月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

     

第09話 1943/02 『ゼロ戦5型と飛燕2型』

 1943/02/17 空母レキシントンU、建造

 1943/02/25 軽空母プリンストン、建造

 戦艦アイオワ 建造

     

 北アフリカ戦線 チュニジア

 独伊軍は、補給が断たれ、

 アルジェに上陸した米英連合軍と、リビア側から迫る米英軍に挟撃され、

 命運が尽きようとしていた。

 しかし、ベンガル沖海戦と、その後のインド洋作戦により、

 イギリスはインド洋の権益を失いつつあり、

 イギリス海軍艦隊も減少していた。

 そして、インド洋の利権回復の為、イギリス海軍艦隊の移動が始まると、

 地中海作戦のローテーションに隙が生じ、

 独伊軍の北アフリカ輸送が容易になり予定通り進んでいく、

 米英軍は、圧倒的な戦力で独伊軍を包囲し、優位となったものの、

 逆に保身と他力本願的な状況を生みだしてしまう。

 戦場では、数の優勢が戦意を緩ませてしまう事が稀に起こり、

 決死のドイツ・ロンメル軍と、

 ソコソコの武器弾薬を受け取ったイタリア軍が反撃すると、

 砂漠慣れしていないアメリカ軍は脆かった。

 米英軍は、戦車283両、ハーフトラック234両、自走砲162両、

 トラックとジープ700台、索引砲186門を失う。

 アメリカ軍は、砂煙を上げて、後退していく。

 このドイツ軍の攻勢により、米英軍は大損害を受け、北アフリカ戦線を停滞させてしまう。

 ドイツ軍将校

 「・・・・ようやく。後退したか」

 「追撃は?」

 ドイツ軍将校が本部と通信機で、やり取りを始める。

 「追撃は無し、アメリカ軍の置き土産を集めるだけでいいそうだ」

 「やれやれ、チュニジアに包囲されると、機動戦も出来ないな」

 ドイツ将校が、軽装甲偵察車デマーグの上部の砂を払い、布で拭いて行く、

 「まったく。昼食の前に来るとは、嫌がらせだな」

 「だが、港に近いと助かる・・・ほら」

 下士官が渡された卵を次々と割っていくと、戦車の装甲で卵が焼かれていく。

 パンとソーセージが配られ昼食が始まる。

 「侵攻すると、卵は食えないし。パンとソーセージも、3分の1以下だ」

 「守っている方が楽で良いな」

 「ロンメル将軍がいないと助かるな」

 「「「「ははは」」」」

  

  

  

 南アフリカ

 ケープタウン港

 Uボート20隻が入港していた。

 そして、長門、陸奥の艦隊と合流する。

 ドイツは、イギリスを戦線から脱落させるため、ケープタウンの維持を決定。

 Uボートが運んできた最新の技術資料が日本軍に渡される。

 ヒットラーは、ドイツ軍が苦戦し、

 イタリア軍が頼りにならない状況で、日本軍が強力であることが希望だった。

 日本軍が米英軍の戦力を削いでくれれば、それだけ、ドイツへの圧力が減少する。

 そして、連合軍艦船がどこで沈もうと、

 連合軍は船舶の総量を再配分するため、ドイツ軍は有利になった。

 これは売上競争している北海道の支店が沖縄支店の営業を助けるようなものであり、

 同盟戦略は、本店視野の総合的な判断がなければ理解されなかった。

 

 

 

 イギリス海軍は北大西洋輸送部隊と地中海艦隊から艦隊を引き抜き、

 インド洋派遣艦隊を編成しようとしていた。

 戦艦(ネルソン、ドロネー、クィーンエリザベス、マレーヤ、バリアント)5隻。

 軽巡(コロンボ、ダイドー、ユーリアラス、フィービー、シリウス、クレオパトラ、シーラ、アーゴノート)8隻。

 駆逐艦10隻、タンカー12隻。

 各戦線から集められ編成された艦隊は、南アフリカへ出撃計画を立てた。

 アメリカは、護送船団の護衛と、

 イタリア上陸作戦に戦艦が不可欠なことからインド洋派遣艦隊に反発。

 南アフリカの回復より、北大西洋の輸送船団の護衛を優先したがる。

 しかし、イギリスは、失う利権が大きいことから強行してしまう。

 そして、イギリス海軍の動きに気付いたドイツ海軍も動きはじめていた。

  

