月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

 

 

第82話 1972年 『命の価値は』

 ソビエトの核ミサイルが増え、相互確証破壊の時代。

 米ソが軍事的に均衡した状態で睨み合い。

 日本は、その隙間に経済成長を遂げる事ができ、

 おいしかったかもしれない。

 アメリカ合衆国のミッドウェー島は、大規模に埋め立てられ、

 アメリカ第7艦隊の前進基地として十分な機能を持ち。

 韓国と遼東半島は、地域戦略を制する戦力が配備されつつあった。

 この状態でソ連の脅威がなかったら、

 アメリカ軍の矢面に立たされるのは、日本であり、

 国際外交戦略で綱渡りを強いられたともいえる。

  

 東シナ海の飛鳥海底ガス油田開発により、

 日本の資源戦略は大きく改善されていた。

 ガス油田の利潤で都市と地方の地域格差が少しずつ縮まってくる。

 権限拡大で増長を狙う官僚側と、

 人口に占める官僚の比率を最適化したがる統治者側の鍔迫り合いが起きるのも、この頃。

 統治者側は、官僚が強過ぎて傀儡にされる事を恐れ、

 一定の制限を目論むが世論も巻き込んで物議を起こしていた。

 国民が自ら選択した政治家を信じるか、

 資格制度で能力の高い門閥官僚を信じるか、なのだが、

 どちらも白くもなければ黒くもない、

 政官財が組んで国民から吸い上げる方が健全なのか。

 国民が体制を不信し、相互対立と反発させた社会が健全なのか。

 前者は日本型で、後者がアメリカ型だった。

 首相公選の日本は、和を尊びながらも支持基盤が国民全体であり、

 議員は地域の利権票だった。

 政治家同士でも支持基盤が違うため政治基盤同士の衝突が起きたりする、

 国家を国家と成らしめるには人口に対し、一定の比率で官僚機構が必要になる。

 官僚機構は、民意の善良さ、モラルの水準によって増減し、

 国民全体のモラルが低いと、犯罪が急増し、

 政治権力機構は、力づくで押さえ付けなければならなくなる。

 過剰に必要なくても、少な過ぎると、国家運営に支障が起こり、

 肝心な政策決定で不発が増え、無能化しやすくなる。

 特定の官僚が過剰に大き過ぎると、特定産業と癒着が増え、

 不正腐敗の温床になりやすく、

 利益誘導が過剰になり国民にシワ寄せが行きやすい。

 結局のところ、国民、政治家、官僚、財界の不正腐敗とモラルは相互に結びついており、

 幸運なことに、

 諸外国に比べ、日本の政治家や官僚は、比較的、不正が少なかった。

  

  

 日本は、極東ソビエト軍、中国共産軍の脅威に対し、印パ連合を工作してしまう。

 中ソの背後を牽制することに成功しても

 軍事バランスの損益分岐点を越えては、何にもならないとする勢力がある。

 実のところ、この損益分岐点も、曖昧で怪しかったりする。

 チベット向けの戦力を欧州戦力と極東戦力の比率で分け、

 極東戦力がどの程度増えるか。

 必要とされる戦力増強分の予算と、印パ支援予算の差額だったりする。

  

