月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『DNA731』

 

 第14話 1949年 『無理なものは無理』

 大和連邦の税収は飛躍的に増えたものの、

 大陸の治安維持と設備投資に予算のほとんどを奪われ、

 必然的に軍縮へと向かっていく、

 必要なのはアメリカ本土を爆撃可能な爆撃機などではなく、

 大和連邦の内線を飛行し、人員と物資を空輸できる大型旅客機だった。

 6発旅客機 「富嶽」

 自重42000kg/全備重122000kg DB610エンジン2900馬力×6発

 全長46.00m×全幅63.00m×全高8.80m 翼面積330u

 最大速度600km 航続距離10000km  34列×4席 136席

 関係者たち

 「軍用じゃないのが情けない」

 「軍用にも使えるよ。使おうと思えば・・・」

 「アメリカは、DC6。ボーイング377を開発してるけど」

 「ふん、客は日本の方が多いから勝てる」

 「和漢貴族様たちが大挙して日本の空港に降りて、日本女性を買い漁っていく光景が目に浮かぶよ」

 「それはそれ、これはこれ」

 「まぁ 日本人も大陸でやってるけどな」

 「日本の航空産業を維持するためだし、航空機生産量は、次期主力機の開発力にも繋がるし」

 「ていうか、エンジンがドイツ製なのに、どう開発力が付くんだよ」

 「だから、地道なところからコツコツとライセンス生産だろう」

 「中島ハ54空冷式4列星型36気筒は?」

 「客が怖がって乗らないだろう。無理なものは無理」

 「エンジンを外国任せってまずいだろう」

 「大和連邦の資源は強いから不評を買うような真似はしないさ」

 「のんびりと発展させればいい」

 「・・・・」

 

 

 横浜中華街、神戸南京町、長崎新地中華街は急速に拡大し発展していた。

 大陸の和漢貴族たちは、気前よく円札の束を振り撒き、

 自分の店を横浜に出店させ、日本の活動拠点としていた。

 彼らの動機は、国益より利己的であり、生き残るためであり、

 そのことで、日本をどうするかは、副次的なものに過ぎない、

 中華飯店 桜牡丹楼

 和漢貴族たち

 「人間は、身を守るとき、奪うとき、殺すとき、嘘をつくある」

 「組織も同じある。組織を守るとき、奪うとき、殺すとき、嘘をつくある」

 「国も同じある。国を守るとき、奪うとき、殺すとき、嘘をつくある」

 「侵略の意思がなかったなどと、日本人は誤魔化せない事実を美化するから滑稽ある」

 「日本人は、本音で生きてないある。嘘つきの偽善者ばかりある」

 「ムラ社会の事勿れを動かすには大義名分の虚飾が必要ある」

 「大陸は賄賂を使うのが普通ある」

 「日本は、受け取らない事多いある。賄賂が使い難いある」

 「自分を偽って生きる人生は何の価値もないある。生きてると言えないある」

 「日本人は臆病で嘘つきで小心者ある」

 「日本人は、みんなで貰える接待と慰安旅行が好きある」

 「それなら、そこから崩すある」

 「みんな知ってると崩しにくいある」

 「日本人は、どいつもこいつも自分に嘘をついてるある」

 「杓子定規で融通の効かない民族ある」

 

 

 日本の某銀行

 「振り込みは?」 台湾人

 「ありません」 行員

 「騙されたか・・・」

 「大陸の人には気を付けた方がいいですね」

 「どうしてあいつらは、嘘ばっかりつくんだ」

 「同族なのでは?」

 「違う!」

 「日本人や台湾人は他人に対し正直であろうとしますが」

 「大陸の人は自分に対し正直であろうとするのでしょう」

 「そんなの近代国家の国民とはいえん」

 「欧米人は契約に対して正直ですが、それ以外は自分に対して正直ですよ」

 「日本には日本の美徳というモノがあるだろう」

 「大陸を支配したのが運の尽きでしょうね。これから変わらずを得ません」

 「日本の美徳は残すべきだろう」

 「和漢貴族の口座預金額は、台湾人の口座預金額より増えてますし」

 「日本人の預金口座額を超えるのも時間の問題ですし・・・」

 「・・・・」

 

 

