月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『DNA731』

 

 第05話 1940年 『越えちゃいけない一線』

 静岡市で大火(焼失5121戸、死亡4名)

 関係者たち

 「この寒いのに36000人が焼け出されるとはね」

 「馬小屋から出火だと」

 「放火じゃないだろうな」

 「ここんところ乾燥してたから、わからんね」

 「しかし、捨て鉢になってるやつもいるだろう、放火でもおかしくないがね」

 「外国人が日本を? 日本人が日本人を?」

 「両方だろう。物資も金も減り気味で物価は上がる」

 「年寄りは稼げなくなり、子供を食べさせられなくなっている」

 「食えない人間も増加中だし、家族を養う親は捨て鉢になってる」

 「だからって、道連れにしなくてもな・・・」

 配給待ちの行列が組みかえられていく、

 「出兵家族から優先か・・・困窮しても誇りはあるようだ」

 「軍に媚びても、日本人の誇りか」

 「いつの世でも日本人の大勢は、長いものに巻かれて事勿れだよ」

 「村八分が怖くて、そっちの気骨が見せられないのだろう」

 「国内にさえ、物資がないというのに、戦地に物資を運びだしてるからな」

 「救援物資もソコソコかな」

 

 

 

 米内内閣成立

 

 国会議事堂

 “支那事変が勃発しましてからすでに二年有半を過ぎまして・・・”

 “・・聖戦の美名に隠れて、曰く、国民主義、曰く、道義外交、曰く、共存共栄、曰く、世界の平和”

 “雲をつかむような文字を並べ立てて国家百年の大計を誤るようなことがあれば”

 “政治家は死してもその罪を滅し得ない”

 “この事変の目的はどこにあるかわからない・・・”

 “国民は悲憤の涙を流しつつ従順に、黙として政府の統制に服従し”

 “事変を解決してくれることを期待している”

 “国を率いる政治家はここに注目するべきである”

 “しかるに事変以来二年有半の間に内閣は三度も総辞職し”

 “政局の安定すら得られない状態でどうしてこの国難にあたることができるか!・・・”

 “国家競争の真髄は何であるか”

 “これは国家競争は道理の競争ではない”

 “正邪曲直の競争でもない”

 “徹頭徹尾力の競争である”

 “優勝劣敗であって適者生存である”

 “強者が興って弱者が亡びる”

 “過去数千年の歴史はそれである”

 “未来永遠の歴史もまたそれでなくてはならないのであります”

 “この歴史上の事実を基礎として、自国の力を養成し、自国の力を強化する”

 “これより他に国家の向うべき途はない・・・」

 斎藤隆夫の演説

 

 

 料亭

 「斎藤の野郎・・・」

 「あいつ。正しかったな」

 「「「「「・・・・・」」」」」 こくん

 「3ヵ月毎に変な注射を打たれるし」

 「「「「「・・・・・」」」」」 こくん

 「上層部は戦争に勝つために手段を選ばなくなってるし」

 「「「「「・・・・・」」」」」 こくん

 「人体実験されてまで国体なんか守りたくねぇよ」

 「「「「「・・・・・」」」」」 こくん

 しかし、軍部の20パーセントの意見でしかなかった。

 

 

 満洲国 ハルピン

 ノモンハン事件で戦場に残ることができた日本軍は、ソビエト戦車を捕獲し、

 回収することができた。

 戦場を制することができた軍だけが可能であり、

 ハルピンの通りに戦利品が修復されて並べられていた。

 戦闘機I153、I16、約10機

 BT5戦車、BT7戦車、T26軽戦車、

 装甲車FAI、BA3、BA6、BA10、BA20、約100両

 火砲16.5口径76.5mm砲500門

 日漢満の人々が戦利品を見ていた。

 「随分、揃えられたみたいだな」

 「結局、日本軍の夜襲が怖くて退き上げたようだ」

 「ソビエト側の損害は、車両550両、航空機350機ほどらしい」

 「航空機は10機くらい組み立てられた」

 「車両は、部品を回収して組み立てれば、100両くらいは、なんとかなるよ」

 「使えるのか?」

 「まぁ 使えるだろう」

 「しかし、日本軍より装備が勝ってるし数が多い」

 「本当に補給地点は、日本軍の方が近かったんだろうな」

 「ソビエト軍の方が兵站で勝っていた」

 「日本軍は風魔部隊がなければ戦線を維持できなかった・・・つまり、負けてた」

 「大変だったな」

 「水がなくてね。戦車はいらんよ。トラックと燃料が欲しいな」

 「上層部がΓ憶宛技れてたぞ」

 「知ったことか」

 「戦車よりトラックと燃料が欲しかったのは事実だ」

 「あと、貨車も増やしてくれ、内陸まで鉄道を敷かないと戦争にならんよ」

 

 

 石井(731)機関

 「・・・斎藤議員か、いいこと云うな」

 「「「うんうん」」」

 「でも除名されるかも」

 「ったくぅ どうしようもないな」

 「殺されるより除名の方がましだけどね」

 「どうしてこんな世相になってしまったのかね」

 「想像力の乏しい馬鹿が上に立つと世の中、こうなってしまうんだよ」

 「しかし、斎藤議員が消えると民主主義は死ぬな」

 「どうせ、再選すると思うよ。気骨のある庶民だっているさ」

 「あははは・・・だといいけど・・・」

 

 

