月夜裏 野々香 小説の部屋

      

After Midway

 

 

第72話 1962年 『キューバ危機』

 国防省へNEAC2206大型コンピューターが納入されていく、

 0と1の機械語のプログラムをパンチカードで入力するモノだった。

 一度、プログラムが作られてしまうと処理は人間より速い。

 シリコンバレー産に負けない程度の性能にしたものの

 アメリカ製よりも大きく、値段も高い。

 それでもレーダー、通信回線、モニターを伝導させ、

 管制システムや弾道計算だけでなく、

 予算管理、給与管理にまで幅広く使われる。

 

 政府が待望していた納税管理、

 単純な納税体系から

 比較的、複雑で融通が利く納税体系に移行させる事ができる。

 国民の不公平感も緩和できた。

 そして、運輸省、鉄道、気象、銀行も欲しがる。

 もっとも予算を注ぎ込んだ割には少しばかり失望させてしまう、

 機械語と人間の開きは、そう簡単には埋まらない。

 「血税投入して、これか?」

 「もう少し、何とかならないものかな」

 「はぁ」

 人間の欲深さ、利便性を追求する姿勢が近代化の促進を早めていく。

 無欲、慎ましさ、我慢強さ、慣れ、

 一見人柄が良いように思えても、

 競争、欲望、切磋琢磨がないと進歩もなく、

 国際競争力で問題になった。

 

 

 中国軍の新彊ウィグル地区侵攻で内戦はウィグルにも広がる、

 新彊ウィグルは、チベットと違って高山病による戦力減がなく、

 中国軍は、数に物を言わせてウィグル独立勢力を圧倒していく、

 ウィグル族26万人がチベットへ逃亡する。

 チベット独立戦争を宗教・反宗教の戦いであると位置付けた西側と、

 農民・人民を既得権益の象徴たる宗教から解放する戦いであると強調する東側、

 二つの思想は、世界で最も高い戦場で雌雄を決そうとしていた。

 互いに噛み合っておらず、

 相手の言い分に耳を傾けると損をするだけ、

 宗教系の免罪献金が増え、

 チベット独立戦争に流れていけば、

 共産系の革命献金も、幾つかのルートを経て、

 チベット独立戦争へと流れていく、

 チベット・イスラム・ヒンズー教の過激派と、

 共産ゲリラの戦いは激しさを増し、

 双方の陣営奥深くで、死を恐れない破壊工作が行われる、

 憎しみの連鎖は強くなり、報復合戦が激化していく、

 この頃、ようやく、進出した各国宗教義勇軍・傭兵の航空戦力と

 中ソ航空部隊がチベット上空で航空戦を展開する、

F8クルセーダー(格闘戦向き)

F4ファントム(ミサイル戦向き)

F5フリーダム(安価ジェット戦闘機)

雷燕 (費用対効果で最良?)

ミラージュIII

ライトニング

VS

MiG21バララカ (全天候型)

MiG19ファーマー4

Su9 (迎撃)

Su7

 

 チベット航空戦が激しさを増したのは、地上戦闘だけの侵攻が困難であること。

 戦線が中ソ国境に接していた事が上げられた。

 “魂の自由を求める聖戦”  と  “富の搾取と権力支配からの解放”

 互いに名目上の大義名分と挙国一致を掲揚し、

 同盟の連帯を強めつつも、

 資源が欲しいと本音も隠されている。

 他にも兵器の戦訓。軍需産業の維持拡大。敵の戦力の情報収集 etc・・・・・

 チベット上空

 単発の雷燕4機と双発のMiG19ファーマー4機は互いに敵の後ろに回り込もうと旋回し、

 急上昇したり、急降下したり、

 どちらも搭載量が少なく、機動性がいいだけの格闘戦向き軽戦闘機だった。

 そして、雷燕4機は、消極的な戦いに終始する。

 理由は、対Mig19のエンジンが短命なため、

 適当に遊ぶだけで相手が消えていく、

 そして、高高度からF4ファントム4機が逆落としで急降下、

 MiG19ファーマー3機を撃墜し、

 1機だけ残ったMiG19ファーマーは逃げ出そうとし、

 雷燕の波状攻撃で撃墜される、

 巨大な円盤状のレーダーを装備した月影が上空を旋回していた。

 レーダー管制、通信技術の差でもある。

 傭兵部隊とはいえ、

 国家的な背景と宗教的な結束で展開される、

 兵器認証オリンピックといえた。

 

 

 チベット戦線

 標高4000mの大自然に対し、

 人海戦術は通用しない。

 多くの将兵は高山病となる。

 症状は、頭痛、呼吸・脈拍数の増加、食欲減退、

 不眠、倦怠感、下痢、嘔吐。発熱、呼吸困難、

 肺炎、幻覚、昏睡状態、肺水腫。などなど・・・・

 しかし、人海戦術に任せて比較的適応能力の高い将兵を選抜する考え方もある。

 中国軍は、高山病で落伍する人間を次々と除き、

 部隊の再編成をしながらチベット戦線に投入させる。

 国境を接していると、こういった安直な戦法が使えた。

 

 標高の高い山岳戦で無理に動いたりすると、

 高山病の症状が出たりもする、

 「・・・・・・」

 「大丈夫か?」

 「・・・頭が痛い・・・・息が苦しい」

 国によって違うものの将兵は、10kg〜30kg相当で、平均15kgの物資を携行し持ち歩く、

 へばっている状態で山岳装備が加重される。

 

