月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

    

第18話 1943/11 『日中講和条約』

 1943/11/17 軽空母バターン、建造

 1943/11/24 空母ワスプU 建造

 1943/11/29 空母ホーネットU 建造

 

 日本海軍は、アメリカ海軍やイギリス海軍に打撃を与え、

 インド・太平洋の防衛線を維持していた。

 日本がインド洋の制海権をとったことで、インドが独立。

 中東と東アフリカが日米英の監視の下、自治政府が準備され、独立の準備が進む。

 日本陸軍は、米英軍から捕獲した大量の武器弾薬を中国戦線に投入し、

 M4戦車、M3戦車、スチュアート軽戦車、

 マチルダ戦車、ジープは、補給を失った中国軍を圧倒する。

 蒋介石は、連合国軍の支援を当てにできず、

 日本と戦争を継続しても益は無いと判断しており、

 日本が段階的に撤退する内容を信じ、講和を承認するよりなかった。

 金さえ払えば、利権を買い戻す事ができるを信じるしかなく。

 日中講和条約調印。

 長江に雨が降り、重慶に停泊中の日本の河川砲艦は濡れていた。

 日本の3000トン級新型河川砲艦(出雲、八雲)は、

 140mm砲2基。25mm機銃10丁のディーゼル電気推進艦。

 2隻しか建造されていない、

 敵中であったが講和を結ぶだけであり。

 しかし、戦艦に使う装甲板で建造されており、

 中国軍に対し、決定的な意味があった。

 装甲河川砲艦といえるもので、中国軍の火力で破壊不能。

 この艦艇は、重慶まで航行でき、

 重慶を占領できると、暗に宣言していた。

 駆逐艦に毛が生えた程度の大きさで、

 艦首に規格外砲の大砲を2基背負い式に配置。

 単純な艦橋に大きな通信搭。

 比較的小型の煙突と艦尾にかけて、上陸用舟艇が並んでいる。

 河川装甲砲艦、出雲の甲板。

 「・・・不便な軍艦だな」  陸軍中尉

 「装甲版は、10000トン以上の艦艇で可能なんだ」

 「3000トンの軍艦を装甲化するのは、かなり苦しい」  海軍中尉

 「乗員が住めないとはね」

 居住区画は、別の船にあった。

 「陸上の戦車と違って、浮力が必要だからね」

 「しかし、中国軍相手なら十分だろう」

 「だが、必要な物も載せられない」

 「この艦艇を見て講和なら、効果があったということかな」

 「講和は欧米の補給が途絶えて、決定的になった」

 「この艦艇を見る前だろう」

 「今頃、講和条約が調印されているな」

 「しかし、この軍艦、127mm砲なら命中しても大丈夫だ。見かけは悪くないと思うが・・・・」

 「海を走らせなければね」

 「機関が小さすぎて、速度も遅い。大砲が命中するかは運しだい」

 「しかし、魚雷が当たれば沈む・・・長江以外では使えない」

 「何より、人が居住するの比最低限、必要な物もない」

 「長江専用艦か」

 「これが、今まで建造されなかった理由だ」

 「もっと早く建造していたら。中国戦線は、楽だっただろうがね」

 「ああ、50隻は、欲しかったね」

 「50隻なら150000トンか〜 無理だろう」

 「だが、こいつがあったら、太平洋戦争前に日中戦争は、ケリがついていた」

 「陸軍は船が苦手。海軍は大陸に入り込みたくない」

 「一般的な、日本国民なら一言、言いたくなるだろうな」

 「・・・そうだな」

 「日中講和条約が結ばれたら、無用の長物にならないか」

 「持っているだけで、違うだろう。それにしばらくは、長江の優先権も認められるはずだ」

 「やれやれ、陸海軍統合の象徴。河川砲艦か」

 「中国との講和が成立したら、俺は、外洋に行く」

 「この艦は、新兵が来るから、よろしくな」

 「じゃ 太平洋か?」

 「太平洋になるか、インド洋になるか。乗る船は決まっている」

 「そうか」

 「ところで、陸軍は、アメリカやイギリスの戦車には、慣れたのか?」 

 「慣れるほど、燃料がなくてな。整備士も足りない」

 「師団編成で、補給部隊と整備士を増やしているのだろう」

 「届ける燃料がないのだから無理だな。海軍が取りすぎだ」

 「ははは」

 日中講和後、日本陸軍は、中国戦線で陸軍を削減しつつ、

 防衛線を構築しやすい戦線まで後退し、強固な防衛線を構築してとどまった。

  

