第12話 1943/05 『アッツ上陸作戦とアッツ沖海戦』
1943/05/20 バンカーヒル、建造
1943/05/28 軽空母カウペンス、建造
戦艦ニュージャージー 建造
ベーリング沖は、5月でも寒い。
日本軍は、暖かい日を選んで硬い凍土を掘り、居住区画を広げていく。
それが居住用であっても凍土の固さから要塞になってしまう。
ミッドウェー海戦以降、日本海軍の作戦は功を奏していた。
アメリカ・イギリスの損失は大きく、反攻作戦は、遅延している、
しかし、戦力比が引っくり返るのは年月の問題であり、
反攻作戦が開始されたなら、最前線の一つであるアッツが狙われる公算は多分にあった。
そして、こんなところとはいえ、アメリカ合衆国領土であり、
地下空間が広がれば防衛も期待できた。
朝もやが晴れると日本軍将兵は、外に出て作業を始める。
「寒いな」
「ああ、運動すれば、暖かくなるだろうけど、汗をかくのも命取りか・・・」
海上も少しずつ朝もやが薄れ、視界が広がっていく・・・
「「「「「・・・・」」」」」
それまで無かったものが視界に入った。
「艦隊だ・・・」
不意に砲声がいくつも轟き、
降り注ぐ砲弾の雨が空気を切り裂いて迫ってくる。
砲撃は、アッツ島の凍土を吹き飛ばし、大地を振動させる。
そして、上空に現れ始めるアメリカ軍機が爆弾を投下する、
アメリカ軍のアッツ上陸作戦が始まった。
そして、その頃、キスカも、アトカ島からの空襲を受けていた。
空母エセックス
アメリカ機動部隊
空母エセックス、レキシントンU、インディペンデンス、
戦艦マサチューセッツ、アラバマ、
軽巡クリーブランド、コロンビア、モントピーア、デンバー、バーミンガム、
駆逐艦16隻。
アメリカ上陸作戦艦隊
戦艦コロラド、メリーランド、ウェストバージニア、テネシー、カリフォルニア、
重巡ウィチタ、
軽巡フィラデルフィア、サバンナ、ナッシュビル、
駆逐艦15隻、護衛艦12隻、輸送船24隻
軽巡ナッシュビルの艦橋
「随分、すんなりと、上陸できたな」 艦長
「戦艦5隻の艦砲射撃ですから日本軍は、壊滅したのかもしれませんね」 副艦長
「だと良いがな・・・戦艦への主砲弾の補給は?」
「3分の2を消費してからだそうです。もうすぐでしょう」
「霧が出る前に補給が終われば良いが、哨戒線に異常はないか?」
「日本本土の艦隊は、それほど多くないと聞いてますが」
「わかっている。インド洋の日本艦隊を太平洋に戻すための作戦だ」
「ホワイトハウスもイギリスにせっつかれたのでしょうか?」
「イギリス海軍の戦艦12隻は、日本海軍に撃沈されている」
「ドイツ海軍に沈められた戦艦は3隻だけだ。日本海軍の実力だろうな」
「商船撃沈は、ドイツが上ですが。日本は、拿捕商船が多いですからね」
「イギリス海軍の威信も、地に落ちたな」
「正規空母4隻もです。実のところ、こちらの方が痛いでしょう」
「お陰でこんな寒い場所で支援攻撃をしなければならない」
「ですが、この作戦自体は、悪くはないと思います」
「ここなら天候次第で、ゼロも飛んでこない」
「日本人の性格ならアッツが占領されたら。インド洋の艦隊は、太平洋に回航するだろう」
「ゼロは、怖いですがね」
「特に最新型の5型、そして、飛燕2型。どちらも脅威です」
「しかし、この海域ならレーダーを持っている我々の方が優勢だ」
「日本本土は、水雷戦隊くらいしか残っていないはずです」
「戦力差を考えれば、こないだろうな」
アメリカ軍のアッツ上陸。
それに対する、天皇の対応は、早かった。
躊躇する海軍に対し、本土に残っている残存艦隊を全てを出撃させる。
大和艦橋
戦艦 大和、武蔵、
軽巡 阿賀野、球磨、多摩、
駆逐艦 白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、江風、涼風、
部隊の違う、寄せ合わせの艦隊だった。
しかし、勅命書が届くと出撃するしかなかなかった。