  

 赤レンガの住人たち。

 「戦況は、悪くないようだ」

 「インド人に武器弾薬を引き渡せば、イギリス帝国は、崩壊を防ぐため日本と単独講和だろう」

 「ビルマ戦線のイギリス軍は、治安維持のため、インドの海岸沿いに分散されつつある」

 「ビルマ戦線で大攻勢をかけても良いと思うが」

 「兵器・武器弾薬をインド大陸のインド独立勢力に供給することになっている。期限付きで・・・」

 「イギリス海軍は、その期限内に動くだろうな」

 「じゃ それを待って。か」

 「攻勢は、陛下次第だ」

 「将校の攻勢計画は提出されているが期待薄だな」

 「昔と違って、勝手に攻勢をかければ命取りだ」

 「しかし、アメリカ機動部隊が動く可能性があるからな」

 「日本も、第2機動部隊や高速戦艦部隊を動かすんじゃないか」

 「アメリカ戦艦部隊も大西洋に回航して、輸送船団の護衛をさせる予測もできるぞ」

 「そうなると年内に予想されるアッツ・キスカのアメリカ軍の上陸作戦はないだろうな」

 「上陸作戦が、あったら、艦隊戦になるぞ。機動部隊はパイロットの養成中だ」

 「金剛型は、大丈夫か」

 「砲撃の衝撃でリベットが緩んで、装甲と船殻がバラバラになって沈むことはないだろうな」

 「ははは・・・・」

 「そういえば、陛下は、アッツ、キスカへの増援もしていたな」

 「エセックス、インディペンデンスの量産が進んでいる」

 「陛下は、可能な限り、敵艦隊に打撃を与えておきたいと、お考えのようだ」

 「その割には消極的だったな」

 「緩急がはっきりしているのさ」

 「攻めるときは総力を挙げて攻める、力をためる時はためる」

 「メリハリがしっかりしているから兵も休息が取りやすいか」

 「真珠湾やミッドウェーみたいな、中途半端な攻め方をしていないのは助かるよ」

 「ケープタウンで休息が取れるのか?」

 「余剰乗員も連れて行っているから交代要員も多い」

 「航空部隊の配備が済めば、1隻や2隻の空母の攻撃なら耐えられるだろう」

 「ケープタウンの備蓄も残っているし」

 「2式大艇を配備させたなら索敵も何とかなるだろう」

 「ディエゴガルシア島の防衛も必要なんだろう」

 「第1機動部隊を配備しているそうだ」

 「インド洋のミッドウェーと言える場所だな」

 「アメリカ海軍が、ディエゴガルシア島を落とせば、ケープタウンの戦艦部隊は孤立して、形勢が逆転する」

 「では、ディエゴガルシア島が日本のミッドウェーか」

 「サラトガとエンタープライズなら第1機動部隊の相手として不足はないか」

 「第2機動部隊もアメリカ機動部隊に合わせて移動するから、間に合えば楽勝で勝てる」

 「間に合わなくても、引き分けでいいな」

 「出来れば、勝ちたい」

 「そうだな」

 「空母エセックスは、出てこないだろうな」

 「さあな、慣熟訓練を手抜きすれば、出てくるかもしれないが・・・・」

 「いくらアメリカの軍艦の性能が良くても、乗員が艦に馴染み、練度を上げるまで年月が必要だ」

 「だが、アメリカ海軍は、3交代制だろう」

 「真珠湾で生き残ったアメリカ海軍将兵が割り振られるなら予備乗員は定数の3倍以上」

 「慣熟訓練は早いだろうな」

 「それにエセックスを輸送船団護衛に回して、イラストリアス、ヴィクトリアスが、太平洋に来る可能性もある」

 「軍艦に1隻に対し3倍の員数か。お金持ちは、することが違うね」

 「しかし、大西洋を護衛空母に任せれば、正規空母を回してくる可能性は、大か」

 「日本海軍と違って軍艦の整備休養があっても、人間の事情で動かない事態が無いということさ」

 「そういえば、上層部で、攻撃計画も浮上しているようだが」

 「ミッドウェー、ビスマルク、ソロモン、アラスカ、パナマ運河だったな」

 「陛下が計画を立てて、それらしく動くように勅命を出されたらしい」

 「全部、陽動作戦で牽制にはなる」

