第23話 1944/04 『トラック防空戦U』
1944/04/15 空母ハンコック 建造
戦艦ウィスコンシン 建造
欧州戦線は、冬季明けとともに米英ソ連合国軍の総攻撃が開始されていた。
米英空軍が連日のように1000機爆撃を繰り返すと、
善戦していたドイツ空軍も次第に弱体化していく、
FW190A8
インド・太平洋戦線は停滞していた。
アメリカ太平洋艦隊は、困難な状況にあった。
第2ディエゴガルシア島沖海戦で多数の艦艇が撃沈されてしまったことで、
空母を護衛する艦艇が著しく減少し、
日本航空部隊から空母を守る巡洋艦も不足していた。
とはいえ、フレッチャー型、A・Mサムサー型、ギアリング型駆逐艦の対空砲は、VT信管を使用し、
数さえ揃えば、巡洋艦に代わる性能を見せた。
そして、より困難なのは、人的損失であり、
さらに大量の海軍将兵を一度に失ったという政治的な問題だった。
アメリカ議会で第2ディエゴガルシア島沖海戦が話題に上らない日はなく、
反ルーズベルト勢力を結束させ、厭戦機運を高めさせつつあった。
赤レンガの住人たち
「もうすぐ、アッツ攻防戦が始まるぞ」
「分かっているがね。荒海と霧を利用して越冬用の物資を送らないとな」
「アメリカ軍を排除しようと思わないのか」
「機動部隊を満足に使えない戦場は、日本海軍にとって優位だ」
「アメリカ軍がアッツ島から引いて、ミクロネシアを攻略してきたら厳しすぎる」
「アッツ島の隣。南東47kmのアガッツ島の航空基地を拡張する動きもある」
「哨戒線が広がるな」
「そうなるとアッツ島とキスカ島は、完全に孤立する」
「アッツ・キスカから撤退した方が良いのか」
「撤退して有利になるならいい」
「しかし、アッツ島の戦略物資は充実しているから、一概には言えない」
「ほとんど、アメリカ製というのが悲しいね」
「使いきれないほどあるのか」
「アメリカ製の土木建設機械で要塞化も進むだろう」
「途中で攻撃を受けなければね」
「アメリカの旧式戦艦は大西洋側に回航されている」
「だからといって楽観できる戦況ではない」
「捕獲した戦略物資の中に対地ロケット弾があったな」
「1943年5月の品物だ。一年もたてば、さらに増産されて性能が向上している」
「アッツに派遣できるのは巡洋艦隊だけか」
「心もとないがアメリカ海軍もそうだろう。重巡だとバルチモア型が最強だろうな」
「妙高型、高雄型、最上型とも155mm3連装4基。利根型2隻は、3連装3基に切り替えている」
「重巡でなく、軽巡。防空巡洋艦だ」
「対空戦闘では活躍しているだろう」
「確かにそうだがね」
「しかし、ベーリング海は古式ゆかしい艦隊戦だよ」
「古式ゆかしいものか電探で負けては勝てない」
「はっきり言うと電探射撃が出来なければ勝てない」
「そうだったな。それに同じ手は通用しないか」
「濃霧の中で日本艦隊を誘導した電波輻射も種明かしがばれてしまえば通用しない」
「アッツが電波を出したら爆撃か砲撃を受けるだろう」
「大和、武蔵は」
「どちらも大破したまま、野ざらしというか、海ざらしだな」
「一応、主砲だけは使えるらしい」
「副砲台が破壊された時は、どうなるかと思ったがね」
「その時は、砲弾がほとんどなくて事なきを得たらしい」
「今は、蓋をして何とか使えるそうだ」
「基本的にアッツ島守備隊が防衛の主力だ」
「しかし、大和、武蔵が被害担当をしてくれるのなら、それに越したことはない」
「アメリカ軍の攻勢に耐えられそうなのか?」
「アメリカ軍が、どの程度の攻勢をかけてくるかにもよるね」
「4万程度なら問題ない」
「しかし、大和、武蔵は、夏季攻勢の爆撃で無力化されると思って良いだろう」
「1t爆弾か」
「いや、イギリスの10t爆弾を使う可能性もある」
「10t! B17は最大5tだろう」
「B29爆撃機があるだろう。B17爆撃機でも燃料を減らせば何とかなる」
「まあ、ランカスター爆撃機を太平洋に持ってくるのは難しくないがね」
「そうだったな」
「まあ、小さな島だ。4発爆撃機で精密爆撃が出来るかどうかわからないが・・・」
「占守島の航空基地で、こちらからも爆撃できないのか」
「霧が多いからな、戻って来たとき濃霧だったら全滅だ」
