月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

 

第64話 1954年 『平和はいいねぇ〜』

 1円未満の小銭が廃止される。

 1954年01月25日

 板門店で朝鮮戦争の停戦が調印され、

 朝鮮半島は38度線を境に南北に分断される、

 中国の軍政下の北朝鮮。

 アメリカの軍政下の南韓国。

 戦争が終結した後、朝鮮半島は略奪と戦乱で破壊され、飢餓と犯罪が増大する。

 アメリカは、リスクを犯し単独で資本投下する余裕がなかった。

 そこで、日本資本に目をつけたが、そっけなく無視される。

  

 しかし、アメリカ軍政下で南韓国が安定すると思った勢力があった。

 生産力のある日本から商品を購入し、

 東南アジアの地場販売力で力をつけた華僑。

 海南島、遼東半島まで北上していた華僑資本が朝鮮半島で戦争はないと判断し、

 南韓国に資本投下を始める。

 また、インド、南アフリカ公国、東南アジア諸国も極東に拠点を作ろうと思ったのか、

 土地の買収にかかる。

 アメリカ資本もリスク負担を軽くしたいと朝鮮半島の独占をやめ、

 華僑と第三国の土地買収を認める。

 そうなると欧州諸国も南韓国を日本本土近くで自由になる拠点と注目。

 資本投下が始まる。

 

 

 西ドイツ

 戦後9年が過ぎていた。

 表通りの掲示板に子供を求める親の写真。

 親を求める子供の写真が張ってある。

 運が良ければ再会できた。

 日本は、いち早く経済再建し、

 ドイツは、遅れて復興という感じだろうか。

 焼け野原と瓦礫の山の違い。のような気もする。

 むろん、日本も同様の掲示板はあったが規模が違う。

 家無き子は多く。

 東西に分断されてしまった民族の悲しみもある。

 西ドイツは、再建するだけの素地と内容があった。

 それとは別に秋田の租界地との相乗効果でドイツ資本も回復しつつあった。

 とはいえ、国民全体を底上げする国力もなく、貧富の差は広がっている。

 日本人が西ドイツに来るのは、商用目的がほとんどだった。

 そこは、資本主義と共産主義との最前線。

 西側諸国の思惑で工業国家として再建される勢いがある。

 危機感があるせいか、社会は反共で固まって落ち着いている。

 西ドイツの立て直しが始まると、

 地中海側より北部欧州側の経済力が大きくなると、欧州経済の行く末を予測できた。

 ドイツの一等地に地歩を構えれば、その後の経済で有利。

 枢軸国として共に戦った日本人は、裏切りのイタリア人より良く見られたり、

 親しみと嫉妬の混ざった目で見られたりする。

 往来を行き来するドイツ人は、ギリシャ彫刻のようにも見える。

 秋田出身のドイツ人が見ると雰囲気が変わったらしい。

 占領されたことで受ける苦しみもある。

 生まれた子供でスラブ系も少なくない。

 日本人の眼だと同じ白人に見える。

 偽装して敵陣に乗り込んだ部隊が見分けがつかないのだから、

 言語と軍服以外は、微妙な差なのだろう。

 戦後ドイツの再建も貧富の差を置き去りにした日本の戦後再建と似ている。

 路地裏で、バッタとハチのから揚げを作っている子供たちを見つける。

 郊外でブラックベリー見つけ、虫を捕まえてきたのだろう、

 これを売って生計を立てているらしい。

 ブラックベリーはともかく、

 バッタとハチのから揚げを買う庶民は、次第に減っているという。

 日本も戦後しばらくは、イナゴを焼いて食べた。

 なんとなく懐かしくなり、買って食べる。

 道に迷ったりすると危ない場合がある。

 それでもベルリン陥落の時、

 日本大使館員に救助されたドイツ女性が食事を奢ってくれたりする。

 自分が助けたわけでもないのだが

 見知らぬ地でビジネスチャンスを教えてもらえたりする。

 ・・・関係が深まったりもする。

 いい思いをすると、

 宣戦布告を遅らせた外務省の大チョンボも忘れてやろうか、

 という気にもなる。

  

 

