実践! 経営革新入門 計画の具体性を高めるのが、事業成功の鍵
[都南社長]: 次の、『きっかけ』と経緯ですが、実はこのビジネスを決める前に、何か環境教育の事業をできないかと検討した経緯があります。

[都庁担当者]: それは実現しなかったのですか。

[都南社長]: 準備不足というか、自分の思いだけで進めようとしていて、回りの知恵を借りるというのを忘れていました。そこで社内にPTを立ち上げて、スタートラインに戻って検討したのです。

[都庁担当者]: あえて触れる必要もないでしょうが、本事業へ繋がる部分があるのなら、簡単に経過を書くこともできます。



(別表1−2)
経営革新計画の具体的内容
参加企業者名  (株)都南空調サービス   .

(経営革新計画の具体的内容と新しい取り組み方法を記入して下さい)

2 本計画を作成するに至った「きっかけ」と経緯

当社は家庭用機材のメンテナンス業として「きれいな空気と水を提供する」ことをモットーとしてきた。そこで、当初、環境教育のビジネス化を目指したが、準備不十分だと判断し、この計画を断念した経緯がある。

そこで、社内にプロジェクトチームを立ち上げ、当社の持つ人的・物的資源を活用した新ビジネスの展開について、検討を重ねてきた。
その結果、事業展開されることになったのが本提案「まちなかのモノづくり教室」である。

昨今、製造現場での技術レベルの低下が問題になっている。とりわけ、優秀な技術者の不足が深刻化している。
将来の技術者を確保するためには、子供時代からモノづくりに親しむ習慣を育てていくことが重要だと思われる。
現代社会は、生活が便利になりすぎて、子供の頃から、モノを作ったり、道具を工夫したりする機会が失われてきている。

こうしたことから、本事業の立ち上げが、社会的意義をもつと判断した。
これまでも公共機関等が散発的に、「ものづくり」の教室を開いているが、民間企業が、これを本格的なビジネスとして行おうという試みは見受けられない。

長年に渡って当社が維持してきたメンテナンス技術や顧客ネットワークなどは、本事業展開に有効に利用できると思われる。

またさらに検討を重ねた結果、子供を対象とした教室については学校の授業の制約のため、時間的な制約があることがわかった。このため、高齢者を対象とした新生活教室を同施設で開催し、効率的運営を図ることとした。








※技術・商品等の図面、機器のカタログ等、内容のわかる資料を添付して下さい。


[都庁担当者]: 運営面での検討はされているのですか。

[都南社長]: 子供向けのモノづくり教室ですから、まずは、教材が必要です。こういった分野では有名な鶴鷹興産からの協力を取り付けてあります。ただし、鶴鷹興産に独占させることはしません。将来のためにできるだけ選択範囲は広くとっておくつもりです。

[都庁担当者]: 大変魅力的なお話ですが、実際の教室運営となるとご経験がないのでは・・・。

[都南社長]: 教室運営について知己である虹の橋学習社に頼みました。生徒の募集、カリキュラムの作成などをお願いすることにしています。

[都庁担当者]: 複数の企業が関係しているようです。一覧できる図式のようなものがあると、わかりやすいですね。

[都南社長]: それから、当社社員の役割ですが、当面は、子供たちに付き添って、わからないことがあれば答えるようにします。講師の助手ですね。

[都庁担当者]: たしかに最初は、専門家のやり方を勉強する方が、堅実だと思います。

[都南社長]: 当初は、当社社員が講師をやることになっていましたが、本業の方もおろそかにはできませんし、これ以上の無理は言えません。

[都庁担当者]: ひょっとして、従業員の皆さんは、ボランティアで手伝わせようというのでは・・・。

[都南社長]: いけませんか?

[都庁担当者]: あくまで会社の新事業として手がけることですから、仕事です。休日に子供教室の手伝いをさせて、代休を与えないとか、休日手当を出さないとかいうのであれば、労働基準法違反になります。

[都南社長]: みんな喜んで参加すると言ってくれてます。

[都庁担当者]: 本当にそうでしょうか。たとえ従業員の方はそうであっても、ご家族は別の考えを持つ場合だってありますよ。善意だけに頼っていたのでは、いずれ軋轢が生じます。

[都南社長]: 本来業務としてきちんと取扱うべきだ、ということですね。

[都庁担当者]: そのとおりです。超過勤務を出す余裕がないなら、代休などを考慮してください。



(別表1−2)
経営革新計画の具体的内容
参加企業者名  (株)都南空調サービス   .

