第40話 1945/09 『日ソ極東戦争と日米英の思惑』
1945/09/10 空母ミッドウェー 建造
欧州側からヨーロッパ師団が移動してくると、ソ連軍の満州侵攻も本格化。
大興安嶺、小興安嶺防衛線は、武器弾薬でギリギリの状態で、なくなるそばから補給を受け戦っていた。
大興安嶺 日本軍前線
捕獲した優秀な兵器も弾薬がなくなればアウト。
しかし、対米英戦争が終わると関東に遺棄された兵器・武器弾薬が少しずつ満州戦線へと送られてくる。
トラック5台が戦場に駆け付け、輸送部隊の将兵たちが集まった。
「・・・危なかった。危うく。弾薬が切れて戦線が崩壊するところだった」 少将
「アメリカとの講和で浮き足立っていた将兵も平静を取り戻したようです」 参謀
「・・・ソ連軍も補給待ちの様だな」
「ドイツ軍将校の助言だと、ソ連軍と平原で絶対に戦うなとのことです」
「確かにそうだ。満州里で戦っていたら全滅だな。陛下のおかげで命拾いだ」
「シベリア鉄道の輸送力と日本からの輸送船の輸送力の差が出てくるでしょう」
「それと、ソ連の航空部隊だ」
「ドイツ軍将校の話しは、どこまで本当か、わからんが空がソ連の爆撃機で埋まるそうだ」
「それは厳しいですね。見てみたい気もしますが」
「俺は、タコ壺に引っ込むよ」
日本の対米英戦が終わり、
日本本土から満州に移動した日本航空部隊がソ連空軍に反撃していた。
シュトルモビク爆撃機、ヤク戦闘機、ラ戦闘機を撃墜していく、
疾風編隊
疾風が単発爆撃機を機銃掃射して旋回する。
「んん・・・何だ。あの爆撃機は20mmが当たっても落ちんぞ。非常識な」 隊長
『たぶん、シュトルモビクです。ドイツ軍パイロットの話しの通りですね』 部下
「戦車みたいなやつだな」
『こちらは、戦闘機を相手にして、爆撃機は雷風の25mmに落としてもらう方が良いですね』
「雷風部隊も、戦闘機を落としたがるから、むくれそうだな」
『隊長・・・ソ連軍の増援部隊のようです』
新手の編隊がポツポツと向かって来る。
「欧州の部隊か、腕前はどうかな、極東の航空部隊は、それほどでもなかったが」
『寒い国ですから、訓練する時間が取りにくいのでしょう』
「どうかな? 離着陸だけできれば戦線に出すと聞いているぞ。本当かどうか疑わしいが」
『飛行機が勿体無くないですか?』
「飛行機を腐るほど作れるんじゃないか、人間と燃料は多いから実戦で訓練する」
『まさか・・・』
「ははは、非常識な国だ」
戦艦、長門。砕氷艦(大泊)を核にした上陸作戦艦隊がカムチャッカ半島に上陸作戦を行なう。
ソ連軍守備隊は、少しばかりの抵抗で降伏していく。
呉仮設作戦室
関東、日本の地図が片付けられ、
満州域、カムチャッカ半島、北東シベリア域の地図がテーブルの中心に置かれていた。
赤レンガの住人たち。
「冬まで持てば、何とかなりそうだな」
「アメリカに売却した満州、朝鮮、中国大陸の利権をアメリカ軍に引き渡すまで戦線を維持する」
「とうとう、大陸からも爪弾きか。嫌われたものだ」
「しかし、大興安嶺と小興安嶺防衛線。危ないそうじゃないか」
「武器弾薬の消費が激し過ぎて補給が間に合わない」
「ソ連軍が補給待ちで停止しているのが救いだな」
「陸軍は、ハルピンに後退するか検討している。ソ連軍の総攻撃は予想以上だ」
「戦線を守れないと、売却金と違約金も支払いだぞ」
「それは困る」
「民間人の避難は成功しているが・・・・どうするんだ? 日本に撤退するのか?」
「遼東・朝鮮半島防衛線でソ連軍の侵攻を食い止めて、朝鮮半島側を独立させることになっている」
「アメリカは、朝鮮半島の港に艦隊を入港させて、一部の部隊を上陸させている」
「陛下は?」
「いざとなったら遼東半島にまで戦線を後退させて、北東シベリアを占領せよとのことだ」
「売却金と違約金は?」
「いざとなったら払うしかないそうだ」
「んん・・・」
「極地装備は、北海道・樺太に配備している」
「生産が進めば、何とか追加の部隊を北東シベリアに上陸させることが出来るだろう」
「それで慌ててアメリカは、後続部隊を朝鮮半島に上陸させているのか?」
「済州島、巨済島、南海島、麗水半島、高興半島、完島の対馬海峡の対岸が日本の領有でアメリカと話しが付いている」
「随分、退いたな」
「代わりに遼東半島もアメリカ軍が上陸するそうだ」
「満州と朝鮮半島の権益は、ほとんどアメリカに売却したからね」
「アメリカとソ連をぶつけさせるわけか」
「アメリカ陸海空軍は大損害。関東制圧は失敗。真珠湾は壊滅」
「政治的にトルーマンは追い込まれている」