 出雲経済は、まだ小さく、

 南欧州に経済を引っ張ろうとしても無理があった。

 出雲とフランス・イタリアは、経緯はどうあれ。

 居ついた側と居つかれた側の関係で民間貿易が増えていく、

 イギリスと出雲の関係は、誘拐犯と人質の関係に近い、

 出雲は、小さな島でしかなく、

 生き残り策を考え、外交政策を進めなければならない、

 ドイツとの関係を再構築する選択の道が限られているためでもある。

 戦後のオランダ経済は、日本にインドネシア独立とダイヤモンド権益。

 安楽な老後の年金生活を奪われて困窮だった。

 当然、出雲とオランダは、まだ、まともな交易が見込めない関係だった。

 オランダは、日本を悪者にしないとおさまらず。

 いずれ研磨技術も出雲が上回る、

 販売ルートを日本独自で構築するか、

 外交上の理由で第三国経由でオランダに研磨と販路を任せるか。

 国際情勢次第だろうか。

  

 

 

 ネバダ州

 アメリカの原爆実験場に日本軍将校がいた。

 日本で出来立てほやほやの原子爆弾の実験場を探し回り、

 アメリカまで来ていた。

 日本本土に落とされた原子爆弾と

 ハワイで誘爆させられた原子爆弾は、国民の意識に温度差があるらしい。

 日本国民は、国内で実験をして欲しくないと言う。

 しかし、造り置きして良い爆弾ではなく、

 実験してみないと、どうにもならない。

 海洋でやっても良いのだが大枚はたいて製造したので、実験結果を詳細に知りたい。

 かといって支持率を下げてまで、国内で原子爆弾の実験をしたくない、

 となれば領土外で探すしかなく。

 南アフリカ公国にしようかと・・・・

 アメリカが “使わせてやろうか” である。

 提案する方の意図も明白なら、受けるほうの意図も明白すぎる。

 アメリカは日本製原子爆弾の威力を知りたく、

 日本も原子爆弾を開発し保有していることをアメリカに見せ付けたかった。

 それだけといえる、

 日本最高の軍事機密で失敗すれば大恥。

 しかし、外交戦略上の都合で使われてしまう。

 日米の将校たちが遮蔽物に隠れる。

 ・・・5・4・3・2・1 カウントがゼロになると。

 閃光。爆発と爆音。

 そして、立ち昇るキノコ雲。

 恐ろしい光景で日本側は、一言もない。

 何度も実験しているアメリカ軍人でさえ声もない。

 身内を原爆で殺された将兵は双方にいた。

 ハワイの誘爆による被爆者総数は、広島、長崎より多い。

 原子爆弾の恐ろしさを骨身で知っているのは日本とアメリカだけだった。

 ため息しか出ないものの、

 こんな外道な兵器で戦争などしたくないと、

 たいていの将兵が思い始める。

 理由は、単純。

 軍人は自分の才覚と運を発揮しても生き残ることができない兵器と、

 その兵器使用も望まないのである。

 

 

 北ベトナムと南ベトナム

 ベトナムは、日本が唯一、植民地と民族を分断させてしまった罪深い地域でもある。

 それも戦いもせず。

 ホーチミンに勢いがあるというだけで独立条約と名目上の王位を認めるならと、

 共産主義勢力に領土を明け渡した。

 戦争で疲れていた日本は、地域が安定してさえいればよく、

 かなり投げ遣りだったともいえる。

 朝鮮半島の戦争が終わると、

 南北に分断されたベトナムが注目され始める。

 とはいえ、北ベトナムと南ベトナムは、まだ行政上の区分で軍事境界線といえない、

 国民の移動は自由だった。

 アメリカは共産主義の浸透を防ぐために国境を閉鎖しようと画策する。

 しかし、北のホーチミン王も南のバオダイ帝も、

 同じベトナム民族の移動を主義主張が違うからと分断する事はないと、大らか。

 世界が、自由資本主義世界と共産主義世界に分かれ、

 ピリピリしているはずが地域差でギャップがあった。

 同族で殺しあった南北朝鮮と、

 主義を押し付けられ思想改造された東西ドイツと逆のことをいう。

 ベトナム人は、血は水より濃いのだと、

 おかしいのは、米ソ対立であり、

 世界であり、東西ドイツと南北朝鮮であると、

  