 資源が大量に運び込まれ、市場は拡大していた。

 設備投資は繰り返され、

 日本企業はシェア拡大のため、資本を欲し、労働者を欲していた。

 日本の某企業

 和漢貴族たちと日本人経営者

 「投資するある」

 「本当ですか?」

 「日本経済は派閥で膠着しきって、利権構造で淀んでるある」

 「大陸資本は、真に有望な投資先に投資するある」

 「それはありがたい」

 「出資比率は1対1でいいあるか」

 「い、いや・・・それが・・内務省の圧力で大陸資本は24.9パーセント以下と・・・」

 「わかったある。その代り、土地を抵当にお金を貸すある」

 「し、しかし・・・」

 「年率3パーセントの良心貸付ある」

 「・・・わ、わかりました」

 「労働者も供給できるある。格安賃金でいいある」

 「その代り、賃金は天引きある」

 「わかりました・・・」

 日本は、主流系列企業体から外れ、

 有望ながら資金力と労働力が得られず伸び悩んでいる独立系企業が多く、

 和漢貴族は、高度な工業品生産能力や高度技能者を持っていなかったものの、

 大陸流通で強い支配力があり、

 資金力と労働力(人身売買)供給を武器にしていた。

 和漢貴族と日本の独立系企業が結び付くのは必然であり、

 和漢貴族は、着実に日本国内に足場を作っていた。

 

 

 満洲

 大陸の近代化は、徐々に進み、

 日本人の入植は増え、

 日本人の地主と家主は、莫大な利益を上げてしまう。

 軍国化で縮小していた大正モダンニズムが息を吹き返し、

 第二次モダンニズムが花開きつつあった。

 大陸資源の売却と大陸の市場は、大陸沿岸を近代化させ、

 日本列島の社会基盤を急速に増大させていく、

 そして、産業拡大と欧米諸国との取引増大に伴い、

 麻薬の非合法化が進み、人身売買も忌み嫌われる所業となっていた。

 社会構造的には、まだ、必要とされていても、

 世論が受け入れられない分岐点といえた。

 ハルピンの喫茶店

 経済制裁が終わり、戦後になると、代替コーヒーでなく、

 本物のコーヒー豆が輸入され、

 一般でも安く飲まれるようになっていた。

 「出発は?」

 「3時だから余裕で間に合うよ」

 「トレインホテルで、大和大陸一週は悪くないけど、安全性は、どうなの?」

 「危ない場所に入りこまなければ大丈夫らしいよ」

 「そうそう、匪賊たちが戦争を実演してくれるって、本物の撃ち合い」

 「それヤバいだろう」

 「トレインホテルの一番の目玉だろう。白人観光客も増えてる」

 「問題にならないのか」

 「いまのうちだけだよ。見ておかないと損」

 「そんなことやってるから、アメリカに48年のオリンピック取られたんだよ」

 「いやいや、参戦国は、自重しろってことだろう」

 「48年のオリンピックは、参加できただけでも御の字だったし」

 「大陸支配は、労ばかりで、旨みが乏しいし」

 「52年は?」

 「ヘルシンキ。次の56年はメルボルンが有望そうだ」

 「東京は?」

 「さぁ 今世紀最大の侵略国だからね・・・」

 「どちらにしろ、大和連邦で一枠だし。人口比で日本人枠は、5対1・・・」

 「選抜次第だけど、最大多数の漢民族を入れないわけにいかないだろう」

 「東條の野郎・・・マジ殺してやる」

 「なんとかならんのか」

 「こればっかりはな。大和連邦から独立するしかないだろう」

 「「「・・・・」」」 ぶっすぅうう〜

 

 

 