 

 イタリア半島

 米英軍がイタリア半島に再度上陸すると、ドイツ軍は、さらに後退する。

 アメリカ軍将校たち

 「カッシーノは、もうすぐ落ちそうだが・・・」

 中隊長は、ため息混じりに戦線を見ていた。

 「戦力不足ですか?」 小隊長

 「弾薬不足もある」 中隊長

 「日本のせいでしょうね。日本人の442連隊を見れば、強さがわかるというものです」

 「フランスの義勇軍も出てもらうしかない」

 「フランス人は、サルジニア島とコルシカ島を落としたいようですがね」

 「もう戦力の割り振り利かないな」

 「クルスク戦でイタリア軍を磨り潰して引き分けたドイツ軍は、しばらく持つ」

 「クルスクで、ドイツは、一息ですか」

 「ドイツとイタリアは、北アフリカ戦線から撤収させ、浮いた部隊で戦線を支えることに成功している」

 「・・・では、そろそろ、戻りますよ」 小隊長が敬礼する。

 「いや、中隊で突撃する。あの丘を奪うぞ、お前の小隊は、1400時に後詰めと伝えとけ」

 「了解。1400時突撃します」

 

 

 太平洋戦線

 アッツ島が冬季戦に移行し、

 インド・太平洋戦線は、通商破壊作戦と海上護衛戦が増えていく。

 時折、トラック防空戦で、日米航空戦が行なわれ、

 アメリカ航空部隊が大きな損失を出してしまう。

  

 