 白人たちは、国境線をまたぐ、ベトナム人の出入りを睨みつける。

 国境線の向こう側の白人も、こちらを睨み、

 世界の常識が通用しないベトナムに憮然とする。

 日本人がホーチミン王などと広めてしまったのが悪い、

 米ソとも日本の悪口を言いたくなる。

 米ソの大攻勢で弱った日本がベトナムで妥協したのだから

 原因は、米ソにあるのを忘れている。

 ベトナムでは、米ソともフラストレーションが溜まる。

 日本は、南北ベトナムのどちらとも交易があり。

 独立条約が守られているせいか目端が利いて、CIAもKGBも無茶が出来ない。

 北ベトナムと南ベトナムは、脅威を煽って戦争をさせようとしているアメリカとソ連を警戒し、

 不信するようになり、日本との取引が増えていく。

 ネップ・カム(ベトナム酒)を少し飲んだ白人が双眼鏡を覗き込む。

 「・・・あれが、北ベトナムのディエンビエンフー要塞か」

 「バオダイ帝を倒し、自由資本体制と民主主義制度をこの地に確立し、反共の砦にすべきだ」

 「しかし、家賃を払って軍事基地を置いているが政治、経済では食い込めていないぞ」

 「最近は、日本外交が優位だな。政治も経済も食い込んでいる」

 「日本の市民権だろう」

 「有色人種には、アメリカの市民権より人気がある」

 「差別されないからな。同じ皮膚の色のアジア人というだけで親近感もある」

 「くそぉ〜 日本め、有色人種の味方ばっかりしやがって」

 

 

 国連総会

 ラウンジ

 日本は、原子爆弾を開発したことで国際世論が強くなると考え、

 この年、大枚払って分担金を払い拒否権付きの理事国の椅子を手に入れていた。

 分担金の額が発言力になる国際連合、

 お金持ちのアメリカの分担金が一番大きくて発言力がある。

 日本が次ぎに続く、

 ソ連、イギリス、フランスは苦しいくせに大枚払い、

 拒否権つきの理事国の椅子を維持していた。

 この世界では、分担金額が発言力であり、

 上位5カ国が拒否権を有する理事国。

 下位5カ国と選挙で選任される5カ国の10カ国は、拒否権無しの理事国だった。

 おかげで分担金の支払い率は異様なほど良く、国連予算も多い。

 「ドイツの国連加盟はまだ早い」

 経済力の強いドイツが加盟すると、

 拒否権を有する理事国から叩き出されそうなフランス、イギリス、イタリアが反対する。

 「ドイツを加盟させるのなら拒否権を有する理事国枠を増やして良いのではないか」

 「ラッキーセブンというではないか」

 いろんな意見があるが我田引水ばかりで世界の利益をいう国は存在しない。

 「中国を国連に加盟させるべきだ」

 「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 「日本は、南アフリカ公国の黒人を煽り、インドを通じ、我がソビエトに圧力をかけようとしている」

 「日本の核兵器開発は、国際バランスを狂わせる恐れがある」

 唯一、黄色人種の日本人は、かなり居心地が悪い席だった。

 「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 「黒人は、差別されたくないのと。人権を認めて欲しいだけです」

 「日本代表、そういうのはね」

 「品性と人格的な豊かさで認めさせるものだ」

 「軍事力で人権を認めさせるようなものではない」

 「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 世界には、あつかましく、くだらない、意見がたくさんある。

 白人も有色人種に対する鬱憤を目の前にいる日本代表にぶつけたりもする、

 “おまえが、それを言うのか” という意見でも国連という場で言える。

 それは、それで、ガス抜きの一つで世界平和にも繋がると思いたい。

 しかしながら、日本は仕方なく代弁しているだけであり、

 有色人側に追いやられている状況にあるらしく、

 やれやれな状態だった。

 

 

