月夜裏 野々香 小説の部屋

     

After Midway

 

 

 

第70話 1960年 『アフリカの年』

 世界地図を見ながら、ぶつぶつと呟く。赤い国の当主

 「・・・同志ブルガーニン・・・アフリカの植民地が独立する」

 「独立後。共産主義が浸透できれば良いのですが」

 「アフリカ人が日本の皇帝に爵位を貰ってもかね」

 「日本の国力は、侮りがたいほど大きくなっているようですが」

 「自由貿易に近いですから。我々にも付け込めるかと」

 「・・・なぜだ。極東の辺境にある小さな島国だったはずだ」

 「なぜこれほどにまで国力が大きくなってしまう。資源など何も無い国だ」

 「有色人種諸国が白人世界に対する反発で日本になびいているだけでしょう」

 「まるで、イギリスと日本が入れ替わったようだ。忌々しい」

 「アフリカ人もイギリスの女王から爵位を貰うより」

 「日本の天皇から爵位を貰いたがるかもしれませんね」

 「イギリスは、なんと?」

 「ドミノ倒しと同じです。もう、独立させるしか無いと」

 「ドミノ倒しで赤くなるはずだったのだ」

 「それが、よりによって封建社会。貴族社会か」

 「ですがインド・パキスタン、南アフリカ公国とも貧富の差が増大しつつあります」

 「共産主義は、浸透できそうです」

 「アメリカの大統領は、何か言っているのか?」

 「宗教連合は賛同」

 「アフリカ大陸の独立は、我々と違いますが経済で進出しやすくなると考えているようです」

 「有色人種諸国。結束させてしまうのは不味くはないかね」

 「アメリカがインド、南アフリカ公国に空母を売却しています」

 「インドと南アフリカ公国も海軍で自立すれば日本と対立しやすいかと・・・」

 「だが、不和どころか、結束が固まっているように思うが?」

 「日本の市民権と混血優遇政策。日本人町・日本語学校。爵位の譲与・・・」

 「これらは、密接に絡みながら補完しあっています」

 「また、日本が自国製の兵器を正規軍に売り込み」

 「日本製の工作機械で不正規軍用でソ連製の武器弾薬をコピーさせているのは狡猾ですな」

 「証拠を突きつけ、ライセンス料を貰わないと割に合わんよ」

 「証拠を突きつけても認めないと思いますが・・・」

 「日本とインド、パキスタン、南アフリカの分断工作は?」

 「日本は、インド・パキスタン、南アフリカ公国と対等な関係を築いて反発は小さいようです」

 「日本が、これほどの国際政治力を発揮するとは・・・」

 「アメリカよりも影響力があるのではないのか」

 「有色人種同士ですから、親近感があるだけです」

 「実態は、宗教間、部族間、言語、文化の違いで苦しんでいるのが現状です」

 「そして、敵国を作ることで緩和している」

 「なぜ我々が連中の捌け口で敵国にならねばならんのだ。アメリカに銃口を向けさせろ」

 「一度、勢いがつくと、連鎖しますので・・・」

 「日本の戦力は?」

 「主力は、旧型の空母5隻、戦艦1隻、巡洋艦16隻、2000トンから2700トン級駆逐艦40隻」

 「これらは、旧ドイツ海軍の艦艇も含んでいます」

 「新型は、6000トン級巡洋艦8隻、2400トン級潜水艦8隻」

 「現在、6000トン級8隻、2400トン級潜水艦8隻を建造しています」

 「確かにむかしより少ないな」

 「空母と戦艦は、練度維持だけの稼働率のようです」

 「空軍は?」

 「主力は、雷燕400機です」

 「月影100機が旧式機から転換訓練中というところです」

 「ほか、雷風5型、雷風4型が400機」

 「国力の割には・・・・少ないか」

 「設備投資に予算が回っているようです」

 「核兵器は?」

 「・・・8個から12個かと」

 「大陸間弾道ミサイルは、まだだな」

 「はい、現在の諜報」

 「そして、日本の外交で裏付けされていますが2000kmから3000km程度かと」

 「・・・陸軍は?」

 「兵力28万。54式戦車800両。自走砲200両。装甲車両400両程度」

 「予備役40万。我が国から奪った戦力はなく、一新されています」

 「多くは、ない・・・侮れない程度というところか」

 「はい」

 「チベット戦線は?」

 「中国軍は、高山病で大規模な攻勢をかけられず」

 「イスラム・ヒンズー義勇軍が戦線を支えています」

 「チベット軍は練度が上がって作戦能力が向上しているようです」

 「中国軍は、攻めあぐねているのか?」

 「武器弾薬は、インド・パキスタンからです」

 「どちらもソ連の武器をコピーして、送り込んでいるようです」

 「インド・パキスタン側も共産ゲリラの攻撃を受けているので根競べというところです」

 「キリスト教傭兵部隊もチベットに進出する動きがあるようです」

 「くそぉ〜 あの狂犬どもが」

 「いまのところ、ソ連国内のイスラム過激派の動きは中国側より小さく」

 「中国が矢面に立っているようです」

 「印パ両国とも、中ソ両方を同時に相手にしたくないようで・・・・」

 「ふっ アメリカが対ソ・対中戦略で日本・インド・パキスタンの後塵とはね」

 「対ソ正面の欧州と、中東でもアメリカが主役ですし」

 「東アジアでも中国共産軍から海南国を支えているのはアメリカです」

 「中東でもアメリカが担当しているようです」

 「わかっている」

 「資本主義とキリスト教が腐敗すれば共産主義が拡大しやすい」

 「しかし、日本は、むしろ、我々に近いのではないか」

 「日本は、全体主義的な傾向から、段階的に自由資本主義体制に移行しています」

 「貧富の差は広がりつつあるようですが欧米諸国、中南米に比べ賃金格差は小さいです」