 中国大陸

 和漢軍、国民軍、共産軍の3つの軍閥が大陸に形成されつつあった。

 それは、民主主義ではない。

 三つの匪賊勢力が頭目となった封建社会であり、

 主従関係が確立されることで成り立っていた。

 日本軍から引き抜かれた人員が和漢村へと派遣され、

 法を順守すると誓った匪賊上がりの中国人と共に要席に就いていく、

 匪賊上がりは、不正に地位を得ており、

 日本軍と手を組むより地位を保つことはできなかった。

 そのため、裏切った中国人は、日本人との結束を強め、

 和漢軍閥は、次第に強固なモノになっていく、

 武漢  漢陽兵工廠

 武器弾薬を製造するだけでなく、

 97式中戦車と95式軽戦車が並び整備されていた。

 戦略上、ドイツの最新設備を接収できたことは大きく、

 稼働率を高めることができた。

 しかし、内陸に侵攻するにつれ、兵站力が不足となりトラックの需要が高まっていく、

 もっとも、夜襲で国民軍の指揮系統を破壊できても、

 戦車の戦線突破能力は戦場に欠かせなかった。

 そして、日本軍は、重慶に至る中継地点、宜昌攻略作戦を検討していた。

 「揚子江を遡っていくのが一番、戦車の疲労が少なそうだな」

 「大量の船舶がいるし、両岸を守らないとな」

 「どちらにしろ、シグマ・キャリアが頼りだ」

 「しかし、最大の問題は日本軍の綱紀粛正だな」

 「日本兵による強奪、強姦、殺人・・・これでは、匪賊と変わらないではないか」

 「比較的少ないだろう」

 「そんな比較論は、内輪揉め同士で効果がある」

 「外戚の日本軍は、強奪が10分の1でも50倍くらいに見られる」

 「さらに補給ができないから、現地調達するよりない」

 「一部でも不法を働く兵隊がいれば、軍全体がそう見られる」

 「生産力を前進させるしかないな」

 「中国大陸は、いつ殺されてもおかしくないから正気な日本人は嫌がるよ」

 「それに日本人の生産者も搾取は嫌がるだろうがね」

 「軍は内地でも白い目で見られているからな」

 「だから大陸に追い立てられたんじゃないか。大陸で死んで来いって」

 「頭いてぇ 大陸に生産部隊を編成しろよ」

 「これ以上、民間に嫌われるのは困る。軍から生産部隊を分けるよりないな」

 「農民兵か・・・」

 「内地で嫌われ、外地でも嫌われか」

 「金、人材、資材を使い込んで何も生み出すこともなく、浪費するばかりだからな」

 「権力層と富裕層は、軍と結託して財を保とうとし」

 「昔の中流家庭は、軍を支えるために貧困層の仲間入りだ」

 「日本人も表面上は、長いものに巻かれて貢がされている」

 「軍を頼っているようにも見える」

 「しかし、内心は軍を嫌ってるし、嫌われて然るべくだな」

 

 

 ノルウェー領海で英・独が軍事衝突(アルトマルク号事件)

 

 戦争政策批判により衆議院が民政党斎藤隆夫を除名処分

 

 ソ連フィンランド講和条約がモスクワで調印(冬戦争終結)

 

 

 帝都 麹町区永田町のドイツ大使館

 ドイツ大使オイゲン・オットは、ドイツ本国からの密書に目を通していた。

 「ゾルゲ君」

 「はい」

 「日本軍将兵に特殊な力があると思うかね」

 オットは密書の内容は言えなくても日本に詳しいゾルゲに日本軍将兵の質を聞くことができた。

 「風魔部隊の事ですか?」

 「まぁ そんなところだ」

 「詳しくは、わかりませんね」

 「ですが、特殊能力は、夜戦の戦果から帰結したものと思われます」

 「そういった戦果が通常考えられるより多いからでしょう」

 「・・・それで、君の感想は?」

 「正直に言うと日本軍は何かを隠していると感じてます」

 「君にも正確な情報が伝わっていないのか?」

 「日本軍将兵は、戦果があれば誇るのですが、今回は口を濁してますし」

 「忌むべき手段を用いてる節があります」

 「んん・・・忌むべき手段か」

 「忍者の末裔というのは?」

 「風魔部隊の数は陸海空合わせて、将兵5000に達しつつありますし。規模が大き過ぎます」

 「忍者の末裔は嘘です」

 「だろうな」

 「風魔部隊が防疫機関の直属部隊なのも気になります」

 「では、何らかのドーピングが行われている?」

 「可能性は否定しません」

 「夜目に強くなるドーピングか・・・オリンピックでは使わないな」

 「・・・・」

 「ゾルゲ君。調べてみてくれないか。礼はするよ」

 「はい」

 諜報能力の高いゾルゲも、風魔部隊の調査は躊躇する。

 実のところ諜報は荒事より話術で、

 日本軍将兵が忌避してる事柄を追及しても得られるものは少ない、

 とはいえ、第1級の軍事機密といえる内容であり、興味を注がれてしまう。

 

 

 

 戦争は生活の中心になる家族を破壊する。

 アジアで、そして、欧州でも家族を失った家が続出する。

 地上最強の生物となった人族の避け選られない宿命か、

 エゴの追及か、社会的な軋轢を解消するためか、同胞を淘汰する。

 爆音と砲声が戦場を覆い、

 爆撃と砲撃が大地を震わせ、

 着弾と同時に家屋を破壊し、将兵を吹き飛ばしていく、

 銃弾が飛び交い、将兵の傍を掠めていく、

 銃弾に撃ち抜かれた将兵が断末魔の声を上げ、地に伏していく、

 戦場の光景は、洋の東西が違い、肌の色が変わっても似ていた。

 

 

 大陸を等高線で見るなら西は標高1000m級以上の高原地帯が広がり、

 東は、標高数百メートルの平原が太平洋側に向かって伸びていた。

 宜昌(ぎしょう)は、揚子江の上流で、高原地帯を塞ぐ平原の要にあった。

 日本軍が宜昌を押さえるなら、大陸軍の大規模な反撃を防ぎやすく、

 山岳地を抜くことができるなら、四川盆地の重慶に向かう拠点になった。

 日本軍8万と和漢軍15万は、宜昌を半包囲し、国民軍30万と交戦していた。

 近隣の村々が和漢村に編入していくにつれ、和漢軍は増殖を重ねて膨れ上がっていく、

 そして、日本軍は、和漢軍の隷下を確認するため、

 督戦隊を分隊させなければならず、

 大軍として水増ししながらも統制で混乱していた。

 

