月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

 

 

第65話 1955年 『赤 VS 緑』

 中国が北朝鮮を独立させる動きが出てくると、

 国際政治上、アメリカの正義が問われる。

 アメリカは、軍政を続けたかったものの、

 対抗上、南韓国を独立させなければならなくなっていた。

 半島南岸の日本領から韓国側を見ると。

 エスニック風、インド風、中華風の町並みが造られていた。

 東南アジア系・華僑系・印橋系のエスニック資本が日本と南韓国側の間に入り込んでいる。

 彼らにとって、日本はアジア・アフリカの盟主に近く、

 自由(超法規的)になる出先機関を近くに作りたいらしい、

 そして、欧州資本も対日政策上の関心の高さから半島に資本投下していた。

 南韓国の土地の半分は、アメリカ資本所有。

 それ以外の場所に新規参入外国資本が入り込む。

 まるで、万国博のようにもなってくる。

 韓国人は、関係ないのに仲介に入ったり。

 他人の土地を偽って売り飛ばしたり、

 女・子供も買ったり、誘拐して売ったり、かなり混乱めいていた。

 こういった犯罪は、日本でも、世界でも、統計上、小規模起こる。

 しかし、韓国の場合、多かった。

 朝鮮戦争で半島は38線で分断され、死傷者は多く。

 南韓国の領土は減り、韓国人の人口は、もっと減っている。

 韓国人、一人当たりの土地財産(GDP)は、増えており。

 アメリカ以外の土地は、誰の土地だか、わからないという状態になっていた。

 というわけで、誰の土地かわからない場所がゴロゴロと・・・・・

 下手をするとアメリカ資本の土地まで売ってしまい。

 本当の持ち主が発覚、

 その処理で売り手や買い手が抹殺ということもあったりする。

 韓国マフィアの抗争に外国資本が利用されたり、

 トラの威を借り、他者同士を仲違いさせ、

 蹴落として出世するのが得意らしく。

 いつの間にか、朝鮮人が幅を利かせていた。

  

 さらにむごい、事例もあるが ・・・自主規制 ・・・・自主規制・・・・

  

 あくどく他人の土地を売ったり、

 隠していた物資を売ったり、

 人身売買したり、

 南韓国の土地は、外国人名義になってしまいそうな勢いだった。

 しかし、それで息を吹き返したのは、あくどく小金を溜めた韓国資本だった。

 ほとんどが悪党でマフィア抗争で生き残った猛者。

 非道というか、非情というか、外道というか・・・etc・etc・・・・

 戦争が終わって食料がなく、飢餓で人口が減っていく。

 「オッパ〜!! オンマ〜!!」

 「さっさと、来るニダ!!」

 「「アイゴ〜!! 許してくれニダ〜!!!」」

 売る方も、売られる方も。売らなければ親子とも飢死なのだから買うのが人道的?

 この辺は、賛否がありそうなので断定しない。

 金が欲しいばかりに韓国官僚が、なけなしの食料を日本に横流ししようとして発覚。

 という事態も起きる。

 半島は、守銭奴の華僑が同情して通報するほど悲惨な状態で、

 併合以前に戻った、ともいえる。

 半島に弱肉強食の羅刹の国が作られていく。

   ※羅刹 

    空中を飛行し、人を食うといわれる、男女の鬼。

  

  

 この頃の日本連邦は、経済成長まっしぐらだった。

 朝鮮特需で大儲け、

 日本の影響圏がインド洋を中心に広がっていく、

 その中核になっているのが昭南(シンガポール)州。

 シンガポール島(685ku)程度でなく。

 リンガ泊地や南沙群礁まで含んで、

 1万1000kuも領有があるので、かなりタフだった。

 東南アジア全域の工場であるばかりでなく、

 インド・南アフリカ公国・豪州にまで市場にしようと設備投資が繰り返され、

 工業生産力が急速に伸びていた。

 日本人の移民も昭南(シンガポール)州が核になり、

 日本本土と激しい経済競争が繰り広げられるほど、地理的に優位な昭南州だった。

 しかし、瑞穂州も大きく力をつけてくると、

 日系企業同士の市場戦争が激化していく。

 これが切磋琢磨であれば、まだ良く、潰し合いになると辟易してしまう。

 日本人の若者の多くが海外雄飛してしまう原因の一つが、これだった。

 経済戦争というが欧米との市場獲得戦争でもある。

 そして、勤勉と勤労に支えられた日系企業は、賃金格差で世界市場を支配していた。

   