 「共産主義が浸透しやすい社会環境というのがある」

 「固定された貧富と階級格差。紛争。腐敗。怠惰。憎しみ」

 「これを煽らなければ体制を崩壊させての共産化は困難だ」

 「日本への浸透は弱いようです」

 「日米を対立させられないか」

 「現状でも対立状態ともいえますが人質を取っているので戦争には至らないかと」

 「あと、有色人種諸国との貿易」

 「韓国と海南国の利権を考慮して、一定の関係が取られているといえます」

 「印パの宗教対立は?」

 「いまのところ、宗教対立よりも反共を利用し、和解の道を選択しているようで」

 「宗教間対立を外敵を作ることで、まとめようとしやがって、汚い連中だ」

 「こんな卑劣なやつらが宗教だと、偽善者が!」

 「中国を支援してチベットを共産化し」

 「その後、インド・パキスタンへ浸透すべきだと・・・・・・」

 「んん・・・なんとしてもアフリカ大陸の共産化を進め」

 「印パ宗教連合を仲違いさせて、無力化させねば・・・・・・」

 「工作は、行われています」

 「パキスタンへの武力侵攻は?」

 「図上演習をしています」

 「宗教勢力が結束し、カザフスタンのイスラム過激派に武器弾薬と義勇軍を送ってくるかと・・・」

 「カザフスタンでイスラム教徒が武装蜂起したら目も当てられないぞ」

 「ロシア正教に飛び火したら、それこそソ連が崩壊する」

 「ええ、ロシア正教もイスラム教より信仰が劣るのかと焦燥感があるようです」

 「日本が印パを宗教・反宗教戦争に誘導したためでしょう」

 「上手く動いている割に日本の海軍戦力は少ない。意外だが・・・・」

 「日本は、6000トン級やまぶき型巡洋艦を8隻ずつ」

 「インド、南アフリカ公国、インドネシアに輸出しています」

 「ですので建造能力は高いはずです」

 「南アフリカ、インド、インドネシアも資源を自分の物にして、随分と国力をつけている」

 「はい、日本が工作機械を輸出して、軒並み工業化させている節があります」

 「アメリカ系黒人のおかげだろうか」

 「彼らは、白人を憎んでいる者が多いので将来的に不安です」

 「だが、憎む相手はアメリカ合衆国だろう。ロシア人ではない」

 「最初は、アメリカ人ですがロシア人も白人ですから、ついでに。という場合もあります」

 「・・・日本が、大陸間弾頭ミサイルを開発すれば、もっと積極的な外交をしてくるだろう」

 「日本は、国内と海洋での核実験で内閣の支持率を下げてしまうので」

 「インドか、南アフリカで実験する動きがあるようです」

 「それは困る。印パ連合に核技術が流れるのは困る」

 「アメリカが出来るだけ粘って、ネバダの地下核実験場を日本に貸す動きがあるようです」

 「アメリカも、インド、南アフリカに核を持たせるのは避けたいらしいな」

 「日本の核武装と妥協するので?」

 「日本が核実験で核を小型化させれば大陸間弾道ミサイルです」

 「朝鮮戦争のドサクサに開発したのだ・・・」

 「ソビエトは、日本と戦争しても得られるものはなにもない」

 「占領できる場所はないし、逆に北東シベリアから西が占領されるだろう」

 「アメリカと共同で日本の核ミサイルを牽制しては?」

 「アメリカは韓国と遼東半島の利権を守るため、日本の核も利用している」

 「試してみる価値はあるな」

 「では、そのように・・・・」

 「西側をバラバラにして対立させる」

 「日本も、インドも、パキスタンも、南アフリカも仲違いさせて衝突させるんだ」

 「心得ています」

 「あとは、非核グループに核を抑制させて、その間に核兵器を・・・・・」

 「核兵器で圧倒できれば世界赤化もしやすい」

 「はい。増産中です」

 「あとは、アフリカだな」

 「アフリカ人が求めているのは平等ではないようですが」

 「何を求めているのだ」

 「・・・祖国・・・・誇りを持てる祖国」

 「それは、どうかな」

 「わたしの最初の妻は、21年に飢餓で餓死したよ」

 「人間は口先だけだ」

 「誇りと飢え。どちらを選ぶだろうか」

 「・・・・・・」

 

  

 アフリカ大陸

 “黒人に武器を渡して、山賊化したらどうなる”

 日本が恐れていたことは、起こったりもする。

 村落ごとの小軍閥という感じだろうか。

 無政府状態なのか、どうか?

 刀狩ならぬ、銃砲狩りをすべきだろうか。

 行政を整備するといっても言葉が通じなければ手の付けようがない。

 はたまた、行政組織自体を認識しているのかも怪しい。

 南アフリカ公国の黒人政府も無茶なことを・・・いや、でたらめ・・・・

 危なっかしくて、学校を作るのも困難。

 無事な伝道所と交渉して学校を併設。または、増設する。

 上が総論で決めても現場は各論が通る、

 「嘘だと思うなら降りてきてやってみろ!」

 という感じだろうか。

 日本は、宗教的な押し付けを意図していないため、伝道所と連帯は難しくない。

 伝道所の方も日本と連帯してやっていけるのなら安全性が高まると。好意的。

 結局、遺恨があっても、

 南アフリカ公国(治安)、日本の派遣員(教育・社会整備)、

 キリスト教伝道所(宗教)の連携でやっていくことになる。

 爵位が、どういうものかも知らない人間は多い、

 識字率が低いは洒落にならず、どうにも絶望感が漂う。

 結局、やって、見せて信頼を得るしかない。

 実際問題としてナミビアどころか、

 南アフリカ公国ですら地方に行けば似たようなもので近代化は都市部に集中していた。

 まして、独立したばかりの場所は、更に酷い、

 日本人が日本語教育をすれば、更に混乱するだろうか。

 日本街と都市部を中心に日本語教育が広がりつつある。

  

