第47話 1946/04 『資本と共産』
世界情勢。
アメリカを中心とする自由資本主義世界と
ソ連を中心とする社会共産主義世界に分かれつつあった。
欧州は、西ドイツと東ドイツが分断され、分離独立が決定的になると、
西欧がアメリカの影響下に入り、
東欧がソビエトの影響下に入っていく。
アジアでは、アメリカが半島と満州権益を確保しようと画策し、
アメリカ・日本が国民軍へ武器弾薬を供給し、
ソビエトは中国共産軍へ武器弾薬を供給し、
中国内戦は激化していく。
冬季明け、
ソビエトは、満州の日本軍が撤退し、中国国民軍と入れ替わっていることに困惑。
そして、冬季明けとともにソ連軍の満州侵攻が始まる。
ベルリン裁判
インド人、スペイン人、ポルトガル人、スイス人、スウェーデン人など、
中立国の人間が裁判官になる事が多かった。
そして、検事側が連合国の人間であり、
弁護人が日本人、南アフリカ人になる事が多かった。
戦争中のソ連は反対する。
しかし、次第に分が悪くなり、日米英で連合されるよりはと妥協する。
もっとも、日本は、米英ソとの関係をこれ以上、こじらせたくないのか、消極的な弁護に終始。
インド人と南アフリカ人は国際舞台で張り切っているのか、積極的に介入していく、
黒地に赤の旗が列強の旗と並び、
黒人が国際社会で発言する姿は、それまでの時代と一線を画し、異様に思えた。
イギリスとフランスは、武器弾薬をアフリカ大陸全土に密輸する南アフリカ公国に対し、公然と敵対する。
もっとも敵対したからといって、工業用ダイヤモンドが他に出るわけでもなし、
戦後復興のため、南アフリカに妥協を強いられたりする。
そして、日本と南アフリカの関係は、同盟に近く、
日本製武器弾薬を輸出している地域でもあった。
南アフリカの地下資源は、日本資本が代理人で世界中に輸出していた。
ベルリン迎賓館のテラス
裁判関連の日本人の弁護人とイギリス人検事が向かい合い紅茶を口に含んでいた。
感情論と経済は別物だった。
イギリスは南アフリカの工業用ダイヤを欲し、
日本もイギリスの工作機械を欲する。
そういう関係。
「・・・困った連中だ。あの黒いのは」 イギリス人
「・・・・・・・」 日本人
「まさか、日本が後押ししていることはないでしょうな」
「通常の交易ですよ」
「その交易で南アフリカは大きな顔をしている」
「人種差別は、少しばかり耳障りですな」
「黒人のナミビアの武力占領とモザンビークへの武器密輸。どうされるつもりか?」
「直接、抗議をされては?」
「日本は、日本人の華族を黒人に嫁がせ、南アフリカを公国にしている」
「日本の影響力があるということですな」
「・・・確かに黒人の多くは、あなた方に敵対しています」
「しかし、それほど憎んでいませんよ」
「黒人の白人へのねたみ、やっかみは、激しいですからな」
「それでも英語という武器を与え、曲がりなりにも文明を供与した」
「もっと感謝して欲しいものだ」
「差別が気に入らないだけですよ。もう少し、彼らを尊重されてはどうです」
「日本は、黒人と組んで南アフリカの経済基盤を独占。いい気なものだ」
「南アフリカ公国の政策は、南アフリカ公国のものです」
「口は便利だな」
「日本は、南アフリカ公国のアフリカ大陸への武器輸出など容認してはいない」
「かといって、内政干渉するつもりも、ありませんね」
「まあ、良いでしょう。当面の議題は、裁判だ」
「ええ」
「ユダヤ人女性は、日本人が弁護人に立ったのを見て上訴を取り下げました」
「これ以上、争いたくないと」
「そうですか」
「日本は、ユダヤ人の味方をした方が良いのでは?」
「裁判は、公式記録として歴史に残るのですよ」
「妥当な、裁量というのがあるでしょう」
「そういえば、日本国内でも裁判が行われているようで」
「ええ、軍部が政府と議会を無力化させたことを陛下が怒りましてね」
「軍部に執政を任せた覚えはないと」
「ほぅ 強くなったものだ」
「粛清に近い裁判が行われていますよ。軍国主義は崩壊です」
「ふっ 我々が手を出すまでも無くですか?」
「日ソ戦争中に、やることでは、ありませんね。モラルは大丈夫ですか?」
「軍組織は大きく、上手く、下の者を上にやって調整すれば上手く行くものです」
「実のところ序列があるだけで、それほど能力に差があるわけじゃない」
「日本は出来るだけ、ソ連の弱体化に協力していただきたいそうですよ」
「イギリスも、あまり、軍事費に注ぎ込めそうに無いので」 イギリス人
「日本を利用して、ソビエトの弱体化ですか?」 日本人
「日本人の弱体化もですよ。なにしろ首都が制圧されても戦い続けられるのですから」
「ユニオンジャック旗も、皇居に立てたはずでしたのに・・・」 イギリス人
「人が石垣ですよ」
「首都を落とされても機能さえ維持できていれば戦えますよ」 日本人
「・・・・」 イギリス人
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