月夜裏 野々香 小説の部屋

    

錬成系 維新戦記 『1kg級魔法使いで』

 

  

  

 第119話 1969年 『不戦勝の帝国』

 

 ユダヤ暦5729年  皇紀2629年   大正16年

 第123代 大正天皇(40)   第20代将軍 綾波 静馬(25)

 

  

 日本を成長させようとすると、

 在日右翼が利権保守に加担して経済を集約させて戦争経済へ持って行こうとするし、

 それに抵抗しようとすると、

 在日左翼が人権革命に加担して反政府運動を展開し共産化へ持って行こうとする。

 そうは、させじと抵抗しようとすると、

 在日右翼と、在日左翼が結託して発狂したように棒倒ししてくるわけで、

 おれ、棒が倒れないよう14歳以上の男子にバラマキを続けて、社会資本を安定させようとしているのだけど、

 利権になりにくいからと、バラマキを細分化して私腹を肥やそうという官吏が湧いて出てくる。

 いやいや、まったく、

 誰かが、聖域を作ろうとするたびに、国家基盤が傾いて軋みを上げてるのがわかるのだけど、

 まぁ なんていうか、未来の日本より正常だと思うね。

 ちなみに、この世界の日本にも、いるんだよね。

 田×角栄みたいな建設族が、

 いや、土木建設は、いいんだけど、バラマキ分をとるなよ。格差が広がると足元を掬われるぜ (笑

 

 

 

 それはそれとして、

 安政以前のエリートは、血筋と、武家諸法度で保障されていたけど、

 安政以後のエリートは、師弟人脈と、適正年齢試験合格高位になる。

 武家諸法度が現代社会で通用せず、

 多少 改善されたとしても、老害とか、弊害にしかならないことを思えば、

 為政者の思惑で教科書の指針が定まることの怖さがあるかもしれない。

 もっとも、武家・公家衆の閨閥とか、

 10人長制とか、資本家とか、別ルートでの成功もあるわけで、飯の種は、江戸時代より複雑で多いかもしれない。

 まぁ それはそれとして、日本の権力と、政策を決定付けるのは、

 幕藩連合議会の藩主でもなければ、1000万・100万人長でもなく、石票の合計比ってことかな。

 もっとも、最近は、人工知能が安全保障の源泉となりつつあるし、

 同時に人工知能の私物化による閨閥の世襲化も暗躍している。

 もちろん、そんな世界は、望まないわけで、人工知能の国有化は、選択の余地はないのだけど、

 法的な公平を期す要職に人型カラクリが進出するのは、止めようもないけど、

 人工知能で出生、血統を調べるとか、死因を調べるとか、

 公文書・私文書の荒探しをされると、困るよな。まじで!

 

 

 

 

 01月

 大晦日・元旦は、神頼み、

 なにが神頼みかというと、子作りと、母親の出産死 (笑

 ぶっちゃけ、数撃てば当たる。

 母親に死んでもらわないと、おれの若返りが上手くいかないし、孤児で薄幸そうな少女を探して手当たり次第かな。

 ていうか、このために貯蓄してきました的な。

 

  

 

 教室で棒術を教えてる。

 結構、上手いぜ、

 ていうか、元々の素養で、三代かけてようやく達人になれた凡人って感じ、

 なんていうか、棒は、刃がないから気分的に楽なんだよね。

 それでいて、炭素甲網を丸めて接着してるので、相手が日本刀でも怖くないし、

 殺すのも、捻じ伏せるのも強弱で、自由自在なのがいい。

 でも、実用性が高いのは、着流しの袖に隠せる炭扇かな。

 炭扇を使った護身術は、お金持ちの師弟ほど学ぶから需要がある。

 そうそう、おれの子供たち 翔太(15) 慶太(15)  雅(11)  伸治(9) も鍛錬中

 あと、綾波家の曾々孫、曾々々孫もいる。

 おれも炭扇は、教わる側かな。

 相手が棒を持ってたら、まず勝てないけど、相手が素手とか、日本刀くらいだったら、何とかなる気がするね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 02月

 11番目の宇宙ロケットが打ち上げられ、

 高度500kmの宇宙基地と連結した。

 3520t級秋月型宇宙 全長52m×直径30m×11基 基地

 1列7基なので、あと、3基で、2列目が完成する、

 いまのところ運行に支障がないようだ。

 

 

 

