月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

 

 

 

 

第73話 1963年 『チベット独立戦争』

 夢を広げてくれるような世界観は、希望を与えるため必要な要素かもしれない。

 しかし、チベット人の世界に対する認識は、変化しつつあった。

 外周を悪意と欲望に囲まれていると知っていたら、

 もう少し地図の雰囲気も変わっていただろう。

 チベット族の内面世界を地図に表現しただけであり、

 世界に裏切られていたことを知る。

 日本のむかしの古地図も似たようなもので、

 彼らをあまいと、ばかりはいえない。

 

 人類史上、例を見ない最標高の戦場は、人類の戦史上、特筆されるほど激しくなっていく、

 原因の一つ、

 中国共産党は、不穏分子農民を兵士として駆り出し、

 まとめて、一掃しようとしている節もあった。

 出兵拒否は銃殺であり、

 攻撃すれば攻撃するほど反体制不穏分子が減り、

 中国共産党体制の権力基盤を強化させる、気がしないでもない。

 もう一つ、

 戦場は遠く、山道は狭く、険しい地峡も延々と続く、

 しかし、中国の “人の命をなんだと思っているのか的” な人海戦術は恐ろしいばかで、

 人海戦術でチベットに至る山道を整備し、T34戦車とT55戦車を高原に登らせていた。

 宗教連合がヒマラヤ越えで空輸している軽戦闘車両は、戦車に太刀打ちできない、

 とはいえ、航空機の制空権と爆撃で、進撃をいくらか防ぐことができた。

 もっとも、峠ごと人民軍を生き埋めにしても、

 後から峠を埋めるほど中国軍は湧いてくる。

 

 ここ、チベット独立戦争でもナパーム弾が使用され、

 火あぶり戦術が可能だった。

 しかし、少し高い高度で爆発させ、上空の酸素を減少させる。

 結果として、中国軍を呼吸困難に陥れ、高山病再発させる。

 どちらを使うかは、指揮官の好みで、集合論の計算と応用といえた。

 味方の地上部隊との連携とナパーム弾の数と、

 中国軍の兵力の塊具合で、だいたい、決まってしまう。

 

 拡大しつつあるチベットの飛行場。

 C130輸送機ハーキュリーズ。

 C133カーゴマスターが何機も離着陸できる広さになっていた。

 輸送機でヘリコプターを輸送する方が楽なほど標高が高い、

 輸送機からヘリコプターが降ろされてくる、

 チベットが戦場になると想定されているのか。

 ヘリコプターに酸素ボンベが装備され、与圧も検討されている。

 エンジンの馬力も軒並み上げて、実用限界高度を上げているらしい、

 結局、プロペラの構造とローターの径と馬力で、

 ヘリコプター(質量)を空中に持ち上げる感覚といえた。

 機体に余裕があれば技術的に可能なのだろう。

 金さえ注ぎ込めば、実用高度7000mもいけるらしい。

 かなり怪しいものの技術より、金の問題らしい、

 しかし、どうということはない。

 シュトルヒでも大丈夫だ。

 九八式直協偵察機でも。

 三式指揮連絡機でも。

 56式水上哨戒機でも短い距離で離着陸できる。

 十分だ。

 バカなことに余計な金なんか、掛けて無駄金だ。

 言える。

 声を大にして言える。

 おまえら間抜けだ!!!