 しかし、どちらかというとアメリカ資本のほうが強い、

 南アフリカ公国に資源売却した資金があると思うと、

 アメリカ資本の大型店が進出。

 日本も負けじと中型店が進出する。

 総合力で強いアメリカは、十分な資本力で積極的な投機がしやすく、

 企画経済(ハイリスク・ハイリターン)を推し進める。

 総合力で劣る日本は、貧乏性で臆病になりやすく、

 担保経済(ローリスク・ローリターン)で対抗するよりなかった。

 誰が悪いわけでなく、心理的な作用といえる。

 風邪薬一つとっても、やはり、品種と数でアメリカ店に行く。

 日本製で劣っているモノは、安く売るか。

 アメリカから仕入れるしかなかった。

 当然、小売段階の価格差で負け、不利な場所や田舎に追いやられる。

 状況は、インドでも、アフリカでも同じ。

 日本も、いくつかの分野でアメリカに追いつき。

 いくつかの分野で追いつこうとしている。

 しかし、総合力で負けて、まったく追いついていない分野も多い。

 かといってソースが限られているのに公平に振り分けると惨敗間違いなし、

 南アフリカ公国が気を利かせてなのか、

 白人が嫌いなのか、白人関税をかけようとするが止める、

 日本にシワ寄せが来ると、総合的にマイナスになってしまうのだ。

 この年、アフリカ大陸で独立ラッシュだった。

 植民地が南アフリカ公国連合に組み込まれると思ったのか。

 欧州の宗主国は、少し前向きに植民地独立政府を模索していく。

  

  

 仏領カメルーン独立。

 アルジェリア現地軍バリケード反乱。

 アルジェリアのバリケード反乱を鎮圧。

 ケニア・アフリカ人民族同盟が結成。

 西南アフリカ人民機構(SWAPO)

 トーゴ独立(フランス)

 コンゴで初の総選挙(ベルギー)

 アルジェリア停戦(フランス)

 マリ連邦離脱独立(フランス共同体)

 コンゴでルムンバ政権が誕生(ベルギー)

 ケニア・アフリカ人民主同盟

 マダガスカル離脱独立(フランス共同体)

 ソマリランド独立(イギリス)

 コンゴ(ザイール)動乱

 独立ガーナが、イギリス連邦内の共和国に移行

 ダホメ共和国(ベニン)独立

 ニジェール共和国独立

 オートヴォルタ(ブルキナファソ)共和国独立。

 コートジヴォワール共和国独立

 チャド共和国独立

 中央アフリカ共和国独立

 コンゴ共和国独立(フランス領)

 ガボン共和国独立

 セネガル共和国離脱独立(マリ連邦)

 コンゴ内戦。国連の調停で停戦。

 マリ共和国離脱独立(マリ連邦)

 ナイジェリア独立。

 モーリタニア・イスラム共和国独立

 南アフリカ公国連合の影響があったのか。

 以前から燻っていたのか。

 混乱を内包したまま、独立していく。

 

 

 

 

 チベット内戦

 標高4000mでの戦闘。

 人類は、どこまで罰当たりなのだろうか。

 中国軍が数に任せて攻めてくる。

 しかし、軒並み高山病でへたれ気味。

 頭痛、呼吸・脈拍数の増加、食欲減退、不眠、倦怠感、下痢、嘔吐。

 発熱、呼吸困難、肺炎、幻覚、昏睡状態、肺水腫。

 山岳出身の印パ義勇軍も地元のチベット軍も戦場となれば、やはり、苦しくなる。

 この戦場は、自由と共産の思想の戦いではなく、米ソも脇役でしかなく、

 宗教軍と反宗教軍の主役は、イスラム・ヒンズー過激派・チベット軍と中国軍だった。

 しかし、それでは世界の警察を自負するアメリカの立場がない、

 で、キリスト教系傭兵も宗教国家連合所属で参戦していた。

 

 ひんやりとした雲が大地を掠めていく、

 チベットに重要な地下資源でもあるのだろうか。

 武器貸与法が適応され、いろんな国の武器弾薬が送り込まれる。

 赤外線スコープがあると有利だが性能は怪しい、

 それらしい熱源に銃口を向ける、

 荒れた大地が人を養分に小さな草を生やしているという、

 自分を養分に草が生えるのなら、なんとなく、死に甲斐があるような気もする。

 少なくともアーリントン墓地より綺麗で見晴らしがいい。

 なにより、神々しい。

 縁起が悪くても平気な仲間は自分の墓を作り、気に入った場所に置いている。

 神は、迷惑かもしれないが・・・

 ちょっとした産業になるかもしれない、

 “あなたも墓をチベットに・・・・”

 ともあれ、チベット共産化を防いでからの話し、

 見晴らしが良いせいか、突撃すると息切れするためか、狙撃戦になってしまう。

 せっかく作ったM16突撃銃も市街戦やジャングル戦ならともかく、

 長距離射撃で劣るせいで宝の持ち腐れ、

 むかし懐かしの38式(6.5mm×50)、モーゼルKar98k(7.92mm×57)が引っ張り出され、

 さらにブローニングM2重機関銃(12.7mm×99)による長距離狙撃が行われた。

 狙うのは脱走兵を撃ち殺す後方の督戦隊の指揮官か、将校。

 こいつをやれば統制が利かなくなり、敵は後退していく、

 雲が、かすれ、切れていく、

 迫撃砲と小口径砲が下手な不調和音を奏でて胃が縮む。

 敵の陣地も辺りも爆発で土と砂が跳ね散って大地に震動が伝わる。

 肺に硝煙の匂いが入り込む。

 一瞬だけ、静寂が訪れる。

 そして、谷越えの峠同士、雲間に捉えた人影に距離、方向を合わせ、

 ・・・・・狙う・・・

 次の瞬間、味方陣地だけでなく、敵の陣地からも銃声が轟く、

 どちらの陣営も似たようなことを考える、

 敵陣地の武器は、DShK38重機関銃(12.7mm×108)、

 SG43重機関銃(7.62mm×54R)、RP46軽機関銃(7.62mm×54R)、

 モシン・ナガンM1891/30(7.62mm×54R)