 「アメリカの巡洋艦と駆逐艦が数隻、哨戒機を何機か前線から引き剥がせば、よしなんだろう」

 「陽動ね。第1機動部隊と長門、陸奥の艦隊が燃料不足で固定されている」

 「残りの艦隊で可能な作戦はないような気もするが」

 「それでもアメリカ海軍と航空部隊を分散させることが出来る」

 「陛下が策士とは知らなかったね」

 「海軍将校のほとんどが艦隊決戦思考しか、もっていないのと比べたら雲泥の差だな」

 「アメリカもアッツとキスカ砲撃」

 「マーシャル攻略、ジャワ島攻撃で陽動作戦を画策して、こちらを撹乱しているよ」

 「どれも、それなりに信憑性があって、効果あるから無視しにくい」

 「場の取り合いか、石の取り合いだな。囲碁のようなものだ」

 「単純な損得勘定か、どれが本当で、どこが焦点なのか」

 「焦点は、ディエゴガルシア島だ」

 「インド洋は、そこしか、まともに準備できそうにないな」

 「ゼロ戦5型と飛燕2型の生産は?」

 「それなりに順調だ。発動機の生産も金星に集めつつある」

 「戦線は、ビルマとトラックだが勝っているよな」

 「防空に徹して数さえ揃えていれば、ゼロ戦21型でも勝てるさ」

 「そりゃ ライトニング100機と空中戦をするならゼロ戦5型100機より、21型200機で戦いたい・・・・」

 「いまのところ、陛下のお陰で、損失比で圧倒的に優位だ」

 「新戦術のサッチウィーブも、格闘戦に持ち込んで勝ち越している」

 「ゼロ戦5型と飛燕2型だから、何とか、戦えているに過ぎないよ」

 「ゼロ戦5型は、エンジンが向上している割に、それほどでもないようだが」

 「ゼロ戦5型は、肉厚を増やしているから、降下速度が750kmを超える。それだけでも大きい」

 「どちらかというと、生産性の良い飛燕2型が主力だね」

  

  

 アメリカ航空部隊は、ニューブリテンで着実に航空戦力を増強し、トラック島の空襲を始めていた。

 ムサウ島に配備されたB24爆撃機162機、ライトニング戦闘機203機が1000km離れたトラック基地を襲う。

 トラック航空隊は、ゼロ戦5型53機、飛燕2型75機、ゼロ戦21型127機で迎撃。

 トラック上空で、大規模な航空戦が始まる。

 飛燕2型75機、ゼロ戦5型53機が高々度から突進してくるライトニング203機を高々度で迎え撃つ。

 互いに正面から撃ち合う事を避け、散開し、空中戦を開始する。

 互い錯誤が重なり、正面から撃ち合う機体も出てくる。

 正面から、まともに撃ち合うと射程距離の長いブローニング12.7mm機銃が有利。

 しかし、機体を持ち上げ、山なりの20mm弾を神業的に命中させる飛燕もいた。

 すれ違いながら互いの編隊の一部から煙を出し、数機の機体が海上に落ちていく。

 その後、捻り込み、旋回と上昇、急降下を繰り返し、

 運動エネルギーを喪失させ、

 乱戦のまま、低空へと空戦空域が落ちて行く。

 ライトニング2機が飛燕4機の追撃を振り切って、体勢を立て直そうと旋回する。

 「畜生! 同じ高度で待ち伏せとは、話しが違うじゃないか」

 「日本語が雑音無しで入ってくるぞ」 アメリカ軍パイロットA

 「高々度で、それなりに飛んでいるのは、新型だな」 アメリカ軍パイロットB

 「機銃が命中してもバラバラになって落ちていかないのも、新型だ」 アメリカ軍パイロットA

 「しかし、ゼロ戦のように見えるが」 アメリカ軍パイロットB

 「・・・いや、エンジンが大きいようだ」

 「それに、スペクトル比が長いのもいる。そっちは確実に新型だな」 アメリカ軍パイロットA

 「もうすぐ、爆撃隊が来るぞ。梅雨払いは、失敗だ」 アメリカ軍パイロットB

 「高々度では、まだこっちの方が機動性が良いようだが」 アメリカ軍パイロットA

 “ガッ・・・こちら、ブラザーワン”

 “ゼロ戦の攻撃を受けている、ライトニングは、どうした?”