  

 冷戦が温床となって、日本経済圏を保護育成、拡大させたのは皮肉な結果だった。

 冷戦がなければ、日本は、欧米の政治・経済・軍事面の妨害を受け、もっと脆弱だった。

 そして、日本の反ソ・反中・反共政策が印パ紛争(カシミール)をイスラム教徒解放に誘導。

 日本は、南アジアに浸透する共産主義を防いで支えてしまう。

 ソ連国境警備隊が中央アジア(カザフスタン)でイスラム系テロを壊滅。

 インド・パキスタン・南アフリカ公国製の小火器が発見される。

 「これは、反則だろう」

 と、フルシチョフが呟く、

 それは紛れもなく “AK47” と “トカレフ” だった。

 お互い様でソ連製のAK47も、アフリカ、アジア、南アフリカで発見されている。

 資本主義の物欲は貧民層を抑圧し、共産主義勢力を拡大させていた。

 お互いに国家的なエゴを追求すると反発する国も現れる。

 ソ連国内でイスラム教の弾圧を始めると、

 日本が資金援助するイスラム諸国が反共で固まる。

 アフガニスタン、カシミールに武器弾薬が集まって反共の巣になっていた。

 そして、イスラム過激派は、長過ぎるソ連国境を越境してしまう。

 この時期、中国も反共の徒と疑われたイスラム教徒が弾圧を受けており、

 カシミールに集結したイスラム過激派の標的になっていく。

  

  

