月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

 

 

第66話 1956年 『中東はね・・・・』

 イギリス領キプロスは、住民投票で英連邦からの離脱が多数派を占めた。

 イギリスは、離脱されるより、キプロスで実験的に混血児優遇政策を導入。

 しかし、人種問題だけでなく、宗教的な側面が強いことからトルコ人とギリシャ人の間で混乱と反発が起きる。

 イギリスは、日本ほど混血児優遇政策に執着がないせいか撤回、

 妥協のため自治を承認する。

  

 

 エジプト スエズ運河

 イギリス軍がスエズから撤退し、エジプトがスエズを接収する。

 スエズ運河は、出雲と日本を繋ぐ大動脈の一つであり、

 出雲も大きな影響を受ける。

 この時、出雲の利害関係は、イギリスと一致していた。

 もう一つの焦点、イスラエルとアラブの対決は、中東への武力介入より、

 出雲投資で経済的自立を足すのが合理的な手法とされる。

 日本政府は、可能な限り予算を投じ、出雲、秋津の国家基盤を整備。

 しかし、あまりやりすぎると、

 予算依存型体質になるので適当に線引きしたりもする。

 イザとなれば見捨てるから、好きにやってくれ、というところ。

 おかげで、出雲の対外的な交流は、本国の反発を受けない限り自由だった。

   

 日本の貨物船がスエズ運河を北上する

 「運河を作ったのはイギリス人だからイギリスの権利があるよ」

 「エジプト人の力で運河建設が可能だったかどうか」

 日本人は、有色人種系の味方をするだけあって、有色人種をわかっていた。

 「だがピラミッドを作った」

 「だからエジプト人は、運河でなくピラミッド建設を選択したのだろう」

 「しかし、イギリスは、うまみは吸い尽くしたんじゃないか」

 「インドが独立して、残っている利権は、ペルシャ湾ぐらいだ」

 「そうだな・・・」

 ソ連が同盟戦略で失望しているのと同様。

 日本も有色人種系との連携に失望していた。

 これは、力関係というより。

 その前提の信頼関係の問題で、次の段階にいけないレベルといえた。

 国民の印象値など、当てにならない。

 師団長が “隣に並ぶ師団は、どこの国の師団が良いか” と。質問された時。

 答える国軍が、もっとも、信頼できる国・国民といえた。

 ソ連は、共産圏の中に見出せず。

 日本も、有色人種系の国から見出せない。

 もっとも、アメリカの師団長でさえ

 “自国以外で、隣に並ぶ師団の国軍は?”

 と聞かれれば、ドイツ、イギリス、日本と応えてしまう。

 どんなに頭にきても戦意・士気の高さと頑強に戦線を維持する点で評価できた。

 ソ連は、戦力はともかく、

 政治的な理由で勝手に後退されそうで怖すぎた。

  

  

 アスワンハイダムの資金援助撤回

 スエズ国有化を宣言

 エジプト・スエズの資産の凍結。

 これら一連の対応は、帝国主義を維持できないイギリスの足掻きといえた。

 イギリス、フランス、アメリカの3国がスエズ運河国有化反対宣言、

 国連

 「「「「・・・・・・」」」」

 「日本は?」

 「き、棄権ということで・・・」

 日本は、戦争で痛い目にあって、さらに人質が取られ、意気地がなく、

 南アフリカ公国とインドは、エジプトのスエズ運河の国有化賛成を表明、

 怖いもの知らずでアメリカ・イギリス・フランスの不当さを追求し、

 東南アジア諸国は日本を突き上げる。

 日本は、仕方なく、幾つかの調停案を出す。

  

 イギリスとフランス軍は、スエズ運河に進撃する途上で停止する。

 日本の調停案の一つがエジプト、イギリス、フランスで選択され調印が結ばれる。

 日本の調停案がアメリカの調停案より優れていたわけではない。

 そして、調停案が素晴らしかったわけではない。

 大岡裁きというのがあって、日本も損をしていた。

 三方一両得ならば良いのだが三方一両損。

 日本も損なのだがアスワンハイダム建設で中東で地歩を作ってしまう。

 もっとも、その後、スーダン側のナイル河川へも観光用の河川客船を定期便を通すようになると。

 白ナイル・青ナイルとも意外に盛況で黒字観光経営の可能性も出てきた。

   