 「ん・・・なんか、言ったか?」

 「え!! あ、いや、何でも」

 「そうか」

 小型装甲車両が降ろされてくる。

 「随分、小さいな」

 「日本のチベット戦域用の62式自走無反動砲です。新型ですよ」

 「大丈夫なのか、これ?」

 「一応、30口径155mm無反動砲1門が装備されていますから」

 「・・・重そうな砲弾だな。何で、こんなものを作ったんだ」

 「砲弾があったので・・・」

 「艦砲かよ」

 「アメリカで開発中のシェリダンは、152mmガンランチャーのロケット弾だぞ」

 「後ろに人がいても大丈夫なんだぞ」

 「あいにく、ガンランチャーは開発していないので、デイビー・クロケットと同系統では?」

 「あれは、戦術核だよ」

 「これ、通常弾で対人・対戦車だろう。後ろが危ねぇなあ」

 「危ないですかね・・・」

 「誰も後ろに近づけねぇ 味方を焼き殺すつもりか?」

 「酸素が少ないので、それほど酷くは、ないと思います」

 「それに日本と違って、チベットは広いですから」

 「そういう問題か」

 そういう問題だった。

 日本の都市で使えば、一発で後ろが火事だった。

 「二人乗りですが一応、リモコンもついてますよ」

 「有線で外に出て操縦することも出来ます、大砲を撃つことも・・・」

 「どうやって、射線を合わせるんだよ」

 「砲身にカメラが付いていて、モニターが映るんですよ」

 砲身の先の様子がモニターに映る。

 「おお! デイビー・クロケットを載せるのに欲しいな」

 「本当に? 欧州戦線だとビルの上から撃つつもりだったのでは?」

 「まぁ そういうのもあるが・・・で、T55戦車は?」

 「やれるでしょう。自動装填装置が付いています」

 「基本は、車両の射線を合わせて、油圧で車体を前後に上下させる事ができます」

 「砲身の俯角・仰角は、3度で微調整が出来る程度です」

 「装甲は、装甲車と同じ」

 「近距離で待ち伏せ、ヒット・エンド・ランで逃げてください」

 「あ、当たり前だ。即行で逃げるよ。油圧は凍らないだろうな」

 「エンジンが回れば自動的に熱が伝わるようにしていますので」

 「エンジンが回れば、か・・・・」

 チベット独立戦争の余波なのか、

 日本の某軍需産業は、空輸できる軽装甲車両が利益になると皮算用する、

 そして、スウェーデンのS戦車に刺激受け、

 完全輸出用30口径155mm無反動砲装備自走砲を開発してしまう、

 車両の中央に近い部分を刳り貫き、

 155mm砲を車体前部から車体後部へ通した。

 乗員は、ヘルメットを着用し、

 粛清筒で覆った砲身を挟んで二人が座っている。

 全長5.20m。車体長5.0m。車幅2.30m。全高1.50m。

 重量10トン。装甲6〜14mm。230馬力。時速60km。乗員2名。

 30口径155mm。初速600km。有効射程8km。最大射程12km。弾頭重量60kg。

 日本版Sタンクとも呼ばれる戦闘車両だった。

 破壊力のある155mm砲弾は、対人・対戦車両用で使え、

 自動装填装置が付いて弾数10発。

 砲身の俯角・仰角を微調整の範囲で3度変える事ができた。

 地上部隊でT55戦車を撃破できる大砲があると、ありがたいのか。

 アメリカの空挺戦車シェリダンの開発が遅れているのか、

 仕方なく売れる。

 車両を相手に向けなければ当たらない。

 一人でも戦える点は、費用対効果が優れており、

 いざというときは、有線のリモコンで動かせる。

 破壊されるまで、撃ちっぱなし戦法も可能で、

 開き直って使い捨てで使えば、それなりに使える。

 車両の真後ろで、リモコン操作しなければだが・・・・・

 

 後の映画で、主役とヒロインを追い詰める “やられキャラ” が、

 この手法で丸焼けにされ、ハリウッドに喜ばれやすい車両になった。

 

ポタラ宮

 集会場

 「・・・・我が、チベットは、独立国である。

   チベット民族の国土を侵略し、チベット民族から主権を奪う略奪者。

    チベット民族の独立を阻害する共産主義に対し、敢然と立ち上がり。

     略奪者・侵略者を根絶やしにするまで戦う。

      我国の主権をないがしろに干渉し、犯そうとする敵を殲滅し踏み潰し、

        生きて故郷の地を踏ませてはならない!! チベット万歳!!!」 チベット軍将校

  チベット兵とチベット民衆、ウィグル人が熱狂し、万歳を連呼。

 「「「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」」」 某国の受益者たち  (^_^)`` 汗々

 火は、既に燃えている。

 油さえ注げば、彼らは、自動的に戦い続ける。

 1960年当時なら、

 チベット族600万 VS 中国(漢民族)6億。

 人口比率だけなら一飲み、

 一人一殺で交換すれば、チベット族は絶滅、

 しかし、チベット国軍は、数で劣勢でも士気は高い。

 まともな武器さえあれば死守命令がなくても徹底抗戦する。

 曲がりなりに独立を確保している諸外国は、ちょっと付いていけない部分もあったりする。

 ソ連・中国を弱体化させたい意図がある国は、チベット支援を決め込む。

 日本の場合、インド・パキスタンを支援する形で間接支援になっている。

 やはり、ソ連と直接国境を接していたりすると、

 まじめに戦うのもどうかと思ったりもする。

 来年は、東京オリンピック。

 国威がかかっており、

 キューバ危機後の反動で平和外交で勢いもあった。

 軍事的緊張と冷戦は脇に置いてでも成功させたいのだから、

 八方丸く収めさせたい、

 金持ちケンカせず。

 いや、金持ちになりたいならケンカせずだった。

 