 日本軍将兵たちは高台に立つと宜昌を臨む。

 「和漢軍は、いらないだろう」

 「指揮が混乱するばかりで、もう、わけがわからん」

 「大本営は、めんどくさがらず和漢軍の執り込み、やってくれだと」

 「そんな面倒事引き受ける部署が師団にあるか」

 「ないなら、分けろってことだろう」

 「どうせ、石井(731)機関のごり押しだろう」

 「あいつら、最近、偉く強いな」

 「それより、鉄道の施設を急がせればいいんだ」

 「その手の人間をこっちに派遣させ・・・」

 一人の将校の脇を銃弾が掠める、

 「危なっ!」

 「ふっ ちょっとした立ち位置の違いで生死が分かれるな」

 「ったくぅ 死線に晒され過ぎて、なにか大切なモノが壊れてしまった気がするよ」

 「そんな、殊勝な魂かよ」

 「宜昌を落とせば、この戦争も一息付けるだろう」

 「それは、どうかな。占領することと支配することは違う」

 「それに和漢軍は、重慶まで行く気だ」

 「どいつもこいつも功名と栄達に囚われやがって」

 「それで、左団扇の役人になれるなら中国人は喜んで強い側に付くよ」

 「後になって後悔しても知らんがな」

 「しかし、この戦場、日本の五月蠅い女どもにこの光景を見せてやりたいぜ」

 「戦場を見たからって、男は尊敬されないぜ」

 「女どもは違う尺度で比較するからな」

 「むかつく」

 「俺たちがお国のために戦っている間、若い娘たちは、お金持ちに寝取られているんだろうな」

 「むかつく話しだ」

 「なんか無性に敵兵を殺したくなってきた」

 「あははは・・・中国軍も八つ当たりで殺されたんじゃな」

 「佐原伍長」

 後ろを振り返ると師団の参謀が建っていた。

 「はい?」

 「中国語を覚えたんだったよな」

 「は、はい・・・」

 「本日付で外務省に人事異動されたぞ」

 「はぁ?」

 「誰でもいい、お前が信用できる兵士を1人引き抜いて、トラックに乗ってくれ」

 「いったい、何なんです」

 「さぁな。上からの命令だ」

 「・・・・」

 

 日本軍占領地で、日本人行政官と匪賊頭首による “和漢村” が誕生する。

 それは、清国と同じ行政方式で、日本人と中国人が半分ずつだった。

 中国 某街の庁舎

 日本人行政官たち

 「大陸占領から大陸支配か。なんか、卑劣漢が、ついにやっちまった、って感じだな」

 「本気でやるのか」

 「とりあえず。中国語を覚えた将兵を引き抜いていこう」

 「悪魔と契約した気分だ」

 「むしろ、越えちゃいけない一線を越えた気がするね」

 「匪賊も役人になれて左団扇なら日本人と組むだろうよ」

 「裏切らなければな」

 「匪賊と組むなんて、ありえねぇ」

 「頭いてぇ〜」

 

 

 

 ドイツ軍がデンマーク王国・ノルウェー王国に侵攻(北欧侵攻)、デンマークが降伏。

 

 

 

 呉

 シグマ・キャリアの戦闘力を生かした軍事力の整備は急務となっていた。

 甲標的は、居住性が悪く、戦闘能力で不安があり!"

 水中翼を強化した性能向上型の蛟竜の開発が進められていた。

蛟竜 計画
  排水量 全長×幅 全幅 馬力 速度 航続距離 武装 深度
海上 60t 26.3m×2m 3m 600 8kt 8kt/1850km 魚雷×2 2 160
海中 16kt 2.5kt/231km

 日本軍将校

 「小さな翼があるじゃないか。まるで飛行機だな」

 「機動性はいいはずだよ。海中で宙返りだってできるさ」

 「海中雷撃艇か」

 「しかし、小型艇にVC装甲鋼板を使うなんて、少し、高価すぎないか?」

 「その分、薄くできるし、軽量化できる」

 「敵艦に肉薄して雷撃戦ができるなら。そのくらいの投資はするよ」

 「小型の蛟竜は、大型潜水艦より効果的だと?」

 「航続距離がないから脱出できなさそうに思えるが」

 「実のところ、5人しかいないから大型艦より人口密度が小さい」

 「本当に?」

 「食事は、缶詰ばかりだけどね」

 「大洋の真ん中で、救出する方法は?」

 「大型の潜水艦で曳航できるし、水上機で救助もできる」

 「ロ号の方が帰還できる能力が高いし良くないか」

 「人事上の問題があってね」

 「新参のシグマ・キャリアの力を発揮させるためだ」

 「「「「・・・・」」」」

 「それに途中まで大型船で行く方がシグマ・キャリアの疲労が少ないからな」

 「気持ち的に楽なんだよ」

 「とんだ過保護だ」

 「戦果を期待できるのなら、大抵のことはできる」

 「しかし、静岡の大火で国民の視線は冷たいがな」

 「泣きっ面に蜂だな」

 「また、軍と民で物資の取り合いになるな」

 

 

 

