月夜裏 野々香 小説の部屋

    

錬成系 維新戦記 『1kg級魔法使いで』

 

  

  

 第113話 1963年 『式神ゴーレムの世界』

 

 ユダヤ暦5723年  皇紀2623年   大正10年

 第123代 大正天皇(34)   第19代将軍 千家 夷隅(40)

 

 

 

 

 紀元前393年、ローマ帝国がキリスト教を国教化として以降、

 白人・キリスト教は、欧州世界の歴史的な戦争勢力の渦中で、双方、且つ、一方の勢力を占めた。

 15世紀半ばから17世紀半ばの大航海で、キリスト教の福音は、白人軍の武力鎮圧に比例して、全世界に広がり、

 キリスト教の神は、貧乏神、疫病神、死神であると有色人世界に証明した。

 WASP(ワスプ)ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントは、その悪辣と暴虐のエキスかもしれない。

 そこまで、史実なのだけど、

 19世紀末、東アジアの日本で情報・金融・工業・農業・エネルギー産業が開花し、

 海外雄飛を行ったことで、国際情勢が史実から大きく改変してしまう。

 インディアン戦争と米西戦争は、アメリカ合衆国の台頭を抑制し、

 欧米列強と、オスマン帝国・イスラム世界の十字軍世界大戦は、欧米露・白人・キリスト教世界の躓きだったかもしれない。

 十字軍世界大戦は、痛み分けのまま講和となり、イギリスは国力を喪失し、インド帝国は、独立してしまう。

 タイ王国とイギリス領マレーシア、アチェ王国とオランダ領インドネシアの東南アジア戦争は、

 タイ王国とアチェ王国が、イギリスとオランダに勝利し、

 タイ王国は、マレーシアを併合し、アチェ王国は、インドネシア領を併合してしまうことで、

 白人は、神の使徒でなく、強国の国民に過ぎないと証明してしまう。

 

 東南アジアは、欧米列強から解放されたのかもしれない。

 しかし、それは幻想で、アチェ王国とタイ王国に併合された地域は、独立のためのゲリラ戦が続いていた。

 世界情勢は、日本語圏、イスラム圏、英語圏、ドイツ、ソビエト、イスラム圏、

 スペイン・ポルトガル語圏、インド帝国、支那圏、タイ王国、アチェ王国、フランス

 オーストリア=ハンガリー帝国、イタリアが、我田引水な内政と外交を進めようと凌ぎを削って画策し、

 その画策の成果なのか、コンゴ戦争が起き、現在も続いている。

 アメリカ、フランス、イギリスは、イスラム諸国と、スペイン・ポルトガル語圏と

 ソビエト、ドイツの本格介入を恐れ、義勇軍の派兵で済ませている。

 そして、その気になれば、

 アフリカ大陸を占領できるはずのイスラエル藩・ナミビアは、日和見を続けている。

 そんなわけで、19世紀まで全世界で暴虐を繰り返してきた白人・キリスト教世界は、有色人世界に対して、慎重になり

 より大衆を糾合しやすい資本民主・共産民主の旗を掲げ、国家の分断転覆工作を繰り返している。

 

 

 経済戦争というのがある。

 金融で味方に金を貸し、敵に金を貸さない。  税制で味方から徴収せず、敵から徴収する。

 財政で味方に再配分し、敵に再配分しない。  貿易で、味方に安く売って、敵に高く売りつける。

 貿易で、味方から高く買って、敵から安く買う。

 これを国内で繰り返すと、権力基盤は大きくなり、政敵基盤は縮小して消えてしまう。

 対外的に行うと、戦争することもなく、

 味方はいつの間にか強大になり、敵は衰小していく、

 敵は、アメリカ、イギリス、フランスで。味方は、それ以外の国だった。

 まぁ なにが言いたいかというと、

 経済的な依怙贔屓だけで、強国と弱小国を作り出せるってこと、

 そういや、未来の日本は、経済的な失策を押し付けられて、惨めな国になってたっけ、

 

 

 