 日本の某シンクタンク

 「・・・インドに対する投機と回収分の差額で言うと、ちょっと厳しくないか」

 「むかしの軍国主義を嫌っている日本人はいるし」

 「もう、大丈夫だという人間もいる」

 「属している利権団体で言うことも数値も変わるからな」

 「印パ連合による中ソ牽制を是とする国際派と、国軍強化を是とするドメ派の争いもあるし・・・」

 「結局、外務省と国防省の予算の取り合いだろう」

 「印パ投機と国内投資か・・・」

 「核兵器持っている国に侵攻する国は、常識的に無いと思うがね」

 「核兵器は、保険でも使えない気もするがね」

 「確かに核攻撃でもされない限り、核兵器は使いたくないね」

 「どちらかというと脅威より、国内事情で軍事産業の要求が強い」

 「それで食っているやつは、生活水準を落としたくないさ」

 「だけど、インドのダリット革命は、かなりやばそうだがね」

 「人間。正しい方ではなく。強い方に付きやすいよ」

 「しかし、インドのダリット反乱次第。回収次第だろう」

 「インドも、カースト制を捨てれば良いんだ」

 「それは、特権階級に安楽な生活を捨てろ、に近いな」

 「今の地位を失えば、ダリットに殺される。死んでも守りたいだろうよ」

 「ギリギリの線で妥協点を模索しているんだが妙案はないね」

 「ないよ。まったく。トカレフ様々だな」

 「中国の方は?」

 「あっちは権力闘争のついでかな」

 「工業化に邪魔な間引きがしたいだろうし、内戦も都合がいいんじゃないか」

 「耕作地が少ないのに良くやるよ。インドも本音を言うと近いかもしれない」

 「高地でも育つ作物を考えないとな」

 「耕作地が増えても人口が増えるから、根本的な問題解決といえるかどうか」

 「じゃ 人口抑制だな。産児制限で子供を一人に制限するとか」

 「農薬をたくさん使って食糧を増産する方法もあるがね」

 「農薬で人が死ぬだろう」

 「それも狙ってたりして」

 「酷いな」

 「耕作地以上に人口が多ければ、そうなってしまうだろう」

 「中国が膨張主義になると、周りの国は不憫だな」

 「周りの国に迷惑をかけないように内輪で殺し合っていたのだろう」

 「中華思想と中国の歴史に感謝しないとな・・・」

 「ったく。文革で何千万って単位で死んでも、減ったように感じないところが脅威だね」

 「インドもだ」

 「世界大戦より、文革と反乱の方がたくさん死ぬなんて、偉大な国は違うよ」

 「争点の米ソ思想戦が砂遊びに思えてくるよ」

 「中国とインドが求めているのは、スペイン風邪並みのウィルスだろうな」

 「人の手で、じゃないから権力構造は保ちやすいか」

 「じゃ 神の手かな」

 「死神も神様のうちだろう」

 「死にたくはないが少なくともウィルスなら恨みっこ無しだよ」

 「・・・食料自給率は、自然と調和しながら、というのがいいよ」

 「半島では食糧増産のため禿山を作っている」

 「そのうち、襟裳岬みたいになるな」

 「日本は企業農法で何とか維持されているがね」

 「食料自給率は工業化で低下傾向にあるよ」

 「制度上の優遇政策で工業地を北方に重心を移しているだろう」

 「それも、限度がある。人は簡単に動かない」

 「だけど、日本の高度成長は続いている」

 「今のところ、だろう」

 「テレビ、洗濯機、掃除機、車、電子レンジはいずれ行き渡る」

 「そうなったら、売れ行きは買い替え需要になるだろう」

 「大きな工場を維持して雇用を守ろうとするなら、海外に市場を求めざるを得ない」

 「そして、需要は、嗜好品に移っていくな」

 「より安くより良い物を求めようとすれば、賃金の安い国外に生産の拠点を移すことになる 」

 「国内産業は軒並み潰されていくよ」

 「日本が今のアメリカのような目に遭うわけか」

 「アメリカと違って、日本は食料自給率が良いわけじゃないから厳しいな」

 「日本は、土地が狭いからね」

 「水産養殖で減っている漁獲を埋められれば良いが上手く行かないようだ」

 「赤潮が出ているからな」

 「70年になって何で増えたんだ」

 「工業用水じゃないのか」

 「そうだろうが人口が多過ぎて、いまさら江戸時代には戻れまい」

 「規制するのが一番なんだがな」

 「規制する設備投資より、補償金が安かったりしてな」

 「あはは・・・・・」 ため息

 「予算を組むように提言するか、国の責任になりそうだ」

 「企業も、横並びなら、文句は言わないだろう。そういう国民性だし」

  

  

 01/ 

 北アイルランドでイギリス軍とカトリック系デモが衝突、13人死亡

 ダブリンで、3万人の群衆がイギリス大使館を焼き討ち。

 

 アメリカの貿易収支が記録的な赤字に達する。

 

 東証ダウ株価が3000円台となる。

 

 米ソの対立が増す中、

 間宮半島の国境のキリスト像型ホテルは、日本人よりキリスト教系に人気があった。

 怖いもの見たさ? 刺激? 信仰?

