本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  

役所の皆さん、特に中枢部の皆さんには、世の中のしくみがどうなっているか、よく見てほしいのです。

おわりに〜補助金に不慣れな企業に力を付けてください
企業に補助金を出したり、専門家を派遣したりする目的は、企業経営をサポートするためのものです。でも、それだけで完結するなら、金融機関が行えばいいことであって、何も税金からお金を回す必要などありません。
公費を投下して実施する意義があるとすれば、企業の経営健全化を進めることで税収も増えるだろうし、雇用の場も広がるし、その企業の行う事業で地域が潤うからです。

企業にお金をスムーズに渡せるようにすることは、手段ではありますが、目的ではありません。
しかしながら、日常業務にどっぷりつかっていると、事務処理の問題ばかりが意識されるようになり、制度が本来何のためにあるのか、得てして忘れられがちになります。

小さな企業の場合、経営者自らが第一線に立ちます。事業のアイデアも社長が考えます。そういう熱心な経営者ほど、ガチガチに固められた役所の制度に、なかなか馴染めません。

「あれもやりたい、これもやりたい」と考えているうちに、話がどんどんずれていきます。
そして、そういう経営者ほど、補助金の確定をする段階で、担当と対立するのです。

一方、補助金制度にひじょうに慣れている企業もいます。書類がしっかり揃っているのは当然として、申請された事業計画そのものにも、事情変更があった場合の軌道修正の余白さえ織り込んであったりします。
事務方を長く続けていくと、どうしても後者の方が大切になってしまうのです。

そして、そういう補助金ベテラン企業を優先的に採択させる一番効果的な方法は、「制度を複雑にする」ことです。
申請書類を分厚くし、添付資料を増やし、資格要件を厳格にし、補助対象経費を細分化し、審査段階を多重化し、採択後のチェックも厳しく行えば、補助金制度に疎い小さな会社は、ギブアップして退散します。

しかし、時には、「この補助金が何のためにあるのか」という基本に立ち返って、仕事を考えていただきたい、と思います。
音を上げて退散した会社の方に、本来なら支援すべき企業が多数残っていたのかもしれません。
そういった企業をできるだけ救ってあげることこそ、補助金の意義かもしれないのです。
そのためには、制度をできるだけシンプルにし、使いやすくする必要があります。
同時に、自らの事業の成功よりも「補助金取得額の多寡」に重きを置く企業には、ご遠慮いただくような仕組みを、制度に盛り込むことが大事です。





殿堂入りがあってもいい→

こうしたものに対する、一つの提案として、本稿を作りました。
行政で苦労している多くのご担当の参考になればと思います。
その一部でも、活用していただくことができれば、作った甲斐もあると、考えております。

 
・・・本稿はこれまで


メニューに戻る