 日本は、国権が財政で行使され

 民権は、14歳以上の男子にばら撒かれることで発揮される。

 欧米列強が貴族の世襲と、子飼い天下りの金融支配にこだわるあまり、

 マクロ経済のミクロ経済化で経済を歪にさせ、経済成長を低迷させている間、

 日本は、国民バラマキ型金融と、地租税税制と、国家財政のマクロ経済で資本を循環させ

 企業・家計などのミクロ経済は営利を追求することで、バランスよく成長させていた。

 

 

 

 

 01月

 毎年のように20歳以上の男子が増え、100万人長区画が、別の1000人長区画へ異動していく、

 もっとも、行政区画としては、大きな変化がなく、やることと言えば、10人長選挙ばかりだったりする。

 問題は、全人口の識別がDNAレベルで可能になったことかもしれない。

 困ったことに、14歳男子以上のバラマキ口座の重複は、重い刑が処せられる。

 同じDNAが続いたら、流石にいかんでしょう的な感じなのだけど、どうしたものか。

 

 

 

 

 

 阿頼耶識を見ていると、

 ザンジバル軍やマダガスカル軍で見栄えのいい数十人を主役にした映像を撮っている。

 十字軍世界大戦と、東南アジア戦争で使われた手法で、

 生き残った将兵がドキュメンタリー映画の主役で、収入が大きければ老後は安泰になった。

 とうぜん、コンゴ戦争でも映像が撮られている。

 やはり、戦闘機、戦車の搭乗員は、人気があるかな。

 あと、ヘリコプターも人気があるようだ。

 劇中劇やスピンオフな物語で、笑顔を見せている将校が翌日死ぬこともあるわけで、

 そうなると、主役一人分の映画が飛んでしまう。

 ていうか、3分の1が生き残れば、黒字になる見込みがあるらしい。

 

 

 

 未来の日本のマスメディアヤクザは、金さえ貰えるのなら、なんでもしていたっけ、

 外国工作員を随行させた有名人を引き込んで興行したし、

 外患が付け込みやすいよう内輪揉めと内戦な戦国モノをテコ入れしてたし、

 サンゴに落書きして、サンゴに落書きした不届きモノを叩いたし、

 慰安婦をでっちあげ、日本と日本人を貶めたし、

 標的の家を訪問して、間取りと、家族を裏稼業の人に教えたし、

 自衛隊で情報収集して敵国に流したし、

 在日の多いマスメディア産業が、日本人の多い農業産業をTPPで売り渡そうとしたし、

 消費税でも在日マスメディアは公益性があるから軽減税率で、他は消費税払えだし、

 ネトウヨを自作自演し、自らネトウヨを叩いたし、

 元々 マスメディアは、事実か事実でないか、でなく、

 文字数×お金 で、文章を書く、

 売れるためのショック記事、売るための我田引水は得意だし、

 マッチポンプが得意だ。

 この世界の日本でも、まぁ 金を貰ったらやるよねぇ

 従軍記者を送り込んで、虐殺事件を写真に撮らせ、残虐行為が行われているから、日本はアフリカのために参戦しよう。

 主戦派は、そんな事を言う。

 あと、口封じで従軍記者を虐殺せたりとかね。

 

 

  

 

 02月

 瑞樹の人口が日本を追い抜いている。

   日本  46万6088ku     1億8187万人

   瑞樹  92万5915ku     1億8749万人

 元々 瑞樹の方が広いので、歳月の問題だったんだけどね。

 火山が多いけど、どちらも、地盤の強い地域では、300m級高層建築群が建ち並び、

 世界有数の高層都市を建設している。

 問題は、瑞樹出身議員の勢力が増していることで、強気になってる気がする。

 あと、海外在住者も増え、

 そちらの自治会は、世襲天下り利権を守ってるせいか、強い影響を持っているらしい。

 

 