  

 ハンガリー事件

 ソ連軍は戦車1000両をブダペストに突入させ、民主化の芽を潰してしまう。

 アメリカなど西側自由主義諸国は、ハンガリーを見捨てる。

 しかし、南アフリカ公国、インド、パキスタンの反発は、痛烈だった。

 その後、ソ連国内で起こるテロは、この3カ国が支援で起きていると予測された。

  

  

 アメリカ合衆国

 無名戦士の墓で有名なアーリントン国立墓地

 バージニア州だが、ワシントンD・Cにも接している。

 2人の白人が歩いていた。

 「・・・まるで狂犬だ」

 「あいつら我が国の・・・ヤルタのリバディア宮殿を爆破しやがった」

 「・・・・」

 「あの連中は、文化価値を尊ぶだけの文明人でさえないのだ」

 「・・・・」

 「・・・・アメリカは、テロを容認するような気はないでしょうな」

 「いえ、遺憾の意を表明していますよ」

 「さらに犯罪を追及すべきでは?」

 「しかし、ハンガリー事件は、国家犯罪の確証はありますが」

 「リバディア宮殿は国家が行っているという証拠がありませんな」

 「我がソビエト連邦は、イスラム共産主義者とその支援国に対し、行動を取る用意がありますぞ」

 「イスラムの過激派に対しての行動であるならば、介入はしませんがね」

 「しかし、国境を越えて武力行使は、いけませんな」

 「・・・・」

 「我がアメリカは、ハンガリー事件で弱腰であると国民から不興を買っている」

 「これ以上、黙って見ていられませんね」

 「ハンガリー事件は、ハンガリー政府と一般ハンガリー人の大多数から正式な要請を受けてのものだ」

 「・・・・・」

 「我がソビエト連邦が独断で行ったものではない」

 「わかっていますよ」

 「しかし、そちらも理解していただきたい」

 「アメリカは、正義を愛し、自由民主主義の盟主であると」

 「・・・・・・」

 「同盟諸国への攻撃。自由主義陣営への攻撃は、我がアメリカへの攻撃とみなされます」

 「「・・・・」」

   

  

 朱雀を出向した日本の10000トン級砕氷艦“氷河”が南極に到達。

 昭和基地が建設される。

 

 呉軍港。

 6000トン級新型巡洋艦 “やまぶき” が就航する。

 太平洋戦争中の艦名は、ミソギで、一世代を病院船、消防船など、雑役船に使われていた。

 仕方なく。植物相から名称が取られ、

 士気は、いまひとつ・・・・いまふたつ・・・

 それでも、限定された場所でなく、

 広範囲に分布した植物相なので、それなりに愛着が湧いたりもする。

  

 波止場

 「・・・・6000トン級巡洋艦が松型の名称かよ」

 「戦時中の艦艇は、一世代、雑役船でミソギだと」

 「士気、上がらねぇ〜」

 「慣れの問題だろう。居住性は良くなるらしい」

 「そりゃ 民間の所得が上がって、官給が追いつかないからだろう」

 「俺も貨物船に誘われているし」

 「いくらだよ」

 「・・・・・・・」

 一人が耳打ちすると。聞いている方の目が大きくなる。

 「・・・うそ・・」

 「いや〜 栄光の日本海軍、救国の連合艦隊も財欲には翻弄されるね」

 「んん・・・栄光の日本海軍という潰しが利く間に俺も考えようかな」

 「そうそう、人は、個々に幸せを追求する権利がある」

 「自由主義万歳。民主主義万歳。資本主義万歳」

 「・・・世も末だな」

 「高度成長期は民間。不況時は官位。実に自然だろう」

 「・・・目端が利きすぎる国民が増えると自己犠牲も流されるのね」

  

  

