月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

      

第11話 1943/04 『ナミビア沖海戦』

 1943/04/15ヨークタウンU

 

 ディエゴガルシア島沖

 

 

空母 瑞鶴

 第一機動部隊は、タンカーと輸送船から補給を受けていた。

 副長が飛行甲板で搬入の指図をしていた。

 空母 瑞鶴 艦橋

 「副官。艦長。勅命書だ」

 提督が副官に勅命書を渡す、

 副官と艦長は、しばらく勅命文を読み、ため息をつく。

 艦と乗員が不可分であると考える日本海軍と、

 艦隊を進出させるため、

 乗員を交替させてもいいと考える陛下の認識の差が海軍将兵を困惑させる。

 乗員も輸送船で交替など、恐ろしくて出来ないと本音もあれば、

 艦隊乗員を固定させることで気風と和を守り、練度を高められた経緯もあった。

 燃料を食いやすい軍艦。

 内地と戦地を人の都合で行ったり来たりされると燃料が底を尽く、

 人間性無視でも結論だけなら、合理的といえた。

 「どうするね?」

 「交替の将校は到着している。君が、望むなら交替させるが?」  提督

 「わたしは、行きますよ。この艦隊が心配ですからね」  副官

 「わたしも、この艦とは、一心同体です」 艦長

 「・・・では、出発まで十分に休養をとってくれ」

 「それと、人員の交替を伝えてくれ、交替は、本人の自由だ」

 「ただし、戦場で、疲労という言い訳は、通用しなくなるぞ」  提督

 「はっ!」

 副官と艦長が敬礼する。

 「風呂に満足に入れない場所で長期滞在か」

 「作戦指揮以上に兵士の士気低下が心配だが・・・」

 「それを見越して交替の将兵を送ってよこすのは、さすがだが、俺の替りまでとはね・・・」 提督

 「太平洋は、エセックスとインディペンデンスの2隻が就役しているはず」 副官

 「龍嬢を失った第2機動部隊だけで抑えられるかどうか」 艦長

 「・・・・・・」 提督

  

  

 

 ヒットラーは、喜望峰沖海戦でイギリス艦隊の壊滅を知ると、

 海軍を出撃させる。

戦艦 ティルピッツ

 ドイツ戦艦部隊

 戦艦ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウ、

 装甲艦リュッツォウ、アドミラル・シェーア、

 重巡プリンツ・オイゲン、アドミラル・ヒッパー、 2隻、

 軽巡ライプチヒ、ニューインベルグ、 2隻に南下を命じた。

 ドイツ艦隊は、Uボートの活躍と時期外れの霧で、運良く北海哨戒ラインの突破に成功する、

 しかし、イギリス海軍は、一連の作戦のため輸送船団に待ったをかけていた。

 ドイツ戦艦部隊は獲物を探し回ったものの発見できず。

 北大西洋を南下する、

   

 

 イギリス機動部隊

 空母イラストリアス、ヴィクトリアス、

 戦艦アンソン、ハウ、

 巡洋戦艦レナウン、

 軽巡ダーバン、デスパッチ、ダイオミード、カレドン、

 軽巡カラドッグ、カーディフ、セレス、ケープタウン、カーライルの9隻。

 駆逐艦12隻

 イギリス機動部隊は、南大西洋までドイツ艦隊を追撃していた。

 連合国軍は、この作戦のために輸送船団の出航を一時、停止させており。

 戦線は、補給不足に陥っていた。

 ドイツ艦隊は、イギリス艦隊の追撃を避けて赤道を越え、

 南回帰線を越える。

 

 

 イギリス機動部隊は、ナミビア沖でドイツ戦艦部隊を捕捉する。

 イギリス空母から出撃した爆撃部隊がティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウを空襲。

 ドイツ艦隊は 窮地に陥る。

 ティルピッツ 艦橋

 「ついに見つかったか」

 「ケープタウン港にまで、逃げ込めれば、勝ちだがな・・・」

  

 