 連射ではなく、数百メートルを隔てた単発撃ちの壮絶な狙撃戦は高地中に響いた。

 そして、狙っていた標的が倒れ、

 敵味方、双方で死傷者が続出する、

 迫撃砲の砲撃も銃撃も続いている。

 しかし、味方陣地同様、敵も混乱させたようだ。

 雲間がもう一度、峠間を覆うと狙撃兵は、小休止、

 気付けば同じ稜線で何人もの狙撃兵が血を流し倒れていた。

 「やったか?」

 「ああ、たぶんな・・・敵は混乱している」

 「味方もな・・・」

 「しかし、宗教・反宗教戦争を起こした張本人の日本軍が参戦してないじゃないか」

 「義勇兵で何人かいるだけだ」

 「ふっ 自分たちが、やったと思っていないのさ」

 「印パ連合で反ソ・反中陣営を構築させて切っ掛けを作っただけ」

 「あとは、印パが勝手にやっている」

 「それに日本人は、工場と農業で働く方が性に合っているらしい」

 「日本人も、しでかしたことの大きさがわからないとは、いい気なもんだ」

 「ふっ 我々がイスラム過激派と肩を並べて戦場とはな」

 「パレスチナでは殺し合っているのに」

 「場所が違えば、敵味方も変わるのだろう」

 「少なくとも、ここでは頼りにされるだろうよ」

 小高い丘で砲撃している車両を見上げる。

 M8装甲車「グレイハウンド」

 全長5.49m。車体長5.49m。全幅2.69m。重量7.71t。110馬力。

 最大速度88km/h。航続距離560km。

 最大装甲19mm。乗員数3名

 武装50口径37mm砲×1、12.7mm機関銃×1、7.62mm機関銃×1。

 キリスト教(アメリカ)傭兵部隊が、C130輸送機で運び込んだM8装甲車。

 ここでは、圧倒的に思えるから不思議だった。

 日本の月影では、とても輸送できないだろう。

 「M8とは、随分と懐かしいものを引っ張り出してきたものだ」

 「一応、キリスト教系の傭兵部隊だから。あんなものだろう」

 「ソ連空軍にもアントノフ12カブ輸送機があるはずだ」

 「軽戦車を空輸してくるかもしれないな」

 「チベットで軽戦車戦?」

 「空輸が一番、楽だからな」

 「そのうち、ソ連のスペツナズ部隊も送り込まれてくるだろうな」

 「高山病でへたるだろう」

 「こっちも酸素ボンベが欲しいがね」

 「・・・まったくだ。それに過給器装備の戦車なんて滅入るだけだ」

 名目上、キリスト教の傭兵部隊となっている、

 実態は、アメリカ合衆国がバックについている。

 傭兵部隊の名称は、「白色騎士団」

 

 

 印パ紛争の地、カシミール

 宗教・反宗教戦争のおかげか。

 チベット内戦のおかげか。

 カシミールは、ヒンズー(インド)・パキスタン(イスラム)宗教国家連合の象徴。

 反共の象徴になっていた。

 しかし、司令官以下、下士官に至るまで印パ混血が占め、

 宗教性は可能な限り制限されて低いのに宗教国家連合軍という矛盾。

 どうにもおかしい。

 さらにアメリカ軍将校もいる。

 アメリカは、このカシミールが対ソ・対中戦略で重要拠点と理解したのか積極的に支援。

 中東と態度がまったく違うものの、国家戦略の前では些事なことなのだろう、

 イスラム過激派と共産ゲリラは、南アジア、中央アジア、チベット、ウィグルの全域で、

 テロの応酬をしていた。

 実質、攻勢の主役は、イスラム・チベット・ヒンズー過激派であり、

 アメリカも後方で支援する側、脇役に過ぎない。

 しかし、印パ両国内の共産ゲリラに対して全面的に協力する。

 とはいえ、別の見方もあった。

 共産ゲリラ、共産主義に対し、もっとも脅威は、北風でなく、太陽であると。

 日本がインド、パキスタン、南アフリカで進めている社会整備、経済支援が

 共産勢力の拡大を抑えていると。

 衣食住で希望が持てれば殺し合いなんて、

 革命なんて、と思ったりもする。

  

  

 死を待つ人々の家

 彼女の生い立ちと言動からすると。

 国家・国境の概念で縛られる人間は、マザー・テレサを理解しにくい。

 しかし、国境を越えて雄飛している日本人は比較的、近い感覚があった。

 異国、異民族、異文化、異教。欲望が剥き出しされた世界。

 そこで平然と生き、神の教えを実行できる彼女は、やはり、偉大なのだろう。

 野良ウシが平然と闊歩している道端で、

 下層階級の飢えた老人や子供たちが死んでいく、

 マザー・テレサが彼らを引き取って、ヒンズー教寺院へ、

 無法占拠。

 インド警察がヒンズー教徒の群集に後押しされ、

 寺院を乗っ取ったマザー・テレサを捕らえようと迫る。

 警察の後ろで、ヒンズー教徒が急き立てる、

 しかし、状況から警察も手が出しにくく、

 インド政府は、バチカンと交渉し、

 『死を待つ人々の家』を承認してしまう。

 

 インドは、ヒンディー語が4割。

 インテリ層を中心に広範囲に英語が通じる。

 民族語は、860ほど。

 日本人のインド生活は、カルチャーショックの毎日。

 とはいえ、道路整備や下水整備は、少しずつ進んでいく、

 工場を建設し、工作機械を入れて、身分に関係なく、

 まじめそうなインド人を雇う。

 情報と地の利で有利なイギリス人。

 言語と資本で有利なアメリカ人。

 それでもインド政府とインド人のえこひいきで、

 日本資本は、遅れを取りながらも市場を拡大し業績を伸ばしていく。

 少なくともインドのインフラ整備に関心のないイギリス人、アメリカ人より好まれ。

 いや、アメリカ人とイギリス人も日本人町に住んだりする。

 ドイツ人の進出も顕著。

 インドは、大戦中に独立し、中立で儲けていた。

 しかし、その膨大な資産は、階級社会の上位に留まって降りることはない。

 水は低きに流れ、金は高きへ昇る。

 カースト制の階級は、大きく4つ。

 最上位 (司祭)バラモン。

 軍事・政治 (王族、武士)クシャトリア。

 商工業 (平民)ビアイシャ。

 被支配民族 (奴隷)シュードラ

 細かくは、2000〜3000ほど・・・・・省略・・・

 最下層は、カーストの枠から外れた不可触賎民(アチュート)。

 自らは、壊された民(ダリット)と呼ぶ。

 総人口の8分の1を占めて、漢字の如く、人間扱いされない。

 何をされても文句が言えない。

 アメリカ系黒人すら同情してしまう。

 生れ落ちた瞬間に固定された階級で人生が終わる。

 インドの近代化を阻害する最大の要因。

 こいつを破壊しないとインドの大多数は、貧しいまま。

 貧しいと純朴なのだろうか。

 いや、騙し騙され、人間不信。

 人は動かず。金は動かず。物も動かず。情報も伝わらない。

 結果として経済が低迷し貧しくなっていく、

 後進国は、似たようなことを言う。

 “インド人は、インド人を信用しない”