 上空から見ると指先をクレムリンに向けた “』” 型のキリスト像ホテルが建っていた。

 小雪が舞い散るウスリー川の対岸からソビエト戦車群が砲身を向けて並ぶ。

 ソ連兵が定期的に交替式を行なう。

 暖房のきいた展望室から見下ろし、

 ワインを口に含み、昼食を食べると料理の味も増すらしい。

 欧州で睨み合い、

 チベットで交戦中、

 しかし、極東を戦線に戦うほど米ソ対立も気前が良くないらしい、

 実のところ、自分で戦うより、

 衛星国や同盟国に武器弾薬を売って戦わせる方が楽だった。

 大戦後、誰しもが自由資本主義と共産主義の思想戦、

 冷戦になると予想していた。

 しかし、国家間の対立が脇役に追いやられ、

 主役は、宗教国家連合(イスラム・ヒンズー教)

    VS 反宗教国家連合(中ソ共産主義) との戦いに摩り替えられていた。

 アメリカ大統領でさえ “おまえ、邪魔だから口出すな” と宗教連合に疎まれ、

 反共で現実に戦っている宗教国家連合は信仰が高まり、献金が集まりやすく、やめられない、

 むろん、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、チベット密教、仏教の間で、

 主導権争いと反目と対立があった。

 このキリスト像型ホテルは、直にソ連の脅威、共産主義の脅威に接しており、

 宗教間の集会に都合がよかったらしく、

 戦友になると、歩み寄りやすく、

 多様な宗教指導者が正装し集まっていた。

 「ここで、イエス・キリストが救世主であるのか、預言者であるのか。問うこともないでしょう」

 対岸の戦車を見詰めながら。

 「・・・確かに互いに共通の敵がいるのに敵前で憎み合うのは愚かしいことです」

 「この国自体、キリスト教の人口に占める割合は、2パーセント」

 「それでも、このキリスト像ホテルは、聖地扱いですからね」

 「日本は、無神論ですか?」

 「仏教ですな。宗教人口は、人口の倍もいますよ」

 「キリスト教系の結婚式も多いですし」

 「クリスマスは、世界一、華やかでしょうな」

 「無節操ですな」

 「宗教的に無色寛容なのでしょう」

 「おかげで、こうして、集まりやすい」

 「半島に集まっても、こういったサービスは受けられませんよ」

 「まぁ・・・それは、言えてますな・・・」

 「ところで、アメリカの対日姿勢。硬化しているようですが?」

 「貿易赤字でアメリカ企業の売上が落ちているとか、経済的な理由ですよ」

 「日本の経済攻勢。欧州諸国も厳しいですな」

 「日本がキリスト教圏でないのも口実になりやすいですがね」

 「しかし、日米対立は、困りますね」

 「チベット戦線の献金に響く」

 「チベット戦争の主役は、国家ではなく。我々、宗教国家連合でなければならない」

 「日米対立は表面的なものでしょう」

 「アメリカも韓国・遼東半島権益を守るため、日本の支援が必要ですからね」

 「日本は、半島が共産化しても良いくらいに思っているようですが?」

 「日本の国防省でしょう」

 「予算増額が認められて結構だと思っている節もありますからね」

 「いや、日本が妨害しないだけでも半島は守れますよ」

 「どちらにせよ。極東で事を起こしてもらっては困る」

 「大統領は、票集めで日本に圧力をかけているだけで、国民に対するパフォーマンスですよ」

 「それにアメリカの極東戦略は、韓国と遼東半島に集中している」

 「極東の地域紛争で拠点を失ってもつまらないはず。大丈夫でしょう」

 「貿易の方は、平和的にギリギリの折衝でしょうな」

 「しかし、米ソ関係と米中関係も不安ですな」

 「同じ星に住んでいるのですから対立しても交流は必要でしょう」

 「互いに必要とする物を戦わず等価交換できるのであれば交換しますよ」

 「チベット戦線に影響がなければいいのですがね」

 「共産主義の脅威を煽って献金が集まるので、国も、もう少し合わせてもらわないと・・・・」

 「政府は、政府の都合がありますからな。おもに国民受けでしょうが・・・・」

 「確かに・・・すり合わせが必要ですな・・・・」

  