 

 赤レンガの住人たち、

 国防戦略は、国情、予算枠に合わせて作られる。

 予算の振り分けは、制約があるものの多様であり、

 開発内容から兵器仕様の内容まで、予算額で振り分けで変わったりもする。

 キューバ危機は回避されても、軍事認識は、大きく変化し、

 核抑止派と通常兵力抑止派の論争も大きくなっていく、

 「・・・南アフリカが動き出そうとしているらしいよ」

 「な、なに考えているんだよ」

 「内政が少し整ったりすると、人種優越主義が首をもたげるからね」

 「自分たちが選ばれた選民黒人?」

 「皇族に爵位をせっついているし」

 「独立したばかりの地域は信頼性に難があるし」

 「そういうのはオリンピックの後にして欲しいよ」

 「舵取りが上手くいっていないところは、何かに頼りたくなるのだろう」

 「あそこ、まだ封建社会の前段階だろう」

 「基本的にある程度、官僚機構が整っていないと」

 「資本主義も、共産主義にもいけないんだよな」

 「南アフリカは、それなりに、なっただろう」

 「それなりだから国内の不満分子を外に向けさせて、になるんだよ」

 「勝手に親日組織作ってしまうし」

 「結局、金欲しさにどっちにも付くから」

 「このままだと、いいように金を搾り取られて、内紛起こして自滅してしまうよ」

 「乱世じゃあるまいし」

 「治世じゃないから乱世だろう」

 「ふっ 日本の場合、慢性化した難世だな」

 「どっちでもいいから南アフリカに巻き込まれたくないよ」

 「しかし、巻き込まれないように資源開発はわかるがね」

 「実のところ扶桑州開発と東シナ海底油田。どっちが有望なんだ?」

 「有望というより、どっちの支持者が有力か、だろう」

 「ゼネコンは、当然、扶桑・大和開発を押しているよ」

 「扶桑と大和は、大規模な油田を確認していないだろう」

 「だが、温泉はあるぞ」

 「んん、温泉は、ポイント高いな。富士山並みに綺麗な山もあるし、絶景だし」

 「あのなぁ 扶桑(北東シベリア)・大和(カムチャッカ)州で核実験できないのゼネコンのせいだぞ」

 「あいつら、分別無く開発しやがって」

 「皮革業者も動物愛護教会まで巻き込みやがって、矛盾しているぞ。あいつら」

 「扶桑州と大和州の人口400万」

 「アラスカより、開発されて更に人口が増える予定だよ」

 「また予算が、そっちに引っ張られそうだな」

 「あいつらのせいで軍が貧乏なんだよ」

 「北も、南も、じゃ オリンピック後も厳しいかな」

東シナ海   石油掘削基地 & 飛行場 & 漁業基地 & 海軍基地
  全長×全幅 (m) 面積 (u) 高さ×喫水 (m) 浮体重量 建造費
第01期 1000×200 200000 4×2 100000 500億