 「世界には二つ貧しい国がある」

 「一つは物質的に貧しいインド」

 「もう一つは世界でこれだけ困っている人々がいるのに」

 「そのことに無関心でいる日本である」

 マザー・テレサの言葉に日本人のビジネスマンが答える。

 「上下の階級差別と無関心がインドを貧しくしているので」

 「これは、日本のせいではありません。インドの自己責任では?」

 「・・・・・・・」

 「それとも “無関心でいるな” は、カースト制を破壊するため」

 「インドを攻め滅ぼせということでしょうか?」

 「・・・・・・・」

 

 日本人が日本人を信用できるのかというと、そういうわけでもない。

 やはり、信用できるか人物を選ぶ。

 違うのは、信用できる人間の比率。

 日本で思い浮かべた比率から

 二つから三つほど小さい桁がインドで信頼できる人間の比率といえた。

 というわけで、インド人は、外国人のほうを信用する。

 特に日本人。

 いくつか行き違いがあっても

 マザーテレサも日本人もカースト制を無視しやすい問題児だった。

 普通、カースト制を無視ならボア(消される)されるのだが、なんとか融通が利く。

 まじめそうな人間なら身分に関係なく。

 不可触賎民(アチュート)=壊された民(ダリット)でも雇ったりもする。

 階級が違うと。一緒に食事もせず。

 一緒に働くことも。寝ることもない。

 インド社会は、それぞれの階級職に応じ職場を分けたりもする。

 おかげで適材適所もできず、職業選択の自由もなく、

 近代化の足を引っ張ってしまう、

 大国で大きな人口を抱えていても

 人と人の壁が強過ぎて柔軟性に欠け、実は脆弱。

 イギリスに占領された理由も頷けたりする。

 不可触賎民(アチュート)=壊された民(ダリット)が作ったモノは、インドで売れず国外に・・・

 そして、一部は、少しばかり加工し、日本製としてインドへ戻り、

 インド全域で売れたりする、

   

 当然、共産ゲリラも不可触賎民(アチュート)=壊された民(ダリット)を狙う。

 これがイギリス人だと、階級制度を自分の有利なように利用する。

 アメリカ人だと反発するが他所の国。

 日本人だと、有色人種諸国に足を引っ張られたくないのか、底上げ工作だった。

 不可触賎民(アチュート)=壊された民(ダリット)は、ソ連軍や中国軍が、

 このインドを占領し、カースト制を破壊してくれたら嬉しいと思うだろうか。

 日本人の努力をあざ笑うかのように

 不可触賎民(アチュート)=壊された民(ダリット)は、共産勢力へ惹かれていく、

 急激なカースト制の破壊と民主化は、共産化の方向に向かっていく恐れがあった。

  

  
 アメリカが水中発射核ミサイルポラリスを開発

   

 韓国

 高台の別荘地帯。

 大きな張り出しのテラス、

 有色人種のお金持ちがたくさんいる。

 何をしているのかというとティーパーティーをしながら高みの見物。

 銃声が聞こえ、大騒ぎの下界、

 韓国で不正選挙が発覚してデモと暴動が激化し、

 投石が始まり、

 軍が銃撃し掃討する。

 双方で血が大量に流れ、

 「・・・あらら、民主化なんか、無理だって」

 「アメリカ人が無理やり、民主化を押し付けるからだよ」

 「そうそう。民族性とかあるから不正選挙は、やる前からわかるよ」

 「洪将軍は、義理堅く軍人なんかやっていないでクーデター起こして政権をとってしまえば、いいのに」

 「あの性格だとな・・・・」

 「まじめすぎだよ。本当は日本人なんじゃないか」

 「しかし、商売上がったりだな」

 「まったく。親族どころか、友人の冠婚葬祭があるたびに仕事を休むし」

 「仕事そっちのけで、上司に媚びてばかり」

 「まあ、出世欲が強いのは、いいんだけどさ」

 「派閥を作って媚びて、他者に責任を被せて引き摺り降ろしたり、蹴落としての出世じゃな〜」

 「生産か、売上に寄与して欲しいな」

 「賄賂はうまいけどな」

 「あれは、向上心とは言わないよな。人材が育たず、磨り減らされるよ」

 「そして、仕事場が荒らされて、誰もいなくなる」

 「しかし、何で見境なく、あんなに過激になれるんだ」

 「韓国人って気持ちは深いけど狭いんだよな。日本人と逆」

 李承晩大統領は辞任し、ハワイに亡命していく、

 

 

 原子力空母エンタープライズ進水

 

 フルシチョフ首相がインド、ビルマ、インドネシア、アフガニスタンを訪問

 インドへ訪問することで印パの対立を誘ったが手応えはなしだった。

 

 キプロス独立。

 

 

 韓国 尹普善大統領

 

 

