月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

 

 

第08話 1943/01 『カサブランカ会議とスターリングラード第6軍降伏』

 1943/01/01 軽空母インディペンデンス建造

 

 モロッコ カサブランカ会議。

 米英ソの議論は、枢軸国の無条件降伏を宣言。

 しかし、対日戦略で揺れていた。

 

 スターリングラード  ドイツ第6軍降伏。

 

 

 

 アメリカとイギリス軍は、アルジェ上陸作戦に成功し、

 ヴィシー領アルジェのフランス軍を降していた。

 その後、アルジェに上陸した米英連合軍は、トブルクの米英軍と連携し、

 チュニジアへと侵攻していた。

 北アフリカ戦線 チュニジア

 深夜の砲声にアメリカ軍将校が飛び起きると、

 喧騒に紛れてキャタピラ音が迫ってくる音が聞こえ、

 機銃掃射と星弾が飛び交う。

 ギリギリまで闇を味方に戦うドイツ戦車部隊と、

 闇を恐れ、敵の位置を知ろうと照明弾に頼り、

 浮足立って混乱に拍車をかけるアメリカ軍の姿があった。

 アメリカ軍は、充実した兵装と軍需物資を有し、

 圧倒的な戦力で優位だったものの問題も生じる。

 人権が保障され自由が守られた国から来た新兵であったこと、

 将兵の大半が砂漠戦を知らず、武器の扱いも慣れておらず、

 混乱すれば味方を殺しかねない素人部隊だったこと。

 アメリカ軍将校

 「やめろ、もう、撃つな。3号戦車は行き過ぎた」

 「・・・駄目ですね。こりゃ 弾が切れるまで恐慌状態ですよ」

 アメリカ軍は、試行錯誤しながら前進したため、

 独伊軍にチェニスに立て籠もる時間を与えてしまう。

  

P-38F/G/H ライトニング

メッサーシュミットBf109G-6前期型

 

アメリカM4シャーマン戦車 初期型

4号戦車H初期型

 

 

 インド洋

 イギリスは、イギリス東洋艦隊を壊滅させられ、

 日本機動部隊にインド洋の柔らかい内腹を食い破られていた。

 日本軍はケープタウンに上陸し、黒人の蜂起を成功させる、

 イギリス軍のケープタウン撤退により、南アフリカ権益を奪われ、

 イギリスは帝国の屋台骨を支えるインドから遮断され窮地に陥る。

 イギリス軍は、西アフリカのフリータウンまで兵站基地を後退させなければならなず、

 日本軍は、南アフリカの黒人に武器弾薬を供給し、

 黒人の武装蜂起は南アフリカ全域に波及していく、

 南アフリカの白人支配は破壊され、

 イギリス海軍とアメリカ海軍は、インド洋に派遣する機動部隊もなかった。

 南アフリカの黒人独立勢力は急速に勢力を拡大させ、

 イギリスから遮断され孤立したインドも独立運動が増し、

 米英軍の戦力をもってしても白人世界の勢力修復と権益回復は不可能と思われた。

 

 

 イギリス

 潜水艦部隊のインド洋派遣を検討していた。

 フリータウンの港湾施設は満足できるものではなく、

 米英ソは、互いに責任をなすり付けようとする。

 イギリスは、対日戦で勝っても植民地を回復できない事が確実であり、

 単独対日講和によるインド、中東、東アフリカの回復を検討し、

 アメリカが反発する。

 アメリカは、脆弱なイタリアを攻める方針を固めており、

 ソ連も、米英両国に対独第2戦線を要求していた。

  

  