 日本海軍は、戦前戦中の艦艇を改装して使っていた。

 しかし、この頃になると新規建造が必要になってくる。

 予算不足の中、それ相応の艦艇が建造される。

 ここで問題になったのが志願制。

 国防軍は、所得格差で民間の賃金上昇に追いつけない、

 さらに職場のプラットフォームの質も問われる。

 全長150m以上がピッチングの関係で決まってしまう。

 横揺れもフィン・スタビライザーで抑え、相応の幅が決まっていく。

 訓練期間中はともかく。

 就任する艦艇が揺れると、志願兵の集まりに影響する。

 むかしのようなイジメがあれば、一発で民間に逃げられるため、

 士官も、下士官も、古参兵に目を光らせる。

 優秀な人材を集めようと思えば、受け皿になる分母は、大きい方がいい。

 そして、軍艦の揺れが少ない方が戦力として安定する。

 というわけで最小限の艦体の大きさが、あっさりと決まってしまう、

 海の荒い日本近海で魚雷艇や警備艇は、時化で戦力外になりやすく、

 戦力を計算しやすい中型艦以上が好まれた。

 武装は、大戦時の経験則が優先され、

 予算不足から対艦戦力が削減され、対潜と対空戦力の比率が増えていく、

 大型戦艦は “時代遅れ” と断定したいものの、

 戦訓と戦果の大きさと愛着の強さで “のような気がする” と考えられていた。

 時代は、ミサイル化へ進んでいるとはいえ、予算難で厳しく、

 ドイツの開発したロケットや誘導兵器を改良しつつ、

 新規格を導入したり開発を進めていくと性能が不安定なため、

 堅実な軍艦になってしまう。

 

やまぶき型 新型巡洋艦

排水量(t)

全長×全幅(m)

吃水(m)

ディーゼル機関 電気推進(hp)