 イスラエル藩の映像が流れる。

 高層建築と、近代的な世界が形成されていた。

 しかし、宗教施設は、日本と少しばかり違うし、

 日本人と違う人種が少なくなかった。

 雰囲気も日本と海外地の差異より、日本とイスラエル藩の違いが大きく、

 海外地と、イスラエル藩は、さらに違いが大きかった。

 それでいて、人類史の主軸であるという確固とした空気が包まれていた。

 イスラエルは、古代の由来に倣い、

  ルベン州   シメオン州   ユダ州   ダン州   ナフタリ州   ガド州

  アシェル州   イッサカル州   ゼブルン州   ベニヤミン州   エフライム州   マナセ州

 の12の州に区分されている。

 公家衆が藩主の立ち位置で、10人長選挙と師弟人脈によって行政が行われている。

 10人長制と師弟人脈の関係は、例えば、10人が適正年齢合格証を見せ合って、2、3人を落とし、

 歴史観とか、価値観とか、人柄とか、師弟人脈の繋がり、出自とか、石票とか、加味しながら1人を選出するのだけど、

 日本と海外地だと、宗教が強い影響を持つことは少ない。

 しかし、イスラエル藩は違う、

 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など宗教が乱立して影響力が強く、

 イスラエル親衛隊の意図が反映しやすいかった。

 むろん、日本人が、そんな居心地の悪い社会に住みたがるわけがないわけで

 イスラエル藩は、国権派と民権派の間で揺れ動き、

 人口流出を防ごうと、度々 民権派に妥協を強いられた。 

 

 

 

 

 

 

  

 

 03月

 22藩・海外地1000万人長区画で、人型カラクリの地下生産工場が建設され始めていた。

 一定の規格さえ守れば、自由に製造できるのだから、その気になるし、私兵・愛人の意味合いも強かった。

 見通しとしては、年間1000個の人口頭脳を製造でき、人型カラクリは、50体ほどになりそうだった。

 

 人型カラクリに対する考え方は、多様で、敵が武器を持っていないのなら130〜150cm級でも勝てる。

 しかし、銃砲刀を持っていたら、防御としての厚みが必要になり、重量が嵩むと、消費が大きくなる、

 パラジウムと水素燃料と、ロータリーエンジンも数が増え、160〜180cm級になるらしい、

 無駄な争いを避けるなら160〜180cmは、必要かもしれない。

 130〜150cm級は、工作員として使い勝手がいい。

 人工筋肉を強化したり、人工筋肉の伸縮を速くすれば、済む話でもある。

 とはいえ、耐久性、精度、速度、パワー、低燃費のバランスを備えた新型は、そうそう発明されない。

 そうそう、軍機だった人型カラクリだったけど、試験的に警察にも導入され始めた。

 先行して導入すれば、それだけ早くデーターを揃えられるからね。

 しかし、予想よりも日本の科学技術が進んでる。

 バラマキによる下剋上で新興企業が新機軸を創出しているせいか。

 それとも、総人口が大きくて、科学技術の進捗が早くなっているだけなのか。

 

 

 

 人型カラクリ同士が、剣術をやってる。

 日本刀が見えないほど速いし、パキパキ折れ曲がるし、折れる。

 力が強いので、長さ200〜300mm級の大太刀でも行けそう。

 いや、ツーハンデッドソード(両手剣)でも大丈夫かもしれない。

 でも、大きくて重いと重心が変わるだろうし、不便だし、不利になことがあるしな。

 

 

 

 今日は、防空訓練の日

 サイレンが鳴ると、100人長と、10人長が誘導する方向に歩いていく、

 やれやれ、

 半島に清国空軍が配備されてると、こういうこともしないと行けなくなるんだな。

 子供たちは、避難場所で、配ってもらえる飴玉が楽しみなのか、嬉しそうだ。

 そういえば、むかしは、おれも台風が来るとワクワクしたっけ、

 清国空軍が本気で、日本を爆撃しに来るかは、微妙だけど、

 日清戦争をさせたがってる軍需の子飼いがいるもの事実だ。

 連中は、何かと、清国を非難を繰り返して、清朝を逆撫でしている感じ、

 

 

 

 

  

 