 日本人数人がカシミールの大自然に呆けながら別荘でラム酒を飲んでいる。

 一人の新人がペコペコしていた。

 「・・・なんだ。二重取りされたのかよ」

 「こっちで払っているから “払うな” って言っただろう」

 「す、すみません」

 「しょうがねぇな〜」

 「見かけないやつだからって、舐められたんじゃないか」

 「後進国の連中は、これだからな」

 「文句、言ってやるか」

 「・・・そうだな。荷受を変えてやるか」

 「信用をなくせばどうなるか、教えてやりたいぜ」

 「だけど。それやると逆恨みで裏切るからな」

 「そうそう。倫理観なし」

 「ったく。人間不信になるよ。金だけでも戻させるか」

 「ああ。ウラマー(裁判官(カーディー))に言えば、すぐだな。石打ち刑、斬首刑」

 「んん・・・虚偽、搾取では、石打に、ならなかったような〜」

 「そうだっけ?」

 「死刑は、戒律違反じゃなかったかな」

 「モラル低〜」

 「結局。力関係なのさ、イギリス人の気持ちが、わかるよ」

 「とにかく金は、回収だ。それか、荷受業者を変える」

 「んん・・・・だな」

 「しかし・・・ソビエトと中国は、イスラム過激派を刺激するなんて、よくやるよ」

 「テロされて、怒ったんじゃないか」

 「ふっ 共産主義者が他所でテロやっているくせに」

 「国内でやられると怒るんだから。虫のいい話しだ」

 「今年度の予算がきているけど。大丈夫か?」

 書類がテーブルに散らかっている。

 これがソ連側に入ると大変なことになる。

 しかし、項目は、宝石、酒、日用品だった。

 慣れた人間が見ると、脳内で武器弾薬に自動変換される

 「んん・・・大丈夫だろう」

 「火に油を注いでいるのは、ソ連と中国の共産主義者だし」

 「しかし、共産主義テロ対イスラム過激派テロか。怖過ぎるな」

 「あまり、やりすぎるとソ連軍が侵攻してくるかもしれないぞ」

 「ふっ そうなったら、本当に共産圏とイスラム圏のゲリラ戦が始まるな」

 「潰し合ってくれたら嬉しいよ」

 「しかし、核ミサイルを落とされたら、いやだな」

 「人間はともかく。カシミールの自然は好きなんだよ」

 「まあな。しかし、テロされた報復で核ミサイルはないだろう」

 「欧米諸国も共産主義テロでやられてるが核ミサイルを使っていないし」

 「アメリカがカシミール権益に参入したがっているぜ」

 「国内の共産主義勢力に腹を据えかねているようだ」

 「・・・キリスト教徒は介入しない方がいいよ」

 「イスラム教徒のテロ対象が変わるから」

 「そうそう、アメリカは、北ベトナムを狙いかねないし」

 「十字軍とかいいかねないからね」

 「北ベトナムは、共産主義でも食料自給率は高い。抗戦能力は高そうだな」

 「ホーチミンは名目上、王様だし」

 「膨張主義じゃないんだから、そっとしておくのが普通だろう」

 「いや、アメリカの軍産複合体が新兵器のヘリを使ってみたいらしい」

 「自動小銃も新型にするとか、言ってたし」

 「ヘリかよ。密林で使うなよ」

 「山岳地帯のカシミールに持ってこいよ。山頂に空軍基地を作れるぞ」

 「ほら、あれだろう。重量当たりの単価が戦車より高いだろう」

 「利益率がいいから使いたいだけじゃないか」

 「やめてくれよ。S55ヘリなんか、戦争で使いたくないよ」

 「占領するなら戦車だよ。10個機甲師団も侵攻させれば済むだろう」

 「アメリカの新型戦車を撃破できる武器なんて、そうそうないけどね」

 「金に目が眩むと、ヘリを・・・」

 「ヘリなんか撃墜されて、お終いだぞ。アメリカ兵が、かわいそうだろう」

 「お金持ちの趣向で戦わされるのさ。資本主義だから」

 「ひでぇなあ」

 日本は、朝鮮戦争で、S55ヘリコプターの有用性を確認したのか、

 輸送用として採用。ライセンス生産していた。

  

  

 東京湾

 古式ゆかしい砲艦外交は戦艦だった。

 ティルピッツに先導されたモンタナとオハイオが並んで東京湾に寄港し、

 日本の大和、武蔵の近くを通過していく、

 67000トンと60000トンの差があり、大和型の方が僅かに大きい。

 写真を撮りたがる者は多く、埠頭は人だかりとなっていた。

 モンタナ、オハイオの戦艦2隻は、海南国と韓国独立に備え、日本に立ち寄っていた。

 日本がイスラム圏を反ソ・反共で利用し、

 自由主義世界で良い顔しているのが気に入らないのか。

 日本も “戦艦を建造しろよ” と言ってるのか。

 どちらも、だろうが思惑は、はっきりしている。

 こういった思惑が見抜けないと、執政者になる資格はなく。

 その手に乗るか。からめ手を考えるか。違う切り口で切り返すか。

 抱えている参謀、ブレーンによって対応が変わったりする。

 港湾の近くのデパートの屋上からでも巨大な戦艦は注目される。

 戦傷をワザと残したボロボロの戦艦大和や武蔵がかわいそうに見え、

 戦争の酷さを国民に伝える使命を果たした戦艦といえる。

 数人の日本人がデパートの屋上で双眼鏡を眺めていた。

 「・・・やっぱり、砲艦外交は戦艦だねぇ〜」

 「絵になるな。カメラマンは稼ぎ時でマスコミ受けも良く大喜びだ」

 「来日したアイゼンハワー大統領は、戦艦で帰るのかい」

 「まさか、飛行機で来て飛行機で帰るよ」

 「極東を一回りするようだが日本が、どんなところか、見に来たのが本音だろうな」

 「滞在日数からして、そうだろうな。日本との関係が良くなれば良いが」

 「せいぜい。過ごしやすいように接待するさ」

 「しかし、半島が日帰りだけと、アメリカ将兵も死に甲斐がないな」

 「朝鮮人は、いつ裏切るか、わからないのだから行きたいと思わないだろうな」

 「しかし、大統領来日とは時代も変わったな」

 「ミッドウェー島の埋め立ても相当な規模なんだろうな」

 「・・・たぶんな」

  

