第43話 1945/12 『アメリカ軍撤退と関東回復』
航空会社は、軍事予算の低下は避けられないと、
電力不足を補うため風力発電機の生産を開始する。
耐食性、軽量、強度、引っ張り度に優れた風力発電機の量産。
そして、多くの企業が政府の国土再建計画に従って動きはじめる。
再建されつつある帝都。
赤レンガの一室
世界情勢を傍観し、日本の現状を憂う。
「・・・米ソのイデオロギー対決で世界情勢は二分されつつあるようだ」
「日本は、一応、アメリカ側だろう」
「どうかな、朝鮮半島に建設している飛行場は大きい」
「アメリカ軍は、西日本側にベアキャットとシューティングスターを配備している」
「ベアキャットは強いのか」
「ムスタングと同じ程度、ゼロ戦6型、疾風と同レベルだろう」
「雷風が強いと思うが新型のムスタングH型は雷風より強いかもしれないな」
「それに撃墜したアメリカ軍機に自動空戦フラップを装備していたムスタングがあったそうだ」
「やはり、手に入れていたか。ソ連は?」
「いまのところ、ない」
「しかし、ドイツは東部戦線に旧式機を回していたらしいから自動空戦フラップの実戦装備は遅れるだろう」
「冬季明けは対ソ連戦が始まる。大丈夫だろうか?」
「お互いに冬季の間に兵器と武器弾薬を集めるだろう。ソ連は満州を占領するつもりかな」
「代償に北東シベリアを貰うさ」
「そうか? 金が続かないね」
この時期、日本の国家予算は、
歳入決算総額は 2744億6725万2899円.92
歳出決算総額は 2458億4106万5205円.36
対米英戦後、日本はサルジニア・コルシカ島とバトス・ミリン半島に予算を配分しなければならず。
軍事費は、一気に400億にまで削減され、
ソ連と戦争している状況でなかった。
対ソ連戦の継続は、困難であり、苦しい財政状態の中で、やりくり。
それでも、戦力が見込めたのは、米軍が委棄した兵器・武器弾薬が残されていたからといえる。
そして、満州、朝鮮半島、中国大陸の利権をアメリカへ売却。
この売却収入によって、日本の財政再建は、最悪の事態を免れていく。
関東平野
焼け野原と洪水で滅茶苦茶になった関東の再建が始まっていた。
日本軍将兵は、引き揚げつつあるアメリカ軍と互いに簡単な挨拶だけですれ違う。
「・・・酷いものだな。これだけやられると」 少佐
「アメリカ製のブルドーザーがあって良かったですよ」 中尉
「区画整理は、このままで良いんだな」
「ええ、代替私有地も振り分けましたから皇居を中心に同心円状に計画都市が造られていくはずです」
「世界有数の首都になるかもしれないな」
「この計画都市が上手くいけばです」
「予定が変わらなければな」
「大丈夫でしょう。陛下の裁可で決定ですから」
「これまでの様に政党が変わったからといって変更されないはずです」
「それに区画整理だけですし」
「この分だと、主要都市は、全て計画都市になりそうだな」
「計画都市だと再建に余計に時間がかかりませんか、風力発電も費用対効果は低いと聞いてますし」
「んん・・日本は燃料が無いと戦争したくなるからな・・・・・」
「こ、困りますね」
「それに一度軌道に乗れば、計画都市の方が利便性が良い・・・・」
「では、計画的に?」
「たぶん、わかってて、やっているんじゃないのか」
「長い目で見れば、プラスになるかもしれませんが・・・・」
湿地帯と焼け野原の戦後・・・
火攻めと水攻めで荒廃した関東は、人々の心まで荒れさせていた。
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