 04月

 戦場の映像が電映や阿頼耶識を通じて世界中に拡散される。

 生々しい血みどろに、世界中で厭戦気運が強くなる。

 しかし、ベルギーは、ドル箱コンゴを失いたがらず、傭兵部隊を送り込み続けている。

 特に清国人、経国人、朝鮮人の傭兵は多い。

 黄色人と黒人の交戦が目立つ、

 肝心のコンゴ独立勢力は、バントゥー系、スーダン系、ナイル系の黒人で

 コンゴ人、ルバ人、モンゴ人が大半を占めるが、分断工作され、部族単位でバラバラに戦っている。

 コンゴで最大勢力は、ザンジバル軍で、

 義勇軍は、オーマン兵と、エチオピア兵、マダガスカル兵が多いようだ。

 場所柄、ベトナム戦争的な雰囲気だけど、

 コンゴは、資源が馬鹿でかいので、各国とも兵器・武器弾薬を流している。

 「日本は、干渉しないのですか?」

 アメリカの要人に声を掛けられた。

 「核兵器でも使ってくれたら、介入しやすいかもしれませんね」

 「まさか。そんなモノを使うほど、愚かじゃないでしょう」

 「だといいですがね」

 「「あははははは・・・」」

 

 

 

 

 

 人工知能の生産より、高層建築の建設が多い。

 それは、人工知能が都市建設に近い財政投資で、

 且つ、基幹産業というより安全保障上の存在で、見返りが不確定であるからに他ならない。

 しかし、一定の定数に達すれば、

 他国に追随させない政治力・経済力・産業力・軍事力・外交力に繋がると信じられた。

 桜が満開で、気分がいい。

 要人が集まって、弁当を広げ、ビールを飲んでるけど・・・・

 “まぁ なんていうか、ただの、物真似なのに、上手くない”

 “下手でもないよ”

 “台本は、プロ漫才師が作ったんだっけ?”

 “文章がプロでも、呼吸、間合い、素振り、表情は、別だからな”

 “微妙だ”

 “これじゃ 一般向けに使えねぇ”

 “まったく、御笑いのセンスのねぇ 人工知能だぜ”

 人型カラクリ2体が即興漫才をやっていた。

 ていうか、ボキャブラリーを増やすことと、

 あと、アドリブ的な何かが欲しいね。

 

 

 

 

  

 

 05月

 電映で外国の映像をたまに流すときがある、

 金融封建社会系帝国主義国家が、

 ていうか、資本乞食主義系右翼と、共産奴隷主義系左翼のことなんだけど、

 国民に金融を委ねる金融民主資本社会系国家は共産主義だと、発狂しながら誹謗中傷している。

 国家産業の生殺与奪権を中央銀行に奪われた世襲天下り封建社会の何がいいのかわからないが、

 金融支配のうまみが美味し過ぎるのだろう。

 未来の日本だと、戦争に負け、属国にされ、民族浄化でジェノサイドされてる状態でさえ、

 金融と財政の世襲天下り利権が手放せないのだから、気がふれているとしか思えないが、

 奴隷と乞食によって、地位と権力が保たれているという古くからある思想は、今後も続くだろねぇ

 

 

 

 

 

 どこかの病院

 人間の脳を載せた人造人間が歩いた。

 人工知能で補完しているので、

 脳が眠っても、人間のように歩き、人間のように走って、人間のように生活する。

 そして、人間以上の100倍以上の力を有していた。

  “小石川くん。大丈夫かね”

  “どうなったんですか?”

  “残念だが。君は事故で、体を失った”

  “そうですか・・・・ あの時の・・・・ じゃ この体は・・・”

  “協約に署名しただろう”

  “・・・あれは、冗談と思ってました”

  “冗談にしても良かったが、問題がクリアされたので、君が最初の被験者だ”

  “そうですか”

  “わたしは、担当の門脇陽一で、こちらが、君をサポートする吉住祥子くんだ”

  “よろしくお願いします”

  “どうかね。新しい体は?” 

  “素晴らしいですよ。まるで、人間のようだ”

  “脳の視覚域の映像が、見えるかね?”

  “はい。全周がわかるというか。戦闘機のヘルメットに似てます”

  “歪んでない?”

  “なんて言っていいのか・・・ 見たいものは、よく見えます”

  “そうでないものは・・・隅に追いやられて、判別できなくなるようです”

  “その方が脳の負担が小さいらしい”

  “そうですか”

  “小石川君。ああ・・・ 見えるはずだが・・・ 水素吸蔵残像は?”

