月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

 

第22話 1944/03 『バトル・オブ・ドイッチュランドU』

 日本で空母大鳳が完成。

 第1機動部隊に配備される。

  

 

 東部戦線

 圧倒的な戦力差で、ソ連軍が押し寄せていた。

 シュトルモビクは、イナゴの如く (航続力が短いから) 数で押し寄せ、

 戦術爆撃を繰り返してドイツ軍陣地を破壊していく。

 命中率に頼らず、決められたエリアに対し一斉に爆弾を落として去っていく。

 ソ連軍砲兵部隊の火力支援がドイツ軍陣地に降り注ぎ、

 砲撃に晒されるドイツ軍将兵がようやく、塹壕から頭を出すと、

 軍隊アリの如くT34戦車が目の前に迫って来るのだった。

 

 ドイツ軍の反撃は、行われるがものの、

 一角が突破されると、迂回され、後方を断って、包囲されていく。

 これを防ごうとするなら予備戦力で機甲師団をぶつけるのがセオリーといえた。

 しかし、ドイツ軍の予備戦力は少なく。

 機甲師団は、さらに少なかった。

 

 

 米英両国は、ソ連軍夏季攻勢に合わせて大陸反攻作戦を準備していた。

 米英戦略爆撃部隊は、ドイツを屈服させるべく、大規模な都市爆撃を繰り返し、

 ドイツ基幹産業を根底から削ぎ落としていく。

 ドイツ空軍の迎撃は、昼夜なく押し寄せてくる1000機爆撃によって基幹産業を破壊され。

 都市生活そのものが失われていく。

 

Fw190A7

 それでもドイツ軍は、死力を尽くして兵器弾薬を増産。

 押し寄せる米英ソ連合軍に対し、抵抗していた。

 

 

 

 赤レンガの住人

 「ドイツは、いよいよ危ないような気がするが」

 「インド船で日本に避難するドイツ人の要人家族も増えている」

 「それにUボートの南アフリカ配備も増加している」

 「ドイツ本土の制空権を失いつつあるということだな」

 「そのまま、スペインやポルトガルというわけにいかないのか」

 「ドイツが負ければスペインやポルトガルとて、安全ではない」

 「どうせなら同盟国に避難するのがいいだろう。同盟条約もある」

 「インド船でドイツへ派遣軍と資源を輸送しているのだから、少しは持ち直せないのか」

 「難しいだろう。基幹産業のほとんどがやられている」

 「儲かるのは、ポルトガル、スペイン、インドだな」

 「早く戦争を終わらせないと、日本の相対的国際的地位は低下するばかりだ」

 「はぁ〜 日本海軍もアメリカ機動部隊の増強振りから長くなさそうだな」

 「だがアメリカも高速戦艦がない」

 「年内に完成するのは、ミズーリとウィスコンシンだけだ」

 「いや、旧式戦艦と対地ロケット弾で代用できるそうだ。上陸作戦は出来るよ」

 「損失比だけなら、勝っているはずなんだがな」

 「アメリカに褒めてもらえよ。良くがんばったでしょ ってな」

 「ははは」

 「消耗戦なのは確かだ。そして、アメリカ軍の方が消耗している」

 「しかし、日本の国力が小さいから、損失比1対2でも負ける」

 「それは、1対3でも、1対4でも、1対5でも同じだな」

 「ランチェスターの法則を無視するなよ」

 「しかし、一度で、いいから、そういう戦争をしてみたいな・・・もちろん余裕のある方で」

 苦笑する

 「日本男児が、そんな弱い者イジメのような戦争が出来るか。恥を知れ、恥を」

 「ははは・・・」

  

  

 サルジニア島

 日本軍守備隊が陣地構築をしていた。

 サルジニアがイタリア領で、コルシカ島がフランス領。

 イタリアが連合国に降伏したため二つの島は、敵国の国民になっていた。

 それでも、日本守備隊の士気は保たれ、

 島民の治安も保たれていた。

 そして、防衛陣地は、次第に強固になっていた。

 しかし、米英軍が上陸すれば、勝ち目はないと思われていた。

   

 海岸線で・・・

 日本軍将兵たち

 「イタリアの自治組織との折衝で食料を確保できます」

 「しかし、武器弾薬は厳しいと思われます」 軍曹

 「ドイツの誘いに乗って、孤立した島の防衛とはね」 中尉

 「コルシカ側は、フランス側の統治ですから、本土側に住民を移動させています」

 「しかし、サルジニア島民の敵意は強いようです」

 「島民だけなら、何とか抑えられる」

 「しかし、上陸作戦が始まれば島民も蜂起するだろうな」

 「派遣は、陛下が決められた事だと、伺っていますが?」

 「ああ、中立国船を使えば難しくない」

 「アメリカとイギリスは、捕虜返還船のことがあるから見逃しただけだった」

 「たぶん、捕虜返還があるから、皆殺しまで行かないかもしれないが」

 「連合軍は、いつ上陸してきてもおかしくありません」

 「そうだな」

 士官は、ため息混じりに海の彼方を見つめる。

 「イタリア製のイ式三八式小銃は、まずまず、ですね」

 「・・・まずまず、だな」

 「通信兵が言ってましたよ」

 「ドイツ製の部品は製造番号が同じなら陸海空軍に関係なく、そのまま、使えるそうです」

 「ははは、そんなバカな」

 「日本は、規格統合が進んだようですが、いまだにヤスリが手放せませんからね」

 「それでもマシになったがな。ヤスリで削れば、何とか、なる」

 「アメリカもほとんど合うそうですよ」

 「イタリア製のイ式三八式小銃も共通という点で悪くない」

 「そういえば、銃が根詰まり起こして、合う部品を探しているうちに撃たれたのがいたな・・・・」

 「規格前の武器は、交換が難しいから不調を起こしたとき、生死と直結しますね」

 「戦争の準備を先にして戦争をして欲しかったな」

 「・・・見栄で兵装を揃えていましたからね」

 「気持ちは分かるが、いやだねぇ〜」

 「そろそろ。イタリア人たちとの懇談では?」

 「そうだな・・・」

 「「・・・・」」

 「めんどくさいからって、歩哨に逃げられると迷惑なんですがね」

 「「・・・・」」

 「中尉」

 「はぁ〜 行ってくるよ」

 「お疲れ様です」

  

 

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