 ドイツとイギリス・フランスは戦争状態にあった。

 しかし、国境線は、散発的な銃撃戦が行われるだけで、直接的な戦闘は行われていない、

 これは、第一次世界大戦でのフランス将兵の大量損失の影響であり、

 ドイツ人とフランス人の人口比とも大きくかかわっていた。

 またマジノ防衛線は、フランスが総工費51億1700万フランを費やしており、

 フランスの年間国防予算の半分に達し、ドイツ軍の攻勢を躊躇させていた。

 フランス軍は、マジノ線に頼り、東征の機会があったにもかかわらず、

 積極的な攻勢ができないでいた。

 ドイツは東欧を降し、

 ソビエトと不可侵条約を締結して後顧の憂いを断つと、北欧を占領。

 そして、欧州の情勢は、変わる。

 ドイツは、余剰戦力の大半を対フランスに向けることができたのである。

 ドイツ軍のフランス侵攻は、防備の手薄な中立国オランダを奇襲し、

 ベルギー王国を降し、

 ルクセンブルク大公国からフランスへと侵攻した。

 ドイツ軍335万、野戦砲7378門、戦車2445両、航空機5638機と、

 フランス、オランダ、ベルギー、イギリス軍330万、

 野戦砲13974門、戦車3384両、航空機2935機は、

 総戦力でほぼ拮抗していた。

 にもかかわらず、連合軍は、分散しており、

 ドイツ軍は、集中して侵攻し各個撃破していった。

 それは、ランチェスターの法則でいうところの多対1の原則であり、

 ドイツ軍は、常に数倍の戦力で連合軍を圧倒し打ち崩していたのだった。

 フランスのマジノ防衛線は、オランダという裏口から擦り抜けられ、

 さらに戦車は突破できないとされたアルデンヌの森とムーズ川も、

 ドイツ軍の力量によって突破されていた。

 フランスの防衛線は、崩壊し、

 防衛に向かないフランスの平野に

 遊兵と分散された二線級戦力だけが取り残された。

 救いがあるとするなら、

 ダンケルクに追い詰められた英仏軍の大半が脱出できたことだけだった。

 

 

 仏ペタン首相が独軍に休戦定義

 

 

 ソ連軍がラトビア・エストニアに進駐開始

 

 

 仏ド・ゴール将軍が自由フランスとしてロンドン放送で対独抗戦継続を呼びかける

 

 

 フランス敗北により、独仏休戦協定締結

 

 

 英艦隊がアルジェリアのオラン港の仏艦隊を撃滅

 

 

 ヴィシー仏政府が対英国交断絶

 

 独空軍による英本土空襲(バトル・オブ・ブリテン)開始

 

 

 アメリカ合衆国

 白い家

 男たちは日独伊三国同盟の情報を確認していた。

 「だいたい勝てそうな国力差だが・・・・日本の風魔部隊が気になる」

 「情報は集めてますが、中心は、石井(731)機関と思われます」

 「防疫部隊か・・・日本の防疫レベルは?」

 「我々の3割弱とみていいでしょう」

 「それは、日本が知ってることで我々が知らないことはないと考えていいのだな」

 「いえ、総合で、という意味です」

 「例えば、ある化学物質が満洲特産で我々の未発見のモノだったリすると、お手上げということもあり得ます」

 「・・・仮に・・・その化学物質を使用した場合・・・」

 「夜戦に強くなるといった身体的な特徴が現れることはあるかね?」

 「そうですね。可能性は無きにしも非ずでしょう」

 「しかし、日本軍の夜戦の戦果は、国民軍に裏切り者がいるからと聞いてますが?」

 「それは、不可能を省いた消去法の推論に過ぎない」

 「そんなモノで満足していいのは前線の指揮官以下だ」

 「我々の様な立場にある者ではない」

 「実験したのでは?」

 「ああ、やったよ」

 「無線輻射を頼りに爆弾を投下。まぁ だいたい成功したがね」

 「日本軍は、我々 アメリカ軍の中で裏切り者は得られないだろう」

 「しかし、そういった作戦は、軍内分に敵軍に通じるパイプを作らせることにもつながる」

 「排他的なムラ社会と一体感を重んじる日本人らしくない結論も出ている」

 「なるほど、確かにわたしの知ってる日本人らしくありませんね」

 「一皮剥けた精神的な強さのようだ」

 「個人であり得ても、組織全体で浮くし、普通なら殺される」

 「「「「・・・・」」」」

 「しかも、風魔部隊に関する情報は、どれもフェイクと思われるものばかりだ」

 「戦果を裏付けしているモノは一つもない」

 「仮に日本に夜間戦闘航空部隊が存在する場合、我がアメリカ軍に対抗し得る駒が一つもない」

 「ランチェスターの法則にしたがうなら、我々に勝ち目の戦いになるだろう」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 東京府が食堂・料理屋で白米食使用を禁止

 食堂

 「はい、イワシ定食。毎度・・・」

 ご飯とイワシ4匹、味噌汁、漬物・・・

 「・・・うぇ〜 これが七分搗く米かよ」

 「こんなもの・・・親父。泣きたくなるな」

 「国で決まっちまったんだからしょうがないだろう」

 「玄米よりましだけどな」

 「もう、大したおかずがないし、脚気より益しかな」

 「むしろ、白米食べながら脚気死したい」

 「そこまで刹那的になるかね」

 「貧乏人の性。余裕がないと目先の楽しみしか考えられなくなるんだよ」

 「ふっ お金持ちの思うつぼだな」

 「ほっとけ!」

 「俺たちだって、昔は羽振り良かったんだけどな」

 「御時勢が悪過ぎるからな」

 「ソビエトとの戦争は終わったんだろう」

 「あれは “事件” 。 戦争と言わないらしいね」

 「俺の同級生は、ノモンハンで戦死したんだぞ」

 「まぁ あれだ。国同士の貿易が面倒になるから事件にしたんじゃないか」

 「あそこ、満洲国で、日本の国土じゃないしね」

 「中国との戦争が終われば、日本は平和になるさ」

 「平和になっても生活は苦しいままじゃな」

 「中国の資源が入ってきたら豊かになるかもしれないだろう」

 「そんなの上だけじゃないのか」

 「まぁな」

 客たちが外に出ると、

 「「「「・・・・・」」」」

 “贅沢は敵だ!” の立て看板が設置されていた。

 