  “わかります”

  “水素吸蔵は、1日に1回だが、力を使い過ぎると、3回くらいに増えるから注意してくれ”

  “力作業は、得意ですよ”

  “電探と、赤外線感知は?”

  “あ・・・ はい、わかります”

  “通信網と連結できると思うが”

  “で、できますね。電話・電音・電映。阿頼耶識が見えますよ。こりゃ凄い”

  “データーを取るので、いろいろやってもらうことにするよ。その方が君も、気がまぎれるだろう”

  “疲れたら、電子頭脳に任せるのもいい、24時間疲れ知らずで動くこともできる”

  “勤務時間無制限ですか”

  “いや、眠らず遊べるといっただけで。戦時にでもならない限り、勤務時間以外まで拘束せんよ”

  “あの・・・家族は?”

  “葬式は、2日前に済んだ”

  “そうですか・・・・”

  “残念だが。家族との関係は、協定に従ってもらうよ”

  “わかりました”

 サイボーグ戦士の誕生か・・・・

 

 

 

 

  

 

 06月

 人造人間の誕生は、富裕層に注目を浴びた。

 人工進化系の一つで、未来の可能性でもあるからだ。

 「彼はどうしている?」

 「小石川君は、社宅で、友人と、卓球しているよ」

 「反乱が起きる可能性は、どのくらいだろうか」

 「さぁ 余暇は与えてるし、趣味もある。新しい人生を楽しんでる節もある」

 「仕事も収入もあるのだから、悪くなかろう」

 「常人の数十倍の力を発揮できるのに、卓球か」

 「卓球は、無駄に力を発揮しても、勝てないだろう」

 「まぁ そりゃそうだ」

 「というより、日本の主軸が国防でなく。資源漁りと、衣食住と雇用なのだから、詰まらんよ」

 「平和を満喫できていいじゃないですか」

 「ふっ」

 

 

 

 

 扶桑

 緑っぽいオーロラの幕が空を飾っている。

 太陽風が、酸素と衝突すると、赤と緑になりやすく、窒素に衝突すると、赤と青になりやすい。

 高度が下がると、紫やピンク色になりやすい。

 化学的な反応はともかくとして、幻想的な自然として感じるわけで、オーロラの下、露瀬家の墓にロゼ・ティーナが眠っている。

 露瀬家の墓は、時司家の墓の近くで、やや低い位置にある。

 主家と、愛人の家の墓の関係だと、一般的な形なのかもしれない。

 この手の感覚は、江戸時代に近くて淡泊かもね。

 露瀬家と、時司家は、異母兄弟だけど、上手くやってる気がする。

 たぶん、時司家は政商。露瀬家は民商で分担しているのと、創巧社の事業が大きく、二家族では把握できないこともあるようだ。

 おれが死ぬ前に財産をほとんど分けてしまったからだろう。

 露瀬家の家紋は、時司の家紋と同じ飛行機をデフォルメしたものを使っている。

 異業種に食指を伸ばしても、家の基本になる産業は、カモメ機なんだろうね。

 

 

 そうそう、時司家は、蛇型カラクリを開発しているらしい。

 敵地に投下して、敵兵士を殺傷するらしいけど、蛇って構造的に省エネらしく、作戦能力が高い。

 敵味方の判断を言語と軍服に頼るのは、どうかと思うけど。

 カメラも付いているので、特定の人物も狙えるらしい。

 人工筋肉のばねで、50mほど跳ぶので、壁とか、屋根くらい跳び越えられるし、

 成層圏からの滑空や海中移動もできるらしい。

 まぁ 暗殺用だよね。

 マジで怖いわ。

 ていうか、おれ、生理的に蛇嫌いだし、永遠に封印して欲しいね。

 

 

 

 

  

 

 07月

 たまたまかもしれないけど、扶桑で、人造人間2号が誕生した。

 仮×ライダー並みの力を持ってるけど変身しない。

 脳を生かすのは、血液中の酸素と、DNAとRNAの関係性で、送受信機能が上手くいかないと、

 刺激がないのか、必要な物質が足りないのか、脳が狂ったり死ぬ。

 その調整のために人工知能の一部が使われているわけで、脳を生かすのは、金次第でもあるかな。

 