 印パ紛争の地 カシミール

 自然の豊かな地だった。山あり谷あり泉あり。

 標高は高いく山々も高く神々しかった。

 宗教紛争というのは、まったくもって御し難いというより、許し難い。

 無宗教者の発言力が強くなるわけだ。

 少なくとも宗教戦争の愚かさを経験しないだけ、無宗教者はマシである。

 もちろん、無神論の共産主義者が殺している数に比べると少ないだろうか。

 カシミールは、イスラム教徒が多数派。

 藩王のマハラジャが少数派のヒンズー教徒だっただけ、

 どちらかの勢力圏なら揉み潰されるのだが場所的にバランスが取れて混沌としている。

 「・・・・どうです。カシミールは?」

 インド人とパキスタン人が日本人を挟んでいる。

 「こういう美しい自然の中で殺し合いとは、宗教不信させられますな」

 「「・・・・・・・」」

 「共産勢力のソビエトと中国も、さぞ喜んでいるでしょう」

 「目の前で宗教人同士が殺し合っているのですから」

 「「・・・・・・」」

 インドとパキスタンは日本を味方に引き込もうとする。

 日本は、経済的にインドよりだった。

 しかし、外交戦略上の観点は対ソ・対中政策で利用したいだけで、

 どちらの味方もしていない。

 ソ連と中国は、南アジアに反共産主義の拠点を作られてと困ると、日本を目の仇にしていた。

 欧米が日本が有色人種の味方をしていると非難する一方で、日本の対共産主義政策が認められ、

 一定の評価がされている。

 もう一つ、宗教紛争の場合、混血優遇政策は使い難い。

 しかし、東南アジアの一部で混血優遇政策が一定の評価を受けると、

 人種・部族間紛争が起きているインド・パキスタンの一部、実験的に取り入れられていた。

 「イギリスから独立したとたん仲違いで殺し合いでは・・・」

 「白人とキリスト教徒からなんと言われているか、ご存知ですかな」

 「「・・・・・・・・」」

 

 

ティルピッツ

 47口径380mm砲弾が命中してもびくともしない敵、

 戦艦ティルピッツは、奮戦むなしく、炎に包まれ撃沈されていく、

 52口径90mmの主砲が命中しても毛ほどにも感じない敵、

 新型54式戦車は奮闘もむなしく、踏み潰されていく、

 吠える巨大な怪物の口から数百メートルの炎が吐かれ、

 戦後再建されたビル、工場、文化財が次々に破壊されていく、

 雷風5型の攻撃も、フリッツXも通用しない。

 逃げ回る日本国民の中に黒人、白人、他の黄色人種が混ざっていた。

 苦戦する日本軍。

 手に汗握る観客。

 記念艦 戦艦大和の艦橋が尻尾の一撃で折られ、

 他の戦艦群も破壊され、踏み潰されていく、

 「・・・総理・・・核兵器を」

 「核は、絶対に使わない!」

 日本軍の指揮官がゴジラを睨み付け、総攻撃をかける。

 囮になった日本軍は、壊滅的な打撃を受けていた。

 雷風5型戦闘機がゴジラに向かって体当たりした。

 「・・・で、電気系統・・・・修復・・・完了・・・・」

 「ハインドリッヒ!!」

 倒れ息絶えるドイツ系技術将校、

 「大和、武蔵の主砲塔が同調しました!」

 「撃て!!」

 大和と武蔵の最後の砲撃は、発射薬をギリギリまで増やしていた。

 発射と同時に自身の砲身と砲塔も破壊する。

 しかし、460mm砲弾18発は、至近距離からゴジラに命中し、

 ゴジラは初めて大地に倒れ、ボロボロになって海に引き揚げていく。

 ゴジラは、原子爆弾の申し子。

 そのパワーは、アメリカを具現化していた。

 国土に侵入した怪物を日本軍が必死になって撃退する姿は、何かを髣髴させるらしく。

 興行収入が上がっていく、

 因みに、この時、ゴジラを放射能怪獣にした原子爆弾(水爆)は、ビキニ環礁でなく。

 アメリカの利権が強いニューギニア北部のニニゴ環礁の実験で、

 日本に対する示威も兼ねていた。

 そして、第5福竜丸に乗っていたのは、日本人だけでなく、

 フィリピン人、インドネシア人、マレー人、インド人の留学生もいた。

 アメリカは、東南アジア諸国の印象値を下げ、

 とんでもない見舞金を払わされただけでなく、

 海洋での核実験が制限される切っ掛けになっていく、

 

 映画館から出てくる観客たち

 「いや〜 ゴジラは、もう少しですな」

 「あれならアメリカ軍が強い」

 「関東全域が火の海で大洪水でしたからな」

 「他の大都市も焼け野原でしたし」

 「そうそう。ゴジラは、もっと。こう、ぶぁあああ〜!!! と、強くなくては」

 「しかし・・・・次回作が、楽しみですな」

 うんうんと、周りが頷く。

  