  

 日本は、段階的民主化で個人の権利が少しずつ強くなっていく、

 日本人の気質も少しずつ変わってくる。

 条件付降伏で権威主義と反骨精神は、それなりに残されている。

 平和になると金の力は強くなるが拝金主義まで行かない、

 母親と子供も相対的に強くなる。

 ドイツ人と市民権を持った外国人がいたりすると異国情緒な刺激を受ける。

 そして、河川上の脇に埋め立てられた外国戦艦群・・・・

 埠頭に係留された日本戦艦の記念艦群。

 出雲や秋津など海外から伝わる情報。

 資本主義の財欲に侮蔑の視線を投げかけ、

 海外に雄飛していく若者が多くなると、

 日本国内の暴走族は同世代からも馬鹿にされ縮小されていく、

 親にすれば手元で暴走族をしていてくれた方が安心だが、

 そうも行かない。

   

 東京湾のモンタナとオハイオをバックに別のドラマがあったりする。

 港

 見送る両親を一瞥もしないで、定期客船に乗り、

 海外に行ってしまう子供が増えていく。

 「どうして、こんなことに・・・・」

 「・・・そういう世相を作ってしまったんだ」

 「もっと、ずる賢く立ち回れる世相なら良かったな」

 「もっと、卑怯で、臆病者に育てば良かったんだわ」 母親が泣く

 他人が聞けば呆れるせりふでも港や空港だと、共感する母親も多い。

 日本の産業は、海外資源を手に入れなければ成り立たない。

 海外の職場は、多かった。

 そして、一度、海外に出てしまうと。

 企業の枠組みから、はみ出てしまう若者は少なくなく。

 常に人材欠乏症といえた。

  

 おかげで、親が戦後一代で築いた企業と、

 子供が海外に出て作ってしまった企業があったりもする。

 東京湾を一望するホテル。

 「・・・おまえ、家督はどうするんだ」

 「・・・俺、自分の会社があるし」

 「「・・・・・・」」

 「」

 「」

 親子とも創業者。

 どちらか、潰れそうなら、話しは簡単。

 しかし、両方とも業績が良いと最悪。

 自分の会社に愛着が強いだけあって、どっちも引けない。

 そして、同族企業が微妙に減ったり、

 海外の企業と合併や提携が増えたり。

  

  

 主義思想を口実にした二大強国の勢力争いに巻き込まれ、

 国体が踏み躙られた国民・民族は少なくなかった。

 大戦後、東西ドイツは敗戦によって引き裂かれ、

 中国大陸は、戦争と内戦によって赤化し、

 敗者は、遼東半島のアメリカ権益地と海南島へ避難する。

 朝鮮人は、アメリカ資本の支配と貧富の格差を是正しようと、共産主義を唱えて立ち上がり、

 共産軍の侵攻に遭い、自由圏と共産圏を巻き込み、

 同族同士が殺し合う凄惨な内戦へと移行してしまう。

 共産主義との戦いに巻き込まれ、分断された民族は、共感しやすい苦しみがあった。

 もっとも、血を流さず共産主義と自由主義に分裂し、

 互いの勢力圏を行き来しているベトナム人の国もあった。

 

 

