月夜裏 野々香 小説の部屋

     

After Midway

 

 

第78話 1968年 『徒然に流れて』

 

  

 観衆の見守る中、エンタープライズが横須賀に入港し、

 記念艦として晒されている大和の隣を通過していく、

 エンタープライズ艦橋

 「・・・大統領は、まだ交渉中か」

 「ええ、難しい問題ですから」

 「どっちが難しいかな、空母の売り込みとインド」

 「空母の方は、のらりくらり、インドは、流れに任せてじゃないですか」

 「日本人は、自分から状況を作るとか。流れをつくろうとか、あまり、考えてないようですから」

 「それでも印パ連合。市民権の売却。混血優遇政策で節目節目を押さえている」

 「変わった国です」

 「まったく・・・・」

 「・・・・・」

 「大和か・・・」

 「もう少し、大きいと思いましたがね」

 「モンタナより、大きいさ。少し短いがな」

 「中途半端に修復しているようです」

 「当時の戦傷を、そのまま、保存しておきたいのだろう」

 「戦争の惨劇を国民に伝えるためにな」

 「真珠湾のバンカーヒルと同じですか」

 「ああ、原子爆弾を受けた状態を可能な限り残している」

 「酷かったそうですね」

 「お互い様だろうな」

 「ええ、本当に・・・」

 「提督。この空母を引っ張っているタグボートは、大和というらしいですよ」

 「“ミソギ” か、我が国に無い発想だな」

 「日本は、空母を建造しないのでしょうか?」

 「空母を建造させようと思って、入港させているんだよ」

 「日本が空母を建造しないと張り合いがありませんからね」

 「おかげで我がアメリカ海軍は頭打ちだよ。部下のクビを切るのも不憫でな」

 「チベットで再就職ですか?」

 「アフリカと南アメリカ。傭兵に言わせると一番実入りが良いのはチベットらしい」

 「空母くらい、安く売ってやれるのに・・・」

 「日本は、時間的余裕があると、考えているのだろうな」

 「あるのですか?」

 「あるといえばアメリカ海軍にとって不利になる」

 「確かに」

 「北ベトナムに侵攻すれば良かったのに・・・」

 「軍産複合体も北ベトナムより、チベットが金になると、そっちばかりですからね」

 「宗教団体の後ろ盾があるなら叩かれないで済むし、怖いもの無しだ」

 「くそぉ〜 どいつも、こいつも空軍と陸軍の味方ばかりしやがって」

 「北ベトナムなら陸海空総動員できるだろう」

 「機動部隊の予算は高いですから・・・・」

 「日本なら2個や3個は作れるはずだ。手抜きしやがって」

 「空母無用論なんか出してみろ、スタンダードミサイルを官邸に撃ち込んでやる」

 「あはは、その時は、喜んでスイッチを押しますよ」

 「ったく忌々しい国だ」

 「最近は、パキスタンもデカイ顔してますからね」

 「平和賞受賞は間違い無しだそうですよ」

 「あいつら、アメリカを眼の仇にしやがって、言うこと聞こうともしない」

 「強硬派は減っていますが反白は大衆レベルで広がっているそうです」

 「全部、日本と絆が強いところばかりだ」

 「日本自体は、そうでないのですが面白い現象です」

 「成熟期に入ろうとしている日本と、カオスを経て黎明期から成長期に向かっている中進国の差だろうな」

 「価値基準の判断を個人に任せても良いという国と、国全体で国策を推し進めた方が良い国ですか?」

 「そんなところだ」

 「迷惑な話しです」

 「日本も中国と韓国から嫌われているだろう。似たようなものだ」

 「政官財を押さえている韓国より、アメリカの影響を跳ね除けた日本が居心地が良いのも不思議ですよ」

 「民主化も約束どおり進めているし、国民性がいいようだな」

 「ミッドウェーの圧力だけが原因ではあるまい」

 「約束を守れる国は、信頼できる」

 「インド問題。日本は、どう出ますかね」

 「カースト制の歪。ここにきて爆発だからな」

 「いちいち、日本の出方を確認しないと進められないとは、まったく・・・・」

 「インドに影響力のあるのは、日本とパキスタンですから・・・」

 「そして、イギリスとドイツですかね」

 「インドで革命が起きてみろ。チベット独立がどうなっていくか・・・」

 「厳しいですね」

 「そういえば、ソビエトは、クルド民族に武器弾薬を流しているようですし」

 「ふっ ソビエトもレーニン廟に迫撃砲弾を撃ち込まれて弱っていたからな」

 「イスラム過激派は、無茶苦茶やりますからね」

 「ソビエトも黒人を利用して反米を煽っている。いい気味だ」

 「黒人への差別は、緩和されているんですがね」

 「子供の頃は、もっと酷かった」

 「小金を稼いだ黒人は、南アフリカに移民していく」

 「アメリカ社会で生きていける実力のある黒人が南アフリカに移民している」

 「残る黒人は、ろくでなしだよ」

 「そして、南アフリカに移民した黒人が反白主義者ですか。面白くありませんね」

 「構わんさ。南アフリカの海軍が強くなれば、アメリカ海軍の予算を得られやすい」

 「確かに」

  

