月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

      

第29話 1944/10 『満 州』

 1944/10/09ランドルフ

 アメリカ製戦車が大連港に降ろされていく。

 日本陸軍は大量の戦車、自走砲、装甲車、トラック、ジープ、火砲をみて、ようやく、

 航空機と戦車の電撃戦の恐怖と概念を理解する。

 そして、戦車訓練に大量の燃料を消費してしまうことも・・・・・

 

 赤レンガの住人たち

 「満州軍は、概算で5年分の燃料を一ヶ月で消費だと」

 「それと、もっと整備士が欲しいそうだ」

 「破産だな」

 「満州軍をアメリカ製兵器で固めて他の戦線を日本製で固めることも出来るな」

 「破産しなければな」

 「自慢じゃないが、もう破産している」

 「しかし、使いきれないほど兵器があるなんて」

 「腐るほど兵器・武器弾薬があるというのは、こういうことだな」

 「どうせなら、メキシコ湾でサラトガU、ウィスコンシンも拿捕できたんじゃないか」

 「聞けば素人だったそうじゃないか」

 「どこまで本当かな」

 「空母と戦艦が針路変更するたびに他の艦とぶつかりそうになって」

 「隊形が崩れて元に戻せなかったらしいが」

 「どの程度か分からなかっただろう」

 「ベテランも一定以上いたはずだ。危険を冒すことは出来ない」

 「だいたい、海軍上層部の8割が反対していた作戦を陛下が自分の責任で強行したのだ」

 「いまさら後知恵を言ってもな・・・・」

 「第2機動部隊を捨てるつもりの作戦が功を奏したわけか」

 「まあ、いいさ」

 「シンガポールに回航させるため、燃料を消費したが輸送船138隻と戦略物資は本物だ」

 「欧州戦線の戦況も少しは、ましになっただろう」

 「ドイツ軍は東部戦線に集中して、ソ連軍の侵攻を止めようとしたらしいが成功していないようだ」

 「一気にノルマンディーから米英軍を叩きだすのは無理だったのか」

 「米英軍が守勢になれば済む程度の戦力差にしかならなかったそうだ」

 「でたらめな。生産力だな」

 「こっちは、138隻の輸送船に給油する燃料も、待ち時間もあるというのに」

 「工作機械は」

 「ああ、イギリス向けの工作機械もたくさんあった」

 「イギリス産業はアメリカの支配圏に入ってしまうな」

 「昔は、イギリスの植民地だったのに今は、世界最強の国、アメリカ合衆国か」

 「信教の自由。民主主義。自由資本主義でなければ、短期間で世界中の人材を結集し」

 「世界的な帝国になり得なかっただろう」

 「デモクラシーは、人間の本質を突いているね」

 「人間の本性というか、個人主義のエゴ。利己主義を最大限に利用した憲法の力か」

 「エゴといっても平等、自由、資本の権利が認められているだけだろう」

 「富の自由は、夢だよ」

 「その個人に富を作り出せる力があればね」

 「日本も昔は、極東の小国だったよ」

 「今でも、そうだ」

 「小国の悲哀が漂うね」

 「イギリスは、講和の仲介で何か言ってないのか」

 「まだ、その段階ではないそうだ」

 「インドは?」

 「戦争で儲けているからガンジーも歯切れが悪いらしい」

 「偽善者ぶっていないところが正直だな」

 「バチカンは?」

 「アメリカは、プロテスタントの国だから。無理だな」

 「やれやれ」

 「シンガポールで、軍医将校同士が、またやりあったそうだ」

 「またか。まあ、誰だって優れた医療品は欲しいがね」

 「こっちの裁定が遅いからだと文句が来ている」

 「他の連中が大人しく裁定待ちしているのに、どうしたものか」

 「現地で振り分けさせれば良いんだ」

 「誰だって、軍医を怒らせたくないと考えるだろう」

 「血相を変えた軍医の前で、医療品を振り分けるのは、嫌なものだよ」

 「あ・・あまり、いたくないな」

      

      

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