 赤レンガの住人たち

 「イギリス機動部隊はインド洋に来るだろうか」

 「アメリカはエセックス型とインディペンデンス型を建造したらしいからな」

 「建造したばかりだと乗員は艦の機能を発揮させられないし、まともな艦隊運動もできない」

 「騙し騙しで輸送船団の護衛に使えるくらいだ」

 「潜水艦の魚雷回避で味方艦と衝突という事も起こりえるよ」

 「まぁ 慣熟訓練が必要だからな」

 「北大西洋か、アルジェリアから艦隊を引き抜いて攻撃してくるかもしれない」

 「ケープタウンの長門、陸奥と、まともに戦えるのは、ネルソン、ドロネーだろう」

 「新型戦艦と空母をケープタウンに向かわせるかもしれなぞ」

 「イギリス海軍が動けば、ドイツ海軍も動くよ」

 「ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウを通商破壊に投入するそうだ」

 「それと、ドイツは、空母グラーフツェッペリンの建造を再開するかもしれない」

 「ドイツ海軍は、Uボートに人材を取られているだろう」

 「水上艦艇は大丈夫なのか?」

 「訓練不足の乗員を乗せた新型戦艦はカモだよ」

 「それは、そうと、今月は、潜水艦の戦果がすくない。輸送船5隻だけか」

 「整備補給中だ」

 「潜水艦は、数だな」

 「ドイツ側の指示に合わせて、静粛性を向上させる改造をするそうだ」

 「機関室を縮小して、ゴム板で艦体と機関室を覆うのか?」

 「大変だな」

 「開戦から一年を経てるからな」

 「修理と改装待ちの艦船が増えてるからドックはすぐ埋まってるよ」

 「トラックとグアムにドックを建設するのか」

 「修復用だ。ドックのない艦隊基地は恥だよ。というか、艦隊基地じゃない」

 「大丈夫か、トラックが爆撃されているようだが」

 「夜間爆撃と高高度爆撃なら実害はないよ。というか当たる方が珍しい」

 「しかし、夜間戦闘機も必要だな。トラックがB24爆撃機の夜間爆撃を受けている」

 「今のところ心配ないだろう。被害は軽微だそうだ」

 「ドイツのHe129双発戦闘機ウーフは良いそうだ。何か参考にできれば良いが・・・」

 「月光の電探を強化できれば助かるよ」

 「しかし、ドイツの電探は日本より優れていても、連合国より遅れているらしい」

 「ところで、カサブランカ会議でアメリカ軍の戦略物資の配分が決まるらしいよ」

 「ソ連の参戦もだ。どうなるかな・・・」

 「ドイツ第6軍がスターリングラードで降伏したから。参戦は、ありだろう」

 「ソ連が攻めてくる可能性をどう思う?」

 「分からんね。アメリカとイギリスがどの程度、ソ連と妥協できるかによる」

 「それに北樺太の油田が効いて日本の作戦能力が向上している」

 「だがソ連軍が攻めてくれば、満州戦線は支えられんぞ。武器弾薬が足りないはずだ」

 「すぐには来れまい」

 「満州戦線は領土交換で後退させている。山岳防衛線は守りやすいはずだ」

 「それも、カサブランカ会議できまる」

  

  

 日本 寂れた料亭

 総理を上座に、

 陸軍将校と海軍将校が左右に数人ずつ並び、

 お通夜の様に飲んでいた。

 「総理。陛下への苦言は?」 陸軍将校

 「苦言・・・ふっ・・」  総理がバカにしたように笑う。

 「捕虜の無償返還は、利敵行為だ」 陸軍将校

 「インド洋作戦の大勝利と拿捕商船102隻は?」 総理

 ・・・・・・・・・・・・・・・・沈黙・・・・・・・・・・・・・・・

 「・・・・海軍は、居ないのか? 何か言うことがあろう」 陸軍将校

 ・・・・・・・・・・・・・・沈黙・・・・・・・・・・・・・・・

 海軍側の座は、沈黙のままだった。

 「海軍は、居ないのか!!」  陸軍将校が声を荒げる。

 「失態は、していない。何も言うべき事はない」

 海軍将校が苦虫を噛み潰したように呟く

 「・・・・・・・・・・・・・・・」  陸軍将校

 どこともなく、ため息が聞こえてくる。

 「拿捕商船102隻の物資は、陸海軍とも恩恵を受けている」

 「陛下への苦言など、命取りでしかないわ」  総理

 「王政復古だな。まるで」  陸軍将校

 「王政復古も、薩長が後ろ盾になってのことだ。いまは、陛下が軍の後ろ盾になっている」

 「陛下が直接軍を動かす事態は、神武天皇にまで遡るのではないか」 総理

 「そこまで、遡らなくても、後鳥羽上皇とか、南北朝まで遡れば行き着くだろう」 海軍将校

 「そんな話しは、歴史学者にでもやらせればいい!」 陸軍将校

 「いらつくこともなからろう。日本帝国は、元々、そういう国なのだ」 総理

 憮然とする陸軍将校。

 何かが、引っかかっているような表情を見せる海軍将校たち。

  