  

 04/

 ソ連とイラクが期間15年の友好援助条約に調印する。

 日、米、英、ソなど79ヵ国が生物兵器禁止条約に調印。

 「・・・・やれやれ、これで肩の荷が下りましたな」

 「まったく。味方の兵でさえ、生物兵器の管理と保全は忌み嫌いますから」

 「確かに、味方の砲弾に殺されては泣くに泣けませんからな」

  

  

 キプロス

 日本の監視軍がキプロスに派遣されて7年・・・

 治安と民族問題は好転しているものの、

 ギリシャ系・トルコ系の対立は収拾できていない、

 まだまだといえる。

 そして、国際人権会議。

 ここでやられては敵わないのだが・・・

 ブスくれる国連理事国、日本のせいでキプロスで行なわれている。

 結局、日本も、欧米諸国にキプロスを押し付けられ、

 腹いせの国際会議だったりする。

 焦点は、やはりインドのダリット問題が大きい。

 ダリットは民族問題より、階級問題だろうか、

 ダリットの中に上位階級の血がどれほど入っているかも分からない。

 どちらにしろ、人権問題であることに変わりない。

 

 とはいえ、過去の歴史では村を発展させるため、

 奴隷階級を作る性関係もあったりする。

 それなりに有効で現在、発展している国の礎にもなっている、

 本音の部分で言うと、いまは、やっていない。

 または、固定させていない、の違いでしかない、

 程度の差こそあれ、搾取はどこの世界にもあり、

 問題にするのは、やはり、建前といえた。

 総論で “人権蹂躙は、いけない” といえば、ほとんどの人間が頷く、

 せめて、階級を固定させない点にまでインドが妥協すれば良いのだが簡単ではない。

 共産主義が1848年に共産党宣言で産声をあげて124年間の新参者。

 カースト制度は、紀元前13世紀頃に始まり、

 3200年間を越えて現代にまで残っている。

 もちろん、紀元前8世紀のギリシャの民主主義より早い。

 インド人にすれば、唯物史観など眉唾物であり、

 新参の共産主義など “チャンチャラ可笑しいぜ” の境地に達していた。

 年期も神話の世界で

 “なんで、ポッと出の民主主義と共産主義者が偉そうに・・・”

 という反り返った態度。

 インド情勢は、ダリット反乱でそれどころではないのだが、

 印華思想は、中華思想に劣らず傲慢だった。

 面白いことに中国が人権問題を持ち出してダリットを支援し、

 ソビエトと中国はカースト制を攻撃して正義の味方のように思えた。

 もちろん、インド社会の転覆を狙っている。

 そして、インド、パキスタンも黙ってはいない。

 ソビエトと中国も、イスラム系、ウィグル族、少数民族を虐殺していた。

 互いに人権問題の証拠を腐るほど抱えて、いくらでも突付ける。

 欧米諸国と日本は、蚊帳の外で毒を持って毒を制すれば良いかと、

 下手に口出しすると、こっちまで巻き添えを組むと日和見だった。

 キプロス国際会議場

 国際会議で “日本人を喋らせ、インド人を黙らせたら、名人の議長だ” といわれる。

 (計算高いインド人 & 勢い付いたパキスタン人)