  

 フランスが大国であるという証明は、北アフリカの植民地維持にかかっていた。

 フランス領として取り残されていたマダガスカル島が独立しようと構わなかった。

 しかし、北アフリカの植民地だけは併合するつもりだったのである。

 フランス軍のアルジェリア掃討作戦は、フランスの大国としての存在を賭けてであり、

 軍事行動だった。

 南アフリカ公国とインドが連合、国際世論を味方にフランスに反発する。

 そして、南アフリカ公国とインドが北アフリカ・フランス領を支援。

 ここでソ連の共産主義ゲリラも参戦。

 南アフリカ公国が共産主義と妥協するはずもなく、三つ巴。

 さらにアメリカも利権目的で介入し、

 人種戦争なのか、

 階級戦争なのか、

 民族紛争なのか、

 宗教戦争なのか、

 現地民も、わからなくなっていく、

  

 北アフリカ某地域、ジャングルの中

 どこかの部族に武器弾薬が配られ、軍事顧問団が軍事教練を始める。

 その状況を地図で確かめる数人の白人がいる。

 「ここは、フランスを悪者にしてソ連、南アフリカ公国、インドも利権目的と宣伝して」

 「アメリカのモノにするのが最上策だな」

 「そうそう。醜く争わせて最後に利権を得るのが正義の国アメリカということにしなければ・・・・」

 「しかし、組織化が遅いな。これでは紛争が小さい」

 「んん・・・もっと派手に殺し合ってもらわないとな」

 「だいたい。国力がないのにこんな場所まで出張ってくるからだ」

 「そうそう。これじゃ 場所を教えるのも気が引けるな」

 「もっと組織が大きくなるまで待つか」

 「んんん・・・・確かに不完全燃焼だよな」

 

 

 どこかの偉い人たちの部屋

 リストの名前を見て、ため息。

 日本が名前がトップに書かれている。

 あまり仲間に入りたくない。

 それでも出席しなければならないだろうか。

 「・・・・なんか、大国の干渉で、有耶無耶に流れそうだな」

 「そうですよ。弱者同盟でしかない」

 「しかし、なんで日本もなんだ」

 「アジアだからでしょう」

 「インドと南アフリカ公国が主導権を取りそうだな」

 「中国は?」

 「中国は入れたくないな」

 うんうん

 「日本が主導権を取りやすいようにインドと南アフリカが気を使ったんじゃないか」

 「北ベトナムも嫌がるし」

 「・・・だいたい、有色人種が集まって白人世界を刺激してどうするんだよ」

 「そうそう。駄目だよ。白人世界を刺激しちゃ 逆らってもムダ。自然災害と同じだよ」

 「それは、そうと。核ミサイルはどうするの?」

 「V2じゃな〜 1トンで300kmじゃ 自衛だよ」

 「核爆弾自体も7トンだと重すぎ」

 「もっと小さくしないと、それに爆撃機もショボイし」

 「二段ロケットは?」

 「まだ開発中」

 「配備するのは、扶桑州だよな。近いし」

 「・・・どこに近い? は、聞かない方が良いのかな」

 「どこにでも近い。ということだろう」

 「しかし、射程を何とかしないと。6000kmは欲しいな」

 「B52爆撃機を持っているアメリカが羨ましいよ」

   

  

