第16話 1943/09 『イタリア降伏』
地中海
アメリカ・イギリス軍がイタリア本土に上陸。
イタリア政府は、連合国と休戦協定を結びイタリア人は、戦意喪失。
3国同盟の一角が崩れた。
ドイツ軍は、イタリア半島を制圧したものの。
イタリア人は離反しており、イタリア半島維持は、困難になっていく。
空母エセックス
太平洋
アメリカ機動部隊
空母エセックス、ヨークタウンU、プリンストン、
戦艦アイオワ、ニュージャージー
軽巡サンディアゴ、クリーブランド、デンバー、コロンビア、フェニックス、ボイス、駆逐艦15隻
空母レキシントンU、バンカーヒル、インディペンデント、ベローウッド、
戦艦サウスダコタ、インディアナ
軽巡サンジュアン、モントピーア、バーミンガム、ホノルル、セントルイス、駆逐艦15隻
米英軍は、欧州戦線でドイツ第3帝国を押していたものの、
インド・太平洋戦線は停滞していた。
特にアッツ島の戦況は、アメリカ国民を憤らせる。
アメリカ輸送船部隊は、越冬に必要な物資こそ運び込んだものの、
アメリカ軍の越冬準備は、重機が少なく、中途半端なものだった。
一方、日本軍は、地の利を生かし、奪った重機と爆薬で凍土を刳り貫き、
兵員と武器弾薬の多くを格納し、アッツ島を要塞化して優位だった。
停戦が終わると、
アメリカ軍は、日本軍に鹵獲された大砲の砲撃を受けながら凍土を掘らなければならず。
地上に建物を建設しても、砲撃で破壊されるだけ。
アメリカ軍は、アガッツ島からの爆撃機が出撃させ、アッツ島とキスカ島を爆撃。
しかし、次第に天候が悪化し、雹や雪混じりの突風が吹き荒れる日が増え、
空襲の機会が失われていく。
ハワイ
白い建物の住人
「・・・長官。えらい荒れようだな」
「天皇が直接指揮を執っていると聞いたとき “年内に東京湾で満艦飾だ” と大騒いでいたのに・・・」
「今では見る影もないな」
「エセックスとインディペンデンスは、使えるだろう」
「2隻だけじゃないか。マーシャルも攻撃できないぞ」
「レキシントンUとヨークタウンU、バンカーヒルも、その気になれば、使えると思うが」
「使えるさ。ただ、上手く使えるか、上手く使えないかの差だ。練度の問題がある」
「長官も悩みどころか」
「トラックもマーシャルも飛燕2型とゼロ戦5型が配備されている」
「それにマーシャルを占領しても、うまみが少ない」
「日本は基地を攻撃してこない。機動部隊もだ。攻撃するのは、輸送船団」
「そして、こちらの爆撃部隊は、ゼロ戦5型と飛燕2型の袋叩きにあって消耗するだけ」
「占領しても、ガナルカナルやニューブリテンと同じ。脆弱になったところを食われるだけだ」
「そういえば、日本側が、数を頼っているという点で、しっかりしている」
「トラック防空で素人パイロットを囮にしても、というのが露骨だな」
「進攻側は、素人に厳しいからどうしても数が制限される」
「それでトラック攻撃では、数の上でも良い勝負になってしまう」
「日本側の天皇が将官の反対を押し切って出しているそうだ」
「・・・ミッドウェーで勝ったのが運の尽きかな」
「そうだな・・・どっちとも、言えないが・・・・・」
「せめてミッドウェーで引き分けだったら日本を消耗戦に引き摺り込めたかもしれないな」
「勝ち過ぎて、ドラゴンが出てきたような気分だ」
「ところで、日本の国勢は?」
「結核による闘病者の死亡者が減少している」
「戦車の生産をやめて農業機械を生産。食糧増産に成功している」
「工作機械もシステマチックに再配分して、一時的に生産が低下した」
「しかし、いまは、生産効率が上がって、品質は、安定したまま」
「ちっ! シリンダーをまともに製造できなくなって、飛べなくなると思っていたのに・・・」
「陛下が規格統一を進めて数量重視より、質を重視させたらしい。それが原因だろうな」
「土木建設機械の生産も、そこそこ進んでいる」
「もっと、日本で悲観的な内容はないのか。それを報告して睨まれるのは俺たちだろう」
「だから、言っただろう。陸軍を一部削減して、帰郷させて、戦車の生産をやめたと」
「まあ、悪くないが・・・」
「ところで日本が、扶桑、山城、以下の旧式艦船を解体したのは、本当なのか?」
「新型戦艦1隻を解体したというのは?」
「たぶん、物流の動きからして本当だろう。誰も信じないがね」
「おかげで、日本の生産量を6パーセントほど間違っている」
「イギリスの旧式戦艦4隻も解体している」
「信じられていないが、それで、生産量が変わるな」
「伊勢型戦艦の修復も早いだろう」
「イギリス人には、聞かせられない話しだな」
「ふっ いくら敵国の戦艦で大破していたとしても、解体だからな」
「ドイツ人やロシア人なら涎を流さんばかりの戦艦なのに」
