月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『DNA731』

 

 第09話 1944年 『徳治という名の無法』

 人と人が主従関係を成すことで組織が形成される。

 初期の主従関係は、腕力で決まり、まじないと占いで補完させていく、

 組織が大きくなるにつれ

 支配者の資質は、腕力から富、頭脳、胆力、世襲へ比重が移行し、

 土地所有を相互保証する主従関係と変わっていく、

 土地の安堵は食料と直結し、死なば諸共の関係にあった。

 しかし、さらに大きな民衆をまとめるようになると、

 自らも縛る法が必要不可欠となり、

 法人と貨幣制度を介する間接主従関係へ移行する。

 間接的な主従関係は、人間関係の自由度を広げ、社会資本を増大させ、

 横の繋がりを広げさせた。

 東アジア大陸は、歴代中国王朝の下、封建社会が何度も繰り返され、

 清国滅亡後、欧米列強の影響からか、

 自由民主派と共産派の台頭が見られたものの民主化には至らず、

 大陸に着実に勢力を伸ばした日本軍によって再統一された。

 大和連邦の支配下、

 日本に協力した匪賊(漢民族)は和漢貴族として特権階級に収まり

 再統一後も和漢貴族が世襲する封建社会であり続けた。

 大和連邦で行政官が任じられ、軍事力を握って軍管区を支配し、

 軍管区を握る者が行政を支配した。

 日本の大陸支配は、近代的な脚色がなされていたものの

 元と清の支配と似ており、

 反乱は、当事者のみならず3代遡った親類縁者にまで及ぶ圧政となった。

 もっとも、日本人の行政官は、不正腐敗が少なく、

 歴代征服王朝の中で、もっとも、庶民階層まで干渉していながら、

 比較的、穏健な政体に思われた。

 これは、漢王朝より、征服王朝が妥協を強いられた結果と言えなくもない、

 

 華北軍管区 北京

 発電所の建設が始まり、大陸鉄道が施設されていく、

 日本の大陸行政は、陸軍省から外務省。

 大和統一後、外務省から内務省へと移行し、

 内務省は、陸海軍省を超える日本最大の組織となっていく、

 大陸支配は暴力であり、

 必然的に暗部にかかわる裏組織も拡大されていく、

 行政は、日本人と漢民族が半分ずつ職員をだして行っていたものの、

 大陸の基幹産業は、日本資本が仕切りつつあった。

 需要に応えることで利益を上げる日本資本の大陸進出も増え、

 在庫を抱えた日本商店は、大陸に支店を置き、余剰品を送り込んだ。

 

 

 上海港で銃声が響き渡る、

 アメリカ船に逃げ込まれれば、そこは、アメリカ領に等しく、

 特高は、入り込むことが許されない、

 幾つもの陽動と戦術と体術が駆使され、

 1人が数人の男に囲まれた。

 「急いで手当を、情報を聞き出せ」

 「ふっ 諦めろ、俺は囮だ。おまえたちのレーダー装置は、アメリカ船の中だ」

 「いや、おまえたちが来るのはわかっていたからな」

 「おまえが持ち出したレーダー装置は、モックアップ機体の空箱さ」

 「そ、そんなバカな」

 「ふっ 残念だったな」

 「俺は確かにゼロ戦からレーダー装置を取り外したんだ」

 「空箱のはずがない・・空箱の・・」 がくっ!

 「いいんですか、そんなことを言って」

 「気を失っただけだ。引き揚げよう」

 「彼は?」

 「仲間に助けさせればいいさ。この怪我なら再起不能だし」

 「こちらが準備した空箱を持ち出したと思ってくれたら助かる」

 「だけど、軽量化だからって、本当に空箱なんですからね」

 「あはははは・・・・」

 

 

 特別高等警察 射撃場

 教官たち

 「やはり、シグマ・キャリアは、勘がいいですね」

 「敵の方向と距離をほぼ把握してます」

 「感応する距離は、拳銃の射程を超えていますから、並みの人間は勝てないはずです」

 「射撃の腕は別だから、そう過信できるものじゃないがな」

 「そういう者は銃の上手い者と組み合わせ、剣術に腕を磨いてますよ」

 「シグマ・キャリア同士はどうかな」

 「察知できる相対距離、精度、反応速度に差があるようですね」

 「あと殺気を消して勘付かれないタイプもいる」

 「有効距離の差が近ければ純粋に射撃の腕でしょうか」

 「小銃と違って、拳銃は難しいですからね」

 「それで、人気のある拳銃は?」

 「察知できる距離が長くて、射撃に自信がある人間は、トカレフ」

 「察知できる距離が短くて、射撃に自信のない人間は、ワルサーPP、2式拳銃だな」

 「市内で利便性を追及するならベレッタか」

    銃身長/全長 重量 装弾数 使用弾薬 初速 有効射程
ベレッタM1934 イタリア製 87mm/149mm 660g 7+1発 9mm×17 240m/s 25m
ワルサーPP ドイツ製 99mm/173mm 660g 7+1発 9mm×17 320m/s 40m
2式拳銃 日本製 95mm/176.5mm 690g 8発 8mm×21 290m/s 35m
トカレフTT33 ソビエト製 116mm/195mm 854g 8発 7.62mm×25 420m/s 50m