 

 立憲民政党の解散により、議会制民主主義は事実上、停止してしまう。

 帝国議会会場

 関係者たち

 「やれやれ、帝国議会を潰してる間に中国大陸に和漢村を増産か」

 「もう、外道の所業だな」

 「急いで中国語教育をさせて、行政官を中国側へ送り込もう」

 「中国を和国にするつもりか? それとも日国?」

 「もう、賽は投げられたじゃないか」

 「最悪の20世紀になりそうだ」

 

 

 

 毛沢東率いる中国共産党 八路軍は、日本軍に対して大攻勢をかけた。

 百団大戦といわれたものの

 現実は、共匪賊と和匪賊の戦いとなった。

 日本軍は、華北一帯の匪賊に政治権力の半分を売り渡しており、

 日本軍への攻撃は、日匪賊権益への攻撃となっていた。

 漢民族同士が敵と味方に分かれて錯綜し、

 日匪賊も権益拡大を狙って、

 国民党勢力と共産党勢力へと浸透戦術を繰り返していた。

 某 和漢村

 「よくこられたある。副村長の王操備ある」

 「村長を任されました木村四朗です。よろしくお願いします」

 「早速、就任祝いで宴ある」

 「し、仕事は?」

 「そんなの配下に任せとけばいいある。人生を楽しむある♪」

 「「「「・・・・」」」」

 歓迎の宴会がはじまり、日本人の漢化、堕落も少しずつ始まる。

 

 

 日本 総理官邸

 「フランス領インドシナ進駐は、中止しろ?」

 「貴様! 防疫機関の分際で何を言うか!」

 「大陸の和漢村は、急速に増えています」

 「シグマ・キャリアも余計な人材を引き抜けません」

 「では、インドシナの油田は?」

 「無用です」

 「む、無用ということはなかろう。油田がいるのだぞ」

 「買える間は、アメリカから買えばいいじゃないですか」

 「いつまで持つかな」

 「大陸を押さえられるのなら・・・」

 「」

 「」

 「」

 

 

 

 バトルオブブリテン

 ドイツ空軍は圧倒的に優勢だったにもかかわらず、

 イギリス空軍の巧みな戦術により、損失比で敗北しつつあった。

 ベルリン

 日本人とドイツ人

 「日本軍は、ノモンハンでソビエト戦車部隊を撃破したそうですが」

 「どういった方法を用いられたのか御教授願いたい」

 「ソビエト軍は粛清で指揮系統が弱体化していたようです」

 「そのため、夜襲に対応できず、強襲効果と合わせて各個撃破が可能でした」

 「夜襲でソビエト軍司令部に砲弾と爆弾を直撃させたとか」

 「ソビエト軍陣地で無線を発する方向に向けて砲弾を落とし、爆撃しただけでしょう」

 「命中したのは、偶然かと」

 「・・・なるほど・・・」 疑心暗鬼

 「戦闘中、ソビエト戦車で砲身の筒内爆発があったとか、聞いてますが?」

 「こちらの調査では1両が事故と・・・」

 「もう1両が何がしか特別な要因と考えています」

 「ソビエト軍全軍で同様と考えるのは危険かと・・・」

 「日本は、我が国の工作機械とエンジンを欲しているとか」

 「はい、大陸を押さえられるなら、資源を可能な限りドイツへ供給できるはずです」

 「んん・・・」 

 日本は大陸資源をドイツへ輸出し、

 ドイツは日本へ工作機械、エンジンを輸出していた。

 双方とも互いを必要とし、日独伊三国軍事同盟が成立してしまう。

 そして、日本のノモンハン戦の勇戦は、別の効果をドイツ帝国にもたらしていた。

 

 

 日本帝国議会は滅び、

 軍事独裁となった日本の舵取りは、軍部が決めていた。

 とはいえ、軍部を支援する右翼も多様だった。

 天皇を第一とする右翼は、国家、民族、権力機構、軍部を犠牲にすることができた。

 国家を第一とする右翼は、天皇、民族、権力機構、軍部を犠牲にすることができた。

 民族を第一とする右翼は、天皇、国家、権力機構、軍部を犠牲にすることができた。

 権力構造を第一とする右翼は、国家、天皇、民族、軍部を犠牲にすることができた。

 また軍部を第一とする右翼は、天皇、国家、民族、権力機構を犠牲にすることができた。

 それぞれ主義があり、予算の奪い合いは熾烈さを増し、

 同じ右翼の中でも亀裂が生まれ、憎み合うことさえあった。

 満州帝国 ハルピン

 和漢村は、満洲国にも広がり、

 日本人の大陸権力構造介入は増大していく、

 民族を第一とする右翼の反発を余所に、日漢合体政策は進み・・・

 「民族主義者は、日本人も満州族と同じように漢民族に飲み込まれるそうだ」

 「もう決まっちゃまった事はしょうがないだろう」

 「やってはいけないことをやっているような気がするが」

 「汪兆銘を南京に呼び寄せて傀儡にすればよかったんだ」

 「呼ばなかったからしょうがないだろう」

 「軍の半分以上を解体しないと、大陸支配の人材を割り当てられないことを知っているのか?」

 「民間もだ」

 「頭いてぇ」

 

 

 第5回国勢調査(内地人口7311万4308人、外地人口3211万1793人)

