月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway 

 

第42話 1945/11 『アメリカのブラジル進駐と日本の海外移民』

 朝鮮半島

 日本の条件付降伏で独立を喜んだのも束の間だった。

 朝鮮半島の利権がアメリカに転売されただけ。

 日本の行政機構が撤収してしまうと、

 朝鮮民族は、民族を集約させる権威と官僚機構が崩壊してしまう。

 アメリカ軍は、日本の利権を確保し、

 相続すると軍政を敷く以外の選択肢はなかった。

 朝鮮半島に上陸したアメリカ軍は、朝鮮人の既存の価値観を全て否定し、

 資本主義、実力主義、能力主義で社会を再構築しようと試みるも混乱は増すばかりだった。

 そう、朝鮮人は、あくまでも朝鮮人だった。

 朝鮮人はアメリカ事大でまとまろうとする。

 朝鮮半島行政に困ったアメリカは、朝鮮行政を把握している朝鮮総督府と、

 二人三脚による朝鮮半島の工業植民地化を画策する。

 日本人を中間官吏に置き、これまでのように現場を任せ、

 不都合と不具合を日本のせいにし、利益だけを吸い取る方針を執っていく、

  

  

 欧州

 ドイツは、東西に分割統治。

 バルト3国、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、チェコスロバキアは、ソ連軍が占領。

 アメリカ・イギリスとソ連は、水と油の様に対立していた。

 そして、フランスは、コルシカ島の日本譲渡。

 イタリアは対独参戦だけでなく、対日参戦までしており、

 サルジニア島の日本譲渡で日本と講和を結ばざるを得なかった。

 サルジニア島

 日本軍と上陸したアメリカ軍が敬礼する。

 どちらも軽装備で規律正しく整列していた。

 アメリカ軍はサルジニア島のイタリア人住人を引き摺りだし、

 リバティ船にイタリア人を乗せて出航していく、

 日本軍は、遠巻きに傍観するだけ。

 「・・・保住大佐。日本軍は、撤退じゃないのですか?」

 「ようわからんが、このまま、サルジニア島に残留だそうだ」

 「戦争が終わったのにですか?」

 「対ソ戦は、継続しているがな。どうなるんだろうな・・・」

 「皆殺しに合うと思って諦めてきたのに何ですかね」

 「軽装備で敵中ど真ん中で孤立していたのに艦砲射撃と、爆撃されただけで被害は軽微」

 「これで、戦争が終わりなんて」

 「本当に観光だったのかもしれないな・・・」

 「遺書書いてきたのに・・・一発も撃たず終わりですか、みっともなくて帰国できませんよ」

 「あ・・・俺もだ・・・」

 サルジニアの住人は、米英軍の手によって強制的にイタリアに送られ、

 コルシカの住民は、米英軍の手によって強制的にフランスへと移民させられていく。

 フランス、イタリアとも対米英憎しで外交政策の基本方針が定まらず、

 内政の混乱から立ち直れないでいた。

 日本政府は、戦災を立て直しつつ、

 サルジニア・コルシカへの移民を増やしていく。

 

 

 日本は、アメリカ軍の置き土産と、

 関東包囲戦や日本本土爆撃の戦災を利用し、

 農地改革、区画整理、都市計画をドサクサに進めていく。

 天皇は、経済再建策を執って軍事費を大幅に削減させていく。

 赤レンガの住人たち

 「フランスやイタリアは、怒っているんじゃないのか」

 「コルシカとサルジニアを取られてか?」

 「実質、日本軍が占領したままだったし」

 「フランスとイタリアは弱みがあって、アメリカとイギリスに脅迫されたのだろう」

 「財政投資も出して、飴とムチだろうな。フランスとイタリアも拒めないだろう」

 「サルジニアに派遣する巡洋艦隊でさえ、欧州では、イギリスに次いで第2位の海軍戦力だ」

 「世界中の海軍は、ボロボロにやられたからな」

 「日本海軍も、ため息しか出ないよ」

 「しかし、日本海運は、助かっているよ」

 「7000t級船舶が600隻460万tは大きい。経済性で救われたといっていいだろう」

 「無差別爆撃で20万も死んでいるのにか?」

 「まあ、日本軍80万の損失も大きいが」

 「戦死者100万か、負傷者200万。無差別爆撃で結核死亡者も増え始めた」

 「アメリカ軍が薬を置いていったのが救いだな」

 「本当は、日本は、負けていた」

 「しかし、アメリカは、南米の方がおいしそうだから、そっちに行ったのさ」

 「・・・ふっ」

  

 

 サルジニア島

 「区画別に分配された土地に速やかに移動してくれ」

 欧州開拓会社の社員が日本人の移民者を誘導していた。

 発電など基幹産業の建設が優先される。

 海上は日本の移民船と、

 それを監視するアメリカ海軍とイギリス海軍の艦船が遊弋していた。

 アメリカとイギリスは、日本人の人質が大きければ、大きいほど良かった。

 その為、日本への建設機材の輸出規制もない。

 当然、日本にあるアメリカ製建設機材が朝鮮のアメリカ軍に売却され、

 欧州とアメリカから建設機材がサルジニア・コルシカ。ミリン・バトス半島へ売却された。

 輸送効率を考えれば、その方が経済的で、日米とも経済性の理論に勝てない。

 そして、2島の産業は、牧畜、小麦・オリーブ・ブドウ・タバコから水田へ変わっていく。

 欧州開拓会社の社員は、山がちなサルジニアを見上げながら、呻きそうになった。

 コルシカ島も山がちな島だった。平地は少ない。

 この島に300万人以上は、不動産詐欺ではないだろうかと・・・・・・ 

 

 

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第41話 1945/10 『アメリカ軍の朝鮮半島駐留』
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