 飛脚大会

 球技人口が増えるにしたがって、武術で徒走が重視されるようになった。

 まぁ 足腰あっての健康だしね。

 強化人間調整の裏舞台でもある。

 人工知能は、脳神経身体管制・情報統制をするわけで、人工知能が支配するナノマシンは、生体補整もできた。

 ちなみに大会で勝てそうでも15位以下なるよう契約を結んでる。

 「あの娘が、被験者?」

 「ええ、陸奥藩の姫君で14歳だそうです」

 「23〜25歳以下の成長期の子供に使うのは、初めてだな」

 「実験の要素は、強いですね」

 「よく親が許可したものだ」

 「死ぬか生きるかの瀬戸際なら、万馬券に賭けてみたくなるんじゃないの」

 「それで、成功したわけか」

 「新陳代謝が早過ぎるからな、いまは、問題なくても、成功とは限らないだろう」

 「だよねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 03月

 幕藩連合の日本は 善 でも 悪 でもない。

 そもそも、清濁混在の国家に 善 も 悪 もないのだけどね、

 もし、国家行政で 悪 が存在するとしたら、少数の特定の利権のために、大多数の国民を不幸に陥れることかもしれない。

 逆に言うと、大多数の国民の利益を庇護する側が 善 と言える、

 そんなわけで、幕藩連合は、中央集権を取らず、民権派を主とし、国権派を従とした国政を作り出している。

 結果的に、バラマキ型金融は、乗数的に増加する配当と、累積的に増加する建造物の維持費を補ってるわけだけど、

 社会資本の多くが衣食住と雇用に流れ、地租税で集めた泡銭が国家財政を支えている。

 

 

 

 

 

 

 04月

 12番目の宇宙ロケットが打ち上げられ、高度500kmの宇宙基地と連結した。

 3820t級秋月型宇宙 全長52m×直径30m×12基 基地が完成する。

 

  

 

 コンゴ戦争で得をしたのは、エジプト、オーマン、エチオピアかもしれない。

 それまでコンゴに流れていたお金が、3か国に流れたからで、

 実のところ、折り合いが付けば、資源と交換に高層建築を建設するので、

 欧米列強にしたら植民地にしようとしていた後進国が、大都市を形成し抵抗力を増してしまい。

 どうやって侵略して植民地にしたらいいのかと、苦慮することになる。

 そのテストケースが東南アジア戦争と、コンゴ戦争なのかもしれないけど、

 自国将兵をなるべく使わず、武器弾薬を売って、清国、経国、チワン国の傭兵を使うのが主流なのかもしれない。

 なんにしても、その国の利権を支援し、甘い汁を吸いながら、貧富、地域、言語、人種、宗教などの格差を広げさせ、

 強欲で傲慢な右翼と、怒り悲しむ左翼に分断しつつ憎み合わせ、

 資金・武器を渡して殺し合わせ、

 戦争か、革命に追い込めばいいわけで、連中の手口は、どこの国に対してもパターン化している。

 そんなわけで、そんな手口に至らない予防仕様を構築しようとすると、連中に嫌われる。

 まぁ たぶん、裏切り者の次に、標的にされやすい、困ったものだ。

 ちなみに次の戦争は、どこなのか

 社会の格差、犯罪、テロ、暴動などで、だいたい、推し量れるわけで

 なんていうか、次は、たぶん・・・・

 

 

 

 