 医学の牙城 石井731防疫機関

 エウェンクの血族が少しずつ増えていく、

 日本の英才教育によって、より日本人らしく、

 そして、血の特性を後天的に高めるため、暗室での訓練が行われる。

 シグマ波は、物理的な危機を回避するための脳波、

 アルファ波は、殺気など精神的な脅威を察知する脳波、

 そして、体内に流れる血液が受像機の役割を果たしていた。

 血液を他人に輸血しても、3ヵ月ほど、その効果が得られ、

 特高の大陸支配力の根源になっていた。

 医者たち

 「最近、マルタの確保が難しくなってるらしい」

 「和漢貴族と話しが付いてるんじゃないのか?」

 「死刑囚はこっちに回してくれるらしいがね」

 「ほら、正道語りの偽善者が増えてるからだろう」

 「軍上層部も大義名分がないから、俺たちを守れなくなってるし」

 「けっ ええ格好しのヘタレが、戦争が終わるとすぐこれだ」

 「ていうか、日本医療の向上は俺たちのおかげだろう」

 「中将は?」

 「最近は、保身ばかりで覇気を無くした領主になってるよ」

 「俺たちは尻尾切りにされかねないね」

 「やれやれ、日本人は聖域に入ると責任の及ばない院政したがるからな」

 「最近、欧米諸国の諜報員が周りに集まってるらしく、なにもするなだと」

 「もう潮時で、機関解体かな」

 「ま、日本国内の医療の向上でバラバラに派遣されるかも」

 「いや、機密を知り過ぎてる。せいぜい巡回医師だろう」

 「「「「・・・・」」」」 どんより

 「最悪、マルタを処分して、エウェンクの血族を守る機関にされてしまいそうだよ」

 「それがあったな」

 

 

 

 北京 紫禁城

 日本人の行政官が増えるに従い、

 不正腐敗が減少し、治安が安定していく、

 和漢貴族は、賄賂攻勢が上手くいかないことが腹立たしいのか、

 日本人行政官を窮屈で不自由で度し難いほどバカと嘲笑し、

 漢民族の多くは、賄賂も受け取らず、仕事をする日本の公務員に驚嘆する、

 何はともあれ、大陸の権力機構が強化されるにつれ、法整備も進み、

 裏社会は抜け道を模索する。

 和漢貴族たち

 「法律が強くなり過ぎて息苦しいある」

 「人間のために法律が存在するある。法律の為に人間が存在するわけじゃないある」

 「このままだと大陸全体が横浜中華街にされてしまうある」

 「不自由で面白みのない大陸ある」

 「戦うある」

 「駄目ある。日本の特高は強過ぎある」

 「我々が裏で手を引いてるとわかったら潰されるある」

 「もっと連携して力を付けるある」

 「難しいある」

 「漢民族は、和漢貴族より日本人を信用してるある」

 「漢民族は、日本人より、和漢貴族を憎んでるある」

 「和漢貴族は悪くないある」

 「和漢貴族は、大陸を統一することで、半植民地状態から漢民族を救ったある」

 「負け組の成功者への同族嫌悪ある」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 重慶

 大礼堂前の広場を平和団体が行進し、

 警官たちが周囲を警護していた。

 「よくも飽きないことで・・・」

 「右も左も同根で結託してるからな」

 「左が弱いと思ったら自作自演で売国的なチラシまで張って自己正当化してるし」

 “侵略国の日本人は滅びろ!”

 「これ、右翼が自分で作って、危機感を煽ってるんだぜ」

 「そういや、軍籍の頃は似たようなことやってたな」

 「まぁな」

 「しかし、大半の中間層が迷惑だと思うね」

 「ああやって、集金してるんだろう」

 「真っ当な生き方じゃないな」

 「安全保障と平和は、表裏一体だし、一種の宗教みたいなもんだよ」

 「だけど、本当に危険なのは、権謀術数で安全保障と平和を利用してる連中か」

 「実のところ、右でも左でもよくて、権力のために手段を選ばない連中もいるからね」

 「正義の英雄になりたがりの権威主義者は、右にも左にもいるからね」

 

 

 13両編成 装甲列車 “黒姫”