 イギリス空母イラストリアス。

 出撃していく複葉機のソードフィッシュ。

 「他のドイツ艦隊はどうした?」

 「リュッツォウとアドミラル・シェーアが見当たらないぞ!」 艦長

 「まだ、発見できてないようです」 副艦長

 「一度合流して、バラケタのか、魚雷を装備したらすぐに出撃させろ!」

 「降水量の少ないベンガラ海流を逆行するとはな」

 「ドイツ戦艦部隊は、裏をかいたつもりでナミビア側に来たのかもしれませんね」

 「ケープタウンの日本艦隊と合流したいのだろうが、そうはいくものか・・・」

 「ということは、分離したドイツ艦隊は南アメリカ側になるか」

 「各方面には、通報を出しています」 副艦長

 「・・・ティルピッツの左舷艦首に魚雷が命中!」 通信兵

 歓声が湧く、

 「これで2本か、もう逃がさんぞ。ビスマルクの後を追わせてやる・・・」

 「ケープタウンの日本艦隊の動向がわかれば良いのだが」

 「長門の艦隊は日本本土に回航しているはず」

 「そして、ディエゴガルシアの日本機動部隊は、アメリカ機動部隊との海戦で損傷しているはず」

 「・・・だが、正規空母1隻がドック入りした以外。現在位置は、知られていない」

 「この海域は空白地帯と思いたいですね」

 「乗員の疲労や戦意を考えるなら日本艦隊は喜望峰で何度も戦えない」

 「まして大西洋は遠方だ」

 「日本艦艇の性質から長期遠征は不可能に近い」

 「ですが、これまでの被害からするとアメリカは日本の暗号解読に失敗していると考えられます」

 「いや、暗号の半分は、解読されているらしい」

 「もしそうなら、アメリカ海軍は、もう少し狡猾に立ち回るべきでは?」

 「ミッドウェー以降。攻勢は、全て天皇が勅命書を出して決めているそうだ」

 「それでは、組織が、硬直化するのでは?」

 「聞いた話しだと、防衛線内の作戦は、指揮官の自由裁量で任されているようだ」

 「柔軟性に欠けても、硬直化までは、行かないと?」

 「さあな、諜報部から聞いた話しで確証はない」

 「しかし、損害の度量まで容認されているそうだ」

 「被害予想は、普通、図上演習で出されているのでは?」

 「だが勅命があれば指揮官は誹りを受けることもなく、攻勢と後退の後ろ盾になる」

 「戦艦を何隻沈められても作戦を遂行せよと?」

 「つまり、作戦途上で、損傷を受けていないのに後退すれば、処罰の対象になる」

 「それは、大変な硬直化ですな。臆病者は勤まらない」

 「あくまで、噂だ」

 「しかし、ミッドウェー海戦後、イギリスの対日損失は、致命的だよ」

 「イギリスがインド洋を失ったのは致命的ですね」

 「アメリカも人種戦争を恐れて、南アフリカの介入は消極的らしい」

 「アメリカ人には、黒人もいますからね」

 「ふんっ! 本音をいうならアメリカがイギリス帝国の解体を一番喜んでいるよ」

 「むかし、イギリス軍にホワイトハウスを丸焼けにされた恨みが残っているかもしれませんね」

 「それに拿捕された輸送船もある」

 「イギリス機動部隊が守れず、100隻以上捕獲されて・・」

 「・・・・あの機は、被弾しているぞ、操舵手、艦を機の方に寄せろ」

 「救護班の準備は?」

 「既に甲板に出ています」 士官

 「すぐに消火班も準備させてくれ」

 「イェッサー」 士官

  

  