 贅沢なのは、キリスト教系傭兵部隊だった。

 基本的に空挺部隊で空気が薄いにもかかわらず、

 ジープや装甲車に装備品と補給部品を載せ、比較的、軽装で負担が少ない。

 スバル360が義勇軍に配備されたりもする。

 装備品や補給部品を積み込めば、部隊の機動力は向上する。

 負傷者を運ぶだけなら支障はなく。

 ジープが2200cc。54馬力で重量1050kg。

 スバル360は、450cc。25馬力で重量420kg。

 スバルは、ジープのような強さと登坂力はなかった。

 しかし、小さな部隊の荷物運びに便利だった。

 輸送機型の月影で空輸しやすかった点もあり、

 安いためか、印パ連合もチベットも購入しやすく。

 イスラム・ヒンズー・チベット軍は機械化できたと単純に喜ぶ。

 中国軍にすれば、羨望の眼差しで羨ましい限り。

 とはいえ、平地で使っている自動車を改造して持ってきても、

 基礎設計で問題ありだった。

 「酸素が少ないと吹き上がりに欠けて、平地のように走れないな」

 「四輪駆動じゃないと厳しい。牛馬車だよ、あれは」

 「それより・・・空気が薄過ぎだよ。もっと過給器を何とかしないと」

 「だけどさぁ 燃費が悪いと消費者が食い付かないからな」

 「タイヤにモーターを仕込みたくなるな」

 「モーターは同調させられないだろう、フラフラ走らせると不味い」

 「いいよ、走れば」

 「チベット専用なら、わからないし」

 「しかし、情けないね。コマーシャルにならねぇ」

 「んん・・・・・頭痛くなってきた・・・」

 某自動車会社の営業マンは、酸素ボンベのホースを銜える。

 「アメリカと欧州は、リチウム、クロム、銅、ダイヤモンドを確認して目の色が変わっているし」

 「石油も、天然ガスも有望視されている」

 「人口が少なく戦略資源が大きい」

 「その気になれば、チベット自体が豊かな生活を保障される国だよ」

 「空気が少ないほうが真空を作りやすい」

 「チタンの加工もしやすいかもしれないな」

 「日本政府は、なんと?」

 「戦争してまで戦略資源を欲しがっていないようだ」

 「毒気がないね、政府は腑抜けだな」

 「いや、それは、それで戦略の一つだろう」

 「加工貿易。同盟・外交戦略。資源を抑えようとして、逆に負担が増えることもある」

 「苦労した割には実入りが少ないと?」

 「さぁ〜 苦労を国民と兵士に負わせれば良いというのもありだがね」

 「いまの日本は、そういう風潮になっていない」

 「日本製品を買うため諸勢力が資源を命がけの争奪戦をするのなら本懐かもしれないがね」

 「日本の工業製品は、まだまだ、だよ」

 「欧米諸国もチベット独立を支援することで有色人種諸国と関係を改善しようとしている」

 「欧米諸国は、一石二鳥から三鳥、四鳥くらいの意味があるだろう」

 「なるほど、お金と人材を磨り潰しても傭兵を送りたいわけか」

 「逆に言うと日本は有色人種諸国との関係がよいから、チベット資源確保でなくてもいい」

 「資源余りなら、日本は好都合だよ」

 「加工貿易に集中した方が得ということ?」

 「そこまでは言わないけどね」

 「日米英印パでラサまで鉄道を敷けばチベット独立も確実だな」

 「・・・しかし、電力がな・・・・」

 振り返ると景気よく風を受けて回る日本製風力発電機。

 標高が高いせいか、見た目で弱く見えたりする、

 しかし、気圧は低くても風力は強く、

 こういう場所での発電能力は、バカにしたものではなかった。

 もう一つ、年間の日照時間が2400時間程度あれば、太陽光熱発電も視野に入る。

 さらに水力発電。地熱発電でも有望だった。

 水力発電。地熱発電。風力発電。太陽光熱発電で電力をまかない。

 地下資源の多くを輸出。

 資本があれば設備投資で食料を生産。

 与圧室で調理すれば恵まれた国になるだろうか。

 資源・エネルギーと人口比だけを計算するなら笑いが止まらないチベットだった。

 しかし、現実は、戦場。

 チベット民族は、本来得るべき利権を奪われつつあった。

 彼らにすれば泣くしかない状況で、

 資源を叩き売ってでも主権を回復しようとする。

 

 それらしいルートに集音マイク型の石が、ばら撒かれていたりする。

 他にも赤外線探知機やレーダーなどが設置されたり、

 標高4000mの戦場で良い事といえば、空気抵抗が小さく射程が伸びることに尽きる。

 もっとも慣れるまで弾道計算が狂ってしょうがない、

 155mm砲弾を撃ち込むと放物線を描いて山越え、

 それらしい場所に命中し、中国軍を震え上がらせる事ができる。

 重機関銃でも可能で、

 人がいると確認出来るならバラバラと撃ち、

 放物線を描いて丘を越えた機銃弾がルート上の中国軍に降り注ぐ、

 無駄弾の様に見えて、血が見えず精神衛生上の理由から好まれたりする、

 弾を惜しむか、高山病を克服した兵士を惜しむかで国力と戦略の差が出てくる。

 

 