 「恒久基地の割には、手堅く収まった方じゃないのか。計画だけは・・・・」

 「・・・・計画だけはねぇ」

 「メガフロート構想全体は、4000億も出せば・・・・」

 「ふぇ〜」

 「一応、油田採掘が始まってからの増築だがね」

 「油田で元を取るという感じだろうな」

 「4兆円の国家予算で、4000億は辛いよな」

 「国家予算の10分の1かよ。元取れるの?」

 「さぁ〜 ゼネコンもむくれるよ」

 「しかし、ゼネコンも近くに油田があった方が良いと思うんだ」

 「東シナ海の制海権という観点でもね」

 「13万トンもある日章丸建造したのに。そりゃないよ。だけどね」

 「ゼネコンは、扶桑と大和でも十分開発できると思っているんだろう」

 「中国がチベットを向いている間に、やってしまった方が良いとも思うが」

 「それは道理だな」

 「建設させて無理やりインフレ起こすのもありかも」

 「んん、戦後は、それでも、いけたがね・・・・」

 「しかし、中国軍は、チベットまで山道を広げて、戦車を登らせてるぞ」

 「やばいかもしれないな」

 「あんな酸素の薄いところに戦車を持っていくなよ。普通エンストだろう、非常識な連中だな」

 「ヒマラヤ越えしないと戦車を持っていけない宗教連合軍は辛いな」

 「軽戦車じゃ・・・・」

 「だけど。C130輸送機は、いいよな」

 「ライセンス生産できるようになっただろう」

 「キューバ危機とチベット戦線維持のためだろう」

 「チベットに近い日本に部品を作らせれば安く上がるし稼働率も上がる」

 「日本のエンジンなら微妙に性能も上がるし」

 「アメリカ資本もえげつないよな」

 「地球の裏側にまで手を出すことないだろう」

 「チベットの利権でソコトラ島の維持費をまかなおうとしているのだろう」

 「けっ! ミッドウェーの基地建設といい」

 「なんか、日本に圧力かけているよな」

 「あそこ、随分、埋め立てているだろう。どうなっているんだ?」

 「さぁ〜 真珠湾並みとも言われているけど・・・軍事機密だし」

 「こわ〜」

 「だけど、ミッドウェーよりニューギニア。もっと、強力なアラスカの方がな・・・」

 「アジアの権益保護のためだろうけど。アメリカの軍産複合体が強すぎるな」

 「あそこだけで、日本の予算を超えてないか」

 「第二次世界大戦で、アメリカが良い思いしたからだろう」

 「日本との戦いでケチがついたとしてもブラジル利権で大きいし」

 「アジアも、それなりに食い込んでいる」

 「利益率の良さでは、不良債権を国民に背負わせられる軍需産業だよな」

 「日本も、やっているけど、輸出価格を落として、埋めているからな」

 「だけど、ライセンス制限が下がったおかげで買い物が増えただろう」

 「結局、台所は苦しいよ」

 「牙鳳も、牙龍も性能を向上させたかったからな」

 「いや、わかるけど」

 「155mmも射程を延ばすって?」

 「元々、65口径だろう。命数の問題で抑えていたけど」

 「指向性火薬と冶金の技術が向上しただろう」

 「砲身と砲弾の価格は高くなるけどね」

 「その気になれば、40kmから45kmはいけるよ」

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 「高ぁあ〜 しかし、下手な対艦ミサイルより使えるかもしれないな」

 「巨艦巨砲も面白いかもしれないがね」

 「砲弾だと誘導兵器に負けるし」

 「砲弾と違って、ミサイルは燃料が続く限り加速できるから速いし」

 「開発中の彩凰 (さいおう) も、いけそうなんだろう」

 「対艦ミサイルも発射できれば相当な戦力になるね」

 「まだこれからだよ」

 「彩凰を軍用機に改装しないとな。命名は、どうするんだ?」

 「ええと、なんだったかな。幻凰だったかな」

 「また、仰々しいな」

 「いや、幻で打ち消しているし」

 「本当は、撃墜されたくないから目立ちたくないんだろう」

 「民間機だから、また。改装にお金がかかるよな」

 「月影のVTOL機型が良くないか」

 「んんん・・・飛行場に合わせなくても人のいる場所に合わせられるから」

 「傭兵側は、便利だと思うし悪くないよ」

 「価格以外だろう。機体価格で、3倍は出せねぇよな」

 「それも工場建設を別会計で、推定価格だぜ。チヌークを買った方が・・・」

 「いや、あれでも努力したらしいぞ」

 「努力より結果だろう」

 「あまりやりすぎると。安全性や稼働率に問題が出てくる」

 「飛行場に縛られたくないだけで、基本は飛行機として使いたいんだよ」

 「だけど、チベットでは使いたくないな。気圧低いし」

 「それ、あるある。高価すぎて使いたくないの、大和と同じ」

 「あはは、海軍は出撃させるの、かなり渋っていたらしいからな」

 「貧乏国が配備していい。機体じゃないかな」

 「どちらにしろ。オリンピック明けだな」

 アメリカの軍事ライセンス制限が上がると、

 性能可否は、予算の問題になってしまう、

 それだけの工業力が育っている日本だった。

 

C130H

幻凰 (彩凰)

P3Cオライオン

エンジン (馬力)