 定食屋で投資仲間たちと食事をしている。

 安くもないし高くもないが、価格の割に量が多く美味しい。

 仲間と言っても、未来を作るとか、何かを残すなら掛け捨てでもいいと思ってる連中で、新自由主義的な金、金、金していない。

 電映

 ナミビアは、日本の基幹産業を移籍したことで、日本、瑞樹と並ぶ産業規模を誇り、

 生産力は、北アメリカ大陸と、欧州大陸と並ぶ、

 コンゴ戦争は、アフリカ大陸鉄道を不安定にさせ、

 ナミビア交通は、少しばかり不自由になり、コンゴ投資の回収が滞ったけど、

 ナミビア産業は、右上がりの成長を続けている。

 1000万人長区画は、北・中央・南の3つがあって、

 100万人長区画、10万人長区画、1万人長区画が段階的にシフトしつつ、4つ目の1000万人長区画の準備をしているらしい。

 高さより、縦幅・横幅が長い高層建築が並んでいて、欧米列強よりはるかに巨大な建造で、それ一つが一つの都市だった。

 建物の各階層に森林花草が植えられ、穀倉地帯を作っていて、自給自足どころか、農作物を輸出していた。

 そんなナミビアで、800m級高層建築を建設している。

 最新型の設備で、太陽光熱発電で、水素を作って、頂上付近で、酸素と結合させて水にするらしく、

 地租税で有利で、建材と維持費で優れているせいか、建設投資と、石票の売買が行われている。

 「800m級高層建築か。どんな暮らしなんだろうな」

 「農業フロアが多いようですよ」

 「農業自給率が高い方が移民しやすいだろうからね」

 「最近は、宇宙に目が行きやすいけど」

 「宇宙にロケットを打ち上げるには、日本に地力がないと」

 「地力のほとんどが、人工知能に取られてるしな」

 「いつまで、人工知能の手工業生産が続くのやら」

 「マクロ工作は得意でも、機械力だけで、ナノ工作をやろうとすると、手間取るらしい」

 「まだ、器用な人間に作らせる方が早いらしいよ」

 「気とか、念力的なもの関係してるって、本当なのかね」

 「さあ、その辺は、わからないけど、機械の力で、全部やられたら、人間の尊厳がなくなるよ」

 「そりゃそうだけどね」

 「月開発は、いつになるかな」

 「1980年代に建設を開始する気らしいけど」

 「そうか。行きたいな。月」

 「人間が行くのは、居住区画を建設した1990年代になるよ」

 「仮に月に展望台を建設するとしても、厚さ1mのガラスに囲まれて、月面を眺めることになる」

 「それ、外の景色が見えるの?」

 「見えるんじゃないの」

 「窮屈だな」

 「炭素甲網や強化ガラスだと、薄くなるんじゃないのか?」

 「開発してるけど、どのみち、外は真空に近いから、重みで蓋をしなきゃならないだろう」

 「そうだった」

 「何にしても巨大な遠心分離機を設置して人工重力を作らないと、いろいろヤバくなるよ」

 「計画してるのは、床を斜めにして、駒のように回転させて1Gを作る方法だけど」

 「建設まで、どれほどかかるやら」

 「微振動は、問題?」

 「宇宙船より、月面の方が正常化しやすいけど、気持ちのいいものじゃないよ」

 「まぁ 人型カラクリに頑張ってもらうか」

 人工知能は、国家全体の管理・運営・行政・建造物・生産・交通・流通・10人長選挙の管理を包括するようになりつつある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 05月

 家庭ビデオの生産を開始した。

 史実より早いけど、

 この世界で使われている映画フィルムが36mmだったので、家庭フィルム10mmと呼ばれ規格化させた。

 日本が量産を開始すると、生産力で勝てない外国も横並びする。

 素人でも映像作品を撮れるようになると、阿頼耶識に自作映像が公開され始める。

 軍機でナノ微細加工を作ってる業者がいるかと思えば、原始的なテープも製造してたりする。

 将来、賢者の石に統合されてしまうのだけど、

 ナノ微細加工は、安全保障上の財政で製造してるので完全赤字だから、

 とりあえず、輸出利益を上げて、海外利権を増やしたいって感じかな。

 

 

 

 葵祭を見物しながら、着流しで街を歩いていると、

 155cmほどの警察官が175cmと170cmほどの大男2人を取り押さえていた。

 喧嘩の仲裁らしいが知ってる人間にしたら、9割方人型カラクリなのだけど、

 内心、ヒヤヒヤだ。

 

 

 

 “日本人は、働き過ぎ” “過労死”

 そんな論調が展開され、記事にされる。

 数少ない事例の過労死を針小棒大にするだけで、世論を動かそうとしているわけなのだけど、

 例えば一度の記事で10万文だとしたら、1日20記事を365日で、10年だとしたら73億文になる。

 普通の人間からしたら10年で73億文は、常軌を逸した紙幣かもしれないけど、

 資源メジャーだと、世論を形成する方が安上がりになるし、

 記者は、毎日1〜2記事をチョロっと書いて、1年365日で、3650〜7300万文が貰える。

 普通の人間が一か月働いてもそんな賃金や報酬にならないわけで、売国は、とっても、ボロイ商売になるね。

 しかし、日本は、電音36回線・電映48回線あるわけで、

 人口7億7949万人のうち、まともに電音・電映を視聴しているのは50パーセント以下で、

 最多視聴率も3パーセントほどにしかならない。

 むしろ、阿頼耶識回線の視聴率が50パーセント越えだった。

 しかし、阿頼耶識はあまりにも広大で、最多閲覧ページでも、0.1パーセント以下でしかなく、

 世論を動かすには、足りない気がする。

 たぶん、まだ、様子見で、それ以上の紙幣が動く可能性はあるね。

 しかし、特高は、こういう世論操作に疎いのか、出世昇級天下りの権謀術数で忙しいのか、

 馬鹿なのか、対抗処置をとる思慮がないのか。

 いま一つカウンター工作が弱い。

 むしろ、イスラエル親衛隊の反撃の方が辛辣で的を得てる気がする。

 もっとも、戦国時代みたいな命を賭けた仕事で切った張ったの時代でもないのだけど、

 市場取りって、それに近い感覚になりやすいし、

 そういう気質が残ってるのかもしれないが、お膳立てがあるわけだし、

 過労死してまで、あるいは、過労死させてまで、働くのはなって気もするね。

 いや、おれも平成気質なんで (笑

 