   VS (狡猾なロシア人 & 悪辣な中国人)の舌戦は、果てしなく続く・・・

 「いい加減、争うのは、やめろ!!」 議長のギリシャ系大統領がキレた。

 「「「「「「・・・・・」」」」」」

 沈黙の後、議場は爆笑に包まれた。

 恥っ曝しのギリシャ系大統領に、トルコ系副大統領は俯いたまま。

 このキプロス、国際的に恥をかくほど、混血優遇政策が進んでいく、

 おかげで混血系の人口も増えていた。

 しかし、民族対立が燻っているのも事実で離婚率もそれなり。

 それでも、流血事件は減り、

 随分、マシになったらしく、爆笑も長く続かない。

 混血児が優先的に公職に付くようになれば民族紛争も、おさまりやすい。

 日本の市民権が手に入りやすいのなら尚更である。

 幸か不幸か、

 東南アジア諸国と南アフリカ公国連合は、先に混血優遇政策を進めており、

 成果が現れており、民族紛争は統計的に小さくなり、

 代わりに貧富の差が大きくなっていた。

  

 

 事務レベル協議のテーブル。

 列強の代表者たち

 「・・・最近、俺ら、脇役だよな」

 「宗教国家連合と反宗教国家連合が勝手にやっているって感じだな」

 「チベット独立戦争も、いい加減、飽きてきたんじゃないか」

 「そりゃあ、ソ連、中国、インドは、国内が無茶苦茶になって、やめたいだろう」

 「本音は、そうかもしれないがね」

 「チベットは、地政学上でいうと中ソの脇腹だから難しいだろう」

 「適当なところで、ソフトライディングできないのかな」

 「どっちも、致命的なくらい武器密輸しているし」

 「テロ・ゲリラも送り込んでの報復戦だろう」

 「首都で銃撃戦だから終わらないよ」

 「そうそう、こっちは携帯用の小物でも需要ができて助かっているし」

 「ウィグル人もチベットで武装し、ウィグルに戻ってゲリラ戦をやっているだろう」

 「武器を渡すだけで、後は勝手にやってくれるからな・・・・・」

 「チベットの永世中立国とか、どうかな」

 「んん・・・口実にはなるけど・・・良いような、悪いような・・・」

 「宣言して、中立国になれるわけではないし。ソ連と中国、次第だろう」

 「中立国は、当然。非同盟だろう」

 「チベットは、政治、経済、軍事で、独立できるのかな。特に軍事」

 「資源は、あるがね」

 「借金の肩になっているよ・・・・」

 「しかし、戦争をやめたいときは、それで納得するんじゃないか」

 「ゲリラ・テロの報復も、それで収まれば・・・・」

 「落としどころとしては、悪くないね」

 「そういえば、中東は?」

 「パキスタンが、間に入っているよ」

 「アラブ資本に支援されたスファラディ(東洋)系ユダヤ人と」

 「ユダヤ資本に支援されたアシュケナジー(白人)系ユダヤ人の争いだな 」

 「今のところ、睨み合うだけで抗争にまで至っていない」

 「ハザール人と言われるのがイヤなのかな」

 「そりゃイヤだろう」

 「彼らにすれば、ユダヤ人として血を流して得られた称号に過ぎない」

 「本筋のスファラディ(東洋)系ユダヤ人を排斥すれば、本当にパレスチナでの正当性を失うよ」

 「しかし、※ イシュマイルの子孫であるイスラム系が本筋のイサクの子孫であるユダヤ人を助けるとはね・・・」

  ※ 中東問題は、ユダヤの先祖アブラハムの長男イシュマイル(イスラム)の子孫。

     次男イサク(ユダヤ)の子孫の家督争いに端を発している。

     因みに長男イシュマイルは、妾の子で放逐されている。

 「ったくぅ パキスタンが中東平和を作るとはね。やれやれ」

 「イスラム勢力を中東問題に取られたくないパキスタンの苦肉の策じゃないのか」

 「日本のキプロス処理と同じだよ」

 「・・・・・」

 「しかし、パキスタンにデカイ顔をされるというのも面白くない」

 「しょうがないよ。イスラム圏で、まともに交渉できる国は少ない」

 「イスラム圏は一枚岩じゃないが少なくとも、そこから切り崩せる」

 「そうそう、反共の勇士で、血を流しているしね。我慢、我慢」

  

   