最大速度

60口径155mm砲

65口径47mm機関砲

61cm誘導魚雷

爆雷投射機

乗員

6000

160×15

10

100000

32

単装3基

8

8本

4

600

 この時期、比較しやすいのは、アメリカ海軍の4700t級ファラガット型ミサイルフリゲートだった。

 ほか、3277t級チャールズ F.アダムス型ミサイルフリゲート、

 強力無比に見える14400t級ボルチモア型重巡洋艦。

 ボルチモア型が大戦型の砲口兵器を中心とした兵装で、

 ファラガット型はミサイル兵器を目指した戦後の艦艇といえる。

 比較的近いのが、60年建造の8500トン級レイヒ型巡洋艦だった。

 やはり、砲口兵器が、少なく、ミサイル化が進んでいく。

 日本は、ミサイル開発で遅れ、60口径155mm砲を主兵装にしていた。

 数人の男たちが新型巡洋艦を見上げる。

 日本の遅れたレーダー技術を埋めようと固定式のフェイズドアレイレーダー。

 これでも、アメリカのレーダーに比べて、解像度で見劣りするらしい。

 「・・・ガスタービンは、まだ実用化できなかったか」

 「被弾に弱そうなので、もうしばらく民間で実績を積んでからと」

 「しかし、随分、すっきりとしたな」

 「対艦ミサイル、対空ミサイルが実用化されてから追加装備だそうです」

 「15.5cm砲の射程36kmは良いとしても少し寂しいな」

 「電子装備にトン数を食われたそうです」

 「ですが、3年式より射程、命数、発射速度は、向上してますよ」

 「命中率も命数も連装と変わらないとか?」

 「42年製の大砲より良くないとね・・・それにしても寂しい」

 「それと、新型の61cm誘導魚雷は、期待できるという話しです」

 「ほう」

 「磁気と音響に反応します」

 「反応がなくなれば、自分で探信を打ちながら潜水艦を探し回るそうですから」

 「有効射程は、36ノットで40000m」

 「味方に当たらなければいいがな」

 「探査深度も、範囲も、コースも、こちらで設定できます」

 「1kmくらいなら有線を使えば自由自在です」

 「おりこうさんだな」

 「それだけの電子装備が積み込まれたということでしょうか」

 「でか過ぎるのが弱点ですね。魚雷も8本だけですし」

 「むかしは、魚雷を戦艦にむけて使ったものだ」

 「炸薬は300kgですが破壊力が向上しているので戦艦にも使えます」

 「対潜ヘリが完成すれば、そっちに切り替えられそうです」

 「アメリカが対潜システムを売ってくれなかったせいか」

 「朝鮮戦争で対潜システムは関係ありませんからね」

 「ノーチラス号を撃沈できるかどうかだな」

 「ノーチラス号は深度200mくらい潜れるそうです」

 「はぁ〜 海中の温度差を考えると気が滅入るな」

 「可変深度ソナーや曳航式ソナーを検討中だそうです」

 「いっそのこと。飛行船を使うといいぞ。少なくとも魚雷で沈められる心配はない」

 「ははは・・・・」

 「島礁間を敷設型ソナーで繋ぐというのもあるようです」

 「航空部隊は、そちらに期待しているようです」

 「ふっ また、意見が荒れて離合集散しそうだな」

 「基地側と予算の取り合いだと。ありがちですね」

   

  

 「・・・艦長。ティルピッツからです “ヤマブキ、恙無きや”」

 「・・・変な。祝電ですね」

 「樹木がツツガムシの害から免れているとき。恙無きやというんだ」

 「なるほど・・・勉強になります」

 「戦闘には、あまり関係ないが、たしなみで知っておくのも良いだろう」

 「返答は、どうしますか?」

 「・・・抜山蓋世(ばつざんがいせい)」

 「ど、どういう意味ですか?」

 「山を抜き世を蓋(おお)う。まあ、意気盛んということだな」

 「なるほど・・・・“やまぶき” と掛けているわけですね」

 「そんなところだ」

 「・・・まさか、連合艦隊は、言葉遊びにかまけて、苦戦していたんじゃないでしょうね」

 「・・・あ、あるな」

 『『『『・・・・・おい・・・・』』』』

 ということで、次世代巡洋艦の艦名は樹木から取られることに・・・・・・

  

  

 

 間宮半島

 日本は、ウスリー河口を南北で塞ぐ北間宮半島と南間宮半島を領有していた。

 この地に巨大な建造物が建設されている。

 極寒、凍土、風も強い。

 上空から見ると空力上の不利益があっても “』” 字型の建物だった。

 世界最大のキリスト像のホテルが最新の軽量素材でウスリー川近くに建設されている。

 費用の7割を国が負担。

 国防大臣が “一個師団相当の要塞が消えた” とぼやいた。

 恒久文化財でもある。

   

 指先を共産主義のメッカであるクレムリンに向けて真っ直ぐに延ばし、

 衣に似せた袈裟が地上にまで降りて腕全体を支えていた。

 この建造物は、キリスト像に似せた巨大ホテルであり、

 共産主義者に向けた、かなり挑発的な代物だった。

 ソビエト国境警備兵が “悪夢にうなされる” 原因がコレだった。

 キリスト教圏でない日本が、こういった物を建設するのは、嫌がらせであり、

 いくつかの要因があった。

 一つが、日本が欧米諸国キリスト教圏側で、日本が反共であると印象付ける為。

 二つが、間宮半島の観光資源。

 カトリックの法王が、ここに来て感動したのか。

 極寒地で国境の向こう側、クレムリンを睨みつけるキリスト像に感化されたのか。

 共産主義に対して訓戒説教をして、この地を聖地の一つにしてしまう。

 おかげで、カトリック信者の巡礼地が一つ増えることになり、

 日本の観光収入も増えていく、

 56年 メルボルンオリンピック。

 60年 ローマオリンピックが決定。

 64年 東京オリンピックの内定も決まっていく。

   

  