 “100機以上いるぞ” 爆撃部隊

 「ちっ! やられた。下を見ろ!」 アメリカ軍パイロットB

 中高度のゼロ戦隊がB24爆撃機の編隊に向かっていくが見えた。

 「くそっ!! 何で、あんなに戦闘機がいるんだ。救出に行くぞ!」 アメリカ軍パイロットA

 「・・・不味いぞ、高度を落とせば、勝ち目が無いぞ」 アメリカ軍パイロットB

 「どうせ追いつけん」

 「そのまま、振り切って、爆撃部隊に取り付いていたゼロを蹴散らし、逃げ切った後、護衛を継続する」

 ライトニング戦闘機が爆撃部隊の救出降下すると、ゼロ戦5型、飛燕2型が追いかけてくる

 「くそっ!! 日本機がついてくるぞ」 アメリカ軍パイロットB

 「やはり、新型か」

 「急げ。まだ、こっちの方が速い」 アメリカ軍パイロットA

 爆撃部隊は、ゼロ戦21型の襲撃を受け、次々と被弾していた。

 中高度のゼロ戦は、被弾すると四散して落ちていく。

 被弾の仕方で、新型ゼロ戦5型・飛燕2型と、

 旧型の零戦21型の違いが、はっきり区別された。

 そして、無線で、ライトニングの接近を知ったゼロ戦21型部隊が爆撃部隊から離れ、

 海面に向かって降下していく。

 目標を失ったライトニング部隊は、上空から迫るゼロ戦5型、飛燕2型と不利な体制で戦わなければならず。

 さらに下降していたゼロ戦21型が上昇。

 ライトニング部隊は、格闘戦に巻き込まれ撃墜されていく。

 

 

 B24爆撃部隊がトラック上空に到達すると120mm、75mm、25mmの対空砲が火を噴く、

 戦艦を解体し、艦砲から降ろした127mm砲がトラックに備え付けられていた。

 弾幕が撃ち上がると。曳航弾がアメリカ軍機に向かって吸い込まれていく。

 小さな島を爆撃する進入コースは特定しやすかった。

 頭上の近くを通過すると決まっていれば、標的に当たりやすく、

 命中する確率も高くなった。

 機関砲の弾道が数十機のライトニングとB24爆撃機に吸い込まれ、

 数機が火を噴きながら地表の施設に向かって落ちていく。

 

 B24爆撃機

 トラック環礁は、事前の強行偵察の報告通り、10隻程度の艦船しかなかった。

 B24爆撃機の編隊が巨体を日本船団へと向けていく、

 周囲で対空砲弾が時限信管で爆発する。

 目測で調整しているため、当たる確率は低く、

 脅威は、執拗に追いすがって銃撃してくるゼロ戦や飛燕だった。

 B24爆撃機が進入角度を調整しながら爆弾を投下。

 爆弾の重量が減ると、ふわりと浮き上がり、速度が増していく。

 「・・・飛び石爆撃で命中したのは、輸送船2隻だけか!」 爆撃機パイロット

 「新手のゼロが来る。3時!」 副パイロット

 「逃げるぞ!」 パイロット

 不意に破壊音、衝撃音、破裂音、破砕音が混じり、

 衝撃で機体が震動し、20mmと7.7mmの跳弾が器材を破壊し、機内を跳ね回る、

 将兵は体を丸め、機銃弾が抜けない機体の頑丈さを呪う。

 !?