 指令室

 懐疑的な特高警察官たちと自信ありげな技術者たち

 「機外カメラを搭載してますから、このモニターから外の状況がつかめます」

 遠近感の乏しい白黒映像が映し出されていた。

 「この辺は、霧と雨が多いの知ってるだろうな」

 「風魔部隊なら、より効率的に運用できるはずです」

 「リモコン操作に血を?」

 「まだまだ、リモコン制御は脆弱ですから」

 「ちゃんと飛ぶんだろうな」

 「エンジンはドイツ製です」

 「そりゃ 安心だ」

 「狙い撃ちされないのか?」

 「拳銃、短機関銃くらいなら大丈夫です」

 「小銃弾は?」

 「なるべく当たらないようにしてください」

 「「「「・・・・」」」」

 「こちらの機関銃は、このモニターを見て撃つのか?」

 「はい」

 ターゲットスコープらしき同心円状の線がモニターに映し出されていた。

 「「「「・・・・」」」」 疑心暗鬼

 「97式自動砲か、臼砲の方が役に立たないか?」

 「風魔部隊の生存性を高めるためですよ」

 「それとシグマキャリアの可能性と・・・」

 「まぁ 上空から見られているなら群集への牽制になるか」

 「航空機型の無人機も検討していますが飛行場と切り離せませんし」

 「装甲列車での運用は、こちらの方がより小回り気が利きますし」

 「効果があると思うわけです」

 特務格納車両の屋根がスライドすると、

 全長4m×全幅1.6m×全高3m  ローター径6.2m

 自重600kg/全備重1000kg

 300馬力 最大速度148km/h 戦闘半径74km

 6.5mm機銃1丁、爆弾60kg×4発装備の無人ヘリ “鴉” が現れる。

 「少佐」

 「やってみろ」

 「壊さないでくれ、高いんだからな」

 無人ヘリ “鴉” は、プロペラを回転させると上昇し、

 モニターの白黒映像もゆっくりと視点を上昇させ、視界を広げていく、

 「何とも不安定だな」

 「西風でしょう、この時期は吹きやすいですから」

 「んん・・・ドイツ製のジャイロにした方が良かったかな」

 「おいおい」

 横風にあおられた鴉は、懸命の操作にもかかわらず、

 地上に墜落し破損してしまう。

 「「「「・・・・・」」」」

 「10年くらい早過ぎたんじゃないのか?」

 「・・・・」 むっすぅう〜

 

 

 

 四川盆地 成都

 比較的涼しい成都は、日本人にも好まれたのか入植が進んでいた。

 日本庭園

 日本人が美しいと感じるワビサビ、

 漢民族には貧相に見える。

 漢民族が余り見て欲しくない寂れた史跡に日本人が関心を示したり、

 日本人がここぞという光景を漢民族は一瞥することもなく通り過ぎたり、

 そういった感性の違いは、よく起きた。

 とはいえ、好みの違いが分かれば、それらしく対応するのも人で・!&!&

 日本人と中国人

 「あのアホォどもが・・・」

 日本人が少し見上げた後、呟く、

 「どうしたある」

 「あれは日本人の美観に入れないでくれ」

 「日章旗ある。国旗あるよ」

 「神社仏閣に日章旗は合わないよ。日本庭園にもね」

 「そうあるか」

 「日本の国威高揚をしてる連中は、無分別で品性がないときがあるからな」

 「それ、漢民族も同じある」

 「国民軍と共産軍が一番良識が低くて最悪の強盗殺戮集団だったある」

 「そ、そうか・・・」

 「日本人がそういう極悪な残党狩りを止めてるのが不思議ある」

 「ま、まぁ 戦争は終わったし」

 「全然分かってないある。国家百年の大計は戦後処理ある」

 「バカと犯罪者に情けをかけるのは駄目ある」

 日本人と漢民族が平行線で分かりあえないメンタルな部分も存在した。

 

 

 もっとも単純な支配は封建社会で領主、地主・大家になることだった。

 日本は、明治維新以降、

 製造、流通、販売、金融、情報と第二次産業、第三次産業の比重が増えたものの、

 地主、大家といった封建的な要素が廃れたわけではない、

 産業が多様化し、副次的な付加価値が増えるにつれ、

 封建的な重みが小さくなっただけといえる。

 戦後、武器による戦いが終息しても権力闘争と経済戦争は、終わることなく続く、

 商品価値を賭けた攻防が展開され、

 勝者は、価値の高い生産品で利益を上げ、

 敗者は、損益分岐点を超えられず、利益を得られず淘汰されていく、

 大和連邦成立以降、

 日本は企業は、欧米諸国の高品質商品に圧倒され、

 商才溢れる漢民族との取引で劣勢を強いられていた。

 日本の政官財は、生き残りと繁栄策を模索し、

 大陸西方に殖産興業を中心とした社会基盤を広げ活路を見出していく、

 ウィグル (166万ku)