  

 シンガポール

 捕獲された米英商船隊が港湾を埋めている。

 陸海軍将校は、納品書を確認しながら振り分けの素案を検討していた。

 突然、内地と外地の軍医将校が取っ組み合いのケンカを始める。

 理由は、すぐに見当が付く。

 捕獲した医療物資の配分の揉め事。

 軍兵装の多くは、内地の裁定待ち。

 さらに訓練期間を含めれば余裕がある。

 治具と部品も、早ければ良いが戦局から、緊急でもない。

 しかし、医療器具や医薬品は、早ければ早いほど良い。

 陸海軍将校は、関わりたくないのか、遠巻きの将校が回れ右で離れ、

 中間のものは、逃げようか、止めようかと逡巡する。

 近場にいた者は迷惑そうに止めに入るが収まらない。

 結局。シンガポール守備隊の当直将校が呼び出され、

 ケンカしている軍医を宥めながら引き剥がす

 そして、半日ほど各地の軍医将校の陳情を引きつりながら聞く羽目になった。

 周りの陸海軍将校は、当直将校に同情しつつ、他人の振りを決め込む。

 

 

 ケープタウン

 イギリス軍守備隊が上陸した日本軍と戦う事は、難しくなかった。

 しかし、長門と陸奥がイギリス軍基地に砲撃するだけで、

 非白人系がドミノ倒しのように日本軍側に寝返ってしまう。

 日本軍が上陸すると黒人は嬉々として蜂起した。

 白人は少なく、中間管理職のインド人と、

 白人に付いた黒人を全てひっくるめても人口の5パーセント以下でしかなく、

 日本軍と黒人の前では、風前の灯だった。

 中間管理職のインド人と裏切り者の黒人の半数が日本側につくと、

 白人社会は恐慌状態に陥り、

 日本軍が武器弾薬を黒人独立組織に供給するとチェックメイト。

 盛者必衰の理を感じつつ白人たちは、イギリス軍に守られ、内陸側へと追われていく。

 とはいえ、イギリス駐屯軍は後退しただけで存在し、

 イギリスに味方する中間管理職のインド人と裏切り者の黒人の一部が同行していた。

 軍人が戦って死ぬのは諦めが付く、

 しかし、民間人の白人は多く、

 白人とインド人の大多数は、黒人に降伏するより、日本軍に降伏した方がマシな扱いを受けると考える。

 イギリスが支配する南アフリカは宝の山だった。

 この地に上陸した日本軍は、他の占領地と同様で右も左も分からず、言葉も分からない。

 英語の分かる日本将校が現地の黒人と白人の間に立ち調整していく。

 日本軍が黒人の簒奪と収奪を調整すると黒人達の不平は広がるものの、

 戦艦の強大さには、武装した黒人といえど、力を失っていく。

 南アフリカ イギリス軍駐屯地。

 日本軍上陸部隊

 捕獲した武器弾薬が並べられる。

 「やれやれ、装備は、イギリス製とアメリカ製か」

 「使い方分かるか?」

 「なんとなくかな」

 「ここで、死んで骨を埋めると思ったら、すごい歓迎だな」

 「黒人は大騒ぎ。白人の半数は大人しく降伏か」

 「逃げた白人もいるらしいが、黒人に捕まると酷い扱いらしいが」

 「とりあえず。治安を回復させよう。無法地帯じゃ 話しにならないよ」

 「どうせ、権力闘争で黒人同士で殺し合うに決まってるよ」

 「同族同士で殺し合わせて、平和な社会が作れない事を自覚させるしかないね」

 「しかし、黒人は、うじゃうじゃいるな」

 「言葉が分かればいいが、しばらくは、どうにもならないな」

 結局、日本軍は、イギリス軍の立場に立ち、

 白人、インド人、黒人の間を調整していくしかできず、

 日本軍、白人、インド人は狭い区画に閉じ込められ、

 南アフリカ全土は、略奪で無法地帯化していく。

 「どうするの?」

 「話しのわかりそうな黒人に臨時政府と、軍隊を組織させて、掃討戦じゃないかな」

 「まぁ 白人連中が、協力してくれれば、何とかなりそうだけどね・・・」

 

 

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