 赤レンガの住人たち

 「・・・いいよな。エンタープライズか」

 「インドや、南アフリカでさえ、エセックス型を2隻ずつだぞ」

 「ったく。インドと、南アフリカに買わせて、日本に転売させようとしたのに・・・」

 「練度の低い艦隊なら、潜水艦で簡単に撃沈できるよ」

 「その潜水艦もな〜」

 「原子力か・・・爆発させるのなら簡単だがな」

 「開発費に予算の賭け過ぎじゃないのか。まともな潜水艦を作ろうぜ」

 「開発しないと原子力発電所作れないだろう。当然、原子力潜水艦も・・・・・・」

 「インドは、ゼネラルエレクトリック社に原子力発電所を建設してもらうらしい」

 「くそぉ〜 アメリカめ。金に任せて、南アフリカとインドを抱き込もうとしやがって」

 「日本も随分と豊かになったはずなんだが戦力に反映されないな・・・」

 「ピラミッドは、底辺が大きいから、底上げしても投入する割に高くならないだろう」

 「インド方式でいきたいよ。国民のほとんどの労力を搾取にし、高度成長だぞ」

 「安定が悪すぎるよ。戦前や民主化する前ならともかく」

 「民主化が進んでからだと無理だな」

 「日本は、資源が無いから薄利多売で苦労の割りに実入りが少ないんだよ」

 「もっと、利益率のいい貿易をすればいいんだよ」

 「だから利潤を上げるなら開発費で独占だって」

 「「「「・・・・・・・・」」」」 ぶすぅ〜

 「アメリカみたく最新の機動部隊を揃えてぇ〜」

 「無理」

 「SOSUS網は?」

 「海底補給基地と連結させて範囲を広げている」

 「東シナ海、日本海、扶桑(オホーツク)海はの移動は確実にわかるな」

 「あと主要な基地の間も海底ケーブルと合わせてSOSUS網を設置している」

 「アメリカも、イギリスも、ソ連も、フランスも、原子力潜水艦に向かっているというのに・・」

 「日本人は、原子力が嫌いなんだろう」

 「アメリカとは偉い違いだ」

 「原子爆弾だけは何とか、という感じか、アメリカと国民の意識が違うな」

 「銃の保持が認められている国だから、同じ発想だな」

 「原子力発電所は平和目的だろう。反対されたくないよ」

 「戦略目標だからだろう」

 「そりゃあ、そうだ。絶対に狙うよ。真珠湾のあれもあるし」

 「原爆落として、あれは誘爆だからって?」

 「あはは、ちょっと無理があるな」

 「無理でも通す」

 「通常ミサイル撃ち込んだら原子力発電所が核爆発したって、プロパガンダ」

 

 

 南シナ海

 日本海軍所属 大型輸送艦、電纜敷設艦、巡洋艦3隻。

 日本のSOSUS網は、アメリカ、イギリスと少しばかり違っていた。

 旧式化した潜水艦や輸送艦を改造して沈め。

 潜水艦の海底補給基地を兼ねたSOSUS網を形成している。

 所定の海域に着くと送電線とSOSUS網を連結した潜水艦と元潜水艦が沈んでいく。

 「補給基地。海底に着床しました」

 「ソナー機器、異常なし。送電、通信、全て異常無しです」

 「そうか」

 「通信接続。電力が供給されます」

 「本部との回線を開け」

 「司令。補給基地及びSOSUS網の設営に成功しました。」

 「阿武隈艦長。しばらく、海の底だな」

 「はい」

 「尾けられていないかね」

 「大丈夫です」

 「そうか。SOSUS網からの情報もそちらに入る。緊急の場合は、頼むよ」

 「了解です」

 日本潜水艦は通常潜水艦でありながら、

 補給基地と連結すると水上艦艇より本国に近くなる。

 有線は便利なものでテレビを見ることも出来れば、

 供給された電力でシャワーも浴びることが出来る。

 閉鎖された空間に閉じ込められているだけで、海水から水も空気も作れた。

 新型の補給基地は、送電線を潜水艦に繋げたまま1kmほど延ばせるらしい。

 広い海では、小賢しい気もする。

 どの道、補給基地から切り離されたら、

 通常潜水艦の機動力は、短い時間で20ノットがせいぜい。

 原子力潜水艦の様にいつまでも30ノット以上で動き回れるものでもない。

 それでもSOSUS網直結で周辺海域の情報が入る。

 戦略的に適当な海域であれば、いざというときも動きやすかった。

 通常潜水艦は、担当する海域で待ち構えるのがセオリー、

 原子力潜水艦のような機動性も作戦能力もない。

 それでも限定された海域なら原子力潜水艦の猿真似ができ、

 しかも安上がりだった。

 おかげで通常潜水艦でありながら

 原子力潜水艦並みの長期任務が可能になった。

 この潜水艦も退役前に改造され、

 潜水艦補給基地として沈められる。

 「艦長、原子力潜水艦は、まだなんでしょうかね」

 「民間の原子力発電所で手間取っているようじゃな」

 「また、炭鉱の閉山と絡んでシワ寄せですかね」

 「国産の石炭の時代じゃなくなってきている」

 「石油の方が輸送しやすい。石炭は、輸入した方が安く上がる」

 「おかしな気がするが、露天掘りできるところには負けるだろうな」

  

 海底補給基地は数十ヵ所ある。

 補給基地は、潜水艦を改造したものから商船を改造したものまで。

 補給基地に連結している僚艦とも簡単に通信が出来た。

 これで、原子力潜水艦なら鬼に金棒だが世の中そんなに甘くない。

 最強の敵である予算ばかりは、どうにもならない。

 戦前の軍事大国に戻れば、どうにかなるのだが経済は息切れ必至というところ、

 さらに民意に問うても総論賛成、各論反対。

 「おらが予算だけは、わたさねぇ 駄目だぁ〜」

 に決まっている。

 

 

 日本の国防大綱は、予算枠で決められていた。

 対外的な圧力は核兵器。

 国防は、通常兵器という戦略。

 被爆国でもある日本。

 誰も望んでなかったが予算枠で戦力を揃えようとすると、そうなってしまう。

 とはいえ、それすらも怪しい状態で、

 核爆弾の小型化は核実験をしなければ進まない。

 そして、小型化に成功しなければ大陸間弾道ミサイルも無理になる。

 戦後、日本に攻めてくるような敵国は存在しなかった。

 出雲州、秋津州という足手まといを抱え、

 戦後再建に予算が注ぎ込まれていく。

 残存戦力と捕獲した兵器で国防をしていた頃は良かった。

 それも、ここに至って旧式化し、抜け落ちていく。

 予算枠で新規開発、生産、配備したものの国防に粗が多い。

  