 小雪がちらつく中。

 鉄条網を挟んで毛皮帽子とコートを着た数人の男たちが睨み合っていた。

 即席でテーブルと椅子が用意され、

 双方の武装している兵士たちが焚き火で暖を作る。

 「・・・・寒いですな」

 「ええ」

 「・・・どんな、感じですかな?」

 「戦車を、もっと並べられませんか」

 「それと見張りの交替は、数を増やし、もっと、仰々しい感じで」

 「んん・・・まあ、何とかなるでしょう」

 「それと、ソ連側のコテージですが、もう少し、住み良くしてもらわないと」

 「そちら側からの方がキリスト像が良く見えるんですよ」

 「観光客は、増えそうですか?」

 「ええ、コテージは増やしてください」

 「まぁ 大丈夫でしょう」

 「ロシア料理は、こっちで作って持って行っても良いのですが」

 「そちら側のサービスが、もう少し、向上していただけないと」

 「ええ、わかっています」

 「あと、無理に笑わない方がいいですな。ソビエト軍のイメージがありますから」

 「んん・・・それも何とかなりそうですな」

 「そうですな。あと、予算次第ですがサーカスとバレエの劇場も建設した方が良いでしょう」

 「コサックダンスは、定番です」

 「採算は、取れそうですかな」

 「採算割れした時は、補填しますよ。その代わり・・・」

 「わかっていますよ・・・」

 互いに含み笑い。

 紳士協定がどこまで守られるか、あまり期待できない。

 自由圏・共産圏が冷戦状態で対決しても戦争中ではない。

 国境で、それなりに交流が、あったりする。

 欧州側が第一戦線だとすると、

 極東側は、第二戦線か、第三戦線で比較的、安穏としていた。

 双方とも、スパイが行ったり来たり、受け渡したりする。

 しかし、別の見方もある。

 地域経済の活性化。

 中央が地方経済を支えられず。

 地域が食べることが出来なくなる状況は困る。

 フルシチョフが間宮のキリスト像を名指しで非難し、日本側も憮然として見せる。

 自由権と共産圏で互いに対峙してみせるが・・・・

 戦車は食べられない。

 明日、食べるため、

 豊かな生活のためには金が要る。

  

  

      

 

F4戦闘機

F104戦闘機

F5戦闘機

MIG19戦闘機

雷燕1型

愛称

ファントム

スターファイター

フリーダム

 

 

全長×全幅(m)

19.20×11.77

16.70×6.69

14.69×8.13

12.54×9.00

12.00×10.00

全高(m)

5.02

4.11

4.06

3.89

3.40

翼面積(u)

49.20

18.22

14.28

25.00

24

機体重量(kg)

14418/28030

6760/14060

4410/11214

5447/7560

4500/6500

速度(km/h)

M2

M2.2

M1.6

1452

M1.5

推力(kg)

7170×2

7170

2268×2

3250×2

3600

航続距離(km)

3184km (増槽使用)

2920 (増槽使用)

2863 (増槽使用)

2200(増槽使用)

2400 (増槽使用)

 

20mmバルカン×1

20mmバルカン×1

20mm×2

30mm機関砲×3

リボルバーカノン25mm×1

 

 

 

 

ロケット弾×4

 

 

最大7250kg

最大3400kg

最大3400kg

最大250kg

増槽 or ミサイル×2

 

 

 

 

 

 

 

58年

54年

64年

55年

56年

 ※マッハ1=1225km/h

 日本が冶金技術と構造を進歩させ、雷燕を開発した頃。

 米ソは、さらに大型のジェットエンジンを開発。双発ジェット戦闘機になっていたりする。

 そして、軽量な日本戦闘機は、取り残され気味で搭載量も劣っていた。

 増槽か。空対空ミサイルか。という選択は、制空能力を酷く不安にさせる。

 そして、ようやく、マッハ1を突破。

 機動性は高く。純粋な格闘戦は、最強に分類される。

 小型レーダーも装備され、制空能力も、それなりといえる。

 この辺が後に開発される軽戦闘機F5フリーダムと違う点といえる。

 日本の国防戦略は、純粋に国防だった。

 予算上の都合で対外的な攻撃力を核ミサイルに頼り、

 実質的な通常戦力の展開を補うため、同盟戦略を活用する。

 侵攻能力を保持するだけの経済力が日本になかったことに起因していた。

 

 