 海南国独立

 ソ連は、海南政府の独立を認めることで、中国を国連に加盟させる戦略に切り替える。

 海南政府は、南海島・雷州半島を国土とし、

 アメリカ領遼東半島の編入も画策する。

 米ソ日英仏の間で駆け引きが行われ、取引が進み。

 中国・海南国の国連同時加盟が決まる。

 特に遼東半島はアメリカ資本が投下され、

 白人も多く、アメリカの経済植民地だった。

 遼東半島 大連

 アメリカ資本、華僑資本、日本資本が食い込んで資本主義の牙城を構築していた。

 巨大なビルが建ち並び、近代的な世界が作られていた。

 白人と混じって中国人が出歩き、その中には日本人もいた。

 「本当に投資は、大丈夫なのか?」

 「一時は、どうなるかと思ったが中国との取引で持ち直せそうだよ」

 「そんなに需要があるものかな」

 「中国人口は6億」

 「共産党幹部を5パーセントとすると、6億人に支えられた3000万の富裕層がいる」

 「まぁ 庶民はともかく、共産党官僚は、資本主義の商品が好きだからね」

 「朝鮮特需の設備投資が無駄にならないのなら良いけどね」

 「しかし、朝鮮戦争前の朝鮮がそのまま続いている世界だな」

 「面積に対する投資額が大きいから社会基盤の密度は、日本以上じゃないか」

 「中国と北朝鮮に航路を塞がれても、香港以上、シンガポール以下くらいか」

 「赤化から避難してきた漢民族は、朝鮮人より用心深いよ」

 「朝鮮半島と違って、海南島・雷州半島、遼東半島は、日本資本の足場も多いから助かるね」

 

  

 大韓民国独立

 8月15日という。意味ありげの日に独立。

 45年と55年では10年違う。

 さらに日ソ戦争終結が46年としても9年違うものの、

 人気が低迷している李承晩大統領が決めてしまう。

 李承晩は権力を維持するため、アメリカ依存が強くなり言いなりの傀儡。

 当然、親日の洪・シヨク将軍と反りが合わず、

 下野させようと画策するがアメリカの意向で韓国陸軍総司令官となった。

 アメリカは、李承晩が駄目な時、韓国人に人気のある洪・シヨク将軍を利用するつもりだった。

 李承晩大統領は、めげずに洪・シヨク将軍以外の政敵を裏切り者とし、

 次々と粛清していく。

 アメリカ政府とアメリカの代弁者の李承晩大統領の相互依存は次第に強固となり、

 李承晩大統領は、アメリカの虎の威を借る増長した代弁者となり、

 韓国国民の反感を買っていく、

  

 

 半島南岸の某所

 東シナ海から日本海の海図が広げられ、

 白人と日本人の官僚がいる。

 「・・・李承晩大統領の海洋主権宣言は、困りますよ」

 「わかっていますよ。李承晩ラインは大幅に下げさせますから」

 「いつまで、彼を使うつもりです?」

 「彼は、自分の政敵を粛清しています。残るのは洪・シヨク将軍だけでしょう」

 「そうなりそうですな」

 「洪・シヨク将軍の時代になれば、やりやすいでしょう」

 「自分の手を汚さず、政敵不在ですから」

 『どっちも使い捨てするくせに』

 「韓国は、もう少し、日本との関係を考えた方が良いのでは?」

 「南韓国の反日政策は、日米両国にとっても不利益になる」

 「いや、反日は韓国人の気質ですよ。我々と関係ないことです」

 「・・・・・」

 「いや、本当に。日本を敵役にしないと韓国の国体そのものが崩壊しかねないほどです」

 「・・・・・」

 ニヤニヤする白人。

 まあ、半分、本当なのだから仕方がないが・・・

  

  