 「サブマシンガンを持たせたら無敵なんだがな」

 「私服で、そんなの持ち歩けないだろう」

 「大陸統一後は、軍隊より特高の重要性が増すからな」

 「大きな街なら20人以上揃えないと」

 「中国語が堪能で間諜能力が高く、射撃の腕が良くて、闇に生きれる人間か・・・」

 「あまり人材がいないのが問題ですかね」

 「大陸支配で財政収入は増えてるよ」

 「その予算も大陸の治安維持と開発で使われているだろう」

 「それと和漢学校ですかね」

 「どうせ、ポストを作ってるんだろう」

 「半分は日本人で埋められて、一旦、権力構造を作れば、左団扇だし」

 「まぁ いいんだけどね・・・」

 

 

 東部戦線

 吹雪の中、ドイツ本国から東部戦線へ機関車が走っていく、

 ドイツ帝国は、鉄道の施設が増し、戦線への輸送力を増やし、

 生産拠点を東方に移動させ、

 キエフ、ミンスク、ハリコフ、ドニプロペトロフシクの軍需生産を軌道に乗せていく、

 一方、ソビエト軍の攻勢も増強され、

 アメリカのレンドリースも戦力巻き返しを強めた。

 レーニングラードとモスクワの周辺部は、ドイツとソビエトの攻防の焦点となり、

 戦車の墓場といえる光景が作られていた。

 独ソ両軍とも貨車を改造した簡易移動工場を戦場近辺に進出させ、

 破壊され血のりの付いた車両を再利用し戦車を組み立てた。

 独ソ両陣営にドイツ戦車、ソビエト戦車が混在し、

 ドイツ軍陣地にイギリスとアメリカ戦車も珍しくなくなり、

 黒い鍵十字が描かれているか、

 赤い星が描かれているかだけの違いでしかなくなっていた。

 

 

 ドイツ軍陣地

 負傷兵が故郷へと後退し、

 若い新兵が徴兵され、訓練もそこそこに交替で配属されてくる。

 戦場で恐慌に脅える新兵の前に立つことほど怖いものはなく、

 古株は、新兵を前に押しやり身の安全を図ろうとした。

 その結果、新兵の生存率は低下していく、

 ドイツ軍将校たち

 「膠着状態になったな」

 「日本の参戦がないと、どうにもならんな」

 「日本は陸軍を解体して、人員を大陸行政に異動させてるらしい」

 「対ソ戦略に回せるだけの陸軍を編成できないそうだ」

 「10倍以上の異民族を支配しようとするからだ。馬鹿め」

 「ドイツも、国内に異民族を抱えて、かなり危ない気がするがね」

 「それに日本が参戦すると、南アメリカからスペインを経由して得られる戦略物資が滞る」

 「日本は参戦しない方がましということか」

 「そうなるかな」

 「まぁ 日本が逆上してアメリカを攻撃しないのなら構わないがね」

 「あははは・・それは怖すぎるよ」

 

 

 大陸

 酒場の日本人たち

 「「「「世襲の封建社会万歳〜!」」」」

 「いやぁ 裁かれないのがいいねぇ」

 「でも封建社会は、上には逆らうと殺される」

 「それだけが怖いな」

 「権威主義と世襲か、下に対して厳しくなるわけだ」

 「あと、怖いのは中国の闇組織かな」

 「日本人の特高は大丈夫だろうな」

 「特高は一騎当千で優秀らしいよ。特に感が良くて夜戦が強いらしい」

 「なんか、根拠のない宣伝だな」

 「同じ黄色人種だろう、身体能力にそんな差があるわけがない」

 「日本側が言ってんじゃなくて、国民軍、共産軍、紅幇(ほんぱん)、青幇(ちんぱん)の評価だよ」

 「日本の特高は、弾の数だけ人を殺せるってね」

 「なんか、眉唾ものだな」

 

 

 

 世界初の抗生物質は1929年に発見され、

 列強は負傷兵の治療で絶大な効果が得られるペニシリンの開発と量産を急がせていた。

 日本でも各国の開発は、注目されていたが、医療の認識が低く、予算が動くといったことはなかった。

 そして、同盟国ドイツのUボートからもたらされた情報の中にペニシリン(碧素・へきそ)があった。

 陸軍軍医の稲垣少佐は、ペニシリン開発に着目したものの上層部の同意が得られないでいた。

 しかし、中国戦線での日本軍将兵の損失から遂に予算が動くことになり、ペニシリン開発が始まる。

 「稲垣少佐。おめでとうございます」

 「ありがとう。これで、日本軍将兵の治療もしやすくなるだろう」

 「ですが、少佐のペニシリン研究の邪魔をしてたのは、石井731機関だったみたいですよ」

 「大陸で負傷者が死んでるのに、なに考えてるんだか、あの御仁は・・・」

 「中将は、あなたを殺して、石井式ペニシリンにするつもりだったようです」

 「あははは・・・」

 「駄目なら研究ごと潰し」

 「ほとぼりが冷めた頃、再度ペニシリンを完成させるつもりだったようで」

 「ふっ らしいといえば、らしいが・・・」

 「反石井勢力がいなかったら危なかったそうです」

 「国益より私利私欲とはね。怖い怖い」

 「日本人がもう少し医療に意識を向けてくれたら非道な手段で勢力を伸ばさず済んだのですが」

 「どいつもこいつも、事勿れの挙国一致。軍事一辺倒だったからな」

 「偏ったツケは国民が支払わされる」

 「それが今回の大陸支配ですかね」

 「みんな、自分のポストばかりだからな」

 「普通の日本人が大陸で酷い目に遭っても他人事ですからね」

 「ふっ」

 