4508×4

5200×4

4910×4

全長×全幅×全高 (m)

29.79×40.41×11.66

36×38×11

35.61×30.37×10.27

翼面積 (u)

162.1

106

120.77

自重 / 全備重 (kg)

34,686 / 70,310

25,000 / 56,000

27,890 / 64,410

最大速度 / 巡航速度

600 / 550

800 / 640

760 / 600

航続力 (km)

3789 〜 7871

4000 〜 8000

2494 〜 9000

   

 

 キリスト教系 傭兵降下兵旅団

 チベット戦線で進撃すると酸素不足で息切れする。

 改良されても戦車はエンストしやすい、

 空輸に頼ったヘリボーンで戦線を突破すると楽だった。

 適当な方法は、ヘリによる独立した高台の占領だったりする、

 十分な空輸が見込めるなら敵の後方に拠点を建設し、

 補給を断てば中国軍は、退却するしかなかった。

 チベットは奪回した占領地の地下資源の10分の1を保障していた。

 金に目が眩んだ工業力を持つキリスト教系資本は色めき立つ、

 キリスト教と欧米資本家の聖俗連合をバックに、

 傭兵部隊がチベット高原に降りる。

 中には、宗教の大同団結と世界平和、チベット解放など

 大義名分を信じる兵士もいる。

 しかし、経済活動は純然と存在し、

 チベット軍が兵器・武器弾薬を購入するとき、

 借用書にサインするか、資源を売却する。

 当然、10分の1だけでは済まなくなるのだが中国軍に全て奪われるよりマシだった。

 チベット軍は、国益を奪おうとする中国軍に対する憎しみと、

 宗教連合軍に国益を売却しなければ国土を守れない苛立ちの反動なのか、

 士気は高く、凶暴になっていた。

  

 一度、高地への侵攻が始まると、

 退路を断とうとする軍と退路を守ろうとする軍で死力を尽くした攻防戦になっていく、

 互いの戦略と戦術を駆使し、知力、体力、気力を限界まで酷使して生き残ろうとする。

 高空では、ジェット戦闘機が空対空ミサイルを撃ち合い、

 双方ともアフターバーナー全開でジェット燃料を湯水の如く放出し、

 航空機同士が機銃掃射しながら交錯し、縺れ合って旋回し、

 撃破された機体が落ちていく、

 低空では、両軍のヘリが地表を縫うように錯綜し、襲撃し、

 機銃掃射と爆撃を繰り返した。

 この頃、注目された対空ミサイルだけでなく、

 チベットならではの小型酸素ボンベを背負った兵士もいる。

 緊急時は、こいつを使って動かしたいという要望もある。

 