 政府関係者たち

 「人口がもっと増えそうだな」

 「嫌だぜ、多民族国家」

 「そういう空気になってるから止まらないよ」

 「しかし、大陸支配には、線路が足りないな」

 「また、日本から持っていくのか」

 「というより、もう、軍艦建造するな」

 「ふっ」

 「しかし、本当に大陸支配できるのか、一時的に占領するのとはわけが違うぞ」

 「和漢村は、急速に増えているし、面も支配できそうだ」

 「元と清の方式も取り入れるんだろう」

 「不思議なことに日本人が裏社会を牛耳り始めてるのが不思議だな」

 「というより、そりゃ もう、日本といえないだろう」

 「大陸支配しますか。日本人やめますか。だな」

 「保守派と改革派の戦いになりそうだな」

 「こうなると、邪魔なのが変革と公平を望まない民族主義者だな」

 「しかし、日本人じゃなくなるのも嫌だぞ」

 「日本人は、狭心症の気があるし、もう少しタフさが必要だよ」

 「中国人はタフだが、利己主義過ぎるね」

 「優性遺伝ならいいけどな」

 「劣性遺伝することだってあるだろう」

 「日本語学校は作ってるらしいぞ」

 「朝鮮みたいな失敗をするだけだ」

 「朝鮮民族の半分以上を大陸に押し出す予定らしいよ」

 「本性丸出しだな。天皇は知ってるの?」

 「どっちも、事を荒立てず。見ざる、言わざる、聞かざる・・・」

 「なんか、最悪の国になっていくな」

 

 

 

 

 戦艦 扶桑

 改装を終えた扶桑と山城が演習を行っていた。

 最大の問題は、艦載機と艦載艇の種別と数だった。

 作戦能力の高さを重視するなら大型のSボートと双発水上機が増え、

 小型の水上機と魚雷艇の数が減ずることになった。

 最適な編成を考慮しつつ検討しなければならなかった。

 艦尾ハッチが開かれると、Sボートが海面へと滑り落ちていく、

 「帰還を考えるなら大型のSボートがいい」

 「Sボートは全長32.6m全幅5.6mで100t」

 「1号型魚雷艇は、全長18.3m全幅4.3mで20tで数を増やせて飽和攻撃ができるよ」

 「とりあえず。演習の状況を見て決めよう」

 「酸素魚雷は管理が大変だから装備に反対だな」

 「だが、誘導できるなら・・・」

 「しかし、Sボートの戦車砲塔式に25mm連装機銃は、何か、勘違いしてる気がするね」

 「対PT魚雷艇に使えるだろう」

 「大型艦に通用しない」

 「対空兼用でもある」

 「昼間は戦わない方がいいと思うね。つまり対空火器の必要性は低い」

 「それは言えるがね。作戦能力は高い方がいいよ」

 「それに使うのは、風魔部隊だ」

 「ところで、風魔部隊は、風魔の末裔だろう。なんでこんなにいるんだ?」

 「そ、そういう、突っ込みは、査定対象になるからやめたまえ、君ぃ」

 「・・・・・」

 深夜の洋上、

 水平線の彼方は闇に包まれて見えなかった。

 Sボート20隻はけたたましいエンジン音を立て、

 水雷戦隊が護衛する長門、陸奥へ肉薄していく、

 星弾が宙を光らせ、暗い洋上を不気味に照らす。

 突如、闇の中から現れたSボートが魚雷を発射し、

 長門へと突き進み命中する。

 信管を抜いた魚雷でも水柱が立ち昇るのは変わらない。

 艦橋まで鈍く響く衝撃音によって、魚雷が命中したことが伝えられる。

 

 長門 艦橋

 「艦尾に3本です」

 「本当に本艦に向かって曲がってきたのかね」

 「はい、弧を描くように・・・」

 「判定は?」

 「大破・・・航行不能の可能性もあるかと」

 「長官。陸奥からです」

 「命中魚雷4本。判定は大破。航行不能。あるいは沈没とのことです」

 「やれやれ、闇夜で魚雷艇が現れると対処に困るよ」

 「夜限定です。昼間なら返り討ちです」

 「副官。艦載艇は、Sボートと一号型魚雷艇。どちらがいいと思うね」

 「波の高さ、作戦範囲、そして、戦場によります」

 「味方の島礁付近であれば一号型魚雷艇」

 「大洋であれば、Sボートが良いかと」

 「島礁に魚雷艇が配備されているのならSボート部隊だけでもよいかと」

 「私もそう思ったな」

 「しかし、恐るべきは、電探もない魚雷艇が正確に艦隊に向かってくることだ」

 「はい、護衛艦によると煙幕の張り具合も蛇行も的確だったとか」

 「四塩化チタンの煙幕弾は、意外と悪くない」

 「煙幕弾は6発装備です」

 「魚雷艇の艦首方向2000m先に煙幕を作ります」

 「電探は?」

 「煙幕は対処できません」

 「しかし、機関砲は目視に頼りますし、魚雷艇は小型高速なので有利かと・・・」

 「さてと、修理をせねばならんな」

 「信管抜きでも本当に魚雷を使われるとは・・・」

 「仕方があるまい。下士官どもは、人事上の軋轢で爆発寸前だったからな」

 「これで大人しくなるでしょうか」

 「これだけのものを見せつけられれば、なるだろう」

 「仮に改装前の扶桑型と撃ちあっても、これほどの損失を長門に与えられまい」

 「整備士の地位向上の方は?」

 「はい、進んでいます」

 「やれやれ、B型偏重の皺寄せか。金のかかることだ」

 「前線主義を一掃できますし、バランス的にはよろしいかと」

 「日本は、バランス良くやって欧米と対峙できる国か?」

 「まぁ 不可能ですが・・・」

 

 

 ドイツ軍がルーマニアに駐留。

 

 