 海底油田掘削用プラットホームの設計図

 実験を繰り返し、

 蓄積された技術の粋を盛り込みながら何度も描き直され、

 設計図が作られていく、

 イギリスが北海油田を開発し、

 その後、日本も東シナ海で模倣することになった。

 対中戦略上の争点になるのは間違いなかった、

 予算折衝が始まる。

 「機動部隊とSOSUS網に守られた油田。ということですか?」

 「ええ、その方が、人材も募集しやすく。危険手当も少なく出来ると思いますよ」

 「まぁ〜 確かに。しかし、当面は、中国空軍や海軍より、台風が怖いですがね」

 「やはり、メガフロート型が良いと?」

 「結局、居座る点でいうと大きい方が戦略的にも効果的なのでは?」

 「台風が来ても大丈夫ですし、空母の代用にもなりますし」

 「メガフロートは動けませんので防衛上。空母の代用になりませんよ・・・」

 「どの道、空母を建造しても同じ場所に進出させるのでしたら同じことでは?」

 「燃料もバカにならないはずですよ」

 「しかし、民間施設ですからね」

 「油田が採掘されたら国家レベルで重要な拠点では?」

 「空港も全て民間で使用するわけでもありませんし」

 「漁場としても使えるので農林水産省とも話しが付いているのですが・・・」

 「え! いや、しかし、ま、あ・・・・」

 「それにSOSUS網ですか」

 「沖縄から送電線を引っ張るより、メガフロートから引っ張る方が発電能力でいいのでは?」

 「・・・んん・・・・」

 「わざわざ、艦載機を開発しなくてもいいじゃないですか」

 「月影が降りられるなら空母より運用形態で融通が利くと思いますよ」

 「メガフロートから艦隊に補給も出来ますし、休養が取れるはずですよ」

 「大事があれば水兵も民間機ですぐに帰れますし」

 「し、しかし、空母だと他の場所へ転用できますし・・・」

 「日本と海軍にとって東シナ海の油田より重要な場所が他にあるので?」

 「それとも台風が来たら転戦で逃げると?」

 「ま、まさか・・」 苦笑い

 空母建造を狙う日本海軍と、

 東シナ海での油田採掘会社側で微妙なやり取りが行われたりもする。

 メガフロートが弾道ミサイルで狙われた場合の問題点があっても、

 それは、日本領土と同じであって、単純に開き直ることもできる。

 メガフロートは、巨大すぎて大波に強く。

 さらに周囲は波濤防止ネットが使われ、

 台風が来ても意外と波静かだったりする。

 もっとも海軍側は、大型空母建造で発言力が低下する可能性を恐れて工作を行う、

 しかし、予算不足のためか、あまり相手にされない。

 

 フランスがサハラ砂漠で第1回地下核実験。

 

 

 出雲州

 フランスが核兵器を保有したことで出雲に緊張が走る。

 とはいえ、両国の関係は、ECC加盟国同士。

 民族感情はともかく、貿易だけは拡大している。

 南アフリカ公国のダイヤだけでなく。

 アジアのルビーとサファイアを出雲で扱うようになると経済力が更に強まる。

 工業用水の問題があって、大規模な工業地帯になりにくいものの、

 日本の支社工場が多く、

 洗練された技術体系が導入され、高度な技術力を持つ工場が並ぶ。

 

 おかげで出雲とフランス・イタリアの貿易は、毎年、記録が更新され、

 航空路線も増えていく。

 彩風の巡航速度640km、航続距離2500km、70席は、ジェット機と比べると劣る。

 しかし、費用対効果に優れ、

 ジェットプロップ旅客機で最速で、欧州航空路線で使いやすかった。

 座席数が少なくてもコミューター機として生き残る道があった。

 整備も容易で搭乗率、就航(稼動)率に優れ

 運用で柔軟性も利いた。

 

 出雲州のマイナス要因は、バイリンガルの比率、言語問題だった。

 相手が何を言っているのかわからない、

 こちらの意思が伝えられない、など国境以上に言語の壁が大きかった。

 何しろ、重要な言語が多い。

 英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、

 ドイツ語、オランダ語、アラビア語。

 他にも可能性を秘めた少数派の言語があり、周りは外国語。

 出雲入植で日本人のバイリンガル人口も少しずつ増えていく。

 欧州大陸では2ヶ国語どころか、3ヶ国語、4ヶ国語を話せる人間がいたりする。

 日本人同士でも、えげつない取引と駆け引きが行われている、

 日本人は、外交下手というより、外国語下手という気がしないでもない、

 国際ビジネスでは相手を騙せるくらい、

 相手の嘘を見破るくらいの言語力が必要になった。

 

 出雲州は、日本技術を導入しながら独自の防衛構想を構築する。

 外交でいうなら港にアメリカとイギリスの軍艦が入港していると

 フランスとイタリアは手が出せず。

 アメリカとイギリスも地中海に便利な港があって良いのか、

 出雲と相互保障関係を構築している。

 米英海軍基地施設は、守秘義務が課せられ、

 日本国内といえ治外法権に近い、

 出雲の海軍工廠を買い支え、育て、

 巨大化させたのは、アメリカ海軍とイギリス海軍であり、

 その辺は、持ちつ持たれつといえる。

 航空機の爆撃圏である事から重視されるべきは航空機と陸戦力であり、

 出雲防衛だけなら安易に要塞化すれば軍艦は後回しでも良かったりする、

 日本は、当初、出雲に旧式化した艦艇を配備していた。

 しかし、身の丈が大きくなれば、そうも、いかないだろうと

 新造艦の配備も計画する、

 

 

 ソ連海軍の主力艦艇が大西洋側に集中しているせいか、

 アメリカ海軍とイギリス海軍は緊張感が漂っていた。

 イタリア海軍は、あまり当てにされていないらしい、

 仕方なく、警備海軍という形にするか、

 まじめに小海軍を考えるか、

 出雲州でも、どうしようか、というとき朗報が入ったりする。

 南アフリカ公国海軍、インド海軍、インドネシア海軍が、

 やまぶき型を購入したことで余剰資金が生まれ、

 いくつかの装備が更新された結果。

 出雲にも“やまぶき”型2隻が配備できる事になった。

 

 6000トン級やまぶき型は、地中海で大きめで耐波性も素晴らしすぎる。

 イタリア海軍の6000トン級アンドレア・ドリア型ヘリコプター巡洋艦といい勝負の大きさであり、

 出雲艦隊の旗艦艦隊として、見栄えが良くて都合がいいのか。

 60口径155mm艦砲は、ミサイル化時代でも圧倒的な印象を与える。

 そのおかげで、米英地中海作戦艦隊に組み込まれたりする。

 