  

 北朝鮮が、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の暗殺計画を決行。青瓦台襲撃未遂事件。

 

 北朝鮮東岸 元山(ウォンサン)沖公海上。

 アメリカ国家安全保障局(NSA)の任務で、

 アメリカ海軍の『プエブロ号』(935トン。乗員83名)が電波情報収集任務中。

 北朝鮮海軍に襲撃され拿捕される。

  

  

 アニメ「巨人の星」放送開始。

 

  

 反体制派の中国人が数十人鴨緑江を渡る。

 「まったく。いけ好かない国ある」

 「ああ」

 「中国とソビエトを上手く利用して、立ち回ってるある」

 「こんな国。ただの緩衝地帯に過ぎないある」

 「だけど、漢字をまったく排除して、中国人を排除は問題ある」

 「だけど、ロシア人も嫌がってよりつかないある」

 「本当に金がもらえるあるか」

 「アメリカ兵士を助ければ貰えるある」

 「日付と時間は、合っているあるか」

 「日付と時間さえ、間違わなければ、お金持ちある」

 「間違えば、死ぬある」

 「このまま、地獄にいるくらいなら残りの人生を賭けるある」

  

  

 コンゴ、中央アフリカ、チャドが中央アフリカ合衆国を結成。

   

  04/04

 黒人運動指導者マーチン・ルーサー・キング牧師(39歳)がメンフィスで暗殺される。

 

  

 深夜、雲が空を覆う暗闇の洋上、

 幅1km。50条もの海水を吹き上げ、F4ファントムの横列編隊が突入していく、

 縁から更に漆黒の陸地に入った途端、

 監視所を含めた周囲が衝撃波だけで破壊され、

 吹き荒れる突風と轟音によって、何もかもが無茶苦茶になっていく、

 通信塔、レーダーが破壊され、

 対空ミサイル基地と駐屯地が爆撃される。

 鋼鉄爆弾は、建物を破壊するが爆発しなかった。

 催涙弾が無数に落とされ、

 一帯が白煙に包まれていく、

 月影VTOL4機が低空で侵入すると大きな建物の前に垂直に着陸。

 空挺部隊が飛び出していく、

 催涙弾で咳き込む北朝鮮兵士を次々に刺殺、銃撃していく、

 敵中にあって、無駄口を叩く者はなく、暗闇と静寂だけが身を守る。

 反撃してくる北朝鮮兵士を銃撃しながら建物の中に入っていく、

 プエブロ号の乗員を発見し、脱出が始まる。

 救出された乗員が月影VTOL4機に乗せられると、急速上昇し脱出していく。

 爆撃を終えて、上空を警戒していたF4ファントムが

 月影VTOL4機を護衛しながら撤収していく、

  

 グラマンE2ホークアイ

 「・・来たぞ!! ミグ・・・33機・・・いや、36機」

 「ファントム隊。救出部隊。これからレーダーを撹乱する」

 「後は、星を見ながら帰還してくれ」

 「「了解」」

 追撃してきたミグの編隊のレーダーが撹乱され救出部隊を見失う。

  

 F4ファントムの編隊が月影VTOLの周囲を飛ぶ、

 「やれやれ、久しぶりの日米共同作戦か・・・」 月影パイロット

 「パイロットだけだろう。高い買い物だよ」

 「国防長官が50人しか乗せられないジャンボ機を買わされたと、むくれてたぞ」 空挺部隊

 「毎度の、お買い上げ、ありがとうございます」

 「ふ、高いだけはあるか。新型戦闘機と交換してもいいぞ」

 「F14? F15?」

 「もう、知っているのか?」

 「知っていることは、内緒にしておいてくれ」

 「それは出世に支障ありそうだな」

 「ははは・・・プエブロ号の乗員は?」

 「80人だな」

 「そうか」

 「思ったより損害は少なかったよ」

 「それに月影に穴を空けられなくて良かった」

 アメリカ機動部隊。

 空母エンタープライズ

 報道記者が空に向けて一斉に撮影を開始する。

 月影が交替で空母に着艦し、

 救出部隊とプエブロ号乗員を降ろすと上昇し帰還していく、

 空母エンタープライズの艦載機と

 月影4機による元山奇襲作戦でプエブロ号の乗員80名が救出され、

 西側諸国で一斉に報道がされた。

  

  

   