 

 

 開戦時、ドイツ海軍Uボート艦隊は、弱小戦力だった。

 にもかかわらず大きな戦果をあげる。

 その後、Uボートは即効性の高さから急増され、

 イギリスは海上輸送航路が戦争遂行の生命線であり、

 国力と戦力の増減と直結していた。

 イギリスは、商船護衛とドイツUボート艦隊狩りを海軍の主要任務に定め、

 アメリカ旧式駆逐艦100隻と対潜哨戒機1000機以上を購入し、

 可能な限りの戦力を対Uボート作戦に注ぎ込み、

 Qシップ(武装商船)を量産し、

 ソナーとレーダーによる対潜水艦管制を向上させ、

 対潜水艦用爆雷を改良し、ヘッジホッグを投入した。

 また損失を低減させるため、効率性を捨てた護送船団方式を採用し、

 護衛空母、艦載機、護衛艦による三次元的な対潜哨戒を構築、

 イギリス海軍は苦境に立たされながらも技術と運用を向上させ、

 通商航路を守り切った。

 一方、ドイツUボート艦隊は、群狼作戦で対応し、

 シュノーケルと逆探知の装備でUボートの生存性を高めた。

 Uボートの生存期間が長引くほど艦長の戦術は巧みになり、

 群狼作戦に参加するUボート数は増え、商船の被害を増大させていく、

 そして、44年6月、大西洋の戦いを大きく変えるUボートが開発される。

XXI型 排水量 全長×全幅×吃水 速度 航続距離 兵装 乗員
海上 1621t 76.7m×8.0m×6.32 15.5kt 20650km(11150海里)/12kt 20mm連装機銃×2 57
海中 1819t 17.5kt 528km(285海里)/6kt 533mm発射管×6 23

 XXI型は、優先的に量産され、1対5だった損失比を1対10へと押し上げていく、

 そして、英独双方は、海上輸送を賭けた攻防で、

 イギリスは商船3000隻を撃沈され、

 ドイツは潜水艦200隻を失っていた。

 

 

 ベルリン

 ドイツ人と日本人

 「報国丸と愛国丸の輸送量だけでは足りない。もっと輸送船を増やして欲しい」

 「2隻だからイギリスがお目溢しているのでは?」

 「隻数を増やすと撃沈される可能性も高くなる」

 「イギリスは、日本と戦争になれば、その数十倍の損失となるはず、撃沈したりはしない」

 「残念ながら日本は、燃料がなく、開戦不能となりました」

 「大陸なんか支配しようとするからだ。身の丈を考えろ」

 「ドイツと同じですね」

 「「「・・・・」」」

 

 

 

 日本資産凍結、石油輸出禁止処置により、

 日米関係は悪化していた。

 とはいえ、大阪では、GMのシボレー車のノックダウン生産が行われ、

 石油輸出禁止処置以降は、生産技術を生かしたまま、木炭車を製造していた。

 そして、日米の間で交易がなくなってるわけでもなかった。

 27000t級客船 樫原丸は東京湾を出港し、サンフランシスコ港へと向かっていた。

 ラウンジンは、人気が少なく、疎遠な日米関係を物語っていた。

 「何としても開戦だけは阻止したいが、野村君だけでは心もとない」

 「君のルートは、大丈夫なのかね」

 「相手は、アメリカの財界でした」

 「アメリカ大統領に対して圧力をかけられるとしたら、アメリカの財界だけでしょう」

 「非公式でもあるし、騙されないようにしてくれ」

 「わかっています」

 「ですが、日本がアメリカに参戦の口実を与えなければ、アメリカは焦るはず」

 「何より、東アジア全域を支配しているのは、日本ですから・・・」

 「アメリカ資本は、我々の支配下での経済活動に対し言及してくるはずだ」

 「端的に言うならアメリカにも分け前の市場を寄こせですかね」

 「そういうことだ」

 「戦争をするより、魅力的な提案を出せればいいのですが・・・」

 「国内は根回ししてるがね。アメリカさんの反応次第だろうな」

 

 

 