 赤レンガの住人たち

 「ナバホ族の言語で暗号はわかったのか?」

 「ああ、照らし合わせたら、ドンピシャだった」

 「あとは、ナバホ語の訳をどうするかだね」

 「ドイツでもナバホ族の資料がないから、進んでいないらしい」

 「やれやれ、アメリカ軍がミクロネシアに来るか、ディエゴガルシアに来るか。それが問題だな」

 「アメリカ航空部隊は、トラック攻撃で消耗している」

 「前衛基地のサタワン環礁への攻撃は熾烈だ」

 「情報では、太平洋艦隊にイギリス艦隊が合流しているようだ」

 「アメリカの機動部隊はバヌアツとハワイに分かれている」

 「たぶん、揺さ振りをかけて、ミクロネシアか、ディエゴガルシアを占領する気だろう」

 「結局、艦隊を集中できた方が勝つよ」

 「米英戦艦が8隻か。どう考えても不利だな」

 「基地航空部隊が、どこまで粘れるかだ」

 「戦艦だけで、夜襲してきた場合。要塞砲台と機雷原で艦砲射撃に対抗できるだろうか」

 「あまり期待できそうにないがアメリカ戦艦部隊、機動部隊の動きを見失わなければ大丈夫だと思うが」

 「アメリカ太平洋艦隊が一番守るべき場所は、ハワイだ」

 「ここを失うと対日戦争事態不可能になってしまう。太平洋から簡単に動かないよ」

 「いや、ハワイ沖から遠く離れたインド洋にアメリカ機動部隊を移動させても大丈夫だろう」

 「ハワイ航空戦力だけで、日本艦隊を撃破できるし」

 「ハワイの守備隊は大きい」

 「ハワイ島に日本の機動部隊2群と戦艦部隊を撃退できる航空戦力を配備すると1500機くらいか」

 「その点、十分だろう。最強だった南雲機動部隊でもハワイの航空部隊は脅威だった」

 「いまでは、ハワイの航空部隊1500機」

 「ビスマルク・ソロモンの航空部隊3000機」

 「ノコノコ出て行けば、日本機動部隊2群は、全滅だな」

 「その情報は、正しいのか」

 「実戦部隊は、少ないと思うが西海岸のスペイン人の情報らしい」

 「撃沈した輸送船を差し引いての比率だから。だいたいあっていると思う」

 「まさか、機動部隊を差し向けて確認するわけにも行くまい」

 「アメリカ機動部隊がインド洋のクリスマス島に攻めてくる可能性もあるがな」

 「あそこを落とされるとインド洋どころか、ジャワ島、スマトラ島もやられるぞ」

 「まさか、ジャワ島、スマトラ島に上陸すれば、アメリカの方が補給難に陥って大損害だろうよ」

 「いくらアメリカの輸送船が余っていてもだ」

 「アメリカの輸送船も沈めているから、これ以上の損失は望まないだろう」

 「それに日本は、策源地と前線が一つになり、有利になる」

 「アメリカにジャワ・スマトラに上陸できるだけの船が残っているのか」

 「あるよ、国力が違いすぎる」

 「こまるな、日本の潜水艦は、もう、60隻沈んでいるぞ」

 「それに開戦以来、日本海軍艦艇は、いくら建造しても減少している。増えることはない」

 「米英潜水艦は?」

 「日本商船の損害は増えているよ」

 「米英潜水艦は、インド・太平洋戦域に200隻ぐらい配備されているそうだ」

 「日本も、これまで、米英潜水艦を90隻以上撃沈していると思うがね」

 「そんなのゴミや油を射出して、沈んだ振りをするから正確には分からないだろう」

 「3式輸送機の量産が進めば、商船隊の損失は軽減できる」

 「最初から4発爆撃機なんて欲を張らず、4発輸送機を開発していたら苦労をしなくても良かったんだ」

 「積載量が10tだとスズメの涙程度でしかないよ」

 「しかし、一式陸攻も輸送機に改造しているから、何とかなりそうだ」

 「6発でもいいな」

 「そうだな。しかし、日本の産業を支えるのに資源が小さすぎる」

 「そして、日本の産業では、現状の戦線を支えきれない」

 「安全のため商船隊をすべて、インド国籍にしたいくらいだ」

 「ははは」

 「だがインド船は、連合国に使われるかもしれないな。向こうの方がお金持ちだ」

 「インドは、大儲けだな」

 「インド人は、日本に感謝している。それほど理不尽なことはしないと思いたいね」

 「思うのは勝手でも、そっちに賭ける気になれんね」

 「印橋は、東南アジアと東アフリカ、中東へと勢いを伸ばしている」

 「東南アジアで華僑とぶつかるぞ」

 「そういえば、中国国民軍が共産軍に攻撃を始めたそうだが」

 「重砲無しでか」

 「山岳地帯で、重砲があった方がいい」

 「しかし、共産軍も、戦線を制圧できるような砲撃が出来るわけじゃない」

 「それに国民軍の方が優勢だ」

 「西安を国民軍に引き渡したから、後は、数で押せるだろう」

 「国民軍の重砲。使えるのか」

 「あまりたいした物は残っていない」

 「だから講和に応じたのだろう」

 「今後は、日本製の重砲を購入することになるだろうな」

 「やれやれ。何のために戦争しているのか分からないな」

 「資源だろう。内陸の鉄鉱石や石炭も手に入る」

 「そういえば、人工石油。少しは、増産されるのか」

 「石炭を10倍も消費して、重油を作っているのだから割に合わないような気もするがね」

 「そうだな。ドイツのようにたくさんの石炭があれば悪くないが」

 「石炭は、発電か鉄道に使いたいね」

 「そういえば、発電所も建設しないと、工場の操業もままならないな」

 「はあ、アメリカと戦争するなんて、馬鹿なことをしたもんだ」

 「アメリカ機動部隊がインド洋に戦力を集中したとき」

 「こちらも、ハワイに戦力を集中して占領できればいいのだが」

 「無理そうだ、アメリカに合わせて、動くしかないよ」

 「貧乏は、イヤだな」

  

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