「日本は、それだけ鉄が不足しているのだろう」
「語る日本人も涙、聞くイギリス人も涙だな」
「問題は、日本に鋼を解体できるだけの工具があって、鋼を削れるだけの工作機械があるかどうか」
「溶かすんじゃないか」
「溶かしても、製鉄して、鋼を加工するときにも工作機械は使う」
「そして、工作機械は、使えば使うほど消耗していく」
「日本のジリ貧は変わらないな」
「ははは」
「北ニューギニアへの鉄道建設は、もっと資材が必要だな」
「結局、鉄道は、ニューギニア島支配が目的か?」
「結果として、そうなるだけで、副次的なものだろう」
「鉄道がビアク島対岸まで辿り着けば、航空戦力を拡充して、ビアクを無力化できる」
「あとは、陸上機の支援を受けながらフィリピンを落とせば、日本は締め上げることが出来る」
「日本は、ビアク島とトベライ半島」
「そして、ダバオに戦力を集中しつつある」
「たぶん、ここで迎撃するつもりだろう」
「こちらが北ニューギニア域に集中できる」
「日本は、ミクロネシアとフィリピン側にまで、戦力を分散だから有利なんだがな」
「鉄道施設は、なかなか、大変で梃子摺っているようだ」
「このまま、ドサクサにまぎれて、アメリカとオーストラリアの共同統治にしてしまうんだろう」
「戦後も、日本に対する圧力にはなるさ」
大統領とアメリカ太平洋艦隊は、国民受けする戦果を求められていた。
アメリカは、イギリスがインド洋で日本と妥協する代償として、
キングジョージ5世、デューク・オブ・ヨーク、アンソン、ハウを借用。
キングジョージ5世型4隻は、太平洋へ回航されて豪州に配備され、
重巡オーストラリア、シュロップシャー、
軽巡ホバート、リアンダー、エンタープライズ、デリー、アキレスと合流。
太平洋艦隊の指揮下に入った。
この頃、日本は、東南アジア一帯で一定の資源の所有権を得ることで、
自治政府を成立させようとしていた。
米英潜水艦部隊が、(大鷹)、秋風、夕風、太刀風、帆風を撃沈。
赤レンガの住人たち
「戦局は、悪くないと思うが」
「悪くないさ。良くないだけだ」
「軍部も、国民も、戦果を要求しているようだが」
「陛下は、出撃を命じていない。防衛は、必要だ」
「日本人は、待つのが嫌いな民族だがね」
「知っているよ。アメリカとイギリスも、そう考えているだろう」
「戦力差が広がった状態でアメリカ側から攻めてくると手がつけられんぞ」
「空母と戦艦をベルトコンベアに載せて建造しているそうだ」
「練度は違うだろう。2年で空母を建造できても、ベテラン水兵は2年じゃ足りない」
「んん・・・戦力差が開くまでアメリカが、我慢するかな」
「逐次投入なら、それなりに助かるがね」
「それに戦果を欲しがっているのは、日本だけじゃない」
「アメリカとイギリスも欲しがっているよ」
「しかし、いまさらだよ」
「イギリスとオーストラリアも日本との戦争に意義はないと知っている」
「真珠湾攻撃という馬鹿な作戦のおかげで、アメリカを除くがね」
「あれがなければ、アメリカとも講和の道があった」
「あの男を死刑にしてやりたいね」
「あの男は、大和と武蔵でアッツ島に突っ込んだろう」
「陛下が引き出して、彼に勅命書を出した。ミッドウェー敗戦の責任を取れとね」
「お陰で作戦は成功。まだ生きているようだが」
「ミッドウェー敗戦の失敗は、アッツ島沖海戦で取り戻せてもな・・・」
「戦術的敗北は戦術的勝利で回復できる」
「しかし、戦略的な敗北である真珠湾攻撃の責任は、戦術的な勝利を重ねても回復できんよ」
「あの男が生きて戻ってからだろう」
「最善でも真珠湾の被害総額は、賠償するべきだろうな」
「外務省の怠慢であっても、騙まし討ちには違いない」
「しかし、卑怯と言い切って良いのだろうか」
「日米の国力は、50対1だ」
「それを卑怯とは言わないだろう。普通は、バカとか、勇気があるとかいうんだ」
「無知とか、蛮勇とも、いうな」
「まあ、確かに国力差からして、アメリカの言い分は、正当とは言えないな」
「正当じゃなくても、アメリカ国民に対する士気掲揚は、必要だろう」
「リメンバー・パールハーバー。アイシャールリターン。分かりやすい表現だ」
「本当は、北ニューギニアに鉄道を敷きながら迫っているアメリカ軍が心配だ」
「陸上機の航空支援を受けながら攻めてこられたら、機動部隊を不用意に突入させられないな」
「それは、陛下次第だろう。いまのところ航空戦だけは優位に戦っている」
「そりゃ アメリカ製の治具で稼働率は、上がって、数を揃えての迎撃だからな」
「ほとんどの場合。同数以上の迎撃なら、負けないだろう」
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