 雷燕1型は、米ソの双発戦闘機と航空戦が可能と思われており、

 少なくとも雷風5型より強かった。

 パイロットと技術者

 「・・・やっぱり、エンテ・カナードになったか」

 「それでも微妙に幅が狭くなって、翼面積が増えてデルタ翼気味になっている」

 「高速機で相応の揚力が欲しかったわけだ」

 「セイバーのライセンスエンジンの割には、あれだな」

 「オリジナルより推力が大きいじゃないか」

 「果断な耐熱技術研究の成果でね。苦労したよ」

 「小型の機体で、よくやるものだな」

 「それでもレーダー、電子装備は、それなりにある」

 「しかし、大型双発エンジンを装備した戦闘機が、今後、現れると厳しい」

 「アメリカも日本の軍事力を警戒しているから戦争でもなければ、自己開発で行くしかない」

 「もっとも、ある程度、自己開発が進むと市場の関係で提携問題になる」

 「レーダーの力不足分は、あいかわらずか」

 「基地の誘導にかかっているわけだ」

 「そうなるな」

 「空対空ミサイルは?」

 「一応、2本装備できるが増槽と、どちらか選ぶんだな」

 「しかし、まだ、性能で怪しいから気休めだ」

 「侵攻作戦で増槽なしかよ」

 「基本は、防空だそうだ」

 「防空なら増槽の代わりに空中給油機を使える、かも知れない」

 「空中給油機が開発できたら、だろう」

 「予算がなくてな」

 「やれやれ、アメリカは、核ミサイルで核攻撃を防ぐ計画があるそうじゃないか」

 「ふっ 国境線が広いと大変だな」

 「しかし、そこまでして国を守るかね」

 「敵に核を投げつける方がよくないか」

 「守りたいさ。そこまでしてもね」

 「・・・・・」

 「レーダー能力は?」

 「レーダーは出力の関係もあるから、前方と後方に一つずつ索敵範囲は小さい・・・」

 「ミサイルを2本しか目標に誘導できないということだな」

 「それも、最新のトランジスターで、ようやくだよ」

 「トランジスターも聞くも涙か?」

 「ふっ そりゃ 大変だったそうだ」

 「しかし、追い付かれそうになるたびに提携でライセンス生産かよ」

 「アメリカも、ずる過ぎ」

 「市場を考えたら日本と競争するより、競合と考えるだろうな」

 「日本のアジア・アフリカに対する市場の強さは、実証されている」

 「その代わり割安のライセンスだから悪くないそうだ」

  

  

 工場

 朝鮮戦争時。

 日本は、アメリカ・韓国軍向けにガーランド自動小銃・カービン自動小銃を生産していた。

 ドイツのG3。MP43突撃銃など、技術的な蓄積がある。

 そして、新型突撃銃を開発。

 56式突撃銃(6.5mm弾×50)