 

 

 

 

 06月

 強化服型は、着装型と搭乗型にわかれ、

 最初、研究開発生産されたのは、軍用着装型カラクリだった。

 人工知能と人工筋肉で補完させつつも、

 着装者の靭帯を切ってしまいそうな反応速度は、出せないことが明らかになると、

 火器管制とパワーアシストだけになるわけで、開発側の意欲が低下してしまう。

 そして、搭乗型の研究開発に移行していく、

 搭乗型は、人型カラクリを大きくして、中に乗員を搭乗させるのだけど、

 搭乗型カラクリが唯一活用できるとしたら市街戦と山岳戦以外になく、身長6m〜17m以内で計画される。

 こっちも、人工知能の反応速度に付いて行けず、

 また、衝撃を緩和させるため搭乗員を羊水に入れることになると、大型人型カラクリでいいだろう、となり、

 人型カラクリは、大型である必要があるの? となって、搭乗型カラクリの開発も低迷していた。

 

 

 

 13番目の宇宙ロケットが打ち上げられ、高度500kmの宇宙基地と連結した。

 4160t級秋月型宇宙 全長52m×直径30m×13基 基地が完成する。

 宇宙船が日本の国際的地位をどの程度押し上げるのか、

 国によって様々だろうけど、

 これと言って攻撃力はない宇宙船で、戦力になるとしたら、偵察と索敵だろうか。

 

 

 

 アポロ11号が高度300kmに配置され、宇宙基地となる。

 アメリカもいよいよ。

 日本と競争する気なのかもしれない。

 だけど、乗員がロボットの日本と競争しても勝てないと思うけどな。

 

 

 

 07月

 蒸しあっちちの京都から逃れ、加賀藩の避暑地で海水浴している。

 予想していたことだけど、人が多い、

 まったく人口が増えると、こういうことが起こる。

 極東ロシア皇国、樺太、北海道、東北という避暑地と、

 マスメディアとか、阿頼耶識とか、そんな楽しみがなかったら、もっと、海水浴人口が多かったかもしれない。

 ある程度お金持ちになると、各藩の高層建築の建設に関わり、石票と配当を得る。

 旅館の部屋を安く借りれたりの付帯利権もあったりする。

 優越感もあるが、そんな得点を使う機会なんて、あまりなくて、投資を呼び込むための方便に過ぎない。

 まぁ それでも、手近な避暑地だし、観光者が多いようだ。

 

 それはそうと、未来人のおれが、人々の会話を聞いていると、言葉の端箸で、日本語以外の単語が使われる。

 なんというか、違和感がデカい。

 米英外資は、マスメディアを使って、英単語を広めようとしているのに比べ、

 オスマン語 スペイン語 ポルトガル語 アラビア語 トルコ語

 ヒンディー語 ロシア語 アチェ語 タイ語 ベトナム語は、

 現地居住者が草の根で使う単語で、使用者が英語使用者より圧倒的に多く、言語師弟人脈も多い。

 もし、誰かがタイムスリップしてきたとしたら風景だけでなく、人々の会話でも、歴史改変に気付くかもしれない。

 

 

 

 日本・イスラエル藩は、旧来の21藩主が主で。10人長制の1000万人長と100万人長の区画は従になる。

 一般大衆にしたら、石票持ちの藩主様が支配するトップダウン型社会より、

 10人長制が支配するボトムアップ型社会の好都合なのだけど、藩主の子飼いが藩主制を擁護する。

 藩主・石票議決制を残そうと、日本と海外地で重複させる動きも強まっているけど、

 それを望む利権勢力と、望まない利権勢力があって、争っているけど、いまのところ、内戦未満、

 もう少し政経分離しないと、一国一制度は、難しいかもしれない。

 日本は、藩制だけでなく、1000万人長区画が5つあって

 固定は、北の端の樺太と、南の端の鹿児島で、新たに区画が作られるとしたら鹿児島のすぐ北になる。

 加賀藩は、1000万人長区画の境界にあるせいか、ざわついている。

 ざわついてると言っても、

 有力者の一部は、他藩・10人長区画に移動したがらず、

 有力者の一部は、当藩・10人長区画に移動してくるわけだし、

 選挙区の利権絡みの離合集散で、事件や事故が起きたとしても、原因の一部かもしれない。

 海外地の10人長制で1000人の町は、似たような形と、似たような顔ぶれと争いになりやすいのだけど、

 石票・藩主制の社会とかぶると、二重構造の権力基盤で攪拌されやすいらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 08月