 04/22

 キプロスで、国際人権会議を開催。

   

 インドは国内問題で騒然としていた。

 ソビエト・中国から供給されるトカレフ、AK47、F1手榴弾が、

 アチュート(不可触民)=ダリット(壊された民)に広がっていた。

 カースト最下層であるダリットの武装は、インド社会を根底から覆しつつあった。

 彼らダリットにとって、ソビエトは救世の国、中国は解放の国だった。

 一部外資系企業は、カーストの枠組みを無視し、採用するものの、

 カースト打破で即効性があったのは、武器だった。

 インド各地で、ダリットの銃撃事件が相次ぎ、

 軍隊と警察は、報復でダリットの村々を殲滅していく、

 しかし、一億いるといわれるダリットは、命以外に失うモノなどなく・・・

  

 インドのホテル

 数人の男たちが食事をしていた。

 街中に連射音が伝わる。

 「また、銃撃戦か・・・」

 「カースト制の問題は大きいな」

 「日本も士農工商があったがね。ここまで徹底していなかったな」

 「インドにも印華思想があってね。簡単に意識は変わらないだろう」

 「チベット独立がなければダリットに同情するね」

 「日本がカースト信奉者のガンジーをインドの首班にしたからだよ」

 「あ、あの頃は、き、緊急避難でして・・・」

 「というより、後回しにしただけだろう」

 「カースト制の破壊はヒンズー教の破壊に繋がるからな」

 「カースト制の破壊はヒンズー教の破壊より」

 「食料自給率の関係でインド社会の破壊に繋がるよ」

 「最近は、インドの食料自給率が上がったと思ったがね」

 「・・・普通の国は、食料自給率分しか、人口を支えられないんだよ」

 「階級格差を作って下から口減らしをするのは珍しい方法といえない」

 「宗教的に心臓を取り出していた国も、人食いの国もあったからね」

 「この国にいると餓死も一つの死に方と思い始めたよ」

 「この国ほど死が身近にある国は少ない」

 「餓死は、自殺より健全だよ」

 「健全ね・・・」

 「死から遠い国の方が非人間的になりそうだな」

 「この国でアルコールが制限されているのも食糧事情だろうな」

 「ヒンズー教ばかりが原因ではない」

 「本当は、酒が好きなんだろうな」

 「穀物が無いと餓死だよ」

 「しかし、このままだとインドは、大混乱になるな」

 「チベット戦線への出兵でアチュート・ダリットからスードラ(奴隷)に格上げになるそうだ」

 「しかし、高山病の関係もあって簡単にはいかないだろう」

 「ウィグルに送るのなら、ありかもしれないが・・・・」

 「素人を戦場に出しても混乱して危ないし、逃げ出すだけだよ」

 「内戦以上にウィグルが混乱するだろうな」

 「あっちも、こっちも滅茶苦茶になるな・・・・」

 「だけどインドの混乱で相対的にパキスタンが強くなってきている」

 「いまのところ、パキスタンは、非アラブ・イスラムの筆頭だよ」

 「トルコとペルシャ(イラン)がやっかんでる」

 「少なくともパレスチナ問題の采配は口出ししにくいな」

 「アシュケナジー(白人)系ユダヤ人とスファラディ(東洋)系ユダヤ人を戦わせて、アラブ人が高みの見物か」

 「酷いねぇ 宗教対立を人種対立にすり替えやがった」

 「アシュケナジー(白人)系ユダヤ人がどうでるかな」

 「ふっ」

  

  

 エルサレムで、アシュケナジー(白人)系ユダヤ軍と

 スファラディ(東洋)系ユダヤ軍が衝突。

 アラブ・イスラム諸国がイスラエル(アシュケナジー(白人)系ユダヤ)を非難。

  

  

 キング牧師に、ネルー平和賞が授与される。

 

  06/01

 インド各地でカースト制打倒の組織が作られ、組織的な内戦へと発展していく。

  

 国連総会、核兵器の不拡散条約NPT(核拡散防止条約)が採択。

   

  

 暗殺されたキング牧師の非暴力運動「貧者の運動」の大集会。

 黒人の「貧者の行進」を阻止。ワシントンに非常事態宣言が出される。

  

  

 ブラジルのリオで、政治的抑圧に抗議デモ10万人。

  

  