 大和連邦最大面積を誇る省だった。

 面積の4分の1は砂漠、

 耕作地は、小麦、綿花、テンサイ、ブドウ、ハミウリ、ヒツジ、イリ馬が育てられていた。

 日本人がウィグルに目を付けたのは、地下資源の可能性と対ソ防衛であり、

 和漢貴族がウィグルに目を付けたのは、鉄道がウィグルに向かいつつあったこと、

 そして、どう権力構造に組み込まれるかだった。 

 日本資本は、ウイグル族、漢族、カザフ族、キルギス族、モンゴル族の中に入り込み、

 造成と社会基盤を広げていた。

 ドイツの建設機械が貨物列車から降ろされ、建設工事が始まる。

 日本人関係者たち

 「どうして、日本人は、親方日の丸で物事を進めていきたがるかね」

 「偉い人、強い人に媚びていく、日本人の事勿れは、昔からの事だからね」

 「大陸で偉い人、強い人に媚びてたら殺されるだけだから、その辺が違うな」

 「日本だって、隠し田は1割超えてたそうだけど」

 「大陸は、もっとしたたかだと思うよ」

 「日本の城郭神社仏閣に抵抗は?」

 「中華文明の一派が勢力を広げてる。といった程度じゃないかな」

 「違うというべきか。そう思わせといた方がいいのか、悩むところだ」

 「しかし、本命はウィグル省より、青海省じゃないのか?」

 「本命はそうでも、ソビエトを見張らないといけないだろうし」

 「なにもしないってわけにはいかないだろう」

 「このまえ、軍の連中が怖い形相で睨んでたよ」

 「電気と上下水道の予算取りで負けたからじゃないのか」

 「電気と上下水道は必要だろう」

 「まぁな でも大陸で、どれだけ社会基盤を作っても日本人は嫌われそうだな」

 「というより、どうせ、社会基盤ごと奪うことしか考えてないのさ」

 「人のいい態度取ってると付け込まれるだけだぜ」

 「自分で自分の首を絞めるとはね」

 「「「・・・・」」」 ため息

 

 

 

 ウルムチ飛行場

 ウルツブルグ(ドイツ製レーダー)が設置されていた。

 索敵距離は70km、

 最新の戦闘機が700km/hで侵入しても、基地到達の6分前に気付くことができた。

 レーダーは、航空機の速度向上に比例して性能向上が要求され、

 敵機の早期発見のため

 レーダー基地の設置場所は、仮想敵国側に近付き、

 数も増えていく傾向にあった。

 ドイツ人技術者たちは、時々 不審とも思える素振りを見せ、

 「本当にドイツのレーダーが必要なのか?」

 と日本軍将兵に尋ねる。

 無論、日本軍将兵たちは、喉から手が出るほど必要なのだが、

 ドイツ人技術者たちは、疑心暗鬼に陥ってるのか、不審がっていた。

 深夜、単発戦闘機(ゼロ戦)が4発爆撃機(B17)を追いかけ回す、

 深夜あるいは、濃霧に敵司令部(国民軍)を精確に爆撃する。

 この芸当を合理的に説明するなら、

 “日本は、高性能小型レーダー装備の全天候型戦闘機を開発した”