「提督。準備が整いました」 副官
「そうか、では、勅命通り出撃だ」 提督は、鉛色の空と海を見つめる
「・・・もったいないと思いませんか?」
「油が、かね」
提督は、山と詰まれたドラム缶を見つめた。
「いえ、戦艦2隻の処遇です」
「世界最大最強の新造戦艦の使い方としては、酷すぎませんか?」
「俺達に選択の余地はない。そうだろう」
「・・・・そうでしょうが」
「主砲の死角をつくらないように上手くいけばいいが」
「艦尾を向けることになりますが、その点だけは何とかできそうです」
「この地図と海図が正しければ、ですが」
提督と副官は、海図を覗き込む。
日本艦隊の接近は、ソ連船の通報と、
哨戒中のアメリカ駆逐艦の電探によって発見される。
しかし、アメリカ戦艦部隊は補給により対応が遅れ、
アメリカ機動部隊は霧による障害で、日本戦艦部隊の攻撃が遅れてしまう。
アッツ島は、アメリカ旧戦艦部隊の艦砲射撃後。
アメリカ軍12万が上陸していた。
日本軍守備隊1万は、勅命を受けて持久戦を戦い。
アメリカ上陸部隊は、橋頭堡を広げながら着実に前進していく。
アッツ島沖海戦と呼ばれた一連の戦いで、日米艦隊の戦力差は圧倒的だった。
しかし、アメリカ上陸作戦が霧を利用して接近し、いきなり艦砲射撃を行なったように
日本艦隊も、霧を利用して接近する。
補給を終えたアメリカ戦艦部隊が日本艦隊を発見し、
砲撃を開始したのは、まだ周囲が霧に覆われていた時だった。
薄れゆく霧の中、日本艦隊は、レーダー射撃の砲撃を受けると蛇行しつつ増速し、
垂れこめた靄から大和の艦橋が顔を出していた。
そして、あまりにも巨大な日本戦艦2隻がアメリカ戦艦部隊に向かって砲撃する。
高速移動する艦艇は、レーダー射撃で砲撃しても簡単に当たらない。
ベーリング海を北回りに進入し南下する日本戦艦部隊と、
東進するアメリカ戦艦部隊は、どちらもアッツ上陸部隊と橋頭堡に向かっていく、
戦艦と艦砲の大きさを除けば、アメリカ戦艦部隊は、数で勝り、十分に戦えると思えた。
しかし、大和、武蔵の方がわずかに到着が早そうに見えた。
アメリカ海軍将兵に最悪のT字戦が脳裏に過る、
軽巡ナッシュビルの艦橋
「くそっ! 北側から回り込んできやがった」
「その上、間が悪い」
「補給の間隙を突かれましたね・・・」
「!? んんっ! 日本艦隊は、まっすぐ橋頭堡に向かっているぞ」
「艦長、右舷に日本の巡洋艦です」
「もっと接近しろ!!」
「あの化け物を上陸作戦部隊に近付けさせるな」
「駆逐艦が魚雷を発射するまで、引っ張るぞ!!」
ナッシュビルの周囲に水柱が立ち昇る。
少し時化ようとしていたが砲撃は、まだ可能だった。
アメリカ軍の上陸作戦は、ほぼ終わっていた。
もう退くことはできない。
プラットフォームとして弱い小型艦は、時化になれば、先に命中率が低下する。
巨大戦艦2隻は、アメリカのどの戦艦より大きかった。
だとすれば、時化が酷くなれば、戦艦の数で勝ち、レーダー射撃が出来ても不利に思えた。
時化でも安定して撃てる巨大戦艦が勝つに決まっている。
それほど、プラットホームの差は大きかった。
風が強くなるほど霧が掠れ、波が高くなり、海面の飛沫を飛ばしていく、
「時化る前にあの戦艦に魚雷を食らわせないと大変なことになるぞ」
後方から大口径砲の砲声が一定の間隔で轟き、衝撃も伝わる。
そして、前方の大型戦艦2隻も、それぞれ、9門の砲を向けて砲弾を撃ってく。
そう、完全にT字戦に追い込まれた。
巨大な戦艦が砲撃の爆炎で隠れ、
撃ち返された砲弾が大気を切り裂き、後方の戦艦部隊に向かって飛んでいく。
そして、後方の戦艦メリーランドが水柱に包まれ、
ナッシュビルにも衝撃が走る。
「どうした!!」
「・・・・艦尾に被弾。第4砲塔の電気系統が破損。小破です」
「駆逐艦だな。生意気な。撃て、撃ちまくれ!!」
「ジャップを戦艦に近付けさせるな!!」
「日本艦隊が霧に入っていきます」