 赤レンガの住人たち

 いくつもの予算案がテーブルの上に並べられていた。

 日本の国防戦略に沿って、必要と思われる予算案を優先順位をつけて並べる。

 予算不足で国家戦略が修正させられたりもする。

 そのたびに優先順位が変わったり。

 「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 ため息しか出ない。

 「・・・・駄目だこりゃ」

 「ふっ どうせ、イギリスとフランスも、似たようなことを言ってるだろうな」

 「大臣に修正案を出すか」

 「何で、こんなに予算が持っていかれるんだ」

 「外交戦略上の、なんとか、って、やつじゃないのか」

 「本当に成果あるのか?」

 「さぁ〜」

 「インド洋航路で、儲けている企業は、年々増えているそうだぞ」

 「国内予算でさえ、当て外れがあるのに国外に投資だと」

 「しかも後進国。大丈夫か。半島で懲りたと思ったがな」

 「それより・・・ヴァルター機関。どうする?」

 「・・・・安全性で非大気依存推進機関の方が良くないか?」

 「実証されてないだろう」

 「官僚サイドだと前例がないとね」

 「よほど予算が余っていないと、出ねぇ〜」

 「政治家も俺が全責任を持つから、とかで、予算を通すほどでもないし」

 「ノーチラスは原子力潜水艦だぞ」

 「原子爆弾の誘爆で、何十万も死んでいるのに。アメリカ人は、よく乗れるよ」

 「心臓が鉄で出来ているんじゃないか」

 「人が被爆で死んでも爆弾が悪いと思う人間もいれば、戦争が悪いと思う人間もいる」

 「どう思うか、自由なのがアメリカなんだろう」

 「そういば、アメリカは銃で人が殺されても、悪いのは銃じゃなくて撃った人間だっけ?」

 「じゃ 悪いのは原爆じゃなく。人ということね」

 「自由も考え物だな」

 「それより、潜水艦は原子力より、ヴァルター機関かな?」

 「それは、潜水艦の艦長次第かな。どっちも危なそうだし」

 「だいたい。原子力発電って、原子爆弾と違って、制御、むずかしそうだな」

 「予算は?」

 「ねぇ」

 「まず、民間で原子力発電所を建設して、実績をつくってもらおう」

 「原子力の制御か・・・アメリカ、教えてくれそうにないぞ」

 「ライセンス高そうだな」

 「だけど当面は水力発電としても足りなくなったら、火力発電に変わるだろう」

 「その供給も足りなくなったら、原子力になるんじゃないか」

 「ウランは、手に入るけど・・」

 「・・・んん・・・・こいつは? 既存の技術でやれそうだぞ」

 覗きこまれる提案書

 「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 「・・・・奇抜だな」

 「しかし・・・・」

 「ありだろう」

 「海峡に制限されるよな」

 「海峡だけ。というのもな」

 「いや、海峡は重要だよ」

 「予算があれば、経済水域にも広げられないか?」

 「予算があれば、だな」

 その後、旧型潜水艦のソナーや聴音機を強化。改造されて酸素タンクを満載。

 潜水艦と地上基地を送電線と有線で結ばれた状態で、海峡近海に沈められる。

 日本潜水艦は、海底に沈められた潜水艦とドッキングすることに成功する、

 酸素と電力の供給を受け、本土と通信を行うと離脱する。

 地上の潜水艦作戦基地から直接、海底のソナー・蓄音機を操作して索敵。

 さらに海底の潜水艦に直接指示を送れる地点があると便利と思ったのか、

 その後も潜水艦と廃船が改造され、

 海底に沈められる艦船が増えることになった。

  

  

 

   利根川、戦艦ヴィットリオ・ベネト、リットリオ

 

 

 

 江戸川、戦艦リシュリュー、テキサス

リシュリュー

 