 地中海

 アメリカ第6艦隊の地中海艦隊の役割は、大まかに共産軍の西欧州侵攻の牽制。

 トルコ・ギリシャの支援。

 中東の権益保護。

 北アフリカに対する示威など。

 揚陸艦が旗艦を務めていることから艦隊の目的は推測できた。

 ソ連の立場に立つと、欧州へ侵攻する場合も、

 アフリカに共産主義を浸透させる場合も、

 中東へ介入する場合も、

 アメリカ海軍とイギリス海軍が邪魔になった。

 当然、事を始めるに当たり、

 長距離爆撃機と潜水艦で地中海の米英海軍を片付けてからになる。

 

 やまぶき型2隻 “こむらさき” “かくれみの” が米英艦隊と平行して航行する、

 軍官僚が二人、双眼鏡で米英艦隊を覗いていた。

 6000t級巡洋艦 “こむらさき” 艦橋

 「いいなぁ〜 長距離のタロス。中距離のテリア。短距離のターターか」

 「日本も、まともな対空ミサイルが欲しいよ」

 「対空ミサイル“牙鳳1型”は、精度が落ちるから厳しいな」

 「タロス、テリアは、核弾頭を装備できるから精度の問題じゃないと思うが」

 「日本は核の小型化が進んでいないから精度に頼りたいね」

 「ソ連の対艦ミサイルSS-N-2ミサイルは、マッハ0.8。射程45kmだからな」

 「日本も、もっと、まともな、対空ミサイルを開発しなきゃ駄目だろう」

 「ライセンス生産させてくれないのかな。迎撃どうするんだろう」

 「60口径の15.5cmじゃ とどかねぇ〜」

 「54口径の12.7cmより、いいだけだからな」

 「対空ミサイルが欲しいよ。艦対艦ミサイルも遅れているし」

 「対艦ミサイル“牙龍1型”を開発すれば、15.5cmともお別れかな」

 「どうかな、日本の艦砲はアメリカ海軍も羨ましがっている節があるから意地で保持するかもな」

 「リップサービスじゃないの? 6000トン級以下だと載せられないぞ」

 「ミサイルより割安だからね」

 「一応、米英海軍が防空しながらソ連艦隊まで引っ張って行ってくれるらしいけど」

 「戦艦、持っているのだから、いらないだろう」

 「それにソ連海軍なんて、まともに動いているの駆逐艦と潜水艦ばかりじゃないか」

 アイオワ型戦艦イリノイが併走していた。

 「用心なんじゃないか」

 「爆撃機の飽和攻撃で、やられるかもしれないし。数だよ数」

 「やれやれ、地中海にあんな大きな軍艦がいるのかねぇ」

 「全ミサイルがイリノイ狙いなら俺たちは無事だろうか」

 「あはは、しかし、ソビエトは地中海側で攻勢をかけにくいと思うけどな」

 「中東のアラブ・イスラム側と組んでいる」

 「日本人も敵国扱いされる時がある」

 「しかし、イスラエルからも睨まれてるから、インド洋と違って違和感ありだな」

 「イスラム・アラブ圏への共産主義の浸透が怖いよ」

 「それと、いいように共産主義に利用されている」

 「なにやっているんだか」

 「ソ連の軍事力だな」

 「結局、相手を全て撃沈できるかもしれない、打撃力があるのが大きいよ」

 「イスラム圏もソ連の力を利用して、国力を増大している」

 「モンタナは、どうしたんだ?」

 「キューバが、きな臭いとか言ってたから、そっちに行ったんじゃないか」

 「ふ〜ん しかし、日本本土と出雲。アメリカとイギリスとの関係で温度差が違うな」

 「出雲そのものがアメリカとイギリスの地中海艦隊の基地だからな」

 「人質の哀愁が漂うねぇ」

 「政策上の不自由があってもアメリカとイギリス側にいれば安泰だよ」

 「それ以上のことをアメリカとイギリスが望まなければね」

 「出雲に何か、脅しでも、かけてきているのか」

 「いや、整備費をもっと安くしてくれって、ところかな」

 「ちっ! ミカジメ料かよ。ヤクザめ」

 「要領は、出雲州と秋津州は同じだよ」

 「日本人を悪者にして艦隊を進出させて保護。恩着せがましく、艦隊基地ということ」

 「嫌な連中だな」

 「艦隊基地の機能は相応の基礎工業力が無いと低いし」

 「艦隊を整備できる基礎工業力がある国は少ない」

 「いくら投資しても海南国、韓国、フィリピン、南ベトナムは艦隊基地として弱い」

 「住民を追い出してアメリカが好きにしているソコトラ基地でさえ低い」

 「そして、出雲には、それだけの基礎工業力が育ったということだよ」

 「くそぉ〜 軍拡してやる〜」

 「あはは。ミカジメ料の方が安く済んだりして」

 「ま、小さい島だからな」

 「核は?」

 「運び込んだけど。月影じゃ 撃墜されるな」

 「だから、まともな対艦ミサイルを開発しろって言ったんだ」

 「予算、取られているじゃないか」

 「だけどな。コンピューターの予算。何であんなにいるんだ」

 「本当にあんなにいるのか?」

 「支持者のほとんどが有力者で各界各層に広がっている、どうにもならないね」

 「本当にまともなミサイルが開発できるんだろうな」

 「戦略は、いいけど専門的な分析と数学になると混乱するよ。訳わからん」

 「0と1だけで、どうして、ミサイルが当たるの? だから、騙されていてもわからんぞ」

 「ははは、アメリカの巡洋艦の艦長も似たようなことを言ってたな」

 「ソーセージと同じ、中身はわからんが美味しければ良い」

 「そういえば期待の魚雷も、そんな感じだな」

 「敵の潜水艦を追い掛け回すことに関しては、日本の対潜魚雷が最強だがね」

 「仕組みがわかる者はいないな」

 「壊れたらどうするとか、考えられないのか」

 「交換だろう。修理する時代じゃないのだろう」

 

