第21話 1944/02 『バトル・オブ・ドイッチュランドT』
アメリカ戦略爆撃部隊は、コンバットボックスを構築しながらドーバー海峡を越えていく。
欧州大陸に入ると、既にレーダーで探知されているのか、対空砲火の洗礼を受ける、
地上からの対空砲火が弾幕を作り、コンバットボックスに吸い込まれていく、
B17爆撃機の搭乗員は、集束してくる曳航弾の恐怖に堪え、
炸裂する砲弾の衝撃波で機体が震え、うねる、
そして、被弾した衝撃で振動する。
数十機のB17爆撃機が黒煙を吐きながら地上に墜落し、
あるいは、空中で爆弾が誘爆し、火球を作って機体が四散する、
一部の機体は、黒煙を吐き出しながら爆弾を落とし、後退していく、
米英戦略爆撃部隊は、重爆撃機1000機のコンバットボックスで相互支援しつつ、
飽和爆撃を繰り返した。
爆撃部隊のノルデン照準器は、高度と速度を計算し、
効率良く目標に爆弾を命中させることができた。
絨毯爆撃は都市爆撃であり、
壮大な爆弾の無駄使いで精密爆撃より効率が悪かった。
それでも爆撃部隊は、数にモノをいわせ、
ドイツの主要都市を瓦礫の山に変えていく。
対するドイツ空軍の迎撃もシステマチックだった。
メッサーシュミットとフォッケウルフが護衛のムスタングやライトニングを切り崩していく。
そして、一部のドイツ戦闘機がコンバットボックスに切り込んでいく。
死角のない弾幕がメッサーシュミットやフォッケウルフを切り刻み、ズタズタにしていく。
しかし、B17爆撃機も同様に機銃掃射を受け、撃墜されていく、
ムスタング
メッサーシュミット 戦闘機隊
「隊長、被弾が多くて、これ以上は無理です」 パイロットA
「ああ、こっちもだ。降りるしかないな」 隊長
「爆撃機は、50機くらい落ちたと思いますが」
「こっちも、同じくらい落ちている」
「もっとも、蓋をあければ、互いに100機ぐらいの損害になっているだろう」
「日本の自動空戦フラップは、なかなか良いようです」
「メッサーシュミットで格闘戦がしたくなりましたよ」
「ははは、止めておけ、気休め程度だ」
「ですが・・・下の連中に、またどやされそうですね」
都市は爆撃で破壊され、火災を起こしていた。
「そうだな・・・陸軍や親衛隊は、うるさいからな・・・」
「しかし、市民や子供たちの無言の声は、泣きたくなる」
「隊長・・・・正面・・・」
「ライトニング2機か。お前、左をやれ。すれ違ったら、そのまま、帰還しろ」
「了解です」
メッサーシュミット2機とライトニング2機が互いに機銃掃射しながら、すれ違う。
メッサーシュミット1機とライトニング1機が火を噴きながら墜落。
そして、残ったメッサーシュミットとライトニングは、そのまま、すれ違っていく。
キングタイガー
東部戦線
タイガー戦車が雪化粧した森の中に隠れていた。
戦闘が始まるとすれば冬季明け。
それでも油断できなかった。
鈍重なタイガー戦車と違って、ソ連のT34戦車は機動力が高く、冬季でも、それなりに動いた。
そして、一番怖いのは、シュトルモビク爆撃機。
天候のわずかな回復でも飛んできて爆撃していく。
この森に隠れていることが、ばれていないか気になるところで、
ソ連軍の斥候部隊を発見し、殲滅できるかにかかっていた。
外から合図があって、ハッチを開ける。
「・・・少尉。食事です」
兵士が少し暖かい缶詰とパン。水筒を手渡す。
「状況は?」
戦車長は、配給品を車内の部下に渡す
「森の東側で斥候部隊同士が接触して、銃撃戦になったそうです」 兵士
「寒いのに大変だな」 戦車長
「いえ、まだ良い方です。前線を650km後退できたおかげですよ」
「何とか引き分けたはずのクルスクから、大幅に後退か」
「おかげで補給も増えて、クルスクで捕獲したT34戦車や大砲も多い」
「一息つけますね」
「日本の発言力が大きくなっているのだろうな」
「そういえば、日本の戦艦部隊が米英の戦艦部隊を壊滅させたと新聞の載っていたそうです」
「日本に避難する要人の家族もいるだろう」
「留学という形を取っていますがね」
「インド船で “秋田” というところらしいですよ」
「確かにドイツは、あまり良い状況じゃないか」