 チベット

 ソビエト空軍基地が襲撃され、インド兵士と中国軍兵士が撃ち合っていた。

 チベットでは、珍しくない光景と言える。

 しかし、ソ連空軍基地を攻撃しているのは中国軍。

 ソ連空軍基地を守っているのはダリット(インド)軍という世にも珍しい戦場だった。

 中国軍は反体制中国軍であり。

 ソ連空軍基地を守っていたのがダリット(インド)訓練部隊だった。

 反体制中国軍は、空軍基地内に侵入し、

 滑走路と格納庫の戦闘機が次々に爆破されていく、

 たまたま、訓練中のダリット(インド)軍がソビエト守備隊より早く対応したことで、

 ダリット(インド)軍が戦場で主導権を握ってしまう、

 ミハイルとアル・バハロフは、AK47を担いで格納庫の影から中国軍を狙い撃ち、

 「・・・ミハイル。爆弾を仕掛けた」

 「ここは、ダリット(インド)軍に任せて、下がろう」

 「くそぉ〜 中国軍め、一体全体、何を考えている」

 「中国反体制軍だとよ。さっき連絡があったらしい」

 「大隊全部が反体制派かよ」

 「中国人のバカが、どういう徴兵の仕方をしている」

 「中国の政治局員が寝返ったか、殺されたか・・・・」

 「訓練中のインド特殊部隊が近くに、いなかったら、やられていたな」

 「ああ」

 「ったく。バハロフ、腕は大丈夫か?」

 「おまえが、いなかったら死んでいたよ」

 「後ろからいきなり斬り付けてきやがって」

 「俺は、金輪際! 絶対! 中国人を信用しないからな!!」

 「パイロットが腕を怪我するなよ」

 「生きていただけでも運がいいよ」

 「援軍が来るまでの我慢か」

 「しかし、ミハイル。良くわかったな。あの中国人が敵だって」

 「・・・不自然だったからな。目の動きとか、何かを企んでいるような目だった」

 聞き覚えのあるキャタピラ音が丘の向こうから聞こえ。

 T34戦車が現れる。

 「・・・げっ! 戦車まで、持ち出しやがった」

 「・・に、逃げよう。この格納庫に誘導すればいい」

 「ああ、ミグ25が・・・・」

 格納庫に仕掛けられていた爆薬が爆発。

 ミサイルの誘爆に近くにいたT34戦車が巻き込まれ、ひっくり返る。

 「ミハイル少尉。バハロフ少尉。ファントム2機が接近している。急いで基地から離れるぞ」

 政治局員ジョセフが近付く。

 「敵機・・・」

 ミハイルが滑走路を見渡すとミグ17“フレスコC”が1機だけ残っていた。

 「あれで、撃墜してやる」

 「ばか、あんな旧式で勝てるものか、相手は、F4ファントム2機だ」

 胸倉を捕まれる政治局員。

 「うるせぇ!! 黙って援護しろ。2機とも落としてやる」

 「あ・・・ああ、わ、わかった」

 銃撃戦のさなか、

 援護されながらミグ17が滑走路を突っ切って急上昇していく、

 「」

 「」

 

 穴だらけのミグ17戦闘機が荒地に不時着していた。

 政治局員ジョセフとバハロフ少尉が近付く、

 機体が爆発しなかったのは運が良かったか、

 燃料が少なかったせいといえる。

 「・・・生きてるか。ミハイル少尉」

 政治局員ジョセフとバハロフ少尉が恐る恐るコクピットを除きこむ。

 ミハイルは、中で休んでいた。

 「ああ・・・怪我はない・・・二人とも・・生きていたのか」

 「ミハイル少尉。基地は壊滅」

 「反体制中国軍は、チベット側に逃亡したよ」

 「ミハイル。呆れたやつだな。ミグ17で、ファントム2機を撃墜してしまうとは」

 「・・・これから、どうするんだ?」

 「ヘリが迎えに来る。後方の基地に後退だ」

 どこからともなく、ヘリが近付いてきていた。

  

 

 日米英ソなど62ヵ国が核不拡散条約に調印する。中国は不参加。

  

  

  08/03

 イラク政府がクルド人への自治権付与を発表する。

  

 アメリカが、初の多弾頭核ミサイル「ポセイドン」と大陸間弾道弾「ミニットマン3型」の打ち上げに成功。

  

 

  08/20

 ソ連軍がチェコスロバキア軍事介入。

 ブレジネフ・ドクトリン(制限主権論)行使でプラハの春を踏みにじる。

 

T62A戦車

プラハ

 押し寄せる戦車が自由と民主化を望むチェコ市民を蹴散らしていく、

 プラハのホテル

 数人の男たちがテラスから路地を覗いていた。

 「いや、ソビエトの戦車は、カッコ良いなぁ〜」

 「んん・・・いいねぇ〜」

 「レオパルドも悪くないけど、精悍さでT62だよな」

 「ドイツ人は、機能重視で、ロシア人は、形から入るんだよ」

 「かたちねぇ」

 「しかし、ソ連もな〜 インドでは解放者」

 「チェコスロバキアでは抑圧者か」

 「やれやれ、御都合主義すぎるな」

 「御都合主義は、大国の特権だよ」

 「アメリカ人だってインディアンと黒人には、酷いものだ」

 「・・・・・」

 「国家の礎で国内の人権を磨り潰すか。他国の主権を磨り潰すかだな」

 「磨り潰される方は、たまったものじゃないよ。アメリカは助けないのだろう」

 「・・・無理だね」

 「だから、ノルマンディー上陸じゃなくて、ギリシャに上陸にすればよかったんだ」

 「あの時は、ソ連にツムジを曲げられるのがイヤだったんだよ」

 「シワ寄せが東欧か・・・・」

 「・・・あ・・・うげっ! 轢いちゃったよ・・・・」

 「「「・・・・・」」」

  