  

 宇瑠島 上空

 月影AEW(早期警戒機型) 

 翼面積を大きくして航続力を伸ばし、

 大型索敵レーダーを装備した機体だった。

 純粋に航空機の接近を索敵する索敵型。

 強力なECM・ECCMで敵の通信を妨害しレーダーを撹乱する電子戦型。

 味方の航空基地、迎撃機と連絡を取り、戦域迎撃を目指した指揮管制型。

 機体の容積から入りきれず。

 日本空軍も試行錯誤しつつ単機能化していく、

 さらに日進月歩で更新されていく電子機器の調整で錯乱気味だった。

 月影KC(空中給油機型)から伸びた燃料ホースが月影AEWに繋がれ、

 燃料が給油されていく。

 「・・・4発機で、いろんな原型機から選択できる、アメリカ空軍が羨ましいよ」

 「こっちは双発機ですからね。それも1機種」

 「4発機が欲しいな」

 「彩風は、売れているんでしょう」

 「プロペラ機のわりに速く、生産数が増えて費用対効果でいいのだろうな」

 「南アフリカ、インド・パキスタン、東南アジア諸国、欧米でも使われている」

 「そりゃ ジェットプロップエンジンですからね」

 「民間機は、それでも良いのでしょうけど」

 「軍用機は、もうちょっと考えてもらわないと」

 「4発ジェット機は開発費が大き過ぎるからな」

 「ボーイングか、ダグラスか、ロッキードか、という感じらしいな」

 「えっ! 国産航空機産業は、投げですか?」

 「たぶん、大型ジェット機をライセンス。大型ジェットプロップ機を国産という感じだろうな」

 「現に彩風は、アメリカにも、ヨーロッパにも輸出されている」

 「大丈夫なんですか? 他国任せで。しかもアメリカ任せ」

 「さあな、良くわからんが、ライセンスとの絡みがあるらしい」

 「イザとなればジェットプロップ機にジェットエンジンを載せかえでも使える」

 「有色人種諸国は人口で優位だから、結局、白人も日本の旅客機にのるだろう」

 「はぁ〜」

 「ふっ 予算、人材、設備、市場が倍以上違えば差は縮まるどころか、広がるばかりだろう」

 「アメリカも日本大型ジェット機を押さえればライセンス制限を下げるらしい」

 「有色人種の盟主とか、アジアの太陽とか言われながら。台所事情は暗いですね」

 「そうだな」

 「しかし、B17、B24、B29爆撃機を操縦したことがあったが、いい機体だったな」

 「本土決戦で不時着したやつですね」

 「そうそう。部品を集めるとB29を8機も作れたよ」

 「おかげで、日本の航空産業も何とかなると思ったけど、戦後再建で後回し」

 「それで、ジェット化だろう」

 「まぁ〜 彩風を開発する時には役に立ったようだけど」

 「そういえば主要都市は、焼け野原だったんですよね」

 「いま思うと、信じられませんが・・・そろそろ。一杯です」

 「・・・よし。給油機。もういいぞ」

 『・・了解・・・・タンク閉鎖しました』

 2機の月影が離れていく。

 

 

 イスラム世界

 まだ、国際会議までいかないものの、

 メッカに巡礼に行くと、集まったりする。

 聖地のある強みは大きく、

 メッカのあるサウジアラビアはアラブ代表も兼ねた。

 エジプトとイラクは、由緒ある歴史を誇り、主導権を握ろうとする。

 イランは、ペルシャ人で、少しばかり毛並みが違って見える。

 インドネシアは、外様でイスラム教最大勢力。

 トルコは、西洋&日本かぶれ。

 そして、パキスタン・・・・

 

 中東でイスラムは、反イスラエル、反米、反英、反仏なのだが、

 南アジア・中央アジアでイスラムは、反ソ、反中、反共・・・

 当然、綱引きが始まる。

 パキスタンは、親日、親米で反ソ、反中の雄としてイスラム圏を結集させようとし。

 イスラエル周辺のイスラム諸国は親ソ連、親中で、

 反欧米、反イスラエルでイスラム圏を結集したがる。

  

 パキスタン側は、中央アジア諸国、アフガニスタン、イラン、東南アジア諸国、トルコ、

 エジプト・シリア・イラク側は、サウジアラビアなどアフリカ諸国。

 中東・アフリカ諸国 VS 南アジア・中央アジア。

 世の中、支離滅裂にできているのか、地域別に大国の対応が違うのだから、

 どちらも言っていることは正しいに決まっている。

 ソ連が反イスラエル支援で武器弾薬を送ればチベットの印パ義勇軍に流れ、

 アメリカがチベット支援で送った武器弾薬がシリアのアラブ・ゲリラに持っていかれ、

 複雑で高度な諜報戦の結果、無分別、無節操の極みな状況が展開される。

 ソビエトの中東課と南アジア・中央アジア課は仲が悪くなり、

 北ベトナム課も違う意味で他の課と仲が悪く、

 欧州と極東の課も巻き込まれる。

 そして、状況は、アメリカでも同じで、

 それぞれの局同士の紛争で収拾が付かなくなっていく、

 

 

 国連本部のバー。

 白人2人が、どんより。

 「なあ、イスラムは敵だよな」 ロシア人

 「そうそう、イスラムは敵だよ。あいつら舐めやがって」 アメリカ人

 「なにが俺たちが拝金主義から世界を守るだ」 ロシア人

 「なにが無神論から世界を守っているのは俺たちだ」 アメリカ人

 「「・・・・・・・・・・」」

 白人2人。ため息を付いて金を払うと、左右に分かれていく。

   

   

 

 

 秋津州

 南北を新幹線が走る。

 南米有数の工業地帯。

 散々 軍事費をケチって設備投資した結果であり。

 日米英講和条約で移民枠が決められ、

 狭い地峡にたくさんの人口を抱えさせられた結果であり、

 南米という巨大な資源と市場のためでもあり、

 ブラジル資源の7割を握るアメリカ資本の利権を守るため、

 秋津州の経済力と圧力を利用する気になったからでもある。

 