「日本との話し合いだと、敵国が人的損害に耐えられなくなるまで戦うべきと」
「無償で捕虜返還している国が何を言う」 戦車長
「ああ、たしか、燃料と交換するようになったそうです」
「太平洋では、陸兵がいても、それほど脅威じゃないということか」
次の瞬間。銃声が響き、兵士が驚きの表情のまま、車両の下に落ちていく、
戦車長は、すぐにハッチを閉め、倒れた方向と逆のほうに向けて機銃を撃つ。
狙撃兵だった。
そして、遠くから爆音が聞こえてくる。
シュトルモビク爆撃機の大編隊が森に爆弾を落とし始めた。
生き残れるかは、運しだい・・・・・
冬の北大西洋上。
波は、弱く、小雪が降っていた。
Uボートが浮上する。
しばらくすると艦橋に人影が現れ、
そして、水兵も休息のため、外に出てくる。
「この辺まで来ると、波も和らいで良い」 艦長
「あとは、南アフリカまで安泰ですね」 副長
「フリータウンに護衛空母艦隊が配備されているはずだ。まだ油断できんよ」
「日本機動部隊は、大西洋に来ないようですね」
「とりあえず、荷物とお客を日本の輸送船に引き渡して、魚雷と燃料」
「そして、食料をもらって出撃だ」
「かなり無駄な動きな気がしますが」
「信用できるか、わからないが。その後は、日本の補給で暮らせる」
「ある意味、合理的だが主戦場の北大西洋は遠いな」
「インド洋で海戦があったと。聞いてますが大丈夫でしょうか?」
「ああ、イギリスの戦艦は、すべて沈んだ」
「バンガード型戦艦を建造しない限り、大英帝国の戦艦はゼロだ」
「日本の戦艦も沈んだのでは?」
「米英の戦艦9隻を撃沈したんだ。日本は、戦艦4隻が沈み、3隻が大破と聞いている」
「日本海軍の勝ちですね」
「そうでもない。日本の空母3隻も大破しているそうだ。国力差からすれば、引き分けより悪い」
「無理して戦艦なんか沈めなくても」
「駆逐艦を沈めてくれたら戦艦と空母は、こっちで沈めてやれるのに」
「まあ、事情があるんだろう」
「総統は、機嫌が良いと聞いている」
「よほどイギリス戦艦の全滅が嬉しかっただろうな」
「確かに、してやったりでしょう」
「しかし、米英海軍と互角に渡り合うというのは日本海軍もたいしたものです」
「ふん。Uボートと日本潜水艦が撃沈した商船を比較するなら」
「大戦果を挙げているのは日本海軍でない。ドイツ海軍だ」
遠くで爆音が聞こえてくる。
近くに水上機を装備できる軍艦か、護衛空母でもいるのだろうか。
「・・・艦長! 僚艦が敵護送船団を発見したそうです」
伝声管から声が伝わる。
「いくぞ! 急速潜行だ!!」艦長
Uボートは、急速潜航。
それらしい海面に爆弾が2発落とされて水柱が上がる。
赤レンガの住人
「・・・アメリカがアイオワ型戦艦。ミズーリ、ウィスコンシン、イリノイ、ケンタッキー」
「モンタナ型モンタナ、オハイオを建造しているそうだ」
「中立国からの情報だろう」
「戦艦は役に立たないだろう」
「それでも、戦艦をもっていたいのさ。漢の夢だ」
「ははは」
「・・・まさか」
「長門、伊勢、日向は、修理改装するそうだ」
「はあ、夜戦や濃霧を利用して突入させるなら水雷戦隊で十分だろう」
「戦艦を囮に魚雷を撃ち込むくらいなら、駆逐艦をもっと建造すべきだな」
「3隻とも竜骨がやられていたら良かったがな」
「その駆逐艦を建造するのも大変なんだろう」
「しかし、こうなると寂しくなるな」
「アメリカで建造中のアラスカ型でもいいから欲しいな」
「小型高速戦艦か」
「それでも戦艦を大量損失している日本に勝てる艦はないな」
「だけど、日本がアメリカ海軍に対抗して戦艦を建造しなかったらアメリカは、どうするつもりだ」
「日本は新規に戦艦を建造する国力はないよ」
「下関海峡トンネルに金をかけているからじゃないのか」
「国防上。必要だ」
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月夜裏 野々香です。
面白そうなものを見つけました。
こういう、マイナーな、飛行機をプラモで作ってしまう。メーカを尊敬してしまいます。
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