「レーダー射撃だ。続けて撃ちまくれ、撃て!」
日本艦隊が千切れ掠れながら流れる霧に隠れると、一方的に砲撃を受ける。
しかし、命中弾は、少なく。
アッツ島とキスカ島からの電波輻射に誘導された日本艦隊は、高速で移動し、
アメリカ艦隊に魚雷を発射する機会を与えなかった。
次第に霧が晴れていくと・・・
砲撃している日本戦艦は、見たこともない大型戦艦である事に気付く。
大和、武蔵は、アメリカ戦艦に砲撃や駆逐艦の魚雷攻撃を受けでも速度を緩めず、
アッツ上陸地点に突入していく、
アメリカ上陸作戦部隊は、アッツ南東部。
岸壁のある山を挟んで北海岸幅10kmと南海岸幅14kmに分かれて上陸していた。
多くの陸海軍将兵は、この短い時間、時の流れが驚くほど長く感じたと報告し、
スローモーションのように思えたと報告する。
大和 艦橋
「全員、対衝撃用意。座礁するぞ。何かに掴まれ〜!!」
伝声管からの命令で、乗員は、思い思いに何かに捕まる。
大和は、アメリカ軍橋頭堡の北海岸陣地に半舷上陸し乗り上げ、
武蔵は、アメリカ軍橋頭堡の南海岸陣地に半舷上陸し乗り上げてしまう、
「「「「「・・・・・」」」」」
大和艦橋
座礁の衝撃で艦体が不気味な音を立て軋みをあげる。
多くの者が取っ手に捕まり、体が飛ばされるのを何とか支える。
軋みと衝撃が鈍く艦体に伝わっていく。
そして、艦首が微妙に競り上がる。
座礁の直前、思いっきり後進をかけたものの、
バイタルパートでない艦首域は、破壊されていく。
キールさえ無事なら穴を塞げば、何とか離床できるだろうか。
満潮、引潮も、考慮できる余裕はなく、どちらでもないといえた。
何より、勅命書に離床させる予定が書かれていない。
橋頭堡のアメリカ上陸部隊が真っ青になり、座礁した大和を見ている。
大和が前方をわずかに持ち上げた上体で停止し、
体が引き戻されそうになるのを取っ手に捕まって堪えた。
「被害を知らせろ」
副艦長が伝声管に向かって叫んでいた。
「砲雷長。敵戦艦への計測を急がせろ! 主砲発射準備!」
『・・・かわいそうに・・・』
提督は、橋頭堡のアメリカ上陸部隊に同情する。
艦首が、わずかに持ち上がっているため計測が変わり、
誤差修正が行われつつ、砲塔が旋回し、砲身が上下していく、
ナッシュビル艦橋
「なんてこった。あの化け物は、北海岸の橋頭堡に乗り上げやがった」
「・・・艦長・・・撃てば・・・上陸部隊に命中します」
「艦長! もう1隻も、南海岸の橋頭堡に乗り上げました」
見張りの兵士
日本の巨大戦艦の砲塔がゆっくりと動いていく。
艦長は、真っ青になって、後ろを向いたとき・・・
巨大戦艦の主砲が轟音を上げ火を噴いた。
上陸作戦艦隊、
戦艦コロラド、メリーランド、ウェストバージニア、テネシー、カリフォルニアだけでなく。
機動部隊から分派した新型戦艦マサチューセッツ、アラバマがアッツ島の沿岸に近付いていた。
アメリカ戦艦部隊は、事の成り行きに呆然とする。
仮にどんなに有利でもアメリカ戦艦部隊は、上陸作戦部隊が邪魔で撃つことが出来ない。
ナッシュビル 艦橋
「・・旗艦に打診。戦艦を後退させろ!! 全滅する恐れあり。とな」
躊躇しているアメリカ戦艦部隊に向けて、大和の砲撃が轟く。
大和の近くにいたアメリカ軍将兵は主砲発射の衝撃で吹き飛ばされ戦闘不能に陥る。
そして、南海岸に半舷上陸した武蔵の砲撃も始まる。
大和、武蔵は、アメリカ戦艦部隊に向かって砲撃。
アメリカ戦艦部隊は、撃ち返す事もできないまま、射的の的となっていた。
アッツ上陸作戦部隊
戦艦2隻の主砲発射は、破壊的な衝撃と大音響を橋頭堡に撒き散らした。
海軍所属の人間でなければ、経験することのない体験。
戦艦の舷側の近くにいたアメリカ兵士は、戦艦の主砲だけで、
体がバラバラになるほどの衝撃を受け、即死した者も少なくない。
そして、多くのアメリカ兵を転がし耳を難聴にする。
日本守備隊側からの砲撃と銃撃が始まる。