 数十機のヘリが地表に近い高度で飛行していく、

 対レーダーのためだけでなく、

 プロペラの風圧を地面に押し当てることで、

 燃料節約と機体の安定を保つ地面効果を得るためでもあった。

 気圧の低いチベットでは、敵味方に関係なく、この戦術を使う。

 搭乗しているのはソビエトの特殊部隊だったり、

 西側の傭兵部隊やグルカ兵だったり、

 キリスト教系部隊は、英語に統合されていた。

 上空からナパーム弾が投下され、高山の中国軍陣地が焼かれていく、

 爆撃機が爆音が10000m以上の高高度を1000km/h近い速度で侵入して爆撃すると、

 爆弾の降下速度は音速を超える、

 そして、前触れもなく、爆弾が落ちて爆発、辺りを粉砕してしまう、

 その後、低空で侵入するジェット爆撃機が波状攻撃で精密爆撃を繰り返した。

 敵陣地は爆炎と爆音と土砂で覆われ、

 ヘリ強襲部隊は、一気に速度と高度を上げて、高地へと突入を開始する、

 噴煙に覆われた目標の高地と周りの渓谷から銃撃とロケット弾で弾幕が作られ、

 数十条の弾道がヘリ部隊へと伸びてくる、

 機関砲が命中したヘリが煙を吐きながら次々と落ち、

 生き残ったヘリが高地に強行着陸した。

 「急いで、山頂への入り口を押さえろ!! 中国軍が来るぞ!!」

 既に作戦前に計画を立て、わかりきった命令だった。

 機銃掃射に向かう恐怖に竦むより、

 標的となったヘリから離れることで生き残ろうと、

 兵士が飛び出していく、

 勇気というより、理屈で支えられた強い自制ともいえた。

 もっとも、怖気づいて動けなくかったら、

 上官に後ろから撃つと暗に脅されていたためでもある。

 空挺部隊は、ナパームで焼かれた陣地を制圧していく、

 ここを抑え切れば、中国軍を数キロほど後退させる事ができる。

 もちろん、中国側の空輸が成功すると、こっちが危なくなる。

 要は、その時、その時の戦略戦術で勝る方が有利であり、

 気合と士気で補えたとしても、不利を覆すほどでもない。

 グルカ兵・傭兵部隊は、山頂を押さえるため、焼けた高地の入り口を塞ごうとし、

 輸送路と高地回復を試みる中国兵・ソ連特殊部隊と銃撃戦を繰り広げる、

 攻防戦は、どちらかが諦めるか、根を上げるまで続いた。

 損失したヘリは想定内で収まりつつあり、

 作戦は成功しつつあると思うと緊張感が少し低下したのか、

 人の焼けた臭いが鼻についた。

 「成功しそうだな」

 「ええ、この辺、一帯のルビー、サファイア。どれくらい・・!?・・ぐっ!」

 次の瞬間、話していた部下が倒れ、

 慌てて岩陰に隠れる。

 ソ連のMi8MTが遠くに飛んでいるのが見えた。

 あの機体から撃ったのだろう。

 安定しないヘリ。

 ホバーリングの風圧を計算し、800m先から撃ったとしたら狙撃の天才・・・

 部下は、運が悪く、当たったと思いたい。

 

 Mi8MTヘリ

 「少佐」

 「ちっ! 隣のやつに当たっちまったようだ」

 「当てたんですか、少佐。この距離から」

 「ふ 当たったんだよ。しかし、これぐらいの幸運が無いと割に合わないな」

 「運が良かったのですかね。配属先にだったのに」

 「そうだな」

 「その銃は?」

 「これか、日本のタイプ38だ」

 「いいんですか? 支給品を使わなくて」

 「いいさ。ベトナムでポーカーに勝って手に入れたんだ」

 「それに敵はAK47を作って同士討ちさせている」

 「少しは、同じ気分を味わえばいいんだ」

 「どうします?」

 「隣の峠に撤退する。峠同士で狙撃戦も悪くない」

 攻防戦は、始まったばかりだ。

 

 

ソ連 Mi8MT アメリカ製 UH1H CH47D
エンジン(hp) 1700×2 1800 4800hp×2
主ローター直径(m) 21.29 14.63 14.63
全長(m) 18.17×2.50 12.77×2.91 30.18×18.29
全高(m) 5.65 4.41 5.68
自重/最大 (kg) 7260/12000 2360/4310 10475/22680
巡航速度/最大速度(km/h) 180/260 200 246/298
運用高度限界(km) 1900/4500 5750 5300
航続距離(km) 620 510 2060
       

 

 1963/11/22

 アメリカ第35代大統領ジョン・F・ケネディ大統領(46歳)。

 遊説先のテキサス州ダラスで頭を撃たれ死亡。

 副大統領ジョンソンが大統領就任。

 

 1963/12/10

 ザンジバル独立。

 

 1963/12/12

 イギリス連邦 自治国ケニア独立。

 

 1963/12/17

 朴正煕(パク・チョンヒ)が韓国大統領就任。

 

 

 日本政府が電子系企業の規格統合を狙ったのは、1950年代からだった。

 最初は、単純に最初につくったものを工業規格品にしただけであり、

 先行する企業6社(富士通、日立製作所、三菱電機、沖電気、東芝、NEC)に有利だった。

 しかし、創造性、企業理念、競争が阻害されると困ると規制緩和の声も上がる。

 バラバラで戦えば、資本力でIBMに負けるのであり、

 規格だけでも統合させるべきと、優良企業の開発部を集め、

 共同で規格統合を進める。

 幸か、不幸か、特許相互使用など業者間の譲歩と裏事情の癒着が進み、

 あまり人に言えない事柄で収まってしまう。

 この頃、アメリカは、IBM、バローズ、コントロール・データ・コーポレーション、

 ゼネラル・エレクトリック、ハネウェル、NCR、RCA、UNIVAC・・・

 IBMと七人の小人たちと呼ばれるコンピューターメーカーが業界を作っていた。

 アメリカの経済力が強くても7分割され、競争が激しければ潰しあったりもする。

 日本は、アメリカに占領されず、自由資本主義の競争精神の影響が少なかったのか、

 規格を統合し、その枠の中で競争するという。

 “抜け駆けは、駄目よ的な”