  

 国連総会

 パキスタン、インド、イラン、トルコがソビエトのチェコ侵攻と中国のチベット侵攻を非難を非難し、

 ソビエトと中国がインドのカースト制度。トルコのクルド問題を人権蹂躙と応酬し、

 議場が荒れていく、

 アメリカ代表は切っ掛けを失って呆然と取り残される。

 

 国連のラウンジ

 数人の男たちが談笑。

 「ははは、まるで金魚だったよ」

 「信じられんよ。まったく」

 「そうそう、こっちが慌てる」

 「しかし、あいつら、本気で食って掛かるから参るよ」

 「ソビエトに向かって “文句があるなら攻めて来い” か、パキスタンも言うもんだ」

 「普通、言えんぜ」

 「俺は意識が遠のいたね」

 「だがロシア人が絶句するところなんて、めったに見られないがな」

 「くっ くっ アメリカ人のなだめ役もね」

 「あのなぁ〜 攻めて、こられたら困るよ」

 「カシミールは西側の拠点でもあるんだから」

 「だけど、テロ・ゲリラ戦の応酬はエスカレートして酷い泥仕合だよ」

 「アメリカも追求したら良かったんじゃないか?」

 「黒人問題で言い返されたくないだろう」

 「人権問題は、お互いに後ろめたい事があるから、普通、なあなあで済ませるがな」

 「しかし、インドは問題だぞ」

 「いったい、どのくらいの武器弾薬が流れ込んでいるんだ」

 「山越えでも地続きだ」

 「AK47は大変でも。トカレフと手榴弾なら見つからないように運び込めるさ」

 「ところで、アメリカの黒人は、どうするんだ?」

 「黒人は、南アフリカに移民して減っているよ」

 「最近は、近代化が進んでいるせいか、ツエツエバエを見ても戻ってこなくなったな」

 「黒人は残っても行っても問題か・・・」

 「反白勢力は強まっているよ」

 「・・・・・・・」

 「日本に続いてパキスタンのおかげで有色人種も自信が付いたかな」

 「・・・・・・・」

 「議会が一斉にパキスタンの味方だからな」

 「だけど、アフガニスタンの代表は泣きそうな顔していたぞ」

 「そりゃ 通り道だからな」

 「チェコの代表も泣いてたよな」

 「そりゃ ケンカのダシに使われたとしても嬉しいわな」

 「だけど、パキスタンに主導権取られるのって不味くない?」

 「・・・・・・」

 「・・・・最近、人気あるから・・・・」

 その後、なぜかパキスタンで犯罪率低下が認められ。

 国民総生産が伸び、国威高揚が進む。

  

 

 