 大和(中国)大陸

 和漢軍は中国の農村を襲撃し、土地を収用し、

 人海戦術の強制労働で鉄道を施設させていく、

 日本と違って集票を考えず、工期を強行でき、

 召し上げに要する費用も補償も考えなくても良かった。

 さらに労働力に事欠かず、

 中国国民は踏んだり蹴ったりといえる。

 しかし、大陸行政の莫大な利権が日本の軍政を終焉させた。

 その変革の中、95式装甲軌道車の後継車の開発が進められ、

 4号戦車の設計を流用した4式軌道戦車の量産が始まる。

 重量26t 300馬力 全長7.02m 車体長5.89m×全幅2.88m×全高2.68(2.8)m、

 速度38(120)km/h 航続距離320(600)km 78口径75mm砲 7.7mm機銃×2

 線路上を120km/hで走行できる戦車であり、

 移動力と展開力を比較するなら優良な車両といえた。

 そして、治安維持を重視されたことから凡庸で使いやすく手頃な車両となった。

 関係者たち

 「欧州戦争が終わって東部戦線が終結したら、極東ソビエト軍の戦力が回復する」

 「東部戦線で考えると4号戦車級は、微妙な性能だ」

 「戦争中で密輸されたバズーカーに耐えられなくてもブローニングにも耐えられる」

 「しかし、5億人の漢民族を押さえるため総人口の10000分の1。50000両ほど欲しいのに不可能」

 「妥協として高速移動と展開が可能で、質と量の最大公約数である」

 「以上の点で4式・・」

 「もういいよ。日本は、大陸で必要最低限の戦車の数と質も満たせない」

 「まして、対ソビエト戦に必要な戦力も賄えない」

 「大陸行政は、上手くやれるんだろうな」

 「彼らは匪賊上がりで国益の半分を売り渡して、同族を裏切った長ばかりだ」

 「中国民衆に憎まれている」

 「中国歴代王朝の交替は、みんなそんなものだよ」

 「彼ら和漢貴族は、同族より、日本と日本軍を信用する」

 「少数民族の元と清の王朝が続いた理由でもあるな」

 「「「・・・・」」」

 日本の大陸行政は日本本土の人材を枯渇させ、

 国内の市場規模を引き下げつつあった。

 もうひとつ、避け得ない現象として、膨大な大陸運営費が必要となり、

 内務省の予算比重が軍事費を上回り、

 軍国セクショナリズムの崩壊を招くことにもなった。

 そして、国家予算比の変化は、利権構造を変え、

 利権構造の変化は、政治的な変革をもたらせてしまう。

 07/18 日本の東条内閣総辞職

 軍と民の妥協がなされ、第4次近衛内閣が誕生する

 首相官邸

 「軍部の目的遂行が軍部独裁の死期を早めてしまったわけか」

 「まず発電所と鉄道の建設に伴い都市流通と産業の育成だ」

 「これをやると日本人は親方日の丸の意識が強まって、民間活力を失いかねないが?」

 「しかし、大陸行政の半分と産業基盤全般は、日本人で押さえるべきだろう」

 「ところで、アメリカの挑発は?」

 「領空侵犯、領海侵犯とも増えている」

 「海軍と空軍は、燃料不足で、まともに相手できない」

 「まるで日本が中国になったような気がするね」

 「鉄鉱石と石炭があるから大陸支配だけなら何とかできるよ」

 「しかし、陸軍の26t級戦車5000両とは、無茶な要求だな」

 「最低でもその10倍は必要らしいが?」

 「海軍は?」

 「海軍は縮小だな」

 「大陸権益を確保すれば、巻き返せる」

 「大陸開発後だと、何世紀先になるやら・・・」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 ドイツでヒトラー暗殺未遂事件が発生

 

 

 ポルトガル 

 10000t級特務船 報国丸は、リスボン港に入港すると物資を降ろし始める、

 船橋

 「ニッケルの8割は、ドイツ行きか」

 「行きも帰りも怖いな」

 「少なくともUボートは、報国丸を撃沈したりしないさ」

 「それでも、アメリカ海軍に臨検されるがね」

 「スペインのダミー会社行きだから、アメリカはどうにもできないよ」

 「結局、同盟と言っても、日本はスペインと同じレベルの協力しかできないわけか」

 「独ソ不可侵条約が結ばれなければ日ソ不可侵条約も結ばれなかったし」

 「日ソ不可侵条約がなければ、今頃、バイカル湖当たりで日ソ戦争だったかもな」

 「それ最悪だな」

 

 

 台湾で徴兵制実施

 関係者たち

 「台湾人に大陸支配の片棒を担がせる気か」

 「しょうがないよ。大陸行政だけでも千万単位だろう」

 「台湾人を準日本人にしないと数を揃えられないからね」

 「朝鮮人と台湾人で喧嘩しそうだな」

 「大陸での朝鮮人たちの所業を思うと、台湾人の方がましだと思い始めたよ」

 「とにかく日系を拡大するか、異民族の人口を縮小させないと大陸権益は覚束ないよ」

 「財政的に有利な方が子供を増やせるさ」

 「それはどうかな。贅沢したがると、子供は産まなくなるだろうからね」

 「大陸権益があれば貧困層の半分は生活が楽になる」

 「間引きするばあさんも減るだろうさ」

 

 

 

 北京 紫禁城

 大和の大陸の行政は、日本から派遣された行政官が半分、

 和漢軍に協力した者が半分を占め、

 民主的な手続きで行政に携わる者は皆無だった。

 「まず、法を順守させて行政を安定させ、不正腐敗の排除を行うことだな」

 「「「「・・・・」」」」 うんうん

 「麻薬の取り締まりも徐々に強化し、いずれは禁止ということに」

 「「「「・・・・」」」」 うんうん

 「それで、行政サービスを向上させながら税収を上げていくことに」

 「「「「・・・・」」」」 うんうん

 「日本人。それで、間引きはどうするある」

 「「「「・・・・」」」」 ???