 “やっぱり護送船団方式だよ的な”

 “出るくいは打たれる的な”

 実に村社会的な構造でコンピューター関連企業体を作ってしまう。

 総合すればIBMに次ぐと言っていいほどのトラスト勢力となり、

 「規格ごとに分けるとして、問題は組み立て方だな」

 「LSI。と・・・言語ROMは、独立させたほうが良いな」

 「規格に沿って、品質と価格で競争できる」

 「いっそ、入力ROM、出力ROMも独立させよう」

 「規格をバラバラに分け、LSIとRAMを統合していいだろう」

 「基本ソフト(OS)もROMで決めてしまうか」

 「必要な処理結果やデーターは、主記憶装置に確保すればいい」

 規格さえ決まっているなら、

 少ない資本を有効に使うために細かく分けて集中するのが望ましく、

 更に規格さえ合えば良いのだから新規参入もしやすかった。

 IBM規格がハードとソフトを分割し、

 日本規格(JIS)は、ハード・ソフトを不可分とし、

 縦割り機能で規格を定めて分割し、

 後の日本規格(JIS)とIBM規格のコンピューター戦争の幕開けになっていく、

  

  

 カスピ海

 「なんだあれ?」

 イスラム過激派がカスピ海を滑走する巨大な飛行機を発見して撮影する。

 

 

 ポタラ宮

 写真の周りに数人の士官がいた。

 軍服はまちまち。

 「「「「「・・・・・?・・・・」」」」」

 「・・ホバークラフト・・・・じゃないよな」

 「原理は、わからないことも、ないが・・・・」

 「まさか、こいつが、攻めてくることはないだろうな」

 「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」

 「んん・・・・イギリスのホバークラフトで対抗する?」

 「「「「「んん・・・・・」」」」」

 脳内。

 チベット高原で、カスピ海の怪物とホバークラフトが砲撃戦。

 「「「「「んん・・・・・」」」」」

 「ないね」

 「「「「うん・・・・・」」」」

 「「「「「んん・・・・・」」」」」

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 「ミッドウェー海戦のあと」

 今度は、予算です。

 かなり大事だと思います。

 63年度、4兆円の国家予算で、やりくりしています。

 史実と違うのは、ソ連の捕獲物、アメリカの置き土産など使いまわし、

 戦後再建を推し進めたことでしょうか。

 関東が滅茶苦茶にされたにもかかわらず。かなり、底上げです。

 また戦後軍縮で軍事費をケチりにケチって、

 民主化する前段階で弱者切捨てで理不尽な強権発動をやっています。

 深く狭く集中投機。ケインズ真っ青の斜陽経済。などなど。

 公共投資と設備投資を行って、線と点で何とか体面を保てるように国家再建。

 地方は置き去りですが、いよいよ。面へと移行・・・・・

  

 残念ながら、田中角栄は、炭坑国家管理疑惑で失墜してしまいましたので、

 比較的健全で、まじめな官僚と、

 少しばかり、外国慣れした政治家でやっていくことに・・・・

 大規模な土地転がし税収も

 官僚を肥大化させてしまった特別会計も流れてしまいました。

 日本政府は、これまで通り、点と線の公共投資と設備投資に終始です。

 地方財政は、都市と基幹産業と幹線を除けば置き去りです。

 土地神話はなくなり、愛着分が加味される程度。

 無責任な債券繰越政策も減るのですが、

 成長率は、工業、貿易収支などになってしまうので急成長しません。

 面への移行は、民間活力任せになってしまいます。

 とはいえ、規制が、それなりにあって制御された形で民主化、緩和されていきます。

 農民が都会に出てきて、物価の高さに驚き、

 コーヒーも飲めずに、すごすごと帰っていく、

 そして、安値で土地が売られていく、

 もうしばらく、そういう日本になってしまいそうです。

 おかげで、土建屋の勢力が少し弱まって、東シナ海油田へ予算が・・・・・・・

 

  ※メガフロート建設費は、物価を概算で、5分の1にして、

    新規技術や設備工業投資で、4倍をかけました。

    適当なので、怪しいです。高くても安くても、素材のせいにしてください。

 

 

 

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