 「大陸間弾道弾が開発されたら戦略爆撃機は、ムダになるんじゃないか」

 「いや、地上に駐機している爆撃機は、戦力の数に入れないんだ」

 「交替で上空待機しているB52爆撃機が脅威なんだよ」

 「なるほど・・・」

 「上空待機中の戦略爆撃機なら大陸間弾道弾や潜水艦発射の核ミサイルより使いやすい」

 「あんな、デカ物をジェット燃料で交替で飛ばすのかよ」

 「なんて浪費だ」

 「こっちは、ジェットプロップの旅客機でさえ、採算を疑っているのに」

 「お金持ちは違うね」

 「一応、世界を共産主義から守るとか言ってるらしいけど」

 「どうだか、利権狙いじゃないか」

 「南アメリカとアフリカで、かなりえげつないし」

 「朝鮮半島と遼東半島で利権握っているし」

 「だよな。しかし、地上発射は、国民世論で支持を得られそうにないな」

 「潜水艦発射を考えるべきだろう」

 「んん、国民は、持ちたがりの怖がりだから、地域で押し付け合う気がするな」

 「いっそ。水上艦に装備するか」

 「・・・潜水艦に追い掛け回されそうだな」

 「んんん・・・その件は、もう一度、検討させよう」

 「それより、電子計算機関連の予算を増加するのは?」

 「いくつかの省の要請ですよ」

 「大戦中も電子技術の劣勢で苦労させられましたし」

 「朝鮮戦争でも米軍が優れた電子装置を装備しているのが確認されました」

 「まぁ〜 経験則から来ているのなら仕方がないがね」

 「何より業種増加と産業拡大で税制が複雑になりますし、電子計算機がないと・・・」

 「だよねぇ〜」

 「今後は、重要な地位を占めると思います」

 「しょうがないよね〜」

  

 

 工場

 ジェネラル・エレクトリック社製J47-27GEターボジェットエンジン推力2680kg

 比較される生産中のジェットエンジン。(火龍)推力1900kg

 そして、試作開発中のジェットエンジン。推力2300kg

 ジェネラル・エレクトリック社製をライセンス生産したジェットエンジンが並べられ、

 炎を噴出していた。

 推力の差は、冶金技術の差、耐熱性能の差、耐久性能の差といえる。

 日本が現在生産している推力1900ジェットエンジン(火龍)も、

 ドイツ製工作機械で、

 ドイツで蓄積された技術体系をわずかに強化させたものに過ぎない。

 火龍でさえ、背伸びした状態で生産されているジェットエンジンだった。

 アメリカのジェットエンジンは、さらに上で身の丈以上の代物だった。

 冶金技術は、東南アジア、インド、南アフリカ公国から輸入する希少金属を何万回も精製し、

 何万通りも研究しなければならない、

 日本は、その蓄積された情報とノウハウで劣る、

 基礎技術力、基礎工業力を先進国に頼るしかない。

 戦後、基礎技術力、基礎工業力をようやく埋めようとし、埋まりつつあった。

 「・・・・・・・・」 ため息

 「駄目ですか?」

 「技術力の差、工業力の差だな」

 「オリジナルには負けている」

 「研究所からの連絡は?」

 「まだです」

 「同じ推力のエンジンを作れても耐久力では負けるぞ」

 「・・・やはり、アメリカもドイツの遺産を有効に使っているようですね」

 「ああ、根こそぎ。という感じだな」

 「こちらには秘密がない。日本独自の開発など。さざなみ程度だな」

 「そういえば、スウェーデンの戦闘機は性能が良いと聞いていますが?」

 「あれは、イギリスのジェットエンジンだよ。ロールスロイス・エイボン」

 「イギリスですか」

 「相変わらずエンジンは、アメリカ、イギリス、ソ連の後塵を踏みますね」

 「そうだな」

 「・・・・工場長。研究所からです」

 電話に呼ばれる。

 「・・・本当に・・・わかった」

 その後、研究所と工場で酒盛りになる。

  

  

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 月夜裏 野々香です。

 朝鮮戦争

 史実では、1950年6月25日 - 1953年7月27日(1128日)停戦ですが。

 『ミッドウェー海戦のあと』では、

 1950年12月24日(日曜日)クリスマス・イブに始まって。

 1954年01月25日(1128日)まで続いてしまいました。

 戦後の朝鮮半島は、自主規制です。

 書いている内容も実のところ史実以下。

 史実以上に状況が悪いので地獄絵図が展開されます。

 どちらにしろ、残酷物語になるので、とても書けたものではないです。

 

 南韓国は、アメリカの軍政下。

 華僑資本、東南アジア諸国の出先機関が作られ、

 資本投資が行われ、微妙に経済活動が行われたりします。

 北朝鮮の方は、中国・ソ連の共産圏に完全に組み込まれていきます。

 金日成は、中ソの間でバランスを取りながら、とりあえず、独立でしょうか。

 

 

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第63話 1953年 『戦争している間に・・・』

第64話 1954年 『平和はいいねぇ〜』

第65話 1955年 『赤 VS 緑』