 14番目の宇宙ロケットが打ち上げられ、

 高度500kmの宇宙基地と連結した。

 4480t級秋月型宇宙 直径30m×全長52m×14基 基地が完成する。

 ようやく、2列目が完成したわけで、次の打ち上げは、3列目7基になる。

 1基を打ち上げるたびに要塞は、全長26m×8mほどの六角柱の空間を増やせた。

 それは、大半が生命維持のための機器と物資で、人が生きる空間としては小さなものでも、

 14基も連結すると自給に必要な設備も増やせた。

 宇宙監視中継室

 「地球全体が良く見える」

 「潜水艦以外なら、なんでも見えますよ」

 「アメリカ、ソビエト、ドイツの衛星から同じように見えてるとしたら、水上艦なんて、危なくて建造できないな」

 「ほかの国の衛星なら破壊できますよ」

 「ほかの国だって、同じことをするだろう」

 「なるべく早く、他天体に恒久基地を建設したいものです」

 「まぁ そうかもしれないが、それには、人工知能と、機械化を増やさないとな」

 「予算はともかくとして、資源が不足気味なのが足を引っ張っていますよ」

 「いや、肝心の金の流れで、宇宙が投資対象になってないのも問題ですよ」

 「宇宙太陽光発電は、検討してますよ」

 「あと、月の資源開発とか」

 「時間がかかりそうです」

 「国外コネクションが資本と資源で、私腹を肥やして足を引っ張ってるのかもしれませんね」

 「あははは、まさか。全体に占める利権獲得予算は、少ないよ」

 「しかし、一部の国民が、国外の資本家が私腹を肥やしているとわかると地租税は、仕方がないとしても、所得税を渋り始める」

 「そして、高層建築を建設しているから余剰所得が増えても、脱税しやすい所得税を増やしにくい」

 「というより、政府にとやかく言われない、国外コネクションに資本が流れやすくなる」

 「じゃ 所得税でなく、地租税を増やすとか」

 「面積比での地租税と、所得税の格差がな・・・」

 「小さな面積で、それだけ稼いでるのなら努力してるのでは?」

 「生産、サービスの有り方が変わってきているからな」

 「小さな面積で、たくさんの利益を上げられる職業はどうしても生まれるし」

 「大きな面積で、たいして大きな利益をあげられない職業は、どうしても生まれる」

 「マクロ経済統計で、少数精鋭とか。天才とか。そういうミクロ経済な努力を問うてもしょうがない」

 「というか、弊害でしかない」

 「地租税と、所得税の比率を変えなければならないとしたら、変えるべきだと思うね」

 「電話代の配当。大きいですからな。特に、国外は」

 「電話代を増やすのは、良質な阿頼耶識の頁ですし。ある程度の配当は必要ですよ」

 「阿頼耶識の方が、資金力に任せて、電映回線、電音回線の入札をとるより費用対効果が大きいですからね」

 「しかし、まさか、阿頼耶識が主。電音・電映回線が従になるとはね」

 「自動車と、鉄道の関係でしょう。鉄道は地下を走らないと、生き残れない」

 「宇宙の映像で、稼ぐというのは?」

 「まぁ 確かに視聴率が増えてるようですし、有望ではありますが」

 「投資筋は、特権的な間に、市場を押さえたがってますよ」

 「あまり加熱すると、外国資本の打ち上げに金が流れるかもしれないだろう」

 「いまのところ、サターン型、ソユーズ型より、打ち上げの費用対効果がいいですよ」

 「いまのところはな」

 

 

 

 

 電映

 日本製電映・電音は、人工知能が30言語翻訳副音声をやってるので、視聴率が高く、阿頼耶識も上位を独占していた。

 それはそれとして、最近の物語なんだけど、

 欧米資本系のテコ入れ仕様なのか、利己・拝金主義な成功物語が少なくない。

 それでも、主流は、親子・夫婦・家族・師弟・地域との絆

 いわゆる、しがらみ・村社会系物語が多数派を占めている。

 未来の日本の物語とは、少しばかり、趣が違うというか、仕様が違うような気がする。

 なので、まぁ たまに電映漫画とか見てるのだけど、なんていうか、疲れるよね。

 ていうか、バランスを重視しないと・・・・

 

