月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

 

 

第55話 1946/12 『アメリカの半島軍政』

 日本政府は、戦後復興のため衣食住に必要な物流・金融・交通の拡充整備を進めていく、

 いくつかの建材と建設技術が開発され、日本家屋は合理的に建設されていく、

 赤レンガの住人

 「在日朝鮮民族を半島に送り返してるが密入国が後を絶たないそうだ」

 「焼け野原の国に来てどうするんだよ」

 「大都市は焼け野原でも中小都市は無傷が多いからね」

 「連中は、自分で努力して積み上げるより、積み上げたモノに浸るのが好きなんだよ」

 「そういえば、満州朝鮮族が半島に流入してるそうじゃないか」

 「んん・・・朝鮮半島が胡散臭い」

 「朝鮮総督府の報告だと共産主義者だそうだ」

 「アメリカは、なんと言っているんだ」

 「半島防衛線の国境警備はしているそうだ」

 「しかし、朝鮮民族とあまり問題を起こしたくないらしい」

 「お陰で間に入っている総督府の日本人は、朝鮮人の嫌がらせを受けているじゃないか」

 「アメリカは、本当に朝鮮を独立させるつもりなのかな」

 「アメリカ政府はともかく、駐留アメリカ軍は、朝鮮人を信用していないよ」

 「まあ、日本人も信用していないがね」

 「多分、アメリカ系の李承晩が大統領になる予定だが彼も傀儡だ」

 「権力を持っているわけではない」

 「軍政を敷かれている間は、マッカーサー次第だろう」

 「もういい加減、朝鮮総督府を引き揚げても良いと思うがね」

 「アメリカは、軍政の悪役を日本人にするため、日本総督府にいて欲しいんだろう」

 「日本人を朝鮮統治の汚れ役で使ったほうがいいと思ってるのだろう」

 「まあ、特典もあるからイヤじゃないがね」

 「それより、朝鮮人の密入国が多いようだが」

 「見つけては追い返している。まだ、混乱が続いているようだ」

  

  

 ケルゲレン島

 戦後、日本軍は、大幅に削減されていた。

 しかし、それほど削減されていない部署もある。

 ケルゲレン島の建設師団は、アメリカ軍に劣らない能力を有していた。

 霧と雪で、フィヨルドの全貌は見えなかった。

 「・・・寒いですね。山田少尉」

 「まったくだ。甲斐曹長。しかし、今日は風が弱いようだ」

 「しかし、これだけ、たくさん、捕鯨船団用の基地や魚肉加工工場を造っても持て余すのでは?」

 「南極開発基地や南米、地中海への中継基地だ」

 「ディエゴガルシア島も限界があるから。ここを自立させたいらしい」

 「自立ですか」

 「地下施設と風力発電を建設。温室を造って、緑黄植物も、生産するそうだ」

 「一番。大変な島ですからね」

 「一概に大変とは言えないな」

 「ここが良いのは、アメリカから離れていることだ」

 「出雲州と秋津州は、ほかの国の影響を受けやすいからな」

 「基礎工事を済ませれば、後は、民間に任せて引き揚げられるんですがね」

 「海底電線の追加予算が入ったようだ」

 「シンガポール、ケルゲレン、秋津州、出雲州を結ぶらしい」

 「本当なら、ここを放棄したんですよね」

 「アメリカとイギリスが地中海の出雲(サルジニア)島・因幡(コルシカ)島と」

 「南米の北秋津(バトス)・南秋津(ミリン)の半島を押し付けたからな」

 「10年以内に決められた人口を移民させないと・・・」

 「上層部は、国力を消耗してしまうと嫌がっていたがね」

 「まったくですよ」

 「しかし、一部の官僚は土地を分配して、大農主制を解体できると喜んでいる」

 「うちの親戚は、台湾行きになりましたよ」

 「わたしのところは、出雲州。地中海だよ」

 「退役すれば出雲州に住むことになる・・・人質だな」

 「もう一度、欧州が戦争に巻き込まれると大変ですね」

 「アメリカ・西欧は、ソビエト・東欧と対峙して、日本は追い風」

 「アメリカも日本を西側陣営に組み入れるから人質政策は有効だよ」

 「ただでさえ、朝鮮半島をアメリカに取られて、本国が危ないのに・・・良かったんですか?」

 「良くは、ないだろう」

 「しかし、アメリカは、ソビエトや中国と矢面に立つことになった」

 「それに朝鮮人は、儒教の精神が強く封建社会が染み付き」

 「アメリカの民主自由主義とかけ離れた性質を持っている」

 「朝鮮総督府の報告も、そうなっている」

 「たぶん、アメリカの思うようにはならないな」

 「アメリカ人が傲慢なのでは?」

 「アメリカ合衆国は既存の権力と伝統を破壊して、個人の自由と権利を追求して建国されたものだ」

 「まぁ アメリカなりの優位性も言い分も理解できるがね」

 「そういえば、日本も段階的に民主化するんですよね」

 「その方が国力が向上すると計算したのだろう」

 「陛下も元々、民主主義に賛同的だったそうだ」

 「陛下は自分から権力を手放すんですか」

 「日本の歴史で天皇が権力を握っていた期間は、ごくわずかだ」

 「ほとんど、権威だけの期間が圧倒的に長い」

 「権力は闘争で衰退しても、権威は実権が小さければ長く続く」

 「そういえば太平洋戦争で一時的に主導的な立場に立っただけで、今は引っ込まれた」

 「その方が楽だからな」

 「政治は難しいです」

 「それほど難しいわけではないだろう」

 「誰かがトップに立つ。するとその下に付こうとする者が現れる」

 「そして、民意を代表して対立する者が現れる」

 「あとは、それぞれ空いている位置に立つだけだ」

 「理由はどうでも良いし、その場所で食べていけるし。権力を発揮できる」

 「権力に飽きたら安楽に院政し、権威者になるのも悪くない」

 「単純にいうと主流が生まれ。右派、左派、反主流と非主流が出てくる」

 「その後、強硬派、穏健派が出て多様化する」

 「なるほど、このケルゲレン島も、そういった権力構造が生まれることになりそうですね」

 「この霧と寒さがなんとかなれば、ここも移民も進むが凍土が厳しいな」

 「アッツ島を思い出しますね」

 「ああ、アメリカ海兵隊は強かったな」

 「ええ、大和と武蔵と我々の間を抜けて島の奥に回りこんだのは、さすがですよ」

 「こちらの兵員が少なかったのを差し引いてもアメリカ海兵隊は、強靭だった」

 「まともに戦っていたら危なかったな」

 「インド洋沿岸諸国への加工貿易を行うというのは、本当ですか?」

 「噂は聞いている。捕鯨だけでは終わらないかもしれないな」

 「しかし、産業を興すには水が足りないような気がするね」

  

  

  

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   ※第56話 欠番です  理由は年数と話数を合わせるためです。

 
第54話 1946/11 『広軌鉄道1676mm』
第55話 1946/12 『アメリカの半島軍政』
第57話 1947年 『冷 戦』