 ドイツ戦艦部隊。

 艦隊上空を5、6機のソードフィッシュが旋回している。

 ティルピッツ4本。シャルンホルスト3本。グナイゼナウ2本の魚雷が命中していた。

 水平線上から、接近するイギリス戦艦部隊アンソン、ハウの砲撃が始まる、

 ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウは、航空魚雷を受けて大破し、

 速度が低下していた。

 アンソン、ハウの砲弾がティルピッツの周囲に落ちて水柱を上げる。

 ティルピッツ 艦橋

 「・・・・提督」

 「まだ、遠い。イギリス戦艦部隊は、焦っているようだな」

 「航空機に戦艦撃沈の手柄を取られたくないのでは?」

 「・・・提督、第5波です」

 雲ひとつ無い空に4機のソードフィッシュが点々と現れ、

 ティルピッツに向かって、高度を落としていく。

 回避行動を取れば、アンソン、ハウと確実に砲撃戦になる。

 回避しなければ、魚雷が命中し、更に速度が低下する。

 生き残るには4機のソードフィッシュを撃墜するしかない。

 戦後再建したドイツ帝国が英々と建造した最強の戦艦ティルピッツ、

 その運命が安価な蚊トンボに決められようとしていた。

 イギリス人の嫌みな人格と、踏み躙られる努力の結晶、

 理不尽さに歯軋りする。

 忌々しいが回避行動を取る以外になかった。

 対空砲火がソードフィッシュに向けられる。

 「・・・面舵」

 「面舵」

 ソードフィッシュに向け、回頭する。

 4機のソードフィッシュもティルピッツの回頭に合わせて旋回し、

 雷撃コースに回り込んでいく、

 どんなに低速の複葉機でも戦艦より速かった。

 後方からはアンソン、ハウの砲撃が届き、艦の周囲を水柱が包む、

 ティルピッツの対空砲座。

 魚雷命中の水柱が艦体を洗い流し、

 入れ替わるように爆炎の熱が黒煙と一緒に吹き抜け、

 煤の汚れで酷くなっていく、

 「・・・撃て! 蚊トンボを近づけさせるな」

 曳航弾がソードフィッシュに吸い込まれていく。

 アンソンとハウの砲撃が至近弾となって、近くの砲座を破壊。

 辺りに血臭と火薬の臭いが立ち篭る。

 ソードフィッシュが向かってきていた。

 魚雷を落とされたら・・・

 そのとき、深緑の戦闘機がソードフィッシュの横合いから現れ、

 機銃掃射でソードフィッシュを撃墜。

 深緑に赤い印の戦闘機は、バンクしながら逃げようとするソードフィッシュを追いかけ、

 次々にソードフィッシュを撃墜していく、

 ドイツ艦隊上空を深緑色の戦闘機、爆撃機、攻撃機の編隊が通過し、

 イギリス艦隊へと向かっていく、

 いつの間にか、敵機が消えうせ、

 ドイツ艦隊上空を深緑色の戦闘機が編隊を組んで護衛していた。

 

 

 零戦20機、99艦爆30機、97艦攻14機がイギリス機動部隊を襲撃していた。

 イギリス機動部隊は、圧倒的優勢だったことから、

 ドイツ戦艦攻撃のため護衛艦を戦艦部隊を分けており、

 護衛艦は数隻しかなく、制空権を喪失すると丸裸で空襲を受けることになった。

 空母ヴィクトリアス 艦橋

 「撤退!!」

 「全艦隊、輪形陣を崩すな。撤退だ!!」

 「反転北上!!」 提督

 「・・・あれが、ゼロファイターか」

 ゼロ戦に撃墜され、

 海上に墜落するソードフィッシュを見た艦長は呟く。

 「直上。艦爆3機!」

 「9時方向から艦攻2機!」 士官

 「取り舵だ。急げ。各艦に通達! 衝突を避けさせろ!」

 艦長は、艦爆の動向を見て即決する。

 「くそっ!」

 「日本機動部隊が大西洋に来たというのか。燃料があるのか?」 提督

 「弾幕は、どうした! 寝ているのか」 艦長

 「準備は完了しています。引き付けて弾幕を張ります」 副長

 「・・・任せる・・・シー・ファイアを上げろ」

 「イラストリアスが雷撃を受けました!」 士官

 艦橋の将兵が一斉にイラストリアスを見ると爆発と水柱に包まれていた。

 爆炎が鎮まると、無事に動いているのを見て安堵する。

 対空砲火が轟き、

 「雷撃機、5時!」

 深緑色の機体が迫る。

 艦橋の高さから見れば水平線より、下に雷撃機が見えた。

 「全速、面舵、回避!」

 「直上! 2機!」

 火線の一部が上を向き、艦上空で黒煙が咲き乱れる。

 黒い物体が放物線を描いて、飛行甲板で炸裂し、

 待機中の艦載機3機が爆破、破壊されて四散する、

 衝撃とともに爆炎が立ち昇り、同時に大気を震わせ、

 海上を越えて僚艦の空母ヴィクトリアスにも伝わる。

 