 海南国 遼東州

 小さな半島なのだが近・中距離弾道ミサイルが数多く設置され要塞化していた。

 中立地帯を挟んで時折、非公式な会談が行われる。

 「米中は過去、共に日帝と戦った同盟国ある」

 「日本は以前の如く。いや、以前より強大な国力ある」

 「インド、パキスタン、南アフリカ公国連合と4国同盟を結び、世界征服を画策しているある」

 「これは、明白ある」

 「アメリカは座して、ただ日本とその同盟国の支配を受けるあるか?」

 「ああ・・・日本は、いまのところ他国を侵略する意図は無いようですが」

 「そう思わせているに過ぎないある」

 「我が国は日本と歴史が長いある」

 「あの邪な倭寇の子孫は、我が国の文化と財産を奪って、いまの国力を得たに過ぎないある」

 「アメリカも、日本との交易で大きな赤字を抱えているある」

 「まあ、安い上に性能が良いからね」

 「アメリカも、いずれ、あの卑劣で下品な東夷に全て奪われるある」

 「日本人は人類にとっても害虫ある」

 「中国は、チベットの独立を承認すべきではないか」

 「チベットは悠久の昔から中国へ朝貢を送っていたある」

 「悠久の昔より、我が中国の属州ある」

 「チベットは、日本とその同盟国の策略と口車に乗って、反意を見せているに過ぎないある」

 「チベット反乱と他国の干渉は、内政干渉ある」

 「しかし、チベットの独立は国連でも承認されている」

 「拒否権で承認されていないある!」

 「チベットは中ソ両国にとっても重要な地域ある」

 「被害は甚大になりそうですな」

 「どうしても退いてくれぬあるか?」

 「アメリカというより、宗教連合が、でしょうな」

 「インドが革命されればチベットの命運は、どうなりますかな」

 「現在、建設中の山脈越えの鉄道。無駄ある」

 「・・・チベット高原は、陸の孤島でしてな」

 「水力発電、地熱発電、風力発電などが建設されている」

 「食料自給率も高まり、いくつかの工場も建設されている」

 「いずれは、単独でも戦えるようになりますよ」

 「ふっ 高山病は、いつまでも傭兵の味方をしないある」

 「もうすぐ百万の解放軍が高山病を克服ある」

 「チベット族など一飲みある」

 「チベット族の人権を蹂躙するような行為は見逃せませんな」

 「語るに落ちたある」

 「インドのカースト制度をアメリカが支援してるある」

 「たかが数百万のチベット族を守るため、インドの1億のダリットの人権を貶めるとは・・・」

 「・・・・」

 「我々 中ソ共産圏の方が、よほど、民主的ある」

 「それは、どうですかな。カースト制を支持しているわけではありません」

 「1億は多いです、しかし、それ以上のインド国民がいることをお忘れなく」

 「・・・・」

 「それに他国の国民より、自国内の人権をもう少し考慮すべきでは?」

 「黒人の様にあるか?」

 「・・・・」

 「そろそろ、建前でなく、本音で話しませんかな」

 「そうですな」

 「韓国の北進。困るある」

 「こちらも。これ以上、ことを荒立てる気はないですよ」

 「そちらには、北朝鮮を押さえていただきたいですな」

 「・・・」

 「・・・」

 「」

 「」

   

   

  

 瑞穂宇宙センター、

 赤道に近く、山岳にある宇宙ロケット基地は、それだけでも有利と言える。

 失敗する可能性は、常にあり。

 東側は、海である方が望ましい。

 問題があるとすれば、地震。

 発射台は、相応に地震に強い設計になっていた。

 打ち上げられる宇宙ロケットは、気象衛星が載せられている、

 重要でありながら失敗しても、それほど惜しくなく、

 成功すれば、儲けもの、

 白煙と轟音を巻き散らかしながら全高50mの宇宙ロケットが急上昇していく、

 そして、推進ロケットの切り離し、

 更にロケットが噴射して成層圏を越えて、衛星軌道へと乗っていく。

 歓声が上がる。

 「成功です」

 「ハードルが低いからな」

 「こんな山岳地帯にまで宇宙ロケット基地を持ってきたのですから」

 「ハードルが低くなければ、割損ですよ」

 「だな」

 「噴射口にレーザーを当てて、ロケット推進を助けるのは、進めるんですか?」

 「どうだろうな。まだ、ベクトルを連動させられるか、怪しいものだ」

 「出力にもよるが本体に当たったら爆発するからな」

 「これで、瑞穂も賑やかになりそうです」

 「先端工業が集まってくるだろうな」

 「どうです。みんなで、花見でも。イペの木が咲いているはずです」

 「そうだな」

 「南国の熱帯作物も直で味わえますよ」

 「おれは熟してないやつが好きだな、酸味が美味しいんだ」

 「日本人は、甘いのが好きですからね」

 「こっちは果実酒も多いですから。一通り、楽しめますよ」

     

イペの木

 

   

  09/17

 ソ連軍がプラハから一時的に撤退する。

  

  10/03

 ペルー、軍部のクーデター。

 

 