 

 

 扶桑で一番割り良く儲ける方法があって、

 冬は、地下街を広げ、

 夏は、集中して高層建築を積み上げていく、

 まぁ おれは、薄霧の中で、釣りかな。

 久しぶりの釣り、2m級オヒョウを釣ったよ。

 お化けカレイとも言われてる。

 700〜800人分で、未来のお金だと25万円くらい。

 冬は工場。

 夏は釣りで生計を立てる人間もたまにいる。

 ていうか、夏は、外に出るのが利口かな。

 

 

 

 300m級高層建築なると縦幅横幅が広いと、テーブルマウンテンのように見える。

 たぶん、むかしの人が見たら難攻不落と思うかもしれない。

 風力と、地熱スターリング発電と、瀝青炭・準瀝青炭・褐炭の火力が大きく、フロア照明は明るかった。

 扶桑は、夏に集中して建設するけど、冬は、建設の半分が停止する。

 それでも、財政投資の負担が大きく、投資すると、割得くした。

 扶桑投資は、税制上も得だし、何より利権も増えた。

 新築のフロアは広いけど、地租税がかかるのは、相当先の話しだし、

 富裕層は、石票が欲しいだけなので、

 地租税がかかる前に貸してる農家に売ってしまうことが多いし、楽隠居で、自分でやることもあるらしい。

 屋上と地上の間が広いので、ヘリポートがある。

 そして、幕藩連合が、展開訓練で、軍用ヘリを駐機させることがあるらしい。

 極秘裏のときもあるし、ヘリ祭で、地域住人にサービスすることもある。

 今回は、お祭りで、屋上で軍用食を振る舞っている。

 

 

 22式汎用ヘリ (管制、対空哨戒、対地哨戒、対潜哨戒、輸送、攻撃、医療)

   自重5600kg/離陸重量14000kg

   全長17m×(プロペラ直径17m)翼長6m×全高5m

   二重反転ターボシャフトエンジン2500馬力2基  540km/h  3000km

   25mm機関砲

   乗員2 + ハードポイント500kg×8基(4000kg)  8人

 

 22式攻撃ヘリ 風魔

   自重6000kg/14000kg

   全長13m×(プロペラ直径14m)×全高5m

   二重反転ターボシャフトエンジン2500馬力2基  580km/h  1500km

   25mm機関砲

   乗員2人 + ハードポイント500kg8基(4000kg)

 

 日本幕藩連合が、ヘリ部隊を核戦争後の展開部隊と、位置付けたのは、制圧戦を考えていない。

 という表向きの理由がないと、量産しにくかったかもしれない。

 まぁ 核戦争後も、空中と、地下に軍事力を展開させられるのなら、地上の回復も早いわけだし、

 高層建築の一角にヘリポートと格納施設を建設させやすいのかもしれない。

 

 多目的ヘリと攻撃ヘリは、人工知能を有し、

 炭素甲網と、炭素甲線で作られ、ジェット排気で高速を発揮した。

 これが輸出用になると、人工知能でなく、古臭いICを使うので性能が低下する。

 ケブラ・アルミ・不燃マグネシウム製になるので重量が嵩む、

 それでも、この時代だと、優良ヘリで、たくさん売れる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 08月

 22藩・1000万人長区画は、軍事機密を共有する。

 なので、どこに行っても基礎研究施設が存在し、最近の開発状況がわかる。

 生物研究所

 動物実験でクローン細胞を繰り返すと、細胞劣化していくことが知られる。

 人は一人では生きていけない、と言えなくもない、

 ぶっちゃけ、若返るのに、自分の死体が欲しいし、

 若返った自分の居場所を作りたいわけ、

 どうしたものかって、感じ

 

 

 

 扶桑には、人間が住まない高層建築が一定の間隔で建設されている。

 棲んでいるのは、鶏、豚、羊、牛などの家畜で、

 家畜は、水と餌を求めて、幅の広い全周の螺旋階段を登っていく、

 ちなみに牛だと、1ヘクタール当たり3〜5頭なので、高級牛志向らしい。

 安上がりな高層建築であるけど、将来的には、建設費を回収できるので、安くなるらしい。

 あと、夏になると、建物の中にいた家畜が、一斉に外で生活するので、熊による被害が増える。

 それでも、家畜を外に出すのは、肉が美味しくなるかららしい。

 