 空母ヴィクトリアス

 イラストリアスから装甲を張っている飛行甲板は、無事と通信が入りホッとする。

 そして、日本の99艦爆5機、97艦攻6機がヴィクトリアスに迫ろうとしていた。

 イラストリアスに魚雷1本、爆弾3発。

 ヴィクトリアスに魚雷1本、爆弾2発が命中。

 イギリス艦隊上空は、晴れ渡り、

 日本の水上機が旋回している。

 イギリス機動部隊は、艦載機は全て破壊され、

 北上して逃げ出すよりなかった。

  

 

 第1機動部隊、(瑞鶴、瑞鳳)、114機

 利根、妙高、那智

 駆逐艦、夕雲、巻雲、長風、秋雲、風雲、

 駆逐艦、秋月、照月 。タンカー4隻

 第1機動部隊は、引き続きイギリス機動部隊を追撃し、

 攻撃部隊を繰り出して、イラストリアス、ヴィクトリアスを撃沈。

 その後、イギリス艦隊は、日本機動部隊の追撃を振り切って逃げた。

  

 

 瑞鶴 艦橋

 「イラストリアスとヴィクトリアスを撃沈か」

 「これでイギリス機動部隊は壊滅だな」 提督

 「わざわざ、燃料を消費して出向いた甲斐がありましたね」 艦長

 「燃料を消費したのだから、空母2隻くらい撃沈しなければ割に合わないだろう・・・」

 「勅命書に従わなければ後がないですから」

 「勅命に従っている方が身の安全だ・・・幸運にも、勝っている」

 「ですが、燃料が届くまでケープタウンで、足止めですね」

 「必死になって逃げられましたからね」

 「よほど日本の艦載機が怖かったのでしょう」

 「ギリギリまで引き寄せたが・・通訳者を準備しているだろうな」

 「はい」

 「ドイツ艦隊と合流するぞ」

 「空母無しで、こんなところまで来るとは、自殺に近い作戦だ」

 「こちらも、乗員は、疲労困憊で第5波を出せませんでした」

 「日露戦争で日本艦隊がバルチック艦隊を壊滅させられるわけです」

 「各艦とも、乗員の戦意低下を報告しています」

 「ケープタウンも、もっと、補給物資があれば良いのだが、こればかりは、どうしようもないな」

 「白人が来なければ、槍と弓の狩猟民族ですから」

 「せめて、農耕民族であれば、もう少し、ましなんでしょうけどね」

 「国際法規が通用するのは、実は、一部の国だけなのかもしれないな」

  

 日本機動部隊とドイツ戦艦部隊はナミビア沖で合流後、ケープタウン港に入港。

 工作艦明石は、ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウの穴を塞ぎ、

 艦内が錆びないように手を施した。

 

 

 日本海軍は、喜望峰沖海戦でイギリス戦艦部隊を壊滅、

 ディエゴガルシア島沖海戦でアメリカ機動部隊を壊滅。

 その後、ナミビア沖海戦でイギリス機動部隊を壊滅させ、

 インド・太平洋戦線で、優位な戦局を確立。

 戦術的勝利が、戦略的な影響を与えてしまう事になった。

 インド全土でインド人の蜂起が始まる。

 イギリスは、傷口が広がる前に状況を打開しようと、インド独立の承認するよりなかった。

  

  