 の他に説明がつかなかった。

 ドイツ最先端レーダー技術であれ、

 イギリスの最先端レーダー技術であれ、

 日本の戦闘機と爆撃機が成した芸当は不可能だった。

 それなのに日本軍は、ドイツ製レーダーを購入し、有難がって使っていた。

 ドイツ人技師たち

 「成都の本部がアメリカ、イギリス、ソビエトの諜報部を確認したらしい」

 「随分、内陸にきてるじゃないか」

 「商用と宣教に紛れてだろう」

 「例の風魔部隊の情報を求めてか?」

 「裏社会の夜間戦闘でいうなら、キルレートは100対1だそうだ」

 「ランチェスターの法則が成り立たないじゃないか」

 「アメリカが日本との開戦を見送った理由の半分は、日本軍の夜間戦闘能力の高さだよ」

 「具体的には、風魔部隊の夜間戦闘能力だろう」

 「本国で、97式自動砲を試射したそうだが」

 「国民軍や日本軍のいうような狙撃の戦果は上げられないそうだ」

 「歩兵携帯のレーダー照準器や赤外線照準器などいまでさえ、あり得ないだろう」

 「旧国民軍将兵の話しだと日本軍陣地で、赤い赤灯が確認されたのは事実らしいよ」

 「本当に赤外線照準器なら敵陣地の赤灯より、自分の体に当たる赤灯に気付くはずだ」

 「どうせ、煙草の火だろう」

 「特にかく、日本軍は不審な点が多過ぎるよ」

 「例の一番怪しいって、石井731防疫機関は?」

 「ドイツの医療部隊と情報交換中だがね」

 「ジーンリッチ技術は、基本概念すら達してないし」

 「日本医療は20年、遅れてるそうだ」

 「大したことないな」

 「戦前、日本医療は、50年遅れてると言ってたのにな」

 「相当、人体実験したんだな」

 「ドイツほどじゃない」

 「しかし、日本人の吸収力は高いのは確かだ」

 

 

 建設されたばかりの飛行場に4発爆撃機連山改と4式戦闘機疾風が着陸する。

 日本空軍

  連山改

  自重20000kg/全備重40000kg

  全長22.93m×全幅32.54m×全高7.20m 翼面積112.00u

  ダイムラーベンツDB610A 2870馬力×4基

  最大速度650km/h  巡航速度413km/h

  航続距離4500〜9000km 乗員7人

  爆・雷 5000kg

  20mmマウザー機関砲6門、13mm機銃4門

 

 

  4式戦闘機 疾風

  自重2798kg/全備重4090kg

  全長10.6m×11.24m×全高3.38m 翼面積21u

  DB605エンジンDCM 2000馬力

  速度780km/h 航続距離1600km

  マウザー20mm4丁  R4M×4発

 

 国防軍の主戦力が治安維持に移行した後も最新鋭の戦闘機は人気があった。

 日本軍将兵たち

 「随分、スマートな戦闘機になったじゃないか」

 「水冷エンジンだからね」

 「エンジンは重くなったんじゃないのか?」

 「2、30kg分くらいだな。むしろ、全長が伸びたのが気になるね」

 「離着陸は?」

 「空冷の方が抵抗が大きいから着陸は楽だろうけど、視界は変わらないらしい」

 「アメリカは、F9Fパンサー。ソビエトはMiG9ファーゴを開発したというのに・・・」

 「日本はドイツからエンジンと機銃を買うばかりか・・・」

 「ドイツのジェットエンジンは?」

 「買って機体を開発してるよ。例の震電に積むそうだけど。駄目ならMeP1111だと」

 「無理せず、機体ごと買っちまえよ」

 「せめて機体くらい、国産でやりたいんだろう」

 「やっぱり、民間に金が流れてるのか」

 「資源大国になっても社会基盤を作らないとどうしようもないし」

 「和漢貴族の札束で頬を叩かれないようにしてるんだろう」

 「いくら軍事力で大陸を支配しても和漢資本、華僑資本に民間が支配されちゃ国防にならんからね」

 「ちっ 人は金に弱いからな」

 

 

 

 地中海、イタリア

 北アフリカとシチリア島、サルデーニャ島をイギリス軍に占領され、

 戦線は、戦後、国境線となっていた。

 イギリスは、地中海の南半分の航路を制することで、

 インド洋とインド支配を持続する計画だった。

 しかし、肝心のイギリスの国力が擦り減らされ、

 負担の大き過ぎる権益となっていた。

 そして、三国同盟の一角を占めるイタリアは、地中海の南半分をイギリスに押さえられ、

 イギリスより困窮していた。

 ムッソリーニと反ムッソリーニ勢力の戦いは議会の外に飛び出し、

 街中で銃撃戦が繰り広げられ、内戦へと発展させられてしまう。

 そして、もう一つの焦点、

 バルカン半島は東欧諸国連合にユーゴスラビアが包囲され、

 その状態のまま、休戦していた。

 