 

 ルワンダ独立

 

 アルジェリアで住民投票が行われる。

 フランス大統領ドゴールがアルジェリアの独立を宣言。

 アルジェリア共和国独立。

 出雲とアルジェリアとの航空路線交渉が始まる。

 アルジェリアはアラブでありイスラム教国家だった。

 キリスト教国家との交易は、抵抗があるのか。

 同じイスラム教国家のパキスタンとエジプトの推薦もあるのか。

 日本は、アラブ・イスラム系に賛同的と思われた節がある。

 “無神論、共産主義のソビエトと緊密になるよりは” と貿易が始める。

 

 

 佐世保重工業佐世保造船所で世界最大の13万トンの日章丸が進水

 

 

 アメリカが通信衛星テルスターを打ち上げ、米英間テレビ中継に成功。

 ベーリング海峡電線によって、日米間双方向回線が繋がる。

 「アメリカのテレビを半島でも、か」

 「返ってホームシックになるだけじゃないか」

 「日本側も秋津州と双方向回線が繋がるから悪くはないけどね」

 「回線代が違うよ。南米通るし」

 「いやだねぇ 世知辛くて」

 「だが喜んでいる人間もいる。昼夜逆転で情報処理が出来る人間だな」

 「盗聴されないだろうな」

 「国家機密レベルの情報なんて。そうあるものじゃないよ」

 「ほとんどはチマチマした日銭稼ぎか、親睦か、徒然話しだよ」

 「産業機密だってあるだろう」

 「アメリカと半島を結ぶ回線も同じ危険性込みで利益があると考えているんだろう」

 「お互い様だよ」

 「なんか。不利なんだよな」

 「そりゃ 不利だろうよ。国力の差だから」

 

 有人宇宙船「ボストーク3号」「ボストーク4号」が相次いで打ち上げられ、

 宇宙空間でのランデブーに成功する。

 

 

 ウガンダが独立する。

 

 

 インド・パキスタン・チベット・ビルマ反共同盟の調印。

 印パ・ビルマ連合軍のチベット独立戦争へ参戦。

 資源大国ビルマがチベット資源に興味を持つはずもなく、

 ビルマは、シャン族、カチン族の分離独立運動と、

 共産主義浸透に苦しめられていた。

 そのため、印パ連合と宗教連合を結び、

 イスラム教、ヒンズー教と協調路線をとっただけといえる、

 外敵を作ることで挙国一致と、

 混血優遇政策を拡大を狙うのが目的だった。

 ビルマ・中国の国境線の緊張が高まっても、

 山岳地帯で大規模な侵攻は不可能と結論付け、

 イスラム教・ヒンズー教・チベット教・仏教が連合を組むという、

 前代未聞の国際情勢が展開される。

 戦争を口実に挙国一致、人工的な需要で工業力を高め。

 人減らしで国内資源の再分配で国力増強。

 意図している側の計画通り進めば好都合な事は多かった。

 

 

 ラサ 宗教国家連合会議

 山を刳り貫いて作られた空間を与圧し調理を作っていた。

 気圧を上げて料理を美味しく作るためで諸事情でオール電化。

 他にも医療室がある。

 どちらも平地と同じ気圧で、たちまち人気の空間になってしまう。

 与圧室で作られた調理が与圧された会議室に運ばれ、宗教会議が進む。

 イスラム教、ヒンズー教、チベット教、仏教、キリスト教。

 それぞれに価値体系が違うものの、反共で一致している。

 というより、反共以外に結束はおろか、

 同席する可能性は、まったく無い、連中。

 同時に国家の利益代表も背景にしているので

 人間性を疑われるような。宗教をやっているとは思えないような。

 チベットの大自然に恥ずかしくないのか、のような。

 自分のところの教義を読み直して来い、のような。

 世にも醜くえげつない議論が続く、

 それでもチベットで仮面舞踊など気分を和ませたりする。

 

 

 与圧型調理室

 使い勝手のわかる日本人の調理人が多かった。

 「・・・・なんか、荒れていたな」

 「あいつら、宗教指導者とは思えないな。腐っているんじゃないか」

 「あはは」

 「俺たちのほうが、よっぽど純朴だよ」

 「あはは」

 「しかし、豚が駄目だの、牛が駄目だの。わがままな連中だよ」

 「配膳だけは間違えないでくれ、石打の刑はイヤだからな」

 「だけど、海のモノは好かれているみたいだ」

 「湟魚(ホァンユウ)は、美味しいが塩湖が多いから海魚を養殖できるかもな」

 「んん、そうだな。随分、海産物で慣らしたから、ひょっとしたら商売になるかもしれない」

 「いや、日本で湟魚(ホァンユウ)も儲かるかもな。養殖できるんじゃないか」

 「いいねぇ チベット高原の自然も日本に紹介されているから結構人気があるようだし」

 「平和になったら観光ルート客も増えるだろうな」

 「ゴジラで煽ったから来るかもしれないな」

 「だけど、チベットでゴジラとキングコングが戦うのも笑えないか?」

 「笑えないよ。走らされた時は死ぬかと思った」

 「アメリカとソ連の核爆弾でゴジラが強くなってしまうし」

 「笑えるのは敵味方関係なく軍隊をやっつけたゴジラとキングコングを」

 「ラサに集まった宗教指導者たちが、祈りで大人しくさせることだよ」

 「ギャグとしか思えん」

 笑。

 「でも、あの娘かわいかったな。日本でデビューするんだろう」

 「ハリウッドも目をつけていたから、なんか映画を撮るかもしれないな」

 「ハリウッドも戦争好きだからな」

 

 

 アメリカの大西洋艦隊がキューバを包囲。

 

 