 

 

 日本に帰還する。

 その前に、時司家と露瀬家の近況を見てきた。

 子供は、老けたし。孫の結婚ラッシュと、曾孫の出産ラッシュで、大変そう。

 でも、下手に接触すると、闇閨閥だし、子分になれみたいに言われそうなので、こっそり見る感じ、

 まったく、親の気持ち子知らずだぜ、

 やっぱし、日本の夏より、扶桑の夏が過ごしやすい、

 しかし、扶桑の地下街は、世界一だわ

 

 

 

 

  

 

 09月

 陸奥藩の石高が、将軍職を左右していた時代は、遠い昔、

 いまは、瑞樹、フィリピン、ナミビアの石票がデカくなってる。

 そして、藩主と旧藩主も海外地に農業用高層建築を建設し、権力掌握している。

 もっとも、次の将軍は、綾波家になりそうだと、もっぱらの噂だ。

 そうそう、人型カラクリの生産が軌道に乗ると、農業用高層建築の建設が増えるという見方が強まっている。

 

 

 人工知能は幕藩連合所有のレンタル・登録制で、

 人型カラクリと、人造人間は、各藩・各1000万人長区画の登録制だった。

 人工知能を電話線に繋ぐと自動的に、データーリンクされることになっている。

 そして、特定の階層の専用回線と、暗証番号を入力すると、人工知能と、人型カラクリと、人造人間の数と位置がわかる。

 早い話し、人工知能に戦艦並みの金を掛けてるので、

 それだけ、管理が厳しいってこと、

 ちなみに人工知能に、戦艦並みの建造費を掛けたとしても、維持費は、僅かな電力しか必要としないし、

 耐久性は、相当長いので、長い目で見ると得になりそうだ。

 

 

 

 利権が大きくなるほど、日本への資源輸出より、現地権力者とウィンウィン利権で私腹を肥やし始める。

 人工知能は、国外に持ち出せない、

 それどころか、量産しているシリコン系賢者の石(LSI)でさえ、軍事機密で国外に持ち出せない、

 国外コネクションは、中央電子計算機として使うよりなく、

 国外に電子計算機を持ち出すことができても初期のICだった。

 国外コネクション会議

 マダガスカルの工場が全周スクリーンに映し出されている。

 「世界中からマダガスカルに買い集めたオンボロ戦闘機、オンボロ戦車を改造し、使えるようにしているわけか」

 「日本は、表向き参戦していないけど、コンゴの資源利権は欲しい」

 「そうなると、ある程度の協力はしないとね」

 「マダガスカル人も、意外に技術力があるもんだ」

 「日本人技術者が設計したモノをいわれた通り、作ってるだけだよ」

 「それでも、いずれは、技術が身に付くだろうし、想像力が付くよ」

 「それは仕方がない、というより、日本の下請け工場になるかもね」

 「日本の下請け工場を殺して?」

 「まさか。バラマキしてる日本産業を殺せるわけがない」

 「それは、それとして、古い兵器でも戦えるのかね」

 「ICを使って、底上げしているよ」

 「アメリカじゃまだ高価なものだからな」

 「同じ程度のモノでも、部隊単位でなく、兵器単位で使われると苦戦するはずだ」

 

 

 

 

 

 孤児院に行くと、おれと同じように私兵を欲しがる資本家が出入りしている。

 人材不足で大企業が傾くことがあるし、

 雇用優先で、要求するハードルがどんどん下がっているのも事実かね。

 当然、ハードルが下がると努力目標が低くなるので うぅぅぅ・・・ ってなる

 なんていうか、人型カラクリの需要が大きくなるわけだわ。

 

 

 

 

 

 

  

 