 05/

 アメリカ・ソ連間で「ABM制限条約」「戦略攻撃兵器制限暫定協定」(SALT−I)が成立

 CIA工作員がアメリカ民主党全国委員会本部に侵入し、

 盗聴器をしかける(ウォーターゲート・ビルへの1回目の侵入)。

  

 06/

 CIA工作員5人が、アメリカ民主党全国委員会に盗聴器を仕掛けようとし、

 逮捕される(ウォーターゲート事件の発端)。

  

  

 チベット

 宗教国家連合軍は、軍事関連だけでなく。

 それ以外の施設も建設。充足する生活。

 虫一匹いないような高原、荒野と空、雹、濃霧の大地に風力発電装置が建設され、

 水力発電が設置されていく、

 大型のものもあれば、破壊を恐れて、小型で分散されていたりもする。

風力発電 水力発電

 軍需だけでなく、民需品の生産設備と、経済活動も行なわれる。

 チベット人への教育が行なわれ、職種が増え、

 豊かな者と貧しい者に階層が別れていく、

 もちろん、反共の象徴という意味もあったものの、富裕層の傭兵部隊が望み。

 そちらへ資本が流れた結果でもある。

 ドル紙幣が行き渡り、チベット人は資本経済を実地で学んでいく、

 そして、外国資本が投下され、民族工芸品の質も良くなっていく、

 素朴で粗野で荒削りなチベット人は、なにもない世界で宗教だけがよりどころだった。

 戦争で社会が荒れたものの、

 チベット密教の信仰も揺らがせ、

 形骸化させたのは西側の資本主義がチベット人の中に浸透し、

 近代化と物欲によって、根腐れさせられていた、

 代わりにチベット高原の神秘で開眼する将兵が現れ、

 帰還すると教会の門をたたいたり、教祖になってしまう。

 妙な現象と言えなくもないが祖国で新興宗教がはびこる。

 覚醒剤がはびこるのと、どっちが問題だろうかというところ、

 しかし、唯物主義であるはずの共産主義勢力側も似たような兵士が生まれつつあるという。

 この現象、不思議なことに敵と味方も異口同音で、こう言う。

 “天使に触れた” または “天使に触れられた” のだろう、と。

 そう、雹が止み、霧が晴れたあと、

 天の川が、はっきりと見える。満天の星空。

 宿舎を抜けて荒涼とした大地を見詰める。

 思いっきり、綺麗な空気を吸い込むと天使が触れそうな気配を感じる。

 風の音・・・

 それ以外、なにも聞こえない世界で感覚がぎ澄まされる。

 見晴らしが良過ぎて、小さな突撃銃では戦争にならない。

 低地の様に走れば間違いなく、戦闘に至る前に死線をさ迷う、

 遠くで散発的に銃声が聞こえ、狙撃銃同士で撃ち合う、

 そして、M60戦車とT62戦車の砲撃戦。

 どちらも長距離で撃ち合う事が多い。

 こんな場所で戦争するとは、なんて物好きなのだろうか。

 宗教的な開眼に誘われてしまいそうになる将兵が現れてもおかしくなかった。

  

  