 「間引きある」

 「間引き?」

 「そうある。間引きある」

 「農作物の間引きは、農民の仕事だろう」

 「違うある。人間の間引きある」

 「「「「・・・・」」」」 ???

 「そ、そんなこと政府ができるわけなかろう」

 「政府の仕事は間引きある!」

 「ま、まさか、そんな・・・」

 「やらないと、食料不足ある」

 「政府がそんなことできるわけないだろう」

 「じゃ 地方行政ある」

 「ば、馬鹿な、そんなことする行政官がいるか」

 「やらないと大変ある」

 「し、しかし・・・」

 「じゃ 犯罪を犯したら去勢ある」

 「そ、そんな」

 「じゃ 玉を取るある」

 「無茶だ」

 「無茶でもやるある」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 重慶

 蒸し暑く、雨雲と霧が大地を覆う。

 和漢軍占領下、裏切り、冤罪、暴行・・・

 目を覆いたくなるような殺戮が繰り広げられていた。

 歴代中国王朝の長寿と盤石な権力構造構築の布石であり、

 統一が残虐であるほど、和漢貴族の日本への従属を強化し、

 日本と新和漢貴族を結束させる、

 旧国民党側の地主勢は農奴にされ、

 和漢軍側の匪賊は和漢貴族として成り上る。

 流された血は、風雨によって大地に消え失せ、

 暴虐と惨劇も、有史から続く時の流れの中に埋没する。

 悪に対し、これほど鈍感な種族は存在せず、懐の深さを感じさせる、

 大陸の人間にとって、島国特有の繊細さは、潔癖症という精神病に過ぎず、

 浄、不浄の差異は、生きる上で些細で滑稽な悩みでしかなかった。

 無論、歴史に埋没させられた憎しみと恨みが大地から湧き出し、

 漢民族の精神構造に影響を与え、

 中国の悲劇が繰り返されているとしたら不幸といえた。

 日本の大陸介入は、漢民族の不幸を日本人が肩代わりするか、

 ある意味、浄化させる可能性も無きにしも非ずであり。

 そして、漢民族が相克的な軋轢で大陸の中に押し潰され、

 中華に地球が支配されなかったことは人類にとって幸運といえた。

 そして、日本人の大陸支配は、日本文化の移植でもあり、

 眠れる獅子、漢民族を目覚めさせる可能性も秘めていた。

 

 