 10月

 瑞樹で、3体目の人造人間が誕生したらしい。

 人造人間は、自分の脳と、人工知能の両方で世界を感じている。

 その世界がどんなものなのかは、人造人間しかわからない。

 反乱を起こす可能性は常にあるので、

 いざという時、人工知能で帰属させることはできるのだけど、

 いまのところ、安定しているように思える。

 ただ、リミッターを解除していくと、常人の数百倍から数万倍の能力を発揮するわけで、

 社会的に、どう扱っていいものか、困るわけだ。

 もっとも、当人は、周りより、戸惑っているのだけどね。

 

 

 

 

 

  

 

 11月

 某病院

 人工知能に個体識別用DNAを保存し、治療に利用する。

 万能細胞の培養に成功すれば、肢体を失っても再生することができそうだった。

 また、優良遺伝子に改竄していくこともできそうだし、強化人間の遺伝子も模索できそうだった。

 もっとも、それを人間と認定していいものかというと、別の話しになるけどね。

 そうそう、人工知能で脳死の人間を動かしたらしいけど、血色がいいし、まるで生きてるみたいで、

 政治家みたいに普通に動いて話してたし (笑

 あと、火事場の馬鹿力を発揮させることもできた。

 しかし、幾ら人材不足でもゾンビ産業は流石にヤバいというか、洒落にならなかったので、中止が決まった。

 

 

 

 人型カラクリは、軍部から警察、建設、農業など、多様な仕事をこなし、中央電子計算機にデーターを蓄積させていた。

 形として覚えた言動は、次第に計算式になって、処理工程を短縮させ加速させている。

 日常生活で、日本と変わらない動きができるようになれば、要職に配置していくことになりそう。

 命令がなければ、人に危害を加えられないよう設定はしてるけど、

 自衛の範囲は、日本文明圏、日本歴史圏、日本民族圏といった大枠から始まって、

 所有者との契約と、利害関係者といったレンタル規約になっているかな。

 人工知能でなく、量産型LSIで紐付きだと、売り買いじゃなく、売買契約になるらしいけど、

 

  

 

 

 12月

 宝ヶ池 国会議事堂

 地下幕藩連合司令室

 コンゴ戦争のシミュレーションが行われている。

 ベルギー領コンゴと、ザンジバルの戦争なのだけど、

 規模がデカいのは、この際だから使用期限の近い武器弾薬を消費しようという各国の利害と、

 ついでに戦訓と新兵器の運用試験も欲しいと、各国軍の思惑も働いて、必然的に規模がデカくなってきている。

 たぶん、ベルギーとザンジバルは、コンゴ資源を売買しないと、戦費が支払えず、財政破綻するんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

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 おれ、 綾波 源司(あやなみ げんじ)  ⇒⇒⇒  時司史朗(ときつかさ しろう)

 露瀬 統司(61)  露瀬 千夏(59)  露瀬 陽介(56)

 智子(77歳)  時司 頼経(58)  直衛(56)  美智(54)  雪妃(52)

 

 時司史朗(ときつかさ しろう)  ⇒⇒⇒  霧島 高雄 (きりしま たかお : 38歳)

 

 霧島高雄(38)  香織(27)   翔太(9) 慶太(9)  雅(5)  伸治(3)

 

  

 

 史実    9615万人

 戦記    428万0358ku    6億4249万人

   日本  46万6088ku     1億8187万人

   瑞樹  92万5915ku     1億8749万人

   扶桑  171万7854ku     2442万人

   フィリピン 29万9404ku    1億3103万人

   ナミビア・インド洋諸島・イスラエル藩 86万1259ku   1億3002万人

      スペイン・ポルトガル国境 カディス 200ku

      ベネゼエラ トルトゥガ島 156ku

      コロンビア・ペルー・ブラジル国境 レティシア4500ku

      ボリビア・パラグアイ・アルゼンチン国境 ピルコマヨ4500ku

      ウルグアイ バラ・デル・シュイ 100ku

      メキシコ・グアテマラ国境スチアテ港 200ku

      チリ ファン・フェルナンデス諸島 182ku

    オスマン帝国領バルカン北部自治区100000ku

    オスマン帝国領コーカサス北部自治区156000ku

 

 

 

 

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第112話 1962年 『他人の不幸は蜜の味』
第113話 1963年 『式神ゴーレムの世界』
第114話 1964年 『ミクロ経済で勝って。マクロ経済で負ける』