  

 

 

 

 

 09月

 某実験室

 人体クローン培養をしている。

 ほら、あれだ、人間の自然治癒力を利用して万能細胞化させるというST×P細胞ってやつ、

 ST×P細胞の否定は、人間の自然治癒力の否定なんで、そりゃないわ、的な。

 おれの場合、何としても、自分の似の死体を作らないと、いろいろまずくなるからね。

 ちなみに、おれに似た人型カラクリで生きてるように見せかけられるなら、

 いまからでも若返られて、10代前半から人生もう一度って、やれるし・・・・

 

 

 

 炭素甲網・炭素甲線の生産が増えてる。

 日本国内の建造物は、炭素甲網・炭素甲線に置き換えられてるので、恒久性が高い気がする。

 ドーム型の地下演習場に行くと、人型カラクリの動作確認がされている。

 宇宙からの偵察に備えるためで、人工知能と人型カラクリがばれないよう細心の注意が払われてるらしい。

 ちなみに人型カラクリは、第一優先が発覚しないことで。第二が軍機・法律を守ることで。第三が人間らしく、

 そんなわけで、政治家・官僚・資本家より真面目かな。

 でも、そうしないと、人型カラクリに関わった人間が、安心して、眠れないというか、定年退職できないってわけ、

 ちなみに私兵化する方法で、予備記憶装置があって、

 それを使うと、人型カラクリを利用している間の記録を中央電算機にも、他人にも知られないようにできる。

 まぁ 犯罪は、困難かもしれないけど、

 それ以外のプライベートは守れるので、富裕層が投資しやすいし、利用しやすいかな。

 「もう、人間とほとんど変わらない動きができるし」

 「人間以上の動きもできるとなると、人型カラクリ一色になりそうだ」

 「人型カラクリ、人造人間型は、遵法精神が強過ぎて」

 「万が一もありますし、強化服型。強化人間型も、一定数を準備しておきたいですね」

 「まぁ そうかもしれないが、人工知能を使うと同じだよ」

 「それでも、常人より上でしょう」

 「かもしれませんがね」

 「しかし、霧島殿。これだけの秘密があるのに、貿易港を増やすとか、上の馬鹿振りには、呆れてものが言えんよ」

 「それだけ、資源輸入が増えてるということでしょう」

 「積み荷の量は、まだ足りると聞いてるが」

 「オーストラリアとカナダの取引が増えてるし、2割り以上の余剰がないと追加投資が見込めないのでしょう」

 「ふん、安全保障を犠牲にして・・・」

 「犠牲にしないよう地下演習場を作ったのでは?」

 「観光客の視線から逃れるために、地下演習に入るなんて、本末転倒だ」

 「いやいや、地下演習場は、宇宙からの偵察・索敵に備えるためで。第三国際港とは、別ですよ・・・」

 2.5kg級40cm人型カラクリ部隊が疾走していく、

 「最小の人型か」

 「全身ナノ微細加工ですよ。あれで、通常人型カラクリの10倍以上の価格ですから笑えますよ」

 「死んだ後の未来の姿ということもあるからね」

 「人の記憶や思い出を人工知能にいれたとしても、人が死んだことに変わりないんですがね」

 「死後、記憶や思い出を残し、交替でも、小人でも、体が欲しいってことでしょう」

 「どうせなら、人並みの大きさで欲しいのですがね」

 「人口増加率を考えると、仕方がないでしょう」

 「人口が増えすぎて怖いですがね」

 「だから最小の人型なんでしょう」

 「「「「・・・・・」」」」

 「彼らの持つ武器が実戦で役に立つのか不安です」

 「あれで、人を殺せる力はありますし。彼らが乗るヘリ、戦闘機、戦闘機は、製造できますよ・・・」

 トラックの荷台から100kg級2.5m人型カラクリが起き上がると降りた。

 見上げるような高さだが、常人より機敏らしい。

 「迫力はあるが、戦力的に、どうなんだろうねぇ」

 「標準型の人型カラクリの3倍の索敵能力と防弾とパワーがあり」

 「標準型の機動力の半分ほどです」

 「索敵能力が高いのが嬉しいね」

 「敏捷性というか回避能力を差し引くと、微妙な気もします」

 「まぁ 電探は味方の後方支援で使えるかもしれませんが、小型人型カラクリの方が隠密性が高い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 阿頼耶識でコンゴ戦争を見ていると、