 双方の戦線。高山病になれ、

 少しずつ、兵站が充実し。

 戦線への増援軍が集まりつつある頃。

 戦線は、反逆者の脅威を受けていた。

 中国・ソ連側は、ウィグル族、イスラム系、少数民族、貧困層・・・・・

 印パ・宗教連合国軍は、ダリット、少数民族、共産ゲリラ・・・・・・

 油断すると寝首をかかれるほどで危険な状況になりつつある。

 モスクワの一般家庭がイスラム系ゲリラに押し入られ、一家全滅。

 パキスタンの弾薬工場が共産主義者の襲撃によって爆発事故、数百人の犠牲者を出していた。

 国連では、互いの勢力が証人を出し、証拠写真を見せ合って罵る。

 憎しみの連鎖は、止まらない。 

 チベット 宗教国家連合軍 航空基地

 新型戦闘機F14トムキャットの周りで呆れ返る傭兵パイロットたち

 「高そうだな」

 「・・・・・こいつで何機落とせば、元が取れるんだ」

 「MiG25を4機か、5機・・・くらいか?」

 「フェニックスミサイルが6発。命中すれば、一回で元が取れるのかな」

 「空母を守るのには良いがね・・・スカシを喰らったら、こっちが損だよ」

 「誰が持ってきたんだ?」

 「決まっている潰れそうなグラマン社だ」

 「AIM54フェニックス空対空ミサイルを試して宣伝したいんだろう」

 「そして、こいつの実力を見せ付けて売る」

 「撃ちっ放しの地対地中距離ミサイルの方が安上がりのような気もするが・・・・」

 「核戦争と間違えられるんじゃないか。怖くて使えないよ」

 「はぁ〜 まったく、酷い世界になったものだ」

 「・・・で、誰が乗るって?」

 「エースに乗せてくれだと」

 「アメリカ海軍の最高軍事機密なんだろう」

 「戦訓と実証は、欲しいが万が一でも落とされたくないらしい」

 「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

  

   

 07/

 3年間で、7億5000万ドル以上の穀物を輸出する米ソ穀物協定が調印。

  

 北アイルランドのベルファストで連続爆発事件、

 その後、150人以上が死傷。

 警官二人。

 「・・・やれやれ、ゴム弾、プラスチック弾でも、当たり所が悪いと死ぬからな」

 「少なくとも、中央アジアより、マシだろう。あっちは、実弾だし」

 「しかし、カトリックとイギリス正教の対立か・・・・タラ戦争といい。キリスト教も黄昏かな」

 「最近は、仏教が良いと思えてくるよ」

 「日本人のせいだな。この辺も増えた」

 「俺の祖父は、空母イラストリアスに乗っていて、日本人に殺された」

 「俺の親戚も、南アフリカでダイヤモンド鉱山を取られて黒人に殺されたな・・・」

 「あれがなければ、もっと裕福だったのに」

 「それも、日本人のせいだな」

 「しかし、日本人って、じかに会うと、大した連中じゃないんだよな」

 「チンチクリンの幼児体系で短足ガニマタ」

 「あんな連中に負けたのが信じられんぜ」

 「オマケにまじめで、お人よしだぜ」

 「違反切符も文句一つ言わずに正直に払いやがる」

 「アイルランド人どころか、同じイギリス人を相手にする方が滅入るよ」

 「あいつら、市民革命をした事がないから猫みたいに大人しいのさ」

 「だけど、仏教で殺し合いは、あまり聞かないからな」

 「この辺も、仏教を研究する人間が増えている」

 「そのうち、キリスト教に仏教の要素を取り入れるかもしれないな」

 「ったく・・・・白人でキリスト教国家も弱くなったもんだ」

 「そういえば、南アフリカ公国連合の機動部隊が砲艦外交で来る」

 「外相部が大英帝国として格好悪いから、もう少し何とかしてくれ、とよ」

 「ちっ! アイルランド人め」

 「背信者の共産主義者にいいように操られやがって・・・」

 「くそぉ〜 マジムカついてきた。チベット戦線に献金してやる」

 「あははは・・・」

 「だけど、黒人の機動部隊が砲艦外交で、大英帝国に来るとは、絶対に終末だよ」

 「南アフリカも変わったよ。アメリカの黒人で知識階級が移民している」

 「むかしの南アフリカとは違う」

 「それに南アフリカの似非貴族は、日本人の血が濃くなって国力も上がっているそうだ」

 「財界は英語が強くて。似非貴族は日本語が強くなるか」

 「庶民はどうだろうな」

 「どこに生活を保障されているかで言葉も変わってくるさ」

 「まだ、英語が有利だろう」

  

  

 1972年7月27日

 F15イーグル 初飛行 (原型機YF−15)。

  

    

 08/

 名古屋高裁が三井金属鉱業のイタイイタイ病訴訟を棄却。

 会社側は上告を断念。

 

 

 森永乳業が55年の森永砒素ミルク中毒事件の責任を認め、

 患者と家族への恒久救済を受諾。

  

 