ここで、日本兵が突入してくれば、それこそ、絶体絶命でアメリカ軍は降伏だった。
しかし、戦艦の主砲による衝撃波は、神の如く公平だった。
敵味方の区別せず、自然の法則のみ従い、何人とも近付けさせない。
「し、小隊長。耳が!! 耳が! 聞こえません」 アメリカ兵
小隊長と呼ばれた男は、耳を押さえながら大声で話し、
「立つな! 衝撃でやられるぞ」
士官は耳を押さえ、南側を抜けて、島の反対側に行くと、手で説明する。
砲撃の衝撃が不用意に立った兵士を吹き飛ばした。
アメリカ海兵隊は、戦艦と島の間をすり抜け、島の北側と南側へ逃げ出す。
しかし、戦艦と日本軍守備隊に挟まれた場所は最悪だった。
戦艦に近付き過ぎて砲撃の衝撃で戦闘不能になるか、
守備隊の銃撃と砲撃によって倒れていく。
そして、アッツ守備隊も、主砲発射の合間を狙っての銃撃であり。
ほとんどの場合。隠れて耳を塞いでいる。
確実にいえるのは、戦艦の近くにいると戦闘不能にさせられる。
大和、武蔵の落ち着き払った砲撃を受けるアメリカ戦艦部隊は悲劇だった。
互いに撃ち合えば気持ちが高ぶり、集中力が低下して命中率は下がる。
撃ち返されず一方的に撃ち込めると気持ちが落ち着き、命中率が上がってしまう。
人間の心境は、そういうものらしい。
霧は、一時的に晴れ渡り。
時化は、強くなっていた。
時化でものをいうのは、安定性から得られる命中率であり。
砲数でも、隻数でも、レーダー射撃でもない。
7万トン級大和、武蔵は、燃料消費の分だけ、喫水が上がっても座礁しており強かった。
そして、撃ち返せないアメリカ戦艦部隊。
突然現れた二つの要塞によって、混乱と混沌のうちに泥沼化していく、
状況は、アメリカ海軍にとって、最悪であり。
アメリカ戦艦部隊は、上陸した将兵12万が、ひしめく橋頭堡に主砲弾を撃ち込むことも出来ず。
生き残ったアメリカ艦隊は、上陸部隊12万を置いて逃亡するよりなく、
逃げようと回頭していく、
しかし、逃げ出そうとするアメリカ戦艦部隊は、相対距離が近過ぎた。
46cm砲弾がマサチューセッツに4発命中し、
アラバマ4発にも4発が命中、
コロラド3発・・・
メリーランド3発・・・
ウェストバージニア4発・・・
テネシー4発・・・
カリフォルニア3発が射程圏外に出るまで命中し、
マサチューセッツは、誘爆を繰り返しながら沈没していく、
メリーランド、テネシー、コロラド、アラバマ、カリフォルニアも射程距離外に脱出する前に沈没し、
さらに重巡ウィチタ、フィラデルフィア、サバンナ、ナッシュビル、
そして、駆逐艦3隻が大和と武蔵の副砲と日本の水雷戦隊の砲撃で沈没していく、
アッツ島攻防戦は、戦力差からアメリカ軍が圧倒的に優勢だった。
アメリカ上陸作戦部隊は、橋頭堡を捨てなければならず。
アッツ守備隊の射線にさらされながら、
橋頭堡で居残ったアメリカ上陸部隊は、155mm砲など、
比較的、強力な榴弾砲で大和、武蔵を砲撃する。
しかし、俯角の射線が取れない艦砲は、反撃できず。
大和、武蔵は、撃たれるままだった。
しかし、アッツ守備隊から砲撃を受けるとアメリカ上陸部隊は地の利がなく制圧されていく、
アメリカ軍将兵4万人は、武器も食料もまともに持たず分散しながら
アッツ島の北側と南側に逃亡し、
4万人が戦死し、4万人が降伏する。
大和と武蔵に挟まれたアメリカ軍の橋頭堡は、戦略物資が集積し荷揚げされていた。
10個師団分の膨大な物資は、そのまま日本兵に捕獲され、
日本軍の基地に運ばれていく。
アッツ島に突撃した日本艦隊のうち、大和、武蔵はアッツ島に座礁し、
巡洋艦、阿賀野、球磨、多摩と
駆逐艦、春雨、五月雨、海風、江風、涼風は撃沈され、
海上に残された残存艦隊の白露、時雨、村雨、夕立は、任務完了を見届けると逃亡する、
時化は強まり。
戦闘は、困難になりつつあった。
霧が晴れた後、半舷上陸して身動きが取れない大和、武蔵に対し、
アメリカ機動部隊のエセックス、レキシントンU、インディペンデンスは、攻撃部隊を繰り出した。