 中国軍とビルマ軍が国境線を挟んで軍事衝突を起こした。

 山岳戦のためか、双方とも山を挟んでの攻防戦。

 そして、航空戦となっていく、

 ビルマ空軍の主力は、日本製の雷燕、雷風5型だった。

 支援機として雷風4型も投入され、

 中国は、主力空軍をチベット側へ移動していたことから不利な戦闘を強いられ、

 予備戦力と制空権を失ってしまう。

 ビルマは、日本製の兵器体系で国軍を固めていたため、

 日本の戦訓になっていく、

 日本の軍事顧問団が入り込み、戦線の状況が記録していく、

 対空ミサイルが逃げようとする戦闘機を追い詰め撃墜する。

 ビルマ空軍基地

 日本外交武官が二人来ていた。

 「・・・旧式のMiG15なら牙鳳1型でも撃墜可能か」

 「どうやら、中国がライセンス生産できるのは、まだ、MiG15レベルか」

 「MiG19は、これからだな」

 「それでも、かなり無理をしているような気がするが」

 「チベット独立戦争で中ソ協力が強まっている」

 「中国空軍は強化されるかもしれないな」

 「戦車は、まだ、T34戦車が主力らしいけど」

 「山岳地帯では使いにくいよ」

 「ビルマが、その気になっただけは、あるのだろう」

 「交戦が可能でも、この山岳地帯を抜くことはできないだろうな」

 「抜いても補給が続かないよ」

 

 

 南アジア諸国(宗教連合) VS 中国・ソ連(反宗教)

 戦線で南アジア諸国の資源が売られ、

 日本の武器弾薬が売れていく、

 一番儲かっているのは距離的に近い昭南州だった。

 そして、朱雀と瑞穂の工業化も進む。

 

 

 共産化したキューバのカストロ政権。

 1962年中旬以降、ソ連貨物船のキューバ入港にアメリカは神経を尖らせていた。

 10月14日

 アメリカ軍偵察機がキューバの中距離弾道ミサイル(MRBM)と(IRBM)3基を確認し、

 報告を受けたジョン・F・ケネディ大統領は、国家安全保障会議執行委員会を設置した。

 国防総省とCIAは、キューバの核ミサイル基地への空爆を主張し、

 ケネディ大統領は、アメリカ機動部隊によってキューバを海上封鎖を命令、

 ソ連艦隊のキューバ入港の阻止行動を図った。

 そして、NATO、米州機構、日本との協力体制を確認していく、

 

 

 キューバ危機と直接関係のない日本。

 日本で、一番偉い男が贅沢な執務席で、くさる。

 「総理、なぜ、アメリカ側なんです。日本は独立国なんですよ」

 「好きで、アメリカ側についているわけではない」

 「君らだってネバダの核実験施設は、使いたいだろう」

 「そ、そんなもの、海でやればいいじゃないですか。無理をすれば扶桑州でも出来る」

 内閣を維持したい側と、

 内閣壊してでも中立を維持したい側に別れる。

 マスコミ論調は核戦争に巻き込まれても利権拡大を狙う側と、

 核戦争に巻き込まれたくない側に別れていた。

 「・・・他にもライセンスの制限を下げてもらえるようになっている」

 「それも民生品でなくて電子装備」

 「あと、ジェットエンジン。対空ミサイル。対艦ミサイル・・・」

 「・・・じ、自国で開発すればいいでしょう」

 「いいねぇ 社会保障費や設備投資費を回して?」

 「発電所の建設、道路工事、河川工事、上下水道もやめるか」

 「・・・・・」

 「・・・・・」

 

 外交で強い側につくのは、国際常識でもある。

 日米関係がどうであれ、日ソ関係より日米関係が近く、

 日本政府も、原因と結果がどうあれ、アメリカ側についた。

 むろん、公式なコメントは、今後の日ソ関係を考慮し、

 “情勢の変化に憂慮する” にとどめ、

 それでも、実質的にアメリカ側と見られる軍事展開がなされ、

 素人目にも、どっちの側か、わかる軍事的な圧力をソ連側に掛けていた。

 

 核爆弾を装備した月影が雷燕に守られ、

 日本海上空を飛ぶ、

 宇留島基地から出撃し、

 給油を受けながらの核パトロールだった。

 ソ連空軍も核装備の編隊を上空に遊弋させ、

 空中で睨み合った。

 近くには韓国から離陸したB52爆撃機と、護衛の戦闘機が滞空していた。

 命令さえあれば直ちに突撃する情勢がうかがえた。

 

 

 10月22日

 ケネディ大統領は、キューバに中距離核ミサイルが持ち込まれたと公表し、

 ソビエトを非難。

 アメリカは、アトラス、タイタン、ソーの弾道ミサイルの発射準備を進め、

 全面核戦争を覚悟を決めようとしていた。

 ソ連も国内のR7核ミサイルの発射態勢を進め、

 キューバもR12の発射準備体制に入っていく、

 一触即発な緊張が高まる中、軍事的な準備も進み、

 舞台は、国際政治外交と国内調整へと移行していく、

 アメリカは、ソ連に対しミサイル撤去の交渉を開始していた。

 

 