 12/07 東海道沖で東南海地震 (マグニチュード7.9) 発生。

 死者・行方不明者1223人、建物全壊36520件。

 震災後、木炭トラックが投入され、少しずつ再建が始まっていた。

 木炭車は、ガソリン車に比べて馬力が小さく、

 坂道では人が押さなければ登れず、

 被災した子供たちは、飴玉か、御駄賃欲しさで木炭トラックを押し、

 廃材を適度な大きさに斬って乾かし、

 貴重な油に付け込み、さらに乾かし、業者に売っていた。

 政府関係者たち

 「・・・やれやれ、復興まで年月がかかりそうだな」

 「木炭車は、最初の発車まで軽く1時間だからな」

 「ふっ 材料の切れ端には困らなそうだが・・・」

 地震と津波で破壊された家屋が広がっていた。

 「燃えにくくないか?」

 「基本的に木炭車は不完全燃焼だから構わないだろう」

 「しかし、工業地帯がやられるとはね。日本は、呪われてるんじゃないのか?」

 「大陸の呪いだろう。無茶したから・・・」

 「墓を掘り返したのは、日本軍じゃない。和漢軍だ」

 「幽霊だって元人間だよ。僻みもするし、八つ当たりもする」

 「死んだら仏になるなんて言うのは、嘘っぱちだね」

 「大陸支配の責任は、上が取ることになってるのだろうな」

 「現実に漢民族の入国が増えてないか?」

 「日本人モドキの朝鮮人も・・・」

 「面白くない」

 「まぁ 大陸支配は、不幸な結婚ってやつかな」

 「国家レベルで、それはないだろう」

 「どこの馬鹿が大陸支配なんて言い出したんだ」

 「大陸利権で左団扇の生活が待ってる元軍部と元軍属連中さ」

 「馬鹿共が」

 「とりあえず、石油がなくても石炭と鉄鉱石で日本を再建しないとね」

 「1901年から20世紀が始まっているというのに、日本だけ19世紀じゃないか」

 「船は石炭を燃やして、戦車も飛行機も駄目かな・・・」

 「アメリカと戦争しなくてよかったよ」

 「アメリカと開戦に踏み切ってたらボロ負けの最中に地震か」

 「泣きっ面に蜂で踏んだり蹴ったりだったな」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 名古屋港

 中国臨時公務公団と掲げられたノボリの下、

 被災者たちが集まっていた。

 「まったく、30年くらいまでは良かったんだがな」

 「資産凍結で資金繰りがつかなくなったと思ったら、石油輸出禁止で会社は止めを刺され」

 「別の会社に入社したと思ったら産業の統廃合でまたクビだぜ」

 「その上、地震と津波で家は、押し潰されて流されて何にもかもなくしちまったよ」

 「無事だっただけでまだいいだろう」

 「4人家族だったのに地震で生き残ったのは俺1人だ」

 「家の姉夫婦の家族は、石油輸出禁止で会社を潰されて、家族で無理心中だ」

 「子供は、まだ3つだったのに・・・」

 「酷いご時世だな」

 「俺も、石油禁止で何もかもなくなっちまったな」

 「それに国も国だよな」

 「アメリカに船を臨検されるし、領空侵犯されるし、日本は本当に独立国なのかね」

 「まったく、軍事費ばかり取りやがって、日頃威張ってるくせに腰抜け軍人どもばかりだ」

 「軍属だけいい思いしてるんだよ。税金泥棒が」

 「こんなことならアメリカと戦争すればよかったのに」

 「まったくまったく、政府の根性無しときたら・・・」

 「そうはいうけど中国を占領しただろう」

 「おかげでこうやって仕事にありつける。それも公職じゃないか」

 「ま、ちょっとは、いいけどな・・・」

 上品そうな背広を着た人柄のよさそうな男たちが現れる。

 「みなさん、お待たせしました」

 「大陸特別職員枠財団会長の鷺 沙技也です」

 「それでは、大陸行政で職員の緊急募集を行います」

 「給与は・・・」

 「待遇は・・・」

 「女子供も大丈夫なの?」

 「ええ、大丈夫ですよ」

 「事前にこちらで選んだ人材ですし、管理仕事はたくさんあるので安心してください」

 「それでは急いで乗船してください」

 上質の服装の政府の人間らしい男たちに誘導された被災者の集団は、

 着の身着のまま機帆船に乗せられ・・・

 「よし、そこまでだ」

 怪しげな男たちが波止場の周囲を囲み、

 いつの間にか、海軍の哨戒艇が機帆船の船首を塞いでいた。

 政府役員らしき男たちは、慌てふためいて逃亡し、

 怪しげな男たちに取り押さえられていく、

 被災者たちは、なにが起きたかわからなず、呆然とするしかなく・・・

 「ああ・・・特高です。みなさん、ご苦労様です」

 「こいつらは、大陸の人身売買業者です」

 と、特高の言葉に被災者たちは恥ずかしいのか落胆し、震災跡に戻っていく、

 怪しげな男たち

 「ったくぅ 甘い言葉にコロリと騙されやがって、面倒見切れねぇぜ」

 「政府が告知もせず、そんなことするわけないだろう」

 「大陸との交流で増えるだろうな。こういうの」

 「ま、大陸側に情報網を作ったおかげで未然に防いだのだから悪くないよ」

 「取り敢えず、人身売買組織は押さえる事ができたし」

 「あとは、大陸と連絡を取り合って、芋づる式だな」

 「裏組織ごと、闇から闇へでもいいけどな」 にやり

 「中国人は、そっちの方が効果あるだろう」

 「そ、そういうのは、10回に1回くらいじゃないと不味くないか」

 「少な過ぎると逆に日本の闇組織は、って舐められないか」

 「元を断つことはできるよ」

 「大陸の特高は、中国の裏社会をほとんど押さえたという話しだ」

 「占領して間もないというのに?」

 「闇組織は、落伍者と敗残兵から作られるからね。これからだろう」

 

 

 東部戦線

 メッサーシュミットとラボーチキンが空中戦を展開し、

 シュトルモビク爆撃機の大編隊がドイツ軍陣地へ爆弾の雨を落としていく、

 ソビエト砲兵隊の41.89口径76.2mm砲が砲撃を繰り返し、

 ドイツ軍縦深陣地が粉砕されていく、

 ドイツ軍は、兵器の質的向上は見られたものの、量的な劣勢は補い難く、

 東部戦線の戦力比は、ドイツ軍1、ソビエト軍3となっていた。

 より深刻だったのは、攻勢から守勢に回った時のマンパワーの格差であり、

 ベテラン将兵の減少は、対応力の低下を招いていた。

 ドイツ軍将兵たち

 「やれやれ、ドイツ陸軍も精鋭の将兵が削られて、一気に色褪せてしまったな」

 「開戦時のソビエト軍は、粛清で三流だったがな」

 「生き残ったソビエト軍将兵は練度が高まってるし」

 「やっぱり、軍隊は潰しの利く将兵を何人前線に送れるかだよな」

 「なんか、スターリンの粛清を手伝わされた気もするね」

 「ふっ まったく・・・」

 「ところで、日本の参戦は得られないのかね」

 「日本は、燃料がなくて石炭産業に移行したんだと」

 「ふっ なんだそりゃ 中世に逆戻りじゃないか」

 「ま、元々 猿真似で成り上った国だからな」

 「だけど、中国を征服したんだろう」

 「それで力尽きたのかもね」

 「まぁ いいさ、日本に暴走されて、アメリカに参戦されるよりましだろうよ」

 「あはははは・・・そんなバカなことはできないだろう。ドイツだって無理だ」

 