 アメリカが攻撃ヘリ コブラ を投入したらしいことが書かれている。

 確認してみると、義勇空軍が20機ほど配備したらしい。

 ベルギー領コンゴ(234万5410ku)で、ザンジバル軍が侵攻しているのは、17万kuに過ぎない。

 それ以外の広大な200万kuは、ベルギー軍と、各国軍事顧問団と、義勇軍が要衝を守り、

 コンゴ独立軍と各国軍事顧問団と義勇軍が要衝を攻撃するという戦場が繰り広げられていた。

 実に賢い戦略だ。

 これが、おれが知ってる旧日本軍なら盛大に最前線に出撃して、疲弊しただろうな。

 いや、笑いごとじゃなくて、

 ソビエト軍将校の口調だと、都市革命でなく、農村革命らしい。

 別にどっちでもいいけど、共産化は面白くない。

 しかし、共産主義者じゃなくても長居したくない土地柄で、前線の兵士たちの評判は、よろしくないらしい。

 暑いわ シャワーを浴びれないわじゃ 傭兵だって泣きたくなるだろう。

 しかし、欧米型学制だと、従順なのか、よく我慢してる気がするね。

 良いのか、悪いか・・・・

 ちなみにマダガスカルの日本語欧米型教育を受けた義勇軍は士気が高いようだ。

 まるで、日清戦争時の日本軍並みの士気だろうか。

 

 

 

 

 10月

 書籍は嵩張る、阿頼耶識だと文章を読んでる気がしないのか、

 阿頼耶識の文字を電子本のディスプレイ・ページ百枚ほどに文字を映す研究が進められている。

 めくる作業があるので、本を読んでる気分だけは得られる。

 とはいえ、電子書籍はデーター保存が不安になる。

 人工知能でさえ、読み書き(RAM)、磁気ディススク(HDD)は、保存が不安視されているからだ。

 その中間で、読み込み(ROM)専用化という発想でナノ微細加工の延長が検討されてるけど

 採算性が悪すぎて、いまのところ考えられない。

 そこで、炭素甲網に炭素甲線で機械語で文章を書き、

 電子本のディスプレイ・ページに文字や絵を映す形式が検討されている。

 これだと紙の本より寿命が長く、多言語変換も音声も可能になりそうだった。

 「上質のハードカバーで漫画を読めるとはね」

 「電子本を市販できないのが、唯一の欠点ですよ」

 「量産型の賢者の石でも軍機ですし、あと30年くらい無理かも」

 

 

 

 

 

 幕藩連合

 いま、人型カタクリと10人長制度をどうするかといった検討がされている。

 病欠や仕事上の都合で、10人長選挙不参加は、少なからずいるのだけど、

 不参加は、不正選挙と同義なのか、かなり五月蠅い。

 実在して身体健康なのに参加しないと行政上問題になるし、

 参加すると、人型カラクリの投票先をどうするか問題で、民主10人長制を破壊しかねない問題となった。

 ちなみに、人型カラクリの方が人を見る目があるし、最大公約数的な利益になる者に投票する。

 仮に人型カラクリが当選しても、理想的な長になるのだけど、

 長は、人間でしょ!

 そんな概念が強いわけで、揉めに揉めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 11月

 数十体の人型カラクリが船に乗って出航していく、

 一体一体に偽の出自と、偽の経歴が準備され、日本側にも証言する人型カラクリがいる周到振り、

 まぁ それだけ、人型カラクリがばれるのが嫌ということかもしれない。

 

 

 

 15番目の宇宙ロケットが打ち上げられ、

 高度500kmの宇宙基地と連結した。

 4800t級秋月型宇宙 直径30m×全長78m×15基 基地が完成する。

 高度500kmの軌道は、1時間34分で地球を一周することから、

 同じ軌道に4基ほど衛星を配置すれば、敵性国家の軍艦、爆撃機を常に把握できた。

 「地球に縛られるより。宇宙開発に行きたいものだ」

 「問題は、月に基地を建設できるか。だけどな」

 「問題は、人工重力を作れるか。の方ですよ」

 「人が居住できるコロニーを建設するだけの質量を宇宙に放り上げるのは至難の業ですよ」

 「先に人型カラクリで月を開発して。月の資源で宇宙開発を行って。人が居住できるコロニーを建設すべきでしょう」

 「いつになるやら」

 「太陽光熱発電は、大きいのでやれなくはないですよ」

 「水は、月の南北両極にあるんだろうな?」

 「小規模産業を興す程度の水はありますよ」

 「問題は、足場をどう建設するかだ」

 「溶岩洞が一番、有望らしいけど」

 「来年の月面着陸は、蛇型カラクリ3体を降ろすそうだけど」

 「探査は、蛇型カラクリがいいというのは、本当なんだろうか」

 「構造が単純で、どこにでも入り込めるのは利点だよ」

 