 赤レンガの住人たち

 「金がねぇ〜」

 「あの迎撃レーザーが余計だったんじゃないのか」

 「んん・・・キューバ危機で弾道ミサイルを何とかしろって、予算が割り振られただろう」

 「あれで、おかしくなったんだよ」

 「あの拾いものの特大ルビーもな」

 「007ゴールドフィンガーを見たときは、ヤバいと思ったよ」

 「「「「あははは」」」」

 「発電所直結の弾道迎撃レーザーは悪くないさ」

 「レーザー技術の応用なら、チタン加工にも使えるし」

 「だからって、月影VTOL機の部品工場というのもな・・・・」

 「まぁ 実戦で月影VTOLが証明されて良かったんじゃないか」

 「迎撃レーザーが駄目でもチタンの部品加工工場で、そのまま使える。保険だな」

 「保険ねぇ〜 戦略的価値を戦術的価値とすり替えられてもな」

 「迎撃レーザーも至近距離なら何とか使えるレベルだ」

 「しかし、収束率でいうと、ルビーより化学レーザーの方が良さそうだな」

 「んんん・・・・どっちも大気層だと、まだ、射程がな・・・」

 「地上発射でも、たくさん作るという手もある」

 「少なくとも核の直撃が、なければ、発電所とシェルターは無事」

 「電源を確保できるなら、新幹線搭載レーザーもありかな」

 「んん、低地で射程が短くなる分を移動することで埋められるなら悪くないな」

 「ジャンボ機は?」

 「出力不足だろう。相対速度で命中させられそうにない」

 「こりゃ 空母まで予算がいかないぞ」

 「ヘリ空母でも良いんだがな」

 「海洋管区は、北太平洋、南太平洋、日本海、東シナ海、南シナ海」

 「インド洋、南大西洋、地中海、北極海の9ヵ所」

 「1隻ずつ割り振ると9隻か・・・・」

 「北太平洋と北極海をまとめてもヘリ空母8隻いるよ」

 「インド洋と南大西洋をまとめても、7隻か・・・・」

 「それも、予備抜きでね。広すぎるよ」

 「予備は、何隻いるかな、稼働率で言うと2隻から、3隻位か」

 「ふっ 機動部隊なんて、とんでもないって感じだな」

 「そういえば、戦闘機の開発もあったよな」

 「だよな」

 「ソ連空軍は、いいよな、戦闘機を同時並行で何機種も開発しているからな」

 「次のエンジンは、10000kgだっけ」

 「駄目だ〜 足が出る。エンジンの推力で軍縮しようぜ」

 「そうそう、戦車も控えているし」

 「んん・・・戦車は、無理。先送りだな」

 「対潜魚雷は? ロケット発射が流行だぞ」

 「だよなぁ〜」

 「でも、アスロックは、最大飛行射程10km、水中30ノットで、5.5kmだろう」

 「日本の対潜魚雷だと水中35ノットで、40km。一概にどっちがいいとは言えないな」

 「因みに自動追尾で頭が良いのも対潜魚雷のほうだし」

 「でかいからな。性能向上でも余裕がある」

 「対潜ヘリが怪しいんだから、せめて、ロケット発射の対潜魚雷にしようぜ」

 「対潜魚雷は大きいし、ロケット発射は基礎設計から怪しいな」

 「SOSUS網と対潜哨戒機型の幻凰で何とかならないの?」

 「んん・・・数、次第だけど」

 「数ねぇ〜」

 「戦力バランスもあるし」

 「バランスねぇ〜」

 「予算があれば全て解決」

 「・・ない」

 

   

 赤道ギニア独立(スペイン)。

  

 PLO武装組織とスファラディ(東洋)系ユダヤが、ユダヤ・イスラム和解協定を調印。

  

  11/05

 アメリカ大統領選挙で共和党のニクソンが当選する。

  

  11/19

 マリでクーデター

 

 ニューヨーク教員ストは、ユダヤ人と黒人の権利の主張をも兼ねていた。

 アメリカ系ユダヤ人の主張は、アシュケナジー(白人)系ユダヤ人の主張そのものであり。

 分裂気味のスファラディ(東洋)系ユダヤをも排斥しよう、というものだった。

 「ソ連国内のユダヤ人を解放せよ」

 「ソ連は、現代のアウシュヴィッツだ!」という声も起きる。

 むろん、アメリカ系アラブ人とイスラム系とも対立関係になっていく。

 彼らは、次第にパキスタンと協調体制をとり始めていく、

 スファラディ(東洋)系ユダヤ人の味方をすることで、イスラエルに緩衝地帯を作っていく、

 アラブ・イスラムはユダヤに敵対していない、

 ごく一部の白人系ユダヤ人が起こしているテロ・ゲリラにしてしまう。

 某テレビ放送。

 「・・・我々は、600万人もの同胞をユダヤ人として殺されたのだ」

 「我々をユダヤ人でないというのなら。600万の同胞を返してくれ」

 「・・・・・・・」

 この言い分で白人系ユダヤ人が認められても。

 東洋人系ユダヤ人を攻撃する理由にはならなかった。

 この作戦で、アシュケナジー(白人)系ユダヤ人は孤立していく。

   

   