(経営革新計画の具体的内容と新しい取り組み方法を記入して下さい)

3 新事業の内容(自社にとって何が新たな取組であるのか)

この教室のカリキュラムは、子供向けの「モノづくり教室」と高齢者向けの「新生活開発教室」によって構成され、内容は以下のようになっている。

対象 費用 内容
低学年向け @3,000+実費 動くおもちゃをつくろう、他
高学年向け @5,000+実費 機械のメカニズムを学習する、他
高齢者向け 無料 セカンドライフ講座、財産管理のポイント、他
@5,000+実費 オトナのぬり絵、折り紙教室、手作りの小物パソコンを使ってみよう、他
一般向け 無料 自分でできる自宅のメンテナンス
@5,000+実費 トクする生活の知恵、他

本教室は、以下の点において、公共団体等が実施している学習教室とは異なった独自性を有する。
本格的なもの作りを教える。単なる工作で楽しませるだけでなく、そのモノが動く仕組みなど、合わせて学習させる。
(1) 本格的な教材を用意する。
(2) 実生活に活用できるような教材も用意する。したがって、教材費は自己負担とする。
(3) 少人数制による教室とし、密度の濃い指導を行う。

子供向け教室は、土曜、日曜、夏休み・冬休み期間に実施(親子での参加が前提)
高齢者向け教室は、平日の昼間実施
一般向け教室は、平日の夜間実施
1セット5回開催
定員は各教室20名

当面の講師手配は、虹の橋学習社に依頼するが、補助者等の必要性が生じる場合には、随時、当社社員がこれをサポートする。
なお、一般向けの講座「トクする生活の知恵」については、当社社員が直接講師となって開催する。
また、高齢者向け無料教室は、近隣の金融機関等から講師を招聘する。

教室をPRするためWebを立ち上げる。
万一のけが等に備えて保険に加入する。



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<参考> 東京都産業労働局の記載要領に例示されている、新事業の内容(自社にとって何が新たな取組であるのか)

 ご留意点 
1. 新事業の内容を具体的な例を示してご説明ください。
2. 想定する顧客、価格、用途、解決しようとする
3. 自社を含め他社との商品(サービス)の性能や価格の違いをご説明ください。
4. 事業実施に必要となる資金調達(借入先、借入予定順)
5. 事業免許や特許等の有無
6. 現在までの取組状況
※計画である以上、「具体性」と「実現性」が求められます。(特に技術開発面、販売面) 開発取組の説明では、今までできなかったものを、どのようにして可能とするかを説明してください。
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※技術・商品等の図面、機器のカタログ等、内容のわかる資料を添付して下さい。




 
 <補足説明>
経営革新計画の前提として、違法性がないことが必須条件です。
第二が事業として成り立つこと、そして、その事業に新規性が認められることです。



 
 <補足説明>  新事業が法律等に触れないか確認する
新たに事業展開を試み、しかもそれを第三者に承認してもらおうとするならば、少なくとも法律に違反していないか確認することが、当然の前提だといえます。
「当社は、他社より2割増しのスピードで高速道路を運送するシステムを開発します」では、制限速度オーバーは必至です。それでは、経営革新計画としては認められません。
<ありがちな法律への抵触>
1.健康グッズの開発
  薬事法や医師法に違反してはいないでしょうか?
例えばサプリメント食品ですが、不足する栄養補給ならサプリと認定できますが、それによって「体質改善」とまで宣伝してしまうと、人間の身体に直接影響を与えるということになり、薬事法に触れる可能性が高まります。
「特保に認定されるハズだ」、「権威ある機関(?)が証明している」というのも困りものです。肌に良い化粧水や、遠赤外線、磁性体など、一般的に身体に好影響を与えると流布されているものも、科学的根拠を欠いている場合が多々あります。
したがって、こういった新製品開発について経営革新計画を作ろうとする場合には、事前に専門機関の試験結果を得ておくことが必要でしょう。
2.労働者派遣法違反
  偽装請負が社会的問題とされています。
請負業務として派遣された先で、その会社の従業員の直接の指揮命令下に入れば、労働者派遣法違反の可能性が濃厚となります。
3.入国管理法違反等
  外国人労働者を利用した新事業の場合は、上記に加え、入国管理法に抵触しないかよく確認してください。
典型例は、「技術者」の名目で入管を通して実態は単純労働に従事させる場合、日本の制度に不慣れなことを悪用して社会保険などに加入させない場合などです。
4.機械器具や薬品の安全管理が不十分 
  新製品開発に際しては、当然、その器具に求められる安全基準を満たしている必要があります。有害物質を使う場合も同様です。





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