 世界有数の鉄鉱石と鉱物資源を背景に巨大製鉄所が建設され、

 秋津産業で生産される工業製品輸出も飛躍的に伸びていく、

 関税で都合がいいのか、

 政情が安定して治安が良く、利便性も良い。

 欧米諸国だけでなく、南米諸国まで秋津州に居を構える人間は多い。

 金融でも信用があるのか、

 秋津州の地場銀行は、南米のスイス銀行という闇の部分が育っていく。

 当然、日本の市民権は人気があり、欧米人すら欲しがる。

 日本も国防上、諜報上の不利を承知で政治的外向的な圧力で市民権を増やしてしまう。

 資源だけでなく、資金繰り、情報収集、ライセンス生産も絡み、

 トータルバランスで言うとプラスなのだろう。

 昭南州と州の事情が似ている。

 そして、日本の移民も、いくつかの波があった。

 戦後、秋津州に集められた日系人も講和が結ばれ、国交が正常化すると。

 土地が狭い秋津州は、食糧自給が難しく、

 農業移民で南米大陸へ向かっていく、

 日本人向きの農作物は南米でも需要があるため、

 秋津州とブラジルの人口増加と購買力に合わせ、急速に増加。

 南米大陸の日本人も増加していく、

 

 ブラジルとアルゼンチンの主導権争いは激しいものがある。

 国境付近のアルゼンチン人は朝起きたベットで

 「・・・どうやってブラジル人を騙そうか」

 と、真っ先に思い巡らせる。

 これは、お互い様で関わると、ろくなことがない。

 アメリカ大統領は巻き込まれたくないのか、

 秋津州を利用したり、ウルグアイを利用したり・・・

 アメリカ大統領の南米訪問に合わせ、

 アメリカの戦艦モンタナが秋津港に入港する

 ゴジラとも戦ったことがあるせいか、日本の子供たちに人気があった。

 入港する度に日本の子供たちが乗せてもらえたりする、

 しかし、ライバル戦艦が不在。

 砲艦外交以外に使いようがなくて、ある意味不憫といえる。

 迎賓館

 「なあ、日本は、戦艦を建造しないのか」

 「まさか」

 「どいつも、こいつも、しみったれ、やがって、張り合いがない」

 「金持ちは、ケンカしないから・・」

 「しかし、彩風ばっかり、よく売れるな」

 「南米は、土地成金が多いから売れやすいんだ」

 「土地を持たない人間が腐るほどいるというのに・・・・・」

 『良く言うぜ。お前らが、そうしているんだろうが』

 「大農主制のおかげで高額商品が売れて嬉しいね」

 「しかし、日本人ばかり人気があるな」

 「農耕民族と牧畜民族の違いじゃないか」

 『本当は、狩猟民族と言いたいんだよ』

 『この、ぼったくりが人材を磨り潰しやがって、少しは育てろ』

 「日本人の農業と緑化能力は評価するがね」

 「能無しまで抱え込んで変に苦労するからな、護送船団方式も良し悪しだぜ」

 「き、気性かな」

 「型にはめて可能性を潰したり」

 「無駄に温情を掛け過ぎて根腐れしてしまう場合もあるからな」

 「そのうち、社員と子供が腐ってくるぜ」

 「日本人も朝鮮半島で懲りたと思ったがな」

 「ブラジルみたくワザと教育を遅らせ、上流階級を守ろうとする連中は、どうかと思うがね」

 「温情を掛けるもの、ほどほどかな」

 『この〜 弱者切捨ての社会不安から犯罪が増えているじゃないか。よく言うぜ』

 「教育が、されれば、それだけ」

 「経済力がついて日本経済も潤うので相乗効果というところでしょう」

 「ハリウッドスターを見たまえ」

 「洗練され容姿だけでなく実力も兼ね備えている」

 「どこぞの国のちんちくりん役者とは、わけが違うだろう」

 『性格や倫理観も大切にしろよ。資本主義の権化が』

 「日本は、大衆との親近感を大切にしていますから」 へらへら〜

 アメリカと日本の力関係は、どうにもならない部分がある。

 票欲しさに威勢のいいことを言う政治家。

 踊らされる無知な輩もいる。

 しかし、いざ、全容がわかって矢面に立つと、妥協せざるを得なくなる。

 巨大企業と高度な技術を持つ中堅企業の関係だろうか。

 ライバル社のソビエト系小売店の方が威勢良く思える。

 アメリカが気紛れで強気に出ても、

 日本側は、同じようにぶつかるわけにいかない。

 卑屈に見えても貿易に依存しなければならない国は、低姿勢になってしまう。

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 1942年6月ミッドウェー海戦後から始まった仮想戦記。

 戦後も続いて、1960年。

 もう、歴史シミュレーションの世界です。

 

 冷戦で睨み合っていたアメリカ、西欧、日本 VS ソ連、東欧、中国

 一見、アメリカ優位という感じです、

 有色人種諸国が勢力を拡大して、国際的な突き上げ。

 アメリカは、国内の人種差別問題で憲法上のジレンマを抱え込み。

 イギリス・フランスも植民地独立で、苦心惨憺。

 代わりに歴史を動かしているのは、

 南アフリカ公国連合のアフリカ大陸黒人解放政策。

 インド・パキスタン連合 VS 中ソ連合の宗教・反宗教のテロ・ゲリラ応酬戦争。

 一貫した国家目標があって、挙国一致しやすく。

 国内問題をなおざりにしてしまう国。

 『『『おちこんだりもしたけれど、私たちは元気です』』』 

 by 南アフリカ公国、インド、パキスタン。

 みたいな・・・・

  

 アメリカ、欧州諸国、日本も脇役。

 まだ、東南アジア諸国のほうが元気かもです。

 アメリカは、少しばかり民主主義に自信喪失気味です。

 

 

 

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1960年 昭和35年 誕生酒 (楽天)

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