 

 

 

 御前会議

 陸海軍将校が沈痛な表情で青ざめ

 文民系代表が微かな期待を持って上座を見つめる。

 日本の大陸運営は、軍と民の利権構造を逆転させ、

 軍が必要とする人材を破綻させてしまう。

 「結論を言うなら、現状の日本陸海軍は維持不能であると思う」

 右に座していた者たちが落胆し、

 左に座していた者たちが表情を緩ませ輝かせた。

 「それでは・・・」

 「通商代表をアメリカに送り野村大使に合流させなさい」

 

 

 アメリカ東海岸のとある島

 銀行家、ゼネラルモーターズ、カリフォルニアの石油王・・・

 アメリカ産業の代表が集まっていた。

 「アメリカは、まだ、参戦の口実が得られないそうだ」

 「欧州の戦線は?」

 「イギリスは通商破壊で虫の息。ソビエトもモスクワとレーニングラードを回復しただけ」

 「東部戦線は、一進一退だそうだ」

 「参戦の口実が得られなければ、このまま英独ソ3国共倒れまでレンドリースを続けるか」

 「まぁ 回収が楽しみではあるがな」

 「経済制裁中の日本産業は?」

 「我々の密偵の話しでは、統廃合で石炭と水力発電を中心にした産業に切り替えつつある」

 「そんなことができるのか」

 「産業転換と大陸利権収得まで、不便さを我慢し」

 「失業と犯罪と自殺の増加に堪えられれば可能だそうだ」

 「まさか、日本が忍従するとはな」

 「日本の航空機は?」

 「日本の石油生産はゼロじゃない」

 「大陸分を加算すれば軍と民が使う分くらい確保できるそうだ」

 「いっそ、ドイツか日本の船を沈めては?」

 「それでは、ドイツ人か日本人を怒らせるだけで、アメリカ国民は怒らない」

 「我々が求めてるのは、ドイツがアメリカ国民を怒らせる事だ」

 「あるいは日本がアメリカ国民を怒らせる」

 「やはり参戦の動機が弱いとアメリカ国民は本気で戦えないか」

 「といより、宣戦布告の権利は議会にあって、大統領にあるわけじゃない」

 「仮にルーズベルト大統領が議会で宣戦布告の演説をぶっても恥をかくだけだ」

 「まぁ 一般国民は、政府のいいなりで外国に送り出され」

 「殺し、殺されては面白くないからな」

 「一般国民の利益代表の議員がウンというわけもないか」

 「産業再建のチャンスが転がっているというのに、民主主義の厄介なところだ」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 ドアが開き、執事が現れる、

 「東方の友人が到着しました」

 「・・・彼は、華僑よりマシな条件を出してくれるのだろうか?」

 「さぁね、ドイツも日本も我々の挑発に乗らないのなら、交渉するよりないな」

 「日本の有力者とのパイプがあっても悪くないだろう」

 そこに日本の非公式代表が通され、末席に座らされる、

 青年は、標準的な日本人らしく華奢に見えた。

 「それで、我々に有益な提案とは?」

 「では・・・・」

 

 

 アメリカ大統領選挙でフランクリン・ルーズベルトが落選。

 11/07 第33代大統領 トマス・E・デューイ就任

 白い家

 「日本の経済制裁を解き、大和連邦と新しく通商条約を結ぶ」

 「し、しかし・・・」

 「アメリカ産業は、市場を求めているのだよ」

 「欧州で軍需産業が利益を得られている」

 「東アジアは、民需産業が巨大な利益を得るだろう」

 「大和という名の安定した巨大市場をね」

 「日本は民族自決を奪っています」

 「軍需が強くなれば合衆国の統合に都合がいい」

 「しかし、アメリカ合衆国は軍人を養うための大国になってしまうだろう」

 「それでは、アメリカ国民が求めるアメリカではなくなってしまう」

 ドイツと日本がアメリカ軍の挑発に乗らなかったこと、

 そして、東アジアの巨大市場がルーズベルト大統領の4選を防いだ。

 

 

 12/24

 白い家

 トマス・E・デューイ大統領

 “クリスマスだというのに多くの血が世界で流れています”

 “なぜこんなことになったのでしょうか”

 “権力者の地位を守ろうとし。資本家が利益を優先したためです”

 “世の中は金だと、スクルージが言ったからかもしれません”

 “余計な人口が減ることを喜ぶ勢力を許すべきではありません”

 “アメリカ合衆国は、善良な民主主義者によって国家が運営されているのであって”

 “富を持つスクルージによって運営されてはいないのです”

 “公平な機会と競争が繁栄をもたらすのであり”

 “己が富を守るため、他国の国境を狭め、作為的に追い詰めてはならないのです”

 “他国の貧困層を増やすようなことがあってもならないのです”

 “我々は、資本の自由化とによる可能性の追求と”

 “民主主義という公平な社会を守るため”