「アメリカが損失を埋め合わせるとしたらブラジルの利権に食い込み」
「対日戦で戦勝を確認するとしたら満洲と半島を支配するしかないな」
「アメリカとイギリスが、あの御都合主義な条件付き講和に応じたのも、それを達成するためだろう」
「政治と経済的な理由は大きいからね・・・」
「状況的に日本は、アメリカ側に属するという事になるのかな」
「主権と国土は守れた。選択の余地は無いよ」
「そういえば、日本は経済破綻だっけ・・・」
「米英両国に日本国の領土と独立条約を認めさせただけ、よしとしよう」
「アッツ、キスカは返還するがウェークとグアム、シンガポールのオマケ付きだ」
「それで条件付降伏とは、片腹痛い、名目だけか?」
「しかし、サルジニアとコルシカ移民、南米も急がせないとな。約束は、450万人以上だ」
「分かっているがね。フランスとイタリアは?」
「アメリカが借款の代わりに放棄させた」
「フランスとイタリアは何も出来ないだろう。敗戦国と同じくらいの酷さだ」
「それは、日本もだ」
「そうだな。保っているのは体面だけ」
「そういえば、欧州派遣軍25000は、そのまま、サルジニアとコルシカに残っていたな」
「彼らは、皆殺しに合う事を覚悟していたらしいが戦いもせず。バカンスか」
「爆撃はあったらしいぞ」
「死中に活だよ」
「しかし、おかげでサルジニアとコルシカ統治の大義名文か」
「こんなことなら退き上げさせるんだったな」
「そういえばハワイのティルピッツ、伊勢、日向は引き出すのか」
「アメリカ、フランス、イタリアの戦艦と違って河川を遡上させていないし」
「艦底が少し浸水しているだけだ」
「修理をしたら満潮を待って引き出せるだろう」
「大和と武蔵は」
「アッツから引き出して、東京湾に記念艦として残すそうだ。竜骨2本は伊達じゃなかったな」
「しかし、酷いやられ方だから、この艦を見れば、二度と戦争はしたくないと思うだろう」
ダーウィン港湾で釣りをする日米英の代表。
そして、多くのスタッフ達。
三人とも釣りに集中しているのか、話しの内容も釣りのことばかり。
清酒、ワイン、ブランデー、スコッチ(ウィスキー)とつまみが山ほど堤防に置いてある。
そして、三人の代表は、並んで堤防から連れション。
夜の御殿場
マッカーサー将軍と山下大将は、同じ長椅子に座って正面の黒い富士山を見上げていた。
互いに御殿場を挟んで対峙した相手。
そばに通訳者が控えていたものの、互いに失った将兵の事で頭が一杯だった。
アメリカ軍の撤退は決まっていて、何か話すわけでもない。
顔を合わせて親しく話せるとしたら、何年も先のことだろう。
マッカーサーが、ここにいるのは、日本の閣僚に “せっかくだから” と呼ばれて仕方なくだった。
日米の将兵も同様で、ここにいる理由も、まともに知らされていない。
理由を知っている双方の政府官僚は、闇に沈んだ富士の方を見上げる。
ひゅゅるる〜〜〜
ドォオオォン!!!!
多彩な大輪が夜空を煌めかせ。
日米将兵達の表情を照らした。
一ヶ月前まで殺しあっていた場所。
音を聞いて少しばかり不安になる。
暗やんだ夜空に数条の火の帯が立ち昇っていく。
ひゅゅるる〜〜〜
ドォオオォン!!!!
大輪の火花が咲いた。
・・・・・・どよめきが将兵の間に広がっていく。
花火は平和の象徴。
美しさに魅せられ、不安が消えていく、
ひゅゅるる〜〜〜
ドォオオォン!!!!
戦前戦中。
花火は、ご法度だった。
しかし、技術の継承が目的で細々と作られる。
そして、日本政府官僚が少しばかり戦局が好転していると勘違いし、技術の継承を確認する。
という建前で少しばかり花火作らせてしまう。
ひゅゅるる〜〜〜
ドォオオォン!!!!
アメリカ軍上陸作戦で生産に待ったがかけられた。
しかし、既に時、遅し。
ひゅゅるる〜〜〜
ドォオオォン!!!!
割り当てられた量が花火師の倉庫に眠っていた。
そして、日米両国が条件付降伏文書を調印。
平和になったからと各地から集めた花火だった。
富士をバックに次々に咲く大輪に日米の将兵は涙ぐみ。
近隣の住民たちも思い思いに目頭を熱くしていく。
ひゅゅるる〜〜〜 ドォオオォン!!!!
ひゅゅるる〜〜〜 ドォオオォン!!!!
ひゅゅるる〜〜〜 ドォオオォン!!!!
ひゅゅるる〜〜〜 ドォオオォン!!!!
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よろしくです。
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