 日本軍部隊の四川盆地に入る山岳部への浸透が始まっていた。

 風魔小隊は、石井機関直属の独立部隊で第1001小隊から連番で始まる。

 将兵 30〜50人。

 TX40型トラック(65hp×2 or 57hp×2)1台。陸王バイクJ(22hp)3台。

 九七式自動砲2丁。九六式軽機関銃2丁。

 38式小銃10丁。一〇〇式機関短銃2丁。擲弾筒5丁・・・

 日本陸軍にあって驚くべき密度の機械化小隊といえたが編成され、

 さらに一般部隊が前衛についた。

 風魔部隊用の特注のトラックは、日本製65hp馬力2基。

 あるいは、ドイツ1号戦車のエンジンを2基装備していた。

 パワーの強いエンジンは、登坂能力が高く、山岳で強みを見せた。

 第1006小隊 (通称せんろく小隊)

 「こりゃ 霧ばっかりで、なんも見えねぇな」

 「蒸すし、最悪だな」

 「少し戻って、小川で水浴びでもするか」

 「前線部隊の火力支援だろう。交替の部隊が来るまで待てよ」

 「我慢できねぇ・・・」

 1人が軍服の袖をまくって、タオルで体を拭き始める。

 「誰がこんな土地・・・」

 「でも御国はやる気らしいよ」

 「アホが。一度ここに住んで見やがれ」

 「後からホテルを建ててテープカットしに来るだろうよ」

 「もう、殺して・・・」

 !?

 「・・いる・・な」

 「ああ・・・11時の方向に強い威圧を感じる」

 「俺たちの前衛の小隊はなにしてるんだ?」

 「霧で敵と擦れ違ったんじゃないか」

 「狙ってみるか」

 「そうだな」

 九六式軽機関銃の連射が始まると、悲鳴と呻きが霧の向こうから聞こえ、

 反撃もそこそこに敵勢力は後退し、日本軍前衛部隊と接触。

 霧の中で白兵戦となっていく、

 そして、後方火力支援する風魔部隊が敵と味方を誤認することは、ほとんどなかった。

 霧の中で、高い確率で敵の指揮官を狙う風魔部隊は脅威以外の何ものでもなく、

 中国国民軍は、指揮をズタズタにされながら、逃走していく。

 

 

 

 イタリア軍がギリシャに侵攻(ギリシャ・イタリア戦争)

 しかし、ギリシャ軍の反撃で、イタリア領アルバニアが攻め込まれ、

 ドイツ軍は、軍団を派遣して、ギリシャ軍を押し返し、

 イギリス軍と合流したギリシャ軍を撃退、

 ギリシャを占領する。

 

 

 

 ドイツ空軍は、損害に堪えかね。

 イギリス本土爆撃を中止し、バトル・オブ・ブリテンが終息していく、

 そして、バトル・オブ・ブリテン敗北のドイツ軍は、ある決断を迫られていく、

 ベルリン

 総統とドイツ軍将校たち

 「張鼓峰事件、ノモンハン戦の、いずれも少数の日本軍が多数のソビエト軍に対し勇戦しています」

 「冬戦争の情報は集まっている」

 「だがアジアは今一つはっきりしないな」

 「ソビエトは戦力全般で優勢でした」

 「しかし、粛清で指揮系統に影響があったようです」

 「日本側は、夜戦で巻き返したとのこと」

 「んん・・・ソビエト軍は思ったより弱いということなのかね」

 「安易に考えるのは危険と考えます」

 「日本大使と話したのだろう」

 「はい、いくつかの幸運が重なったものだと。しかし、何かを隠している節もあります」

 「個々の将兵が幸運を引き寄せるだけの戦闘力を示したのだろうか」

 「掛け声はそうかもしれませんが、それは、物量作戦が困難で他に頼るべくモノがないからです」

 「日本軍将兵の戦意は、ソビエト軍と同程度かと・・・」

 「んん・・・もし、何かを隠しているのであれば、何としても暴きだせ」

 「はい」

 「そうでなければ戦力の大きな白人が、戦力の劣る黄色人に負けるはずがない」

 「日本とのパイプを強化しますか?」

 「そうだな。その方がいいだろう」

 「日本との取引を増やし、ソビエト軍の戦力を極東に追いやろう」

 「そして、対ソビエト戦だ」

 「「「「・・・・・」」」」

 独ヒトラーが独ソ戦(バルバロッサ作戦)の準備を命令

 

 

 

 英海軍が空母艦載機によりタラント軍港を攻撃(タラント空襲)

 

 

 ハンガリーが枢軸国に加入

 

 ルーマニアが枢軸国に加入

 

 

 東京 防疫機関

 暗室で将兵たちが竹刀を構え乱取りしていた。

 この訓練に意味はない、

 ある部屋では、将兵たちが正座させられ、坊主によって、肩を叩かれ・・・

 この修行にも意味はない。

 薄暗い部屋で1人がトランプの絵札を差し出し、

 テーブルを挟んで座る、もう1人が絵札の中身を答える、

 正解するとクッキーが1枚もらえ、

 「スペードの4」

 「痛っ!!!」

 間違うと電流が流れた。

 この実験にも意味はない、

 意味があるとすれば、列強が日本の夜戦戦果に疑問を持ち、

 調査をすると仮定して作られたフェイク施設でしかなかった。

 この無意味な実験をやらされているのが風魔部隊以外の部隊で、

 体を張って、日本の軍事機密を守っていた。

 

 

 タイ・仏印国境紛争勃発

 バンコクの日本武官たち

 「日本はどうするって?」

 「武器は輸出するけど、不介入を決め込むらしい」

 「なんで? 油田があるのに?」

 「中国に全力を注ぐそうだ」

 「中国を占領するだけの人材はないだろう」

 「だから脇目も振らず、全力を注ぐんだろう」

 「大陸の鉄道建設がこれからの産業になりそうだな」

 「なんか、日本人が毒されそうで嫌だな」

 「それは言える」

 「しかし、どう考えてもタイ軍は勝てそうにないな」

 「フランス軍は、そんなに強かったっけ?」

 「さぁ タイ軍が勝てると思えないだけだ」

 「じゃ タイは、見殺し」

 「その方が日本の有難味がタイ人に分かっていいだろう」

 「だといいけどね」

 