 

 

 

 12月

 小雪の降る高層建築群の合間を縫うようにヘリ部隊が飛行していく、

 事前に飛行機動演習があることが広報されていて、見物人が多かった。

 低速なヘリが戦場を生き残るには、遮蔽物に隠れながらの飛行が重要で、

 市街戦・山岳戦で重要な戦力になっている。

 人工知能のほかにも、細かな改良がおこなわれ、Ka52に似たシルエットを見せていた。

 

 

 

 

 電影討論番組

 “よく、格差、格差という人がいるのですけど”

 “それが努力結果出の格差なら、肯定すべきだと思うのですけど・・・”

 “すいません、質問していいですか”

 “はい、なんでしょう”

 “世襲格差を問題にしているのに、努力と摩り替えられるのは、心外なのですが”

 “だいたい、格差は努力の差でなく、我田引水な法律のおかげですよね”

 “ああ、世襲ですか。世襲はですね・・・”

 “しかし、本当に世襲を続けているのは、公家衆くらいのもので、数が少ないうえに”

 “その多くは、外国と比べて慎ましく、資産も収入も有害というほど大きくないです”

 “あと、江戸幕府以前の大名が、そのまま藩主の座にいるのは、4家に1家に過ぎないですからね”

 “10人長制でも公家衆や武家衆の後ろ盾がある方が有利ですよね”

 “親の七光りは、仕方がないと思いますよ”

 “ですが、10人長制で、番狂わせで落とされる武家衆と公家衆は、少なくないですよね”

 “いや、組織票の事を言ってるのに、親の七光りに摩り替えられても困るんですが”

 “それに、だいたい、番狂わせは、不祥事が発覚したときですよね”

 “不祥事がなければそのままですよね”

 “いや、侍がいなければ、ヤクザが台頭してくるので、完全な民主主義というのは、疑問に思うのですよ”

 “国家権力を後ろ盾にしていない、家族持ちのヤクザのゴリ押しなんて、たかが知れているじゃないですか”

 “怖いのは、国権力じゃないんですか”

 “国家権力と言われても、一般公務員だって、汲々としているわけですから”

 “いや、藩主の子飼いの大官僚を言ってるのであって、下っ端小役人の薄給労苦を貶めているわけじゃないのですが”

 “なぜ、大官僚の特権に付いて話してるのに、下っ端小役人の薄給労苦に摩り替えられてるんですかね”

 “い、いや・・・・”

 こういった一般を交えた討論会も、台本に近いモノがある。

 例えば、討論会で、この文章を言ってくれたら、10万文とかね。

 あと、八百長みたく、適当なところで負けてくれたら100万文とかね。

 勝ちバトルを見たがってる視聴者も多いかもしれないけど、プロレスのような迫真の討論の裏で、お金が動いているわけだ。

 もっとも、バラマキがあるせいか、

 本気で怒って、殺傷沙汰というか、殿中でござる的に収拾がつかなくなることも多々あるらしいけど、

 そういう時に限って、視聴率が跳ね上がる。

 しかし、今年は、無難に進行しそうな気がする。

 ていうか、誰か、刃物抜かないかな (笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

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 露瀬 統司(67)  露瀬 千夏(65)  露瀬 陽介(62)

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 時司史朗(ときつかさ しろう)  ⇒⇒⇒  霧島 高雄 (きりしま たかお : 44歳)

 

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 史実    1億0253万人

 戦記    428万0358ku    7億5826万人

    日本  46万6088ku     1億9184万人

    瑞樹  92万5915ku     2億1548万人

    扶桑  171万7854ku     4023万人

    フィリピン 29万9404ku    1億5686万人

    ナミビア・インド洋諸島・イスラエル藩 86万1259ku   1億5584万人

      スペイン・ポルトガル国境 カディス 200ku

      ベネゼエラ トルトゥガ島 156ku

      コロンビア・ペルー・ブラジル国境 レティシア4500ku

      ボリビア・パラグアイ・アルゼンチン国境 ピルコマヨ4500ku

      ウルグアイ バラ・デル・シュイ 100ku

      メキシコ・グアテマラ国境スチアテ港 200ku

      チリ ファン・フェルナンデス諸島 182ku

    オスマン帝国領バルカン北部自治区100000ku

    オスマン帝国領コーカサス北部自治区156000ku

 

 

 

 

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第118話 1968年 『赤い霧』
第119話 1969年 『不戦勝の帝国』
第120話 1970年 『黒の書』