しかし、大和、武蔵の近くに味方の上陸部隊が残っていたことから900kg爆弾投下を断念。
アッツ島の日本守備隊陣地に爆弾を投下していく、
北アフリカ チュニジア
独伊軍3万が脱出できず、連合国に降伏した。
欧州戦線、
ドイツ軍は、苦戦していたことから、
アフリカ戦線から脱出できたイタリア軍をイタリア本土防衛にあたらせ、
イタリア本土の部隊を東部戦線に組み込ませた。
イタリア軍が脆弱な理由の一つは、装備されている武器も一因があった。
ドイツ製の兵器なら程度が低くても、それなりに戦うことが出来た。
また、イタリアの士気は、北アフリカ戦線で降伏したイタリア軍の兵数と比例している為、
半島に厭戦気運な空気が広がっていた。
ビルマ戦線は、インド独立で消滅していた。
ガンジーが首相。チャンドラ・ボースが国防大臣。
日本は、ビルマ全土を完全に制圧。ビルマ自治政府を成立させる。
そして、ビルマ戦線の戦力を北上させ、中国戦線に送り込んだ。
その戦力は、米英軍の主力兵装で固められ、
M4・M3戦車やクルセーダー、マチルダ戦車など・・・
「うそ! ガソリンエンジンなの?」
「うん」
アメリカ製、イギリス製の戦車は、ガソリンエンジンであり、
航空部隊と燃料の奪い合いになっていく。
この時期、天皇は、東南アジアの独立と、
資源の一部を日本の権利として認めさせる独立条約のすり合わせをしていた。
これは、朝鮮半島の朝鮮人を刺激してしまう。
バンコクの野営地
「・・・ビルマ駐留は、紳士的にやって欲しい」 兵団長
「了解しております。兵団長」 師団長
「問題だけは、起こさないでくれ」
「この付近は、貴下の師団だけで、救援は簡単に来られないからな」
「お任せください。カチン族とは良好ですから」
「くれぐれも公平にな。恨みを買うなよ」
「はっ! 兵団長も中国戦線でのご武勲をお祈りしています」
師団長が敬礼する
「うむ」 答礼。
アッツ島沖海戦後、ベーリング海に進出した日本潜水艦がアメリカ輸送船団を襲撃すると、
アメリカ海軍の損害は、増加していく。
伊号潜水艦の雷撃で、軽巡ヘレナ、護衛艦14隻、輸送船10隻が撃沈されていた。
赤レンガの住人
「アッツ島の戦況は?」
「橋頭堡は停戦状態で捕虜返還船待ちだ」
「島の反対側に逃げ出したアメリカ上陸作戦部隊は、補給難に陥っている」
「アメリカ軍は、輸送船4隻が撃沈され」
「駆逐艦で、大和、武蔵の死角側の海岸線に補給物資を降ろしているらしい」
「大和、武蔵も、山頂の観測所の誘導で砲撃しているようだ」
「命中率は期待できないが460mm主砲弾を持っていくことになるな」
「460mm砲の命数は、200発から250発だから、尽きたら終わりだろうが」
「しかし、大和、武蔵を上陸地点に半舷上陸させるとは、陛下も思い切った作戦をされる」
「だが、そうしなければ、大和、武蔵でアメリカ戦艦7隻に勝てなかった」
「それに、いまなお、主砲砲台は使用できるし、要塞として居座っている」
「大和、武蔵は、燃料、食料、海軍陸戦隊、武器弾薬を余分に載せて突入させている」
「しばらくは、大丈夫だと思うが」
「あと大和、武蔵を海岸から引き出し、再就役させるのは、可能かもしれない」
「大和と武蔵がない方が経費で助かるよ」
「ふっ」
「問題は、アッツ守備隊だな」
「基地建設のために冬季明けと同時に補給物資と工兵部隊を上陸させていた」
「しかし、アメリカ軍の上陸作戦で作業にならないな」
「艦隊を出して、掃討できないのか」
「高速戦艦部隊と巡洋艦隊を準備している」
「しかし、どちらも南シナ海とトラック配備。機動部隊がインド洋配備になっているよ」
「長門と翔鶴が修理改装で呉にいるだけだ」
「本土に余っていた海軍戦力で、あれだけの戦果を上げたのだから良しとすべきだろう」
「ドイツ戦艦も、本土で、修理改装しないと駄目だな」
「ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウの3隻は大破している。」
「装甲艦リュッツォウ、アドミラル・シェーアは無傷」
「重巡プリンツ・オイゲン、アドミラル・ヒッパーの2隻と」
「軽巡ライプチヒ、ニューインベルグの2隻は、損傷が小さいようだ」
「ヒットラーは、なんと?」
「潜水艦50隻と交換したいそうだ」
「2000t級潜水艦50隻だと10万tだ」
「たしかにトン数で同じでも、冗談じゃない」
「こっちが戦艦3隻と潜水艦50隻を交換したいくらいだ」
「潜水艦50隻の方が役に立つ。戦艦派でもそう思うだろうな」
「だが、アッツ沖海戦のような真似は、潜水艦50隻でも出来ないぞ」
「そういえば戦艦派がアッツ作戦を引き合いに出すのだから、お笑いだぜ」
「大和、武蔵のアッツ出撃を渋っていたからな」
「勅命が出なかったら後生大事に物置に飾っとく連中だ」
「まあ、そう言うな」
「山本提督もボイコットせずに勅命として与えられた命令を忠実、着実にやったのだから」
「他の提督が出払っていただけだろう」
「しかし、伊勢、日向、金剛、比叡、榛名、霧島の6隻を出撃させれば、アッツを完全に回復できそうなのか?」
「どうかな、アメリカ海軍は、アイオワ、サウスダコタ、インディアナ、ワシントン、ノースカロライナを出してくるだろう」
「同じ高速戦艦でも、格が違うな」
「勝ち目がない、というよりも空母艦載機の標的になって、そのまま棺おけだ」
「しかし、マーシャルに攻めてこないと思ったら。アッツ島とは」
「マーシャルだと航空戦になる」
「トラック防空戦での飛燕2型、ゼロ戦5型の戦闘能力の高さは知られている」
「アメリカ海軍も機動部隊1群だけで戦いたくないだろう」
「電探で劣っている状況で霧の多いベーリング海は戦いたくないな」
「ドイツの優秀な電探でも米英軍のレーダーに負けているそうだ」
「8方向全周囲に電探を固定させて、探知する艦橋を研究しているよ」
「花魁か」
「いやなら、薄い透過性の強い板で覆うさ」
「対空対艦、電探射撃が出来なければ、霧の多いベーリング海や夜戦で勝てない」
「赤外線探知機はあるだろう」
「それも付けるけど。大和、武蔵が霧の中で砲撃を受けたことは変わりない」
「正確な射撃ではなかったが命中した砲弾もあったそうだ」
「電探を装備しないと戦争自体不可能になるな」
「捕虜をどうするんだ」
「ダーウィンで返還するからアッツは停戦したいと申し出た」
「その間に橋頭堡にある戦略物資を安全に手を入れられるだろう」
「捕虜返還が効いたかな。4万人の将兵が苦戦するだけで、いきなり捕虜になるとはね」
「捕虜になれば、極寒のアッツから、オーストラリアでバカンスだ」
「苦戦しているのに戦いたくないだろう」
「最初は反発されていたが、無償捕虜返還。悪くない計略だな」
「そうだな・・・」
「そういえば、三菱の航空機製造工場も飛行場を併設するように勅命を出してくれたし」
「こちらも助かるな」
「そういえば、飛行場を建設することに反発していた連中は前線送りにされたんだろう」
「・・・まあ、荷受業者と、どこぞの系列将兵にとっては災難だっただろうがね」
「工場を謁見されたが運の尽きだ」
「ほかの航空機製造工場も軒並み飛行場を併設し始めている、風通しも良くなってくるだろう」
「ああいう、縁戚関係による弊害はいい加減に腹が立つ」
「しかし、新聞社は軒並み陛下を称えて軍人を攻撃しているが、いい傾向ではないのでは」
「新聞社も虚偽報告で、かなりやられたからな」
「あの時、軍上層部は、逃げ切ったが、今度は、仕返しだろう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
よろしくです。
第11話 1943/04 『ナミビア沖海戦』 |
第12話 1943/05 『アッツ上陸作戦とアッツ沖海戦』 |
第13話 1943/06 『第2次アッツ沖海戦』 |