 

 中国大陸

 裏社会を制する者が表の社会も支配する、

 暴力を制する者が中国の街を牛耳った。

 日本の大陸支配を決定付けたのは、シグマキャリアが裏世界を支配できたからといえた。

 それが極道的な所業で、唾棄するような事柄でも、

 実質的な街の支配は、シマを押さえなければならず、夜、推し進められていく、

 特高のシグマキャリア比率は、軍部を凌ぐ勢いで急増し、

 表の顔の特高(権力)と裏の顔のヤクザ(暴力)に分かれ、大陸全土の街々へと派遣されていく、

 日本の大陸支配が強まるにつれ、

 効率的な人海戦術が可能になり、資源採掘量が増え、

 日本への鉄鉱石、石炭、希少金属の輸出量は増え、

 鉄道の施設は急速に進んでいく、

 武漢

 鉄道局員たち

 「設備が足りない、貨車も足りないな」

 「貨車はいいとして、中国人はなんでこんなに多いんだ」

 「5億くらいいるらしいよ」

 「多過ぎだろう」

 「人材を分配すると日本人の工員がいなくなりそうだな」

 「それはヤバ過ぎるよ」

 「それでも後に退けない状態なのが辛い」

 「軍を一部解体して治安部隊に回しているが、とてもじゃないが足りない」

 「日本からは?」

 「基本的に農民の息子ばかりだからな」

 「日本も産業を支える鉄道と自動車を欲しがってるし」

 「これ以上、大陸に持ってきたら日本の社会生活が成り立たないそうだ」

 

 

 採掘場

 人海戦術で鉄鉱石が露天掘りが掘られ、

 トロッコで貨車へと運ばれ、乗せられていく、

 支線の手押しの貨車が、機関車で引っ張る主線の貨車に横付けされると、

 これも人海戦術で次から次へと鉄鉱石が移され、

 貨車が鉄鉱石で満杯になると上海に向かって発車していく、

 匪賊の頭目となった日本人は、人海戦術を効率よく利用し、

 資源採掘量を数倍に増やしていく、

 日本軍将校

 「順調に業績が伸びてるじゃないか」

 「ツルハシ、トロッコ、軍手、あと日用品が足りないな」

 「おいおい、日本にあるみたいに言うなよ」

 「作れ」

 「無茶をいうな」

 「それでも日本から持ってきてくれ、採掘量を維持したいんだろう」

 「はぁ・・・」

 

 

 

 武漢のとある村長宅

 「日匪賊、国匪賊、共匪賊の天下三分の計あるか」

 「最低な戦略だな」

 「なにいうある。押し切りで勝てるある」

 「とてもそうは思えんよ」

 「心配ないある〜♪ 日本は大陸ごと支配できるある〜♪」

 中国大陸に三つの封建体制が作られていく、

 民主主義を構築できるだけの民意はなく、

 漢民族は、そのどれかを選択するよりなかった。

 華北で既得権が破壊され、

 日本軍閥との間に主従関係が結ばれ、

 華北(和漢)軍が編成される。

 

 

 揚子江沿いに和漢軍陣地が設営されていた。

 人海戦術に人海戦術で対抗する。

 そして、和漢匪賊軍は、己が私利私欲のため己が所領を広げ、

 貧しげな農村が日本軍に帰順していく。

 日本軍将校たち

 「どうやら、この村も戦わずに行政に入れそうだな」

 「言葉のわかる者たちを集めて、利権構造を作らせよう」

 村の代表たちが迎える。

 「和人。よく来られたある。歓迎するある」

 「よろしく頼むよ」

 豪族の家

 「これから御馳走を作るある。少し待つある」

 「」

 「」

 「御馳走か・・・」

 「楽しみですな参謀」

 「まさか毒殺はないだろうな」

 「我々と村人全部を交換することはないでしょう」

 「まぁ それもそう・・・」

 !?

 「ちょっと待った〜!」

 バタ!

 「なっ!」

 主人が鉈を打ち下ろそうとしていた。

 「なにあるか?」

 「な、なにしてるんだ?」

 「これから料理を作るある」

 「馬鹿な真似はよせ」

 「心からの歓迎ある、新鮮ある」

 「つ、妻を殺してどうする!」

 「日中友好の証でみんなで食べるある」

 「ば、ばかいうな!」

 「何を言うあるか。日中友好が大切ある・・・」

 鉈が振り下ろされ、

 「ちょ ちょっと待て!」

 「お、お、お、奥さんはなんで黙ってるんだ!」

 「夫の望みある。覚悟の上ある」

 「か、勘弁してください」

 「こ、この通りですから・・・」 土下座

 

 

 

 

 ルーズベルトは “米国は民主主義国の兵器廠となる” と発言

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 大日本帝国陸海軍は、シグマ・キャリアを中核にした再編が可能でしょうか、

 非合法な白色テロもかなりいってそうです。

 日本軍は、極悪侵略軍になり下がりました (笑

 

 

 日中友好は様々なドラマがあるかもです。

 日本人は、日本人の資質を保てるでしょうか、

 それとも、まったく違う新日本人の資質に変革してしまうでしょうか。

 ちょっと、モチベーションを保ちにくい侵略支配戦記になってまいりました (笑

 

 

 

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第04話 1939年 『嘘と、こけおどしと・・・』

第05話 1940年 『越えちゃいけない一線』

第06話 1941年 『中華三匪賊の計』