「近距離なら、やってやれないこともないが寒すぎて稼働率が悪い」
「キスカは」
「寒すぎて稼働率が低いから空襲を受けても、砲撃を受けても、すぐに飛び立てない」
「難儀な場所だな」
「空母に格納されている方が保温されて有利かもしれない」
「ドイツやソ連の空軍は、寒冷地でも稼働率を保っているのか」
「水冷エンジンは、空冷より比較的、寒冷地に強い」
「エンジンが冷えないようにするのが一番だ」
「余程のお金持ちでなければ、格納庫を温室にできないだろう」
「ソ連空軍のエンジンは寒冷に強いようだ」
「アメリカなら温室。出来そうだな」
「そうだな」
トラック上空
ゼロ戦6型・疾風204機は、ムスタング、ライトニング151機と空中戦を繰り広げていた。
ガナルカナルから長躯侵攻するアメリカ爆撃部隊は、戦略的に不利であり、
損失比からも証明されている。
とはいえ、ムスタングの高々度性能は勝っていた。
高度1万メートル。
疾風隊
「・・・ちっ! 競り合いになると負けるな」
『被られますね』
アメリカ軍機(ムスタング、ライトニング)の方が機動性が良く。
日本機(疾風、ゼロ戦6型)はヨタヨタ。
それでも、高高度からサッチウィーブで波状攻撃を食らうよりマシ。
『・・・こちら、高木小隊。後ろに回ったぞ』
「頼む」
『間違えるなよ』
「一撃したら空戦域から離脱して、隠し飛行場に行ってろ、しばらく、戻ってくるな」
『了解』
しかし、日本が誉装備のゼロ戦6型と疾風の配備が増えると、
数と地の利で天秤が釣り合っていく。
劣勢を数で埋めてしまう現象
これは、開戦直後のゼロ戦とワイルドキャットの関係を逆転させた状態に近い。
そして、敵編隊の中でムスタングがムスタングを撃墜する事件が起こる。
高度を競り合っていたムスタング、ライトニングの編隊は乱れ始める。
「よーし! 突撃〜!」
迎撃側が有利なのは、ベテランパイロットでなくてもいい事だった。
航法ができない元陸軍パイロットでも良く。
飛ばせられるのなら素人パイロットでも囮になった。
数で吊り合えば、少しぐらいの性能差でも、
無線で連絡を取り合い相互支援しながら戦うことができた。
迎撃側は、時間を稼ぎながらアメリカ軍の爆撃を妨害するだけで良く、負担も小さい。
ランチェスターの法則を当てはめれば数で負けなければ、大敗もなく凌げ、
素人パイロットも少しずつ腕を向上させられる。
ヨタヨタの日本軍戦闘機と混乱したアメリカ軍戦闘機が高高度でぶつかる。
ゼロ戦6型・疾風、204機 VS ムスタング・ライトニング、151機。
数で優勢でも日本機側は、素人パイロットが多かった。
相互支援しながら何とか固体性能を補い、
乱戦状態になって、さらに混戦状態になっていく。
一方、アメリカ軍は、カビエンから長躯トラック環礁まで爆撃するため、
ベテランを揃える必要があった。
そして、機体が損傷すれば無事に帰還できるか運次第。
アメリカ爆撃隊は、空戦で辛うじて引き分けてもカビエンに辿り着けず不時着したりする。
当然、有用になったのは、撃墜させるための20mm機銃ではなく。
被弾させるための12.7mm機銃だった。
そして、日本軍機は、捕獲した12.7mm機銃を装備していた。
アメリカ太平洋艦隊
第一群
(エセックス、ヨークタウンU)、(プリンストン、カウペンス)、290機
戦艦ウィスコンシン
軽巡サンディアゴ、クリーブランド、デンバー、コロンビア。駆逐艦15隻
第2群
(バンカーヒル、レキシントンU)、(インディペンデント、ベローウッド)、290機
軽巡サンジュアン、モントピーア、バーミンガム。駆逐艦15隻
第3群
(イントレビット、ホーネットU)、(キャボット、ラングレーU)、290機
重巡バルチモア、ボストン、キャンベラU、軽巡オークランド、駆逐艦15隻。
第4群
(フランクリン、ワスプU)、(モントレー、バターン)、290機
軽巡リノ、ビンセンス、マイアミ、ヒューストン。駆逐艦15隻
第5群
(ハンコック)、(サンジェント)、145機
軽巡サンタフェ、モービル、ビロクシー。駆逐艦15隻
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