っておき、「必ずこれだけは確認してください」とお願いする方がよいでしょう。

補助金事務理解度Q&A
初めて訪問する企業用
Q1: 補助金はすべての事業が終了し、確定検査が終わらないと交付されません。そのことを知っていましたか ・・・はい/いいえ
Q2: 補助対象となる備品等について、以下のことを知っていましたか。
(1)○○万円以上の備品購入については、2社以上の相見積もりが必要
・・・はい/いいえ
(2)実物が納品されていても、次の書類が欠落していると、補助対象とすることができない(契約書ないし請書、発注書、納品書、代金の請求書、振込記録) ・・・はい/いいえ
(3)現金払いと領収書による確認が認められるのは、○○万円まで ・・・はい/いいえ
Q3: 補助対象期間が決められている。
(1)それ以前に発注した備品や委託等については、補助対象にならない。
・・・はい/いいえ
(2)補助対象期間の終了後に納品された備品や委託等については、補助対象にならない。 ・・・はい/いいえ
Q4: 計画変更を遡って行うことは認められないので、事前に変更申請を出さなければなりません。そのことを知っていましたか。 ・・・はい/いいえ
Q5: この補助金では、補助経費の区分ごとに補助金の限度額が定められています。そのことを知っていましたか。 ・・・はい/いいえ

質問は、基本的なもののみとし、間違いがあればその場で修正し、関係書類を整理するフォルダーの1ページ目に入れて、担当者の名刺とともに企業に残します。
フォルダーぐらいは、支援側で買ってあげてください。


こういう質問紙を作ってあげると、ハンズオンに行った人も、「こんなこと聞きたくないんだけど、決まりなんで聞かせてもらいますが・・・」というふうに、切り出しやすくなります。

次に、Excelで、経費の管理表を作って渡します。

<執行状況>
補助金決定額 3,000,000 現在の支出額 620,000 残額 2,380,000

<科目別内訳>
  補助限度額 補助金充当額計 補助金充当可能残額 自己負担額 備考
人件費 1,000,000 200,000 800,000 0
事業構築費 1,000,000 50,000 950,000 0
事業展開費 1,000,000 370,000 630,000 0

<補助対象経費別支出額>
科目  説明  補助限度額 支出額 補助金充当額 自己負担額 備考
人件費  4月分給与 100,000 224,000 100,000 124,000 〇〇の人件費
人件費 5月分給与 100,000 231,000 100,000 131,000 〇〇の人件費
 事業構築費 専門家謝礼 1,000,000 50,000 50,000 0 〇〇診断士分
事業展開費  展示会出展小間代 1,000,000 370,000 370,000 0 〇〇展示会出展費
 


※自己負担額が出た場合は赤字で表示する。
※支出科目はリスト形式で選択できるするようにする。
※補助対象経費別支出額を記入すると、自動的にトータル集計されるようにする。


その他、補助金事務とやった支援団体なら、もっとたくさんの帳票を用意しているはずです。それを援用すればよいと思います。
気をつけなければならないのは、帳票類はあくまで管理事務をわかりやすくするためにあるものであって、決して事務を増やすためのものではない、ということです。
要するに、お金がキチンと処理されていることがわかれば、それでいいのです。

現実問題として、採択後の事業が順調にいかないことが、あります。
(1) 事業を立ち上げたけど、販路が見つからない。
(2) 許認可が取れない。特許や実用新案が取れない。知財の利用権を認めてもらえない。
(3) 金融機関から期待していた融資が受けられない。
そんなところが多いかと思います。

これをどこまで手助けしてあげられるか、については担当によって様々な意見があろうかと思います。
私の見解としては、補助金の事務処理のハンズオンの範疇を越えていると思いますので、そこには足を踏み入れるべきではないと判断しますが、いかがでしょうか。
本来、それは「経営者として負うべき責任」の範囲だと思うのです。軽々に「こうした方がいい」という助言は、控えた方が無難かと感じます。別に専門家の相談窓口があったり、別の支援制度があるなら、そちらに繋ぐことになります。

補助金の採択に苦労してこぎ着けた経営者は、採択=成功と短絡的に考えてしまうようです。
また、「困っている企業に補助金は支給されるもの」という勘違いをしていると、「同じく困っているのだから助けてくれて当然」と、どんどん依存的になったくる場合もあります。


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