 日本、

 日本連邦が核戦争に対し、微力である事が思い知らされる。

 ソ連空軍の核は、日本列島のどこにでも落とす事ができた。

 一方、日本の核爆弾は、月影の航続距離圏の内側に収まってしまう。

 日ソ両軍がウスリー(黒竜江)を境に睨み合い、

 キリスト像(ホテル)が指差しているクレムリンの向こうは晴天で、

 上空は、ソビエト空軍機が百機近く飛んでおり、

 対照的に日本側領空は、10機にも満たなかった。

 とはいえ、双方の空軍機が国境線を挟んで展開し、

 それまで、観光客の受け入れと送迎など連絡を取り合っていた無線機も途絶え、

 観光客が国境の内側に戻ると、

 寒々とした国境地帯を見つめ忍び寄る死神を感じ黙り込んだ。

 キリスト像から見るとウスリー川の向こう側はソビエト連邦であり、

 観光の目玉、T54戦車は凶暴凶悪な怪物に変貌し並んでいた。

 対岸は、日本陸軍の54式戦車が隠れ潜んでいた。

 当てになるのは、さらに後方の155mm砲だろうか。

 射程は、艦砲と同じで、T55戦車を簡単に破壊できるはず。

 「真っ先に狙われるとすれば、このキリスト像のホテルかな」

 「占領する気がなければ、そうでしょうね」

 「・・・・・・・・・」

 「戦いになると?」

 「どうかな、アメリカ人とロシア人は戦争した事がない国同士だ」

 「自由資本主義と共産主義の思想の違いだけで互いに殺し合う理由がない」

 「戦争にならないと?」

 「わからんな。もっと馬鹿げた理由で戦争した事もあるからね」

 「しかし、いまの超大国という国際的位置を失ってでも殺し合うだろうか」

 「試しに株でも買っておきますか」

 「ふっ 誰もが同じようなことを考えるものだ」

 「朱雀・秋津関連株。核シェルター関連株。上がっていますからね」

 「生き残り関連株価か」

 「核戦争を目の当たりにしても人の欲は、まったくもって許しがたいね」

 「軍関連企業も、もっと真剣に骨身を削って働いてくれたら良いのですが」

 「国民は、資本主義下で積極的で意欲的だけど、金に目が眩んでの事だからな」

 「戦前は、消極的で少数精鋭だった」

 「それでも国家安寧を第一に考えていた」

 「・・・・どっちが、よかったと?」

 「金持ちは失う事を恐れて動くし」

 「資産のない者は危機に対し、自暴自棄に走りやすい」

 「今の方が危機感に対し、粘り強いと思うね」

 「キューバ危機が日本にとって、追い風になると」

 「恐怖心で、どちらに転ぶか、わからんがね」

 「いいように誘導するのが執政者の務めのはず」

 「戦後のマスコミは、売上第一で独立独歩が多いから」

 「マスコミの論調は分かれてるが感情的なものが多いな」

 「恐怖を刹那的に煽って売ろうとしてるから無分別過ぎるよ」

 「ふっ もっと知性的で建設的な紙面を読みたいものだ」

 「まぁ 手品と同じだよ」

 「キューバ危機というミスリードとミスディレクションで大衆の目を眩ませ」

 「時代の流れを掴んで、権力と利権を伸ばし、気付いた者が金儲けに繋げられる」

 「生死の境でそこまでやるかね」

 「ハングリーな連中は、日常でも生死の境で勝負するもんだ」

 「軍人だけが戦っているわけじゃないだろう」

 「しかし、やり過ぎると、虚実が入れ替わって本当に戦争を煽ってしまうし」

 「日本全体を右翼化させてしまうからな」

 「まぁ あまり感情的にならず、ほどほどな線で収まって欲しいね・・・」

 いつの間にか、雲が広がり、

 ウスリー川を挟んだ国境地帯に雪が降り始めた。

  

 

 10月25日

 緊急国連安全保障会議

 アメリカ国連大使アドレー・スティーブンソンは、キューバのミサイル基地の写真を提示し、

 ソ連国連大使ヴァレリアン・ゾーリンに核ミサイルの存在を認めるよう迫った。

 米ソの核戦力はアメリカが優勢であり、

 ソ連は焦燥感を募らせていた。

 互いに超大国であると言いながら、実力の差は大きかった。

 双方が核ミサイルを撃ち合ってもソ連側の打撃のほうが大きく、

 既に先制攻撃も奇襲効果は得られず、

 欧州側と日本に対し、大打撃を与えることができたとしても、

 ソビエトも二度と立ち上がれないほどの大打撃を受ける。

 戦う前からわかっていた。

 大国として生き残るのは辛うじてアメリカだけであり、

 世界赤化の大言壮語のため、

 共産主義理想のため、同志キューバなどのため・・・

 フルシチョフは、そんなモノのために

 ロシアの大地とロシア民族を犠牲にするつもりなど毛頭なかった。

 

 

 10月27日

 ソ連軍の対空ミサイルがU2偵察機を撃墜する、

 ワシントン時間10月28日午前9時、

 フルシチョフは、モスクワ放送でミサイル撤去の決定を発表し、

 ケネディの条件を受け入れ、

 キューバに建設中だったミサイル基地とミサイルを解体を表明する。

 ケネディは、キューバへの武力侵攻しないことを約束し、

 13日間に及んだキューバ危機は終息していく、

 

 

