月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

   

  

 第31話 1944/12 『地中海の一角で』

 日本の欧州派遣軍将兵25000が中立国船でサルジニア島とコルシカ島に到着していた。

 日本軍は、戦線に影響が少なく、

 共同歩調の必要性も少ないコルシカ島、サルジニア島に分散配備される。

 イタリア製の兵器、武器弾薬に慣れるための訓練は続いている。

 一部は、ドイツ製の旧式兵器だったものの、

 日本軍に割り振られた武器の多くはイタリア製だった。

 「イタリア製には、慣れたようだな」 中佐

 「できれば、ドイツ製を使いたいですね」 曹長

 「日独同盟の象徴で質的な面で期待されていないし、現実に戦う可能性が少ないのだろうな」

 「本当ですか? 上陸してくるのでは?」

 「こんな何もない島にか?」

 「連合軍は、2島を占領しても、占領しなくても戦局に影響がない」

 「ドイツを打倒する方を優先するよ」

 「フランス軍は?」 

 「彼らは、本土を回復するつもりでは?」

 「ドイツの将官と話したが、フランスの戦艦が太平洋に移動する噂があるそうだ」

 「日本に行かせるくらいなら。こっちに来て欲しいです」

 「・・・・同感だ」

 水平線上に星条旗を付けた小さな艦船が監視している。

  

 サルジニア沖のアメリカ護衛艦

 「どうやら、日本航空部隊の派遣は、なかったようだな」 艦長

 「ええ、日本の航空部隊が派遣されていたら、この海域には、いられませんね」 副長

 「・・・ホワイトハウスは、どちらでも良かったそうだ」

 「本当に?」

 「日本のパイロットが、少し、派遣されているらしい」

 「しかし、日独パイロットは総量で少ないから、よってたかって、袋叩きできるそうだ」

 「インド・太平洋は、戦況が、よくないと聞いていますが」 副長

 「距離が大き過ぎて輸送が先細りしている」

 「太平洋側の作戦司令部は、日本人パイロットを欧州に派遣して欲しいだろうな」

 「・・・・道理で日本の欧州派遣を妨害しなかったわけですね」

 「そういう事だろうな」

 「日本は、日本本土に回すはずの資源の一部をドイツに回しているから」

 「どちらがいいか、上の考えることだろう」

 「日本軍がジェット戦闘機を配備する前に打倒しないと・・・・」

 「いや、冶金技術が高くなければジェットエンジンは、すぐに駄目になる」

 「日本は、そんなに酷いので?」

 「日本の冶金技術は低いらしいな」

 「訓練で10機潰して、実戦で1機の割合なら大損だな」

 

 

 日本

 7日、東海道沖約20kmで起きた地震は、M7.9という大規模なものだった。

 三重県、愛知県、静岡県は大打撃。

 その後、津波が海岸へ押し寄せ、

 死者・行方不明1223人。建物全壊36520戸を出した。

 町並みが崩れ、家々が波に流され、

 大地に潮の香りが混ざり作物は、塩害で打撃を受ける。

 軍需工場も大損害を出して乏しい工業生産力は、さらに低下してしまう。

 そして、運良く避難した者達は、途方にくれながら廃墟とされた我が家を見つめる、

 「・・・・酷いな」

 「地震は、1分から3分くらいだったそうだ」

 「最初の揺れで、ほとんどの建物が潰れた」

 「壊滅か」

 「10数分後に津波だ」

 「あの山の麓まで届いたらしい」

 「当然、逃げ遅れた者、多数だな」

 「三菱の工場は、大変だぞ」

 「大半は、中島で作っているが痛いな」

 「戦争しているというのに泣きたくなるよ」

 「天運に見放された気がするね」

 「んん・・・天災が諦めるまで努力する」

 「熱血根性で戦争に勝てるなら、世話いらずだな」

 「日本人は、天災などという些細なものに負けない」

 「熱血根性が行動原理の原動力だよ。これがないと、戦えん」

 「・・・とりあえず。再建策を進めよう」

 「区画整理もするか。海岸付近で途絶えた家もあるだろう」

 「そうだな」

 

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第30話 1944/11 『核兵器』
第31話 1944/12 『地中海の一角で』
第32話 1945/01 『雷風と秋田・ドイツ人居留地』