 ダーウィン日本事務局

 捕虜返還船から降りてくる連合国兵士は、7対3で有色人で植民地軍が多かった。

 最初、白豪主義のオーストラリア軍は、腹を立てたものの、

 一部始終を映したフィルムが全世界に配信され、

 その後、アメリカの圧力とイギリスの妥協により、

 有色人種の植民地軍も連合国軍として受け入れる。

   

 

 日本人事務局は、ダーウィン港湾の倉庫を改造したものだった。

 日本人代表、アメリカ代表、イギリス代表、オーストラリア代表と堤防で釣りをしていた。

 「・・・・なかなか釣れませんな」 日本人代表

 「釣りが目的とは知りませんでしたよ」 アメリカ代表

 「目的ですよ。敵国の領海で魚を釣る。ささやかな抵抗と楽しみです」 日本人代表

 「ふっ 東洋の黄色いサルに、わが領海の魚が釣れると思いませんな」 オーストラリア代表

 ・・・・・・沈黙・・・・・・

 「ゴホンッ! オーストラリア代表。少し、席を外されてはどうです」

 「顔色が悪そうに思えるが、昨夜の酒が残っているのでは?」 イギリス代表

 「わたしも、そう思いますな。お疲れのご様子だ」

 「潮風に当たられるのはよろしくない」 アメリカ代表

 「・・・いいでしょう」

 オーストラリア代表は、憮然と堤防を去っていく

 「すみませんでした。日本代表。代わりにお詫びしますよ」 イギリス代表

 「わたしからも、お詫びいたします」 アメリカ代表

 「ふっ アメリカでなく、オーストラリアに宣戦布告するべきでしたかな」 日本代表

 「侮辱されただけ、というのは、戦争を始める大義名分として足りませんね」 イギリス代表

 「もちろんです」

 「ですが人種戦争を始めたいのなら、日本政府も覚悟があります」

 「既存権益を全て破壊してご覧に入れますよ」 日本代表

 「例え負けても、ですか?」 アメリカ代表

 「ええ、あなた方が勝っても、得られるものは、少ないはずですよ」

 「アメリカは違うかもしれませんが・・・」 日本代表

 「・・・・・・」 アメリカ代表

 「・・・お互いに冷静になって、現状で妥協し得る落とし所があるのではありませんか?」

 「お互い文明国なのですから」 イギリス代表

 「そういった意思が両国にあると、陛下に上奏しても良いのでしょうか」 日本代表

 「なるべく期待に添えたいと思いますが」

 「しかし、南アフリカの白人の人権は守られているのでしょうな」 イギリス代表

 「日本では “情けは人の為ならず” というのがありますよ」

 「白人が黒人に情けを掛けなかったとしたら、黒人は代償を白人に求めると思いますよ」

 「ふっ サルに情けを掛けても、付け上がるだけだ」 イギリス代表

 「原始生活に近い人間はね」

 「見かけが人間でも知性と情感は、サルに近い野蛮な人種だと思うね」

 「・・・・」

 「日本人が我々白人に近いのは、認めるがね」

 「ギリギリですな」

 「・・・・」

 2時間後、日本代表が3匹、イギリス代表が2匹、アメリカ代表が1匹の魚を釣り上げる。

  

  

 オーストラリア中部 砂漠。

 トラックで日本人捕虜が引越しさせられる。

 寂れた町で農作業をする日本兵士の集団が何百人もいた。

 「捕虜収容所じゃなくて、町じゃないのか」 日本兵A

 「聞いた話しだと、今まで使っていた捕虜収容所は、返還された有色人兵士に割り当てられたらしい」 日本兵B

 「あれは・・・」

 「日本兵士が町を歩いているじゃないか」 日本兵C

 「町全部が日本兵だけで、勝手にやって良いそうだ」 日本兵B

 「本当か?」 日本兵D

 「オーストラリア兵がそう言ってた」 日本兵B

 「良いよな、お前、英語がわかって」 日本兵C

 「横須賀のアメリカ人の家族と遊んでいたことがあったからね」

 「だけど・・・脱走は不可能だな、周りは砂漠だ」 日本兵B

  

 