 全長990mm、銃身長600mm、重量4.3kg、装弾数30発、初速760m/s、700発/分

 突撃銃としてみると威力が強すぎた。

 しかし、厚手の防弾服を着る極地の戦闘を踏まえて、ギリギリの選択といえる。

 それでいて、命中率も良いという代物に仕上がっていく。

 「もっと小さくて、軽くて威力が欲しいな」

 「物理学を無視するな」

 「もっと・・・・」

 「無理」

 「現場の要求もあるだろう」

 「メンテナンス分を省いて、バランスを無視すれば、もっと軽く出来そうだな」

 「・・・ま、いいか、久しぶりの国産だ」

 「ずっと38式。捕獲品やライセンス生産分ばかりで命数切れまで引っ張ったからな」

 「いくら焼け野原にされたからって、せこい」

 「ふっ」

 「アメリカは、小口径になるそうだぞ」

 「中国軍と戦争すると。そうしたくなるだろうな」

 「結局、小型でも軽機関銃を携帯したいのだろう」

 「相手を殺すのでなく、負傷させて後退させればいい」

 「棺桶だけで済ませてやるより、医者と看護婦と医療品を付けさせれば、得だ」

 「負傷兵の親族が聞けば、きっと喜ぶだろうよ」

 「56式は、輸出するのか?」

 「さあ、イスラム過激派と共産ゲリラの戦いだからな」

 「どっちもどっちだが、いまのところイスラム過激派側に輸出するかどうか、だな」

 「輸出しないのか?」

 「日本は、直接輸出しないだろう」

 「南アフリカか、パキスタン、インドだろうな。ライセンス料金が転がり込むだろう」

 「しかし、上手いこと、共産ゲリラとイスラム過激派とぶつけることが出来たな」

 「良くわからないが切っ掛けの問題だろう」

 「あとは、イスラエルとキリスト教圏が邪魔しなければいい」

 「邪魔しそうだな」

 「あいつら欲が深いから見境無いよ。権益を手放さないから」

 「矛先を収めさせるために日本がアスワンハイダム建設じゃな・・・・」

 「スエズの通行が必要な日本にしたら敷金か、礼金みたいなもので仕方がないのかもな」

 「・・・しかし、相変わらず。外国製の工作機械が多いな」

 「工作機械の輸出入は、対アメリカ・ドイツで5対1だよ」

 「それでも、随分、良くなったほうだ」

 「むかしは、10対1、100対1なんて時代もあったからな」

 「欧米企業が日本の工作機械を買う。なんていうのはベンチャー企業の場繋ぎみたいなものだ」

 「いまので深酒したくなるほど気が滅入ったよ」

 「造船世界一と随分違うじゃないか」

 「造船世界一も欧米頼みということさ」

 「同じ賃金で、日本人は、欧米の数倍、働かないと利益を上げられない」

 「それでも、秋田のドイツ租界地のおかげで随分助かっている」

 「相変わらず厳しいな」

 「東南アジア諸国に工作機械を輸出して、なんとか収支を取り戻しているがね」

 「インドや南アフリカ公国は、イギリスの工作機械を使っていたからな・・・」

 「戦前のイギリス製工作機械が最新の日本の工作機械よりマシという話しも聞いているよ」

 「・・・よく戦争で、負けなかったものだ」

 「アメリカとイギリスが日本人を出雲と秋津に移民させ」

 「人質に取った理由もわかるような気がするな」

 「ふっ」

   

   

  

エーハチネット 

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 月夜裏 野々香です。

 史実との違いは、国防意識の違いでしょうか。

 核を持ってしまうと。思考の前提段階で核あり、です。

 とはいえ、核抑止力という発想は意外とありで双方ともビビリ、

 シワ寄せは、後進国の代理戦争になったのも頷けます。

 不戦の核クラブという感じで、非核グループを食い物にしたという感じです。

 国連も分担金次第

  分担金上位1〜5カ国。拒否権ありの理事国。

  分担金上位6〜10カ国。拒否権無しの理事国。

  選任の理事国5カ国。拒否権無しの理事国

 貧乏な国、ケチな国は、あまり相手にされないかもです。

 そして、日米関係は、史実と違ってドライです。

 アメリカが潤沢な軍事開発予算で構築された軍事技術体系は対価を払ってもライセンスでしょうか。

 軍事費で貧乏な日本は、軍事的な取捨選択を迫られそうです。

   

  

 ナイル河川経済

 ナイル殺人事件は、日本の河川客船を使うことになるかもです。

   

  

 新型巡洋艦は、山や川の残りや天候などから取られず。

 変形菌類(粘菌)やヒドロ虫類(ヒドロゾア)から名前が取られず。

 植物相から取られたのは、微妙な関連があったような。です

 当面は、旧式艦艇4年単位で建造。

 旧式艦艇の延命を最大まで延ばしても72年以降は、2年単位に建造になりそうです。

 15000トン級は、これからですが、

 こちらは、まだ残っている山から、名前を取ることになりそうです。

第一次 やまぶき あかしや あじさい あすなろ さざんか しもつけ ねむのき ろうばい 56年度艦
第二次 しゃくなげ さるすべり ゆきやなぎ はなみずき はなずおう うめもどき こむらさき かくれみの 60年度艦
第三次 ゆきざさ ゆずりは えにしだ くちなし くましで みずなら もくせい もくれん 64年度艦
第四次 えのきぐさ からすむぎ からすうり くまやなぎ ひめうつぎ もみじがさ つくしはぎ すずめうり 68年度艦
第五次 あかまつ つめくさ つゆくさ かまつか あかしで しらかし しらすげ とだしば 72年度艦
第六次 やぶつばき やまざくら さねかづら しろよめな つるまさき とねあざみ とぼしがら かすまぐさ 74年度艦
第七次 さわしば せんぶり やまうり あわぶき かさすげ おにすげ あおみず あおすげ 76年度艦
第八次 むくげ やつで のぶき みずき みつば よもぎ さつき すすき 78年度艦

   

   

 

  

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第65話 1955年 『赤 VS 緑』

第66話 1956年 『中東はね・・・・』

第67話 1957年 『やれやれ』