実践! 経営革新入門 SWOT分析
●先ずは自社の経営内容を分析する

[坂井(コンサル)]: まず、自分の会社の経営実態、長所や課題を分析してみることですね。SWOT分析というのがあって、これが経営分析の代表格とされています。

<SWOT分析>
S:Strength(強み)
内部(自社)の強みは何か?
W:Weakness(弱味)
内部(自社)の弱味は何か?
O:Opportunity(機会)
外部(市場等)に対して自社の強みを発揮できる機会を何に求めるか?
T:Treat(脅威)
外部(市場等)に対する自社の脅威は何か?
※マーケティング理論と戦略がよ〜くわかる本(宮崎哲也 秀和システム)より

[坂井(コンサル)]: このSWOT分析の枠組みに都南空調サービスを当てはめてみましょう。
まず、強みというか、なぜ、御社がお客さまから頼られていると思いますか?

[都南社長]: 当社は住宅地の中にあります。お客さまとの距離が近いというのが有利さとなっています。

[坂井(コンサル)]: 技術レベルはいかがですか?

[都南社長]: メンテ業ですから、他社との差別化は簡単にはいきません。しいて言えば、空調も水回りも、簡単な補修も何でもやるというところでしょうか。

[坂井(コンサル)]: ということは、多分野にわたる技術スタッフをもっているということですね。

[都南社長]: 古手と若いのをペアにしてお客回りをさせています。そうすると、いつの間にか先輩の技術が身についていくのですよ。専門家がたくさんいるのではなく、万能選手がそろっているという感じです。

[坂井(コンサル)]: その強みをもっと生かすとすれば「より良い居宅生活に関する総合サービス」という方向性があり得ますね。インテリアや家具、リフォームなども扱ってみたらどうでしょうか。

[都南社長]: そうそう手広くやるにはお金もないし、従業員数も増やせません。

[坂井(コンサル)]: そういう分野のサービスを扱っている会社と提携するという方法もありますよ。大手企業の中には、子会社に従業員を派遣して、お客さまの要望を直接聞かせることを実地研修としている会社もあります。

[都南社長]: そういう応援が得られれば大歓迎です。当社の優秀な社員を後日その会社に引き抜かれるのではないかと、少し心配はありますが・・・。

[坂井(コンサル)]: 会社の悩みごとは、どうです。若手の従業員にたいそう気をつかっておられるようですが。

[都南社長]: 利益がどんどん少なくなっているということも心配の種ですが、若い人がなかなかこういう零細企業には来てくれなくてね。ようやっと採用したかと思うと、1年くらいで退職してしまう。社員の平均年齢もどんどん高くなっています。
それに私は二代目社長でして、先代と二人三脚でやってきた古手の従業員も残っています。
そちらも邪険にはできません。

[坂井(コンサル)]: 社長さん本人が「この会社はオレの代で終わりだ」と考えていはしませんか。それでは、いい若者は集まりませんよ。長く勤めてきた人たちの心も離れます。

[都南社長]: 実際、そうかもしれませんが、では、どうすれば魅力ある会社になるかと言われても、見当がつきません。



[坂井(コンサル)]: どうして収益が減っているのでしょう。景気が低迷しているとか、発注元から経費削減の要求が厳しいとかいう理由のほかに、何か特別な要因がありますか。

[都南社長]: 当社は、一般家庭向けのメンテ業なんですが、マンションの建設会社の子会社が同じくビルメンテナンス業をやっている場合がたいへん多くて、ライバルになってきています。近年、マンションの建設会社・管理会社・メンテ会社の結び付きが強くなっていて、なかなか当方まで仕事が出てきません。地の利を生かせないのです。

[坂井(コンサル)]: 逆に、仕事の範囲を拡大する上で、最近気になることはありませんか。

[都南社長]: 若い従業員がインターネットでメールをやっているのですが、知り合いから、部屋のことでいろいろ相談を受けるらしいのです。例えば、「結露が出るけど」とか、「下水の流れが悪い」とか、「浴室にカビが生えた」とか、「空調の効き過ぎで空気が乾燥しすぎ、喉の調子が悪い」とか。そんな問題は、当社に任せてくれれば簡単に解決するんですけどね。

[坂井(コンサル)]: どうして、あなたの会社の社員に相談できることが、マンション管理会社に相談できないんでしょう?

[都南社長]: やはり敷居が高いのではないでしょうか。日頃から世間話をするような相手ではないですし・・・。どうしても困るようなら電話をするんでしょうけど、それまでは多少の不便は我慢してしまうのではないかな。

[坂井(コンサル)]: とすれば、気軽に声をかけてもらえるような会社になれば、新しい市場開拓もできそうですね。



[坂井(コンサル)]:今の話をSWOTの表に落とし込むと、こんな感じになりますね。
 
<都南空調サービスのSWOT分析>
S:Strength(強み)
住宅地の中にあるという立地条件の良さ
従業員の対応業務の範囲が広い
W:Weakness(弱味)
資金面での弱さ
収益の長期的な逓減
若い従業員が定着しない
O:Opportunity(機会)
住民は、困ったことを気軽に相談できる相手がいない
T:Treat(脅威)
マンションの建設会社・管理会社・メンテ会社の一体的なサービス展開

[都南社長]: 私は元々が技術畑なので、これまであまり気にしなかったんですが、こう見ると、サービス業にとって、顧客様との関係ってとても大切なみたいですね。
 
 <補足説明>
SWOT分析は、会社の実態を把握するためのツールとしては、簡便な方法です。まずは、自社の実情をこの枠組みに当てはめてみてください。




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