 ダーウィン日本捕虜返還事務局で日本とイギリスの代表が交渉した結果。

 ガンジーを首席とするインド独立が決まる。

 

 デリー

 日本代表、イギリス総督、ガンジーの3者会談が始まり、

 ドイツから帰還したばかりのチャンドラ・ボースを含め、インド独立が宣言される。

 インドは、中立国となり、

 イギリス総督府解体とイギリス軍は、武装解除し、インドから撤退していく。

 インド独立条約に従い、多くが国有化したものの、イギリス資本は残された。

 そして、日本は、インドと貿易を結ぶことに成功し、

 インド船籍の船舶を利用してインドの資源を日本に送る事ができた。

 問題は、インドの港にある連合国船100隻だった。

 脱出は、ほぼ不可能であり、

 日本に拿捕されるよりは、と、インド船籍となる。

 そして、連合国と日本は、インド中立国船を利用することにしていた。

 中立国のインド船利用は、大きな利益が得られると見込んでおり、

 米英潜水艦は、日本近海でも、それがインド船であるか、確認しなければならず、

 日本潜水艦も、危険を冒してインド船の確認をしなければならなかった。

 枢軸国と連合国は条件が同じだったものの、

 資金力の豊富な連合軍は金に任せてインド船を利用する。

 そして、ドイツとソ連もインド船を利用するため、

 インドは、莫大な利益を得ることになった。

 また、インド独立によって、中国は、輸送ルートを断たれ、孤立してしまう。

  

  

 日本、赤レンガの住人たち

 「大勝利だな」

 「脅威となりそうなのは、アメリカのエセックス、インディペンデントだけだな」

 「ほかに何隻か建造されているが就役したのは、その2隻だろう」

 「しかし、第1機動部隊が引き続きケープタウンとは、かわいそうだな」

 「いや、イギリスの空母2隻を撃沈したからイギリス海軍も南アフリカ回復を諦めるだろう」

 「一度、艦隊を本土に回航させるんじゃないか」

 「どうかな、工作艦も送っているし」

 「いまの戦力差なら第二機動部隊で太平洋は守れそうだけど・・・」

 「陛下はケチだから交代要員を送って無理やり動かすと思うね」

 「燃料の無駄遣いを極度に嫌っているから、あり得るな」

 「艦隊を喜望峰の先にまで送れば、陛下でなくても燃料をケチりたくなるよ」

 「そう、行ったり着たりさせられるものか」

 「ヒットラーは、北大西洋まで、機動部隊に来て欲しいそうだ」

 「無理だね」

 「ディーゼル機関電気推進ならともかく、日本の艦船だと長期航行は、困難だ」

 「乗員は、もう、疲労困ぱいで、戦闘能力が低下するだろう」

 「陛下は、そのことを知っているだろうか」

 「ふっ 行くだけでも疲労する」

 「知っているから交代要員を送って、人員を入れ替えているのだろう」

 「練度が下がっても、やるのだから確信犯だな」

 「まともに動かせるかどうか・・・」

 「第2機動部隊は、ディエゴガルシア島配備なのか」

 「ああ、結局、高速戦艦部隊は、シンガポールから動かさずに済んだ」

 「あの艦隊は燃料食うからな」

 「ドイツ艦隊のためにディーゼル油も運ばないと・・・」

 「だけどアメリカの高速戦艦6隻とイギリスの高速戦艦4隻は、怖いな」

 「よくよく考えれば、大破したドイツ戦艦3隻がケープタウンに配備されているのは、問題だな」

 「北大西洋の護送船団は安全が確保されたという事かな」

 「イギリスの戦艦部隊は南大西洋域に配備されるだろうな」

 「そうか・・・という事は、日本海軍の負担が増大するという事か・・・・」

 「ヒットラーにしてやられたかな」

 

 

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第10話 1943/03 『ディエゴガルシア島沖海戦と喜望峰沖海戦』
第11話 1943/04 『ナミビア沖海戦』
第12話 1943/05 『アッツ上陸作戦とアッツ沖海戦』