 “欧州の独裁体制を許してはならないのです”

 “しかし、人種差別的な思惑でなされた非交戦国への経済制裁は解くべきであり・・・”

 “アメリカ合衆国は、対日経済制裁を解除します”

 

 

 

 リバティ船が次々と日本と大和の港に入港していた。

 市場開放と自由競争の名の下、圧倒的な物量の商品が荷揚げされ、

 アメリカ製商品が日本と大和の市場を席巻していく、

 外資系に権利が売却され、東アジアにGM工場が建設されていた。

 東京湾

 新聞記者たちが外資参入の様子を写真に撮っていた。

 「どうやら、アメリカは、本気で日本と和解かな」

 「なんでも、アメリカは日本の防疫機関に興味があって、日本と開戦しない方に傾いたらしいよ」

 「あははは・・・バカだな」

 「な、なんだよ」

 「そんなのアメリカは人体実験をしたことがないって、アメリカ国民向けのプロパガンダに決まってるだろう」

 「えっ!」

 「つまり、医療の劣った国の人体実験に興味を持ったという事実で」

 「アメリカがこれまでやってたた黒人とインディアンの人体実験を隠してるだけ」

 「そ、そうなのか」

 「化学兵器と細菌兵器は、医療技術に比例するんだよ」

 「アメリカ医療は、日本の医療の何十年分、進んでると思ってんだ」

 「・・・・」

 「そんな話し、真に受けたら文屋は務まらないぜ」

 

 

 通商関係の日本人たち

 「市場開放は本当によかったのかな」

 「せっかく、石炭産業に移行したというのに日本企業は潰されてしまうぞ」

 「日本が石炭産業中心に移行したからアメリカは、石油輸出禁止処置を解いたのさ」

 「一旦、石炭産業が軌道に乗ると石油産業の進出を阻む結界になりかねないからね」

 「日本産業は統廃合したばかりだ。それほど脆弱でもないだろう」

 「それにアメリカ資本は、世界一だと慢心している」

 「GMの上層部は、自動車の機構を全く理解していない」

 「今は下請けでも、いずれ、日本資本が巻き返せるだろう」

 「なにより、市場開放は、アメリカも同じ条件だ」

 「シグマ・キャリアは?」

 「骨髄移植している者は少ないし」

 「3ヵ月もすれば血は入れ替わるから、ばれることはないよ」

 「だといいがね」

 「それに外資は待遇がいいし」

 「日本企業はもう少し、社員の待遇改善をすべきだよ」

 「日本資本に待遇改善できる体力はないのでは?」

 「企業努力はすべきだよ。怠惰は良くない」

 「それに縁故繋がりなムラ社会と産業は才能を潰してしまうし、打破すべきだ」

 「日本もアメリカンドリームですか?」

 「良いモノを良いと認める社会は才能がある者が潰されずに済む、いいと思うね」

 「アメリカは人種のるつぼですからね」

 「縁故で派閥聖域を作り難いですし」

 「しがらみの少ない利害関係だけの社会だからでしょう」

 「それに既得権もありますし」

 「アメリカンドリームは、日本より機会が多いだけで演出という気がしますね」

 「演出でもアメリカンドリームに違いないよ」

 「しばらく、アメリカ企業のいいように大和連邦の市場が荒らされますよ」

 「日本製は競争力で負けてるからな」

 「このまま、石油がない状態よりいいし、しょうがないさ」

 「しかし、日本は内側から変えられないんですかね」

 「変えたくても変えられんよ」

 「排他的なムラ社会で聖域化させたがるからね」

 「どこもかしこもカバン持ちの主従関係からだ」

 「大和利権で変えられるのでは?」

 「量の拡大と質の拡大のチャンスでもあるな」

 「日本人が中国人のタフさとアメリカ人の合理性が得られるなら悪くありませんがね」

 「中国人の利己主義とアメリカ人の個人主義だと最悪と言うこともあるからな」

 「それは表と裏みたいなものだよ」

 「結果が良ければ表、結果が悪ければ裏だ」

 「裏と言えば、アメリカマフィアの侵入も許してしまうのでは?」

 「シグマキャリアは、戦争より裏社会の抗争が得意だ」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 日本は、中国大陸を統合してしまいました (笑

 公共サービスで大陸の面倒をみなければならず、

 逆に日本社会の腐敗は進むかもです。

 外交上の得点を得たいアメリカ大統領デューイによって、日本の経済制裁が解かれ、

 日本と大和は、石油を輸入できる代わりに、市場開放と自由競争に晒されます、

 アメリカ資本が東アジアを席巻し、

 日本資本は品質と生産量で劣勢。駆逐されそうです。

 ですが十数年後、日本企業はアメリカの生産管理、品質管理、工程管理のノウハウを会得。

 巻き返せると信じて終わります。

 取り敢えず、日本は産業の血液、石油を輸入できそうです。

 欧州は、まだ戦争が続いてます、どうなるんでしょう (笑

 

 

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第08話 1943年 『下剋上の大和大陸』

第09話 1944年 『徳治という名の無法』

第10話 1945年 『大和連邦と新世界秩序』