 多摩川、戦艦ネバダ、ペンシルバニア

 荒川、  戦艦アーカンソー、ニューヨーク

 隅田川、戦艦ニューメキシコ、ミシシッピー、アイダホ

 鶴見川、戦艦コンテ・ディ・カブール、ジュリオ・チュザーレ

 これら13隻の戦艦群は、突入した河川の脇に移動させられ、そのまま埋め立てられた。

 くず鉄にしてしまうという話しもあったものの、

 他にも、くず鉄に出来る船があるせいか。

 記念艦として残す選択がされる。

 おかげで東京市民は、暇潰しをする場所に困らず。

 デートコースであり、

 子供の遊び場、修学旅行、熟年旅行、外国人の旅行コースでもある。

 これらの戦艦は、破損が、ほとんどなかった。

 関東から住人が避難したあと、戦艦への攻撃はリスクが大きいと判断され、

 攻撃中止の勅命が出されてしまう。

 日本軍の反撃は、前進する地上軍に限定されていた。

 東京湾で記念艦として埋め立てられている大和、武蔵の方が痛々しく。

 外国戦艦の方が損傷が小さく目立たない。

 伊勢は出雲、日向は、秋津へ記念艦として移動し、

 長門も、退役後、場所は、未定だが記念艦として残される運命にあった。

 ティルピッツは、ドイツへ返還される、

 もっとも西・東ドイツに分かれているため、見送られていた。

 退役後は、秋田の港に係留する予定だった。

 これら戦艦群は、戦争記念館でもあった。

 周辺は、戦車、航空機など、

 当時をしのばせる兵器が陳列されていた。

  

 64年の東京オリンピックに備え、東京各地で工事が進んでいた。

 戦後再建中の東京は、計画都市で国際都市の機能も十分にあった。

 「よ〜し。15個集まったぞ」

 と。スタンプを押した子供が喜ぶ。大和と武蔵も含まれているらしい、

 人気のあるスタンプラリーで趣味で集める観光客は多く、

 外国人も少なくなかった。

   

  

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 月夜裏 野々香です。

 日本は、史実と違って、朝鮮特需で丸儲け。

 朝鮮人が非難するように、文字通り、半島を踏み台にしてしまいました。

 さらにアメリカが戦争している間に東南アジア、インド、南アフリカ公国で地歩を確立。

 また市民権の売買が日本の外交下手を補足。

 情報が集まりやすく。同時に洩れやすくなっています。

 日本の世界化か。世界の日本化か。

 日本と世界の関わりが増えていきます。

 また、核開発もドサクサにやってしまいました。

 

 史実と違うのが日本の生命線は、太平洋航路より、

 インド洋航路に比重があること。

 イギリスの策源地とほぼ重なっています。

 イギリスと違って植民地による搾取でなく、

 相応の代価を払うことになります。

  

 

 中国 & 海南国(海南島・雷州半島、遼東半島)の国際連合へ同時加盟が決まり、

 国際社会に認められる。

 これも、史実より早かったようです。

 史実と違って、国際連合に常任理事国はありません。

 理事国になりたければ、分担金、上位10位で収め。

 拒否権が欲しければ上位5位に食い込まなければ駄目です。

 さらに分担金そのものが票差ですので、

 貧乏な国は、拒否権無しの選任5カ国を狙うしかなく、

 ほとんどの場合、ODAにつられるか。

 列強の子飼いが選任されてしまうことが多いようです。

 中国とインドが人口比率で理事席を要求しそうな節がちらほらと・・・

 

 

 史実の大韓民国独立は、1948年08月13日。アメリカ軍政庁からの独立。

 ところが大韓民国は、独立を1948年08月15日に日付を捻じ曲げ、

 韓国人は、大韓民国の独立を1945年08月15日に捏造、

 日本から直接独立したと思い込んでいる。

 この戦記では、独立は1955年08月15日独立。

 10年サバを読んで、1945年08月15日独立と思い込んでいるようです。

 さすが、4000年の歴史を持つ国は、10年の違いなど、

 些細な数字でしかないようです。

 

  

 ※選任の理事5カ国だけは、分担金による票差でなく。単純な国家数の多数決です。

 ※分担金の票差は、一番低い分担金を納めた国を1票にしています。

 ※アメリカ合衆国の票数は、凄いです。

     拒否権が発動されない限り、一人多数決で議決を進められます。

 ※ウラマー 学識ある者。イスラム学者や宗教指導者層で聖職者の特権はなく。

     学者、教師、裁判官(カーディー)など世俗指導者。

 ※カリフ 初期イスラムの最高指導者 継承者の称号

  

 

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第64話 1954年 『平和はいいねぇ〜』

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