 核戦争は未然に防がれた。

 全世界は、ホッと一息しながらも、

 終息したことを安堵する者、

 終わりではなく、新しい時代の幕開けと思う者に分かれ、

 キューバ危機は、幾つもの波紋を広げてしまう。

 核ミサイルの重要性を感じる者、

 逆に “核、つかえねぇ” と思ってしまう者、

 軍事専門家も意見が別れ、非核団体を巻き込み、

 新聞・テレビも論調が別れ、

 協定も崩れて論争が起こってしまう。

 某研究所

 「やれやれ、キューバ危機のおかげで巷は大騒ぎか」

 「全面核戦争まで、あと少しでした」

 「いろんな考えがおきても仕方が無いのでは?」

 「いろんな考えか・・・」

 「とりあえず思いつくのは、主翼を付け根から90度、垂直にすることだな」

 「やって、やれないことは無いですがね」

 「強度不足は明らかですし」

 「それに、プロペラの桁が足りないのも確かですね」

 「かといって、ジェットエンジンにするのも芸が無い」

 「費用対効果も変わってくるな」

 「ティルトローターだと。ヘリよりマシですが飛行性能で落ちますね」

 「基本的に離着陸が短ければ良いので、ホバーリングしたいわけではありませんから」

 「チベットのおかげで短距離離着陸機の要望は強い。追い風ともいえるよ」

 「飛行限界高度や気圧を考えずに予算を出してくれるのは嬉しいがね」

 「ベテランによると地面効果もあるので腕次第らしいですが」

 「独立した山岳を占領してしまうならヘリだからな」

 「飛行性能はともかく、作って後から部品を取り替えて飛行性能を上げていく方が良いかと」

 「いまの設計でも40席は、確保できます」

 「軽くて丈夫な部品か・・」

 「そういえばアメリカは、次期戦闘機の機体重量は、4分の1をチタンにするとか言ってたな」

 「お金持ちは違いますね」

 「こいつも、機体重量の4分の1もチタンが使えれば、VTOLも、いけるのですがね」

 「価格が10倍に跳ね上がってしまうな」

 「1機60億は厳しすぎるよ」

 「稼動部に限定すれば、性能が落ちても安く出来ると思うがね」

 「軍の配備で損失補填しない限り、民間運用は不可能だな」

 「ですが国防省が開発費をケチって、民間機を流用していますからね」

 「あはは・・・・」

 「そういえば日本の次期主力戦闘機は、どうするって?」

 「8000kg級エンジンをライセンスできるようになったとかで騒いでいましたよ」

 「キューバ危機のおかげか」

 「5200kg級のエンジンを開発していたようですから」

 「かなり早い時期に生産できるらしいです」

 「上手く融合させる事ができれば推力は、8400kgから8600kgもいけるとか」

 「そのままで、耐久力を伸ばす手もあるようですが」

 「ほう、また荒れそうだな」

 「ええ、双発か、単発か、で、また揉めそうですね」

 

 

 ビルマ政府が中国との国境戦争で非常事態宣言。

 インド、パキスタン、チベットは、ビルマを支持を表明。

 

 エチオピアがエリトリアを併合

 

 国連総会

 南アフリカ公国連合のアフリカ大陸の種族自決権の決議案が提出、

 日本、アメリカ、ソ連は賛成票を投じ、

 西ドイツは棄権。

 イギリスとフランスが時期尚早と拒否権を発動。

 

 中国・ビルマ国境紛争、中国が一方的に停戦を宣言。

 

 炭労が、石炭政策大綱反対で非常事態宣言をし、大手13社でストに突入する。 

 

 北朝鮮が、全人民の武装化と全国の要塞化を決定する。

 

 

 チベット

 傭兵部隊の食堂に流れる映像は欺瞞に満ちていた。

 ソ連のフルシチョフ首相が「平和共存」を訴えている。

 チベット独立戦争は、激化。

 ウィグル族の軍編成も行われ、

 戦線は拡大の一途をたどろうとしていた。

 もちろん、共産ゲリラの反撃も大きく、

 共産主義勢力が流した武器弾薬がインドの貧民層・不可触賎民に渡り、

 治安を著しく悪化させていた。

 もちろん、カースト制度敷いていなくとも貧民層はどこにでもいる。

 有色人種諸国は、混血優遇政策を進め、宗教連合を構築しても、

 虐げられた貧民層が武器をどう使うか、彼ら自身が決める。

 当然、イスラム・チベット過激派が流した武器弾薬も

 中国貧民層・少数部族に送られ、

 特権階級である中国共産党員の心胆を寒からしめる。

 共産国家であるはずの中国で共産革命では洒落にならない。

 中国軍ばかりか、

 ソ連軍も傭兵を追加で増援した。

 滅茶苦茶。

 そう、チベット独立戦争は、チベット国内に収まらず、

 テロの応酬は、戦線をはるかに超え、

 敵国の首都を直撃する滅茶苦茶な展開がされていた。

 

 

 

 ケネディ大統領は、ホワイトハウスとクレムリンを結ぶホットラインの設置を提案。

 

 

 中国・ビルマ国境紛争が再開され、

 印パ連合・チベット・ビルマ宗教国家連合軍と中国の戦争が拡大。

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 史実では、スバル360は、385kgですが、

 『ミッドウェー海戦のあと』では、ドイツ車の影響で、

 馬力と足回りが強化されているので420kgです。

日米関係(力関係)が、少しわかりにくいので取引率の表
史実 ミッドウェー海戦のあと
アメリカ 日本 アメリカ イギリス 出雲・秋津 日本
6 4 5.3 (5.8or5.5) 4.5 4.2 4.7

 外交戦略で言うと国力が強い方が有利なので、

 等価交換とは行きません、

 しかし、史実より有利な取引が出来そうです。

 比較的、史実の日本に近いのが出雲州、秋津州です。

 日本本国の圧力もあるので数字は、感覚的ですが

 史実の日本より微妙にいい状況です。

 単純に利益を得た場合の取り分と考えても良いと思います。

 理由

 国力比が近いこと、

 国内で足を引っ張る勢力が弱いこと、

 南アフリカ公国、インド・パキスタン、東南アジア諸国など有色人種諸国の味方が多いこと、

 市民権・混血優遇政策など、外交下手が補完されていること、

 冷戦、中国内戦、朝鮮戦争など、たまたま、運が良かったこと、

 政治・経済・軍事でアメリカに依存している比率が小さいこと、

 などなどです。

 

 

 ※ライセンスできるようになったエンジンです。

  ジェネラルエレクトリック社製

    J79GE17Aターボジェット 推力8119kg(アフターバーナー使用時)。

 アメリカ本土が核攻撃されるところだったらしく、

 日本のアメリカへの協調が嬉しかった、というところです。

 困っている時に犠牲も省みず、助けるというのが友情でしょうか。

 62年、現時点での軍事技術のライセンス制限が緩められました。

 金さえ出せば大丈夫というところです。

 

  

 

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1962年 昭和37年 誕生酒 (楽天)

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