 ブラジル。

 人身保護令が停止。

 サンパウロ日本人街リベルダージも騒然としていた。

 戦中・戦後に掛けて一時的に減った日本人も、

 秋津州の成長に合わせ、ブラジルの日本人も増えていた。

 軍事政権が国会を閉鎖し、

 事なかれ主義の日本人は、忍従することに決めていた。

 しかし、軍事政権に反発する種族と民族は少なくない。

 あちらこちらで抵抗グループが摘発され、

 暴動が起こり、処刑されていく。

 リベルダージのホテル

 「・・・懐かしいねぇ 軍が議会を無力化しちまいやがった」

 「日本じゃ 30年も前の話しだよ」

 「青春時代だったよ」

 「あの頃は、軍人が多かったからな」

 「いまの日本は30万もいない」

 「集票でも少数派だから政策の主流になれないだろうな」

 「だけど、日本人より、ブラジル人の方が気骨がありそうだな、軍国主義に抵抗している」

 「日本人は、保守的だし体制に流されるのが好きなんだよ」

 「余所者だし、大人しくしていたいのさ」

 「事勿れと長いモノに巻かれて、日和見根性の言い訳か」

 「殺されたくないから抵抗しない。言い訳ぐらいしたくなるさ」

 「ブラジルに住む者がブラジルを作っていく」

 「住んでいる日本人にも権利がありそうだがな」

 「秋津州が大人しくしていてくれとよ」

 「まあ、そうだろうけど。それじゃ ブラジルで主流民族になれないぜ」

 「日本民族は、元々 主流にはなれない民族だよ」

 「地道な小売店をするのが好きだからね」

 「問題は、軍事政権が倒れた時、日本人がどう思われるかだな」

 「・・・体制派。ということにしておいてくれよ」

  

  

  

 日本 某電子開発研究所

 フロッピーディスク、

 マウス、

 ウインドウ

 新たな機能がアメリカで開発されると、日本もライセンスを取得。

 月影VTOLの元山奇襲作戦で裏取引があったとか、なかったとか・・・・・

 JIS規格コンピューターは、2バイト仕様。

 動作速度も、重量も、重たいものの、日本語プログラム入力を可能にしていた。

 また、主要言語にも対応している.

 プログラム開発も、それぞれの言語で行えるため、

 政府の後押しと合わせ、値段が高い割りに売れている。

 IBMで言語を変えようとすると、ハードディスクを書き換える。

 日本JISの場合。OS-ROMや言語ROMを取り替えるか、取り付ける事になる。

 データは、ハードディスクにあるのだが、この辺が違う。

 自国語開発も可能なことから、英語が苦手な人間も使いやすく、

 コンピュータのすそ野を広げる。

 「・・・しかし、割高な、コンピュータになったな」

 「国際派に対する。ドメ派の抵抗だな “日本語を大切にしよう” ってね」

 「別に国際派が日本の国益を考えないわけじゃないさ」

 「感性の違いを非国益と考えるのは、ドメ派の思い込み。島国根性だよ」

 「焦っているのさ。海外生活者と市民権を持った外国人も増えている」

 「感性の違いを消化しきれない日本人は多い」

 「それでも、昔よりは柔軟だよ」

 「村社会で、国際外交をやられると迷惑だがな」

 「丁度、国際派とドメ派が拮抗している状態なのさ」

 「日本の電子産業もインド人の助けがないと厳しいからな」

 「植民地だった国は、国際化では、有利だな」

 「3ヶ国語は、普通に意識されている」

 「出戻り組みとの摩擦も大きくなってきているけどな」

 「日本の村社会を壊しかねない国際派とドメ派の戦いは、今後も大きくなるよ」

 「まあ、先祖の墓守は、それなりに大切だがね。そればかりというのもな」

 「引き篭もり傾向に行くか、それとも国際外交で主導権を握れるか、微妙だな」

 「どっちが、というより。どっちも、という気がしないでもないな」

 「人間の感情は、合理的ではないのだから合理的にはできないよ」

 「結果として、どっちが正しいかも判断しにくい時がある」

   

   

 

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 月夜裏 野々香です。

 毎年、毎年、何かとイベントがあります。

 話題には、困らないかも、です。

 チベット独立戦争は、宗教国家連合が主役で戦って、アメリカも影が薄そう。

 中東戦争は、ユダヤ VS アラブから、

 本家(東洋系)ユダヤ VS 分家(白人系)ユダヤの対立に摩り替えられて、不発気味。

 インドは、アチュート・ダリット(不可触民)に武器弾薬を供給されて大変なことになりそうです。

  ※アチュート・ダリットは、同じです。ただ、体制側がアチュートと呼び。ダリットは、自称です。

    重複していたり。していなかったり。でしょうか。

 クルド人も本格的に独立戦争に向かいそうです。

 中国貧困層や反体制グループにも武器弾薬が流れ込んで、

 トカレフは世界標準の拳銃になりそうな勢いです。

 史実と違ってイスラム教と南アジア諸国域は、血気盛んです。

 そんな感じの『ミッドウェー海戦のあと』になってしまいました。

  

1964年人気漫画「サイボーグ009」

1968年にTVアニメ化

  

  

 

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よろしくです。  

1968年 昭和43年 誕生酒 (楽天)

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第77話 1967年 『平和を作り出す者は・・・・』
第78話 1968年 『徒然に流れて』
第79話 1969年 『求めよ、さらば・・・・』