 聞き覚えのあるブローニング12.7mm機銃が機内に飛び込み、ズタズタにされ、

 『なぜ?』

 という回答も自分で気付く、

 日本海軍はベンガル沖で、軍需物資を大量に鹵獲していた。

 「射手のマーチンがやられた!」 通信兵

 「くそっ! 後ろに2機! 右前方から、もう1機か」 パイロット

 いつの間にか、右腕から血が出ているのに気付く。

 興奮しているのか、かすった覚えも、痛みも無い。

 衝撃が機体を揺り動かし、右舷側に傾いた。

 4番エンジンに20mmと12.7mmが命中。火を噴出した。

 「4番エンジン、消化!!」 パイロット

 「了解! 4番消化」 副パイロット

 「消化・・成功しました!」 副パイロット

 次の瞬間、右主翼が、へし折れ。

 B24爆撃機は、コントロールを失って海面に激突し四散した。

 アメリカのビスマルク航空部隊、初のトラック大規模爆撃は、悲惨な結果で終息していく、

 そして、トラック基地の損害も少なくなかった。

 

ラバウル港

 

 

 欧州 東部戦線

 ドイツ軍はスターリングラードで敗北し、陸軍の精鋭を失う、

 ソ連軍は、大攻勢に移り、

 スターリングラード戦のドイツ軍と同じ間違いを犯してしまう。

 ソビエト軍は、戦略拠点に固執するあまり、戦線に隙を生じさせ、

 ソ連空軍と砲兵の遅れは火力支援を欠く事になり、

 さらに兵站の乱れは、師団同士の連携を阻害し、攻勢力の低下に繋がった。

 砲撃音が辺りに響き渡ると、砲弾の雨が幾つものソビエト師団を釘付けにしていく、

 前進し過ぎたソビエト師団は、標的になりやすく、逆包囲され、孤立し、

 ドイツ戦車の突撃で突き崩され、指揮系統が喪失し、組織的に崩壊していく、

 マンシュタイン率いる南方軍集団は、ソ連戦線の粗を突き、的確に反撃を繰り返した。

 世界最強最大の40口径800mm砲がソビエトの戦線を睨んでいた。

 4.8トンの榴弾が15分に一度、47000m先のソ連軍陣地へ撃ち込まれてく、

 ドイツ軍将校たち

 「・・・・ソ連軍の様子は?」

 「斥候の報告では、敵補給部隊に損失を与え、敵の進軍を遅らせているようです」

 「そうか、雪が降っている間に撃ち尽くして、後退する」

 「了解です」

 「雪がやめば機甲師団が反撃する」

 「それまで、側面を弱体化させればいい」  

 

 

 ビルマ戦線

 ゼロ戦5型4機が索敵飛行していた。

 「・・・無線の調子は、良いな。さすが舶来物」

 「トラック防空戦で大勝したのは、無線の戦果だ」 隊長

 「確かに便利ですね」

 「無線が、これだけ聞こえると、自分の目だけで探していないのがいい」 パイロットA

 「イギリス空軍は、戦線から、こちら側に来ないようだ」 隊長

 「残念です」 パイロットB

 「早く戦いたいですよ」 パイロットC

 「陸軍陣地の向こう側には行くなと命令されている。残念だな」 隊長

 「まったくです」 パイロットB

 「海軍仕様は、慣れたか?」 隊長

 「いえ、なかなか “うっかり” が、ありますね」 パイロットB

 「離着陸でトチるな」 隊長

 「確かに」 パイロットB

 「まあ、若い方が慣れやすいだろう」 隊長

 「隼の方が格闘性能が良かったですが、5型になった途端、ゼロ戦の方が良いですね」

 「アメリカ軍の燃料と部品が良いのでしょう、時速620km出しましたからね」 パイロットC

 「しかし、年を取って海洋航法の勉強は、辛いな」 隊長

 「そうですね」

 「兵団長が、海は海軍機の仕事と開き直っていたのが、いきなりですからね」 パイロットB

 「上層部が変わったからだろう。進退窮まると、言うことが違うね」 隊長

 「下が迷惑するんですがね」

 「いまさら学生並みに詰め込まれるのは辛いですよ」 パイロットB

 「ふっ さてと帰るか、そろそろ、交替だ」 隊長

 ゼロ戦5型4機と飛燕2型4機が翼を振りながらすれ違う。

 

 

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第08話 1943/01 『カサブランカ会談とスターリングラード第6軍降伏』
第09話 1943/02 『ゼロ戦5型と飛燕2型』
第10話 1943/03 『ディエゴガルシア島沖海戦と喜望峰沖海戦』