 ローマ 日本大使館

 日本人たち

 「グッチの大和連邦出店は?」

 「ああ、話しはついたらしいよ」

 「なにも大使館を使わなくても・・・」

 「内戦が酷くなってるからね」

 「地中海は荒れそうだな」

 「バルカン半島は外交戦略上の衝突だけど。イタリアは自業自得だと思うよ」

 「第一次、第二次世界大戦の焦点のバルカン半島はくすぶったままか」

 「ドイツ帝国は、イタリアとバルカンをどうするって?」

 「ドイツも対英戦、対ソ戦で国力をすり減らしてるらしい」

 「バルカン半島はそのまま」

 「同盟国のイタリアの内戦も、そのままだそうだ」

 「ムッソリーニを助けないの?」

 「見限られたんじゃないか」

 「ドイツ国内も酷いからな」

 「内戦に手を出して火傷するのも面白くないだろうし」

 「ドイツ国内より酷いイタリア国内で、ドイツ国民を慰めて貰う気だろう」

 「だけど、イギリスもシチリア島とサルデーニャ島を維持したままなんて、よくやるよ」

 「意地なんじゃないの」

 「意地か・・・日本の大和大陸支配も意地だよな」

 「それ、最悪の意地だぜ、人口5倍の漢民族を抱え込むなんて正気の沙汰じゃないね」

 「日本の国外から見るとそう思えてもな」

 「日本の国内から見ると、それしかないって、思うんじゃないか」

 「取り敢えず、このまま平和が続いて欲しいものだ・・・」

 サブマシンガンの銃撃戦が始まり、

 パンッ!

 日本大使職員の持っていたワイングラスが割れる、

 「あぶねぇ」

 「俺たちが狙われたの?」

 「流れ弾でしょ」

 「しかし、ラテン系は、こういう内戦で燃えるよね」

 「あははは・・・」

 

 

 

 靖国

 閑散と粛々と行事が進んでいく、

 その一角で右翼系の集会がなされ、

 大陸での日本の正当化と功績が論じられ始めた。

 しかし、権力構造は内務省に移行し、

 軍事費は目の敵にされ、軍属の求心力も薄れていた。

 そそくさと帰る者、

 惰性で、その場にいる者、

 冷ややかな目で見つめる者・・・

 日本古来の浄・不浄の意識が軍部を “不浄” なものにし、

 関係のない勢力を “浄” にすることで、己が潔癖を保とうとする。

 「最近、人の数が減ってないか」

 「大陸侵略と支配は、モチベーションが下がるからな」

 「右翼連中は侵略してないとか。嘯いてるし」

 「綺麗な日本の為だろう」

 「大陸権益で食ってる一番醜い豚どもなのにか」

 「強盗の上に嘘つきか・・・」

 「組織維持のためだろう」

 「見え透いた嘘ほど人を離反させるものはいからな」

 「集団になると強くなった気になって、暴走するのが日本人だよ」

 「これから、大陸と半島の血が混ざりやすくなる」

 「戸籍上、日本人でも半島人や大陸人みたいな気質の日本人も増えるぞ」

 「匪賊並みにモラルの低下か・・・」

 「そっちの方が日本社会にとって深刻だと思うね」

 騒然とした騒ぎが起こる。

 “日本人が大陸を侵略したある。父と母を殺したある”

 “なに言ってるんだ貴様”

 “いくら土地と財産を奪っても、父と母との思い出は奪えないある!”

 “なに言ってるんだ貴様”

 “いくら土地と財産を奪っても、父と母との思い出は奪えないある!”

 “なに言ってるんだ貴様”

 “無理なものは無理ある”

 “なに言ってるんだ貴様”

 日本の右翼たちは、一人の中国人をが追いかけ回し、連れ去っていく、

 「放っておけばいいものを集団で、たった一人の人間を・・・」

 「放っておけないんだよ。事実だからね」

 「臭いものには蓋か・・・」

 「汚名を被る覚悟もないくせに大陸利権に手を出しやがって、偽善者どもが」

 「あいつら、自分たちが日本を守ってる気でいるんだろうな」

 「逆だろう。あいつらが日本と日本人を貶めてる元凶だよ」

 「単細胞で想像力のない強盗が自分の罪の発覚を恐れての所業だね」

 「まったくぅ 卑劣過ぎて何もいえね」

 「もう、まとめて死ねばいいのに」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 いったいどこの馬鹿が・・省略・・・

 

 無人ヘリ “鴉” の元ネタは、QH50DASHです。

 未来はファンネルになるでしょうか (笑

 

 

 

長編小説ランキング   NEWVELランキング

HONなびランキング

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

 
第13話 1948年 『中華の本性は 寇 ある』

第14話 1949年 『無理なものは無理』

第15話 1950年 『日本の本性は 倭 ある』