 第20回オリンピック、ミュンヘン大会開幕。

 

 

 チベット戦線

 2機のF14トムキャットがチベットの天空を架ける。

 世界最強の戦闘機。二人乗り、

 グラマン社のナビゲーターが付いて、電子戦を担当する。

 「・・・ジン。調子はどうだ?」

 「スレッガー。アメリカは、呆れるほど素晴らしいよ」

 「日本は、造らないのか?」

 「無理だろうな」

 レーダー索敵範囲の広さと距離に呆れる。

 『まともに戦えば、雷燕2型も負けるな・・・』

 正直な感覚。

 そして、中ソ航空部隊の反応が現れる。

 ブラフかどうか、不明で倍以上の機影がレーダーに映っていた。

 電子管制機が実機であると、確認。

 とんでもない距離でF14トムキャットが先制攻撃。

 フェニックス・ミサイルが発射される。

 このミサイルが良いのは、ミサイル自体にレーダーがあり、

 こちらで誘導しなくても良いことだろうか。

 12本のミサイルが敵航空機に向かって飛んでいく。

 レーダーから機影が消えれば撃墜が確認される。

 自分の呼吸が強く意識される。

 撃墜・・・撃墜・・・・撃墜・・・・撃墜・・・・

 自分を人殺しと思いたくない。

 パイロットは撃墜直前にパイロットが脱出したと強く思い込む。

 そして、先制攻撃に成功したかに見えた戦況は、移り変わっていく、

 「くっそぉ〜 あいつら、数に任せて、突っ込んできやがった!」

 “ジン、スレッガー下だ!”

 2機のMiG25が地表スレスレを接近、

 急上昇しながら、電子管制機を狙ってくる。

MiG25

 「・・了解」

 “こっちでチェフと電子妨害する、対空ミサイルは気にするな”

 電子管制機からフレアとチェフが大量に落とされ、

 2機のトムキャットが反転急降下しながら、電子管制機の間に割り込んだ。

 強力な電波妨害でトムキャットの電子装置が機能不全に陥る、

 MiG25から打ち上げられる空対空ミサイルが機体を掠め、

 フレアと電子妨害に攪乱されて蛇行し、明後日の方向で爆発する、

 急降下するF14と急上昇する2機のMiG25と撃ち合い、

 2機のMiG25を撃墜する。

 しかし、もう一つの刺客、2機のMiG25が高度20000mにまで急上昇し、

 降下速度に入っていた。

 成層圏、地表が丸く見え、

 宇宙が手に届くほど神聖な空域。

 機体の限界高度でMiG25も震える。

 「・・・ミハイル」

 互いに通信管制中で無線が使えず。手話で会話。

 「・・ああ、そろそろだ」

 「衛星の通信を受信するため、あれこれ、外して載せ換えたんだ。上手くいってくれよ」

 そして、監視衛星の誘導を受け、急降下。

 E3セントリーがMiG25の接近に気付いた時、手遅れに近かった。

 護衛機の援護は振り切られ、

 E3セントリーは、急降下による戦場からの離脱も間に合わない、

 マッハ3を超える機体は、それより低速の自ら機銃弾で自らの機体を撃墜してしまう。

 そのため、機体下部に下げられた。

 小型散弾を投下する、

 投下と同時に機体をゆっくりと持ち上げていく、

 小型散弾がE3セントリーを直撃。

 胴体を三つに裂かれ、撃墜されてしまう。

 この日、宗教連合国航空部隊は、初めて航空戦指揮管制機を失う。

 ジン、スレッガーのトムキャットが復讐で急上昇する。

 しかし、ミハエルとアル・バハロフのMiG25は、超高々度から急降下、E3セントリーを撃墜し、

 引き起こそうとしており、相対速度でトムキャットを圧倒する。

 トムキャットが機銃を撃ち始めたとたん、

 あっ! という間にトムキャットとMiG25が擦れ違う。

 2機のMiG25は、機体が分解しないように緩慢に引き起こされ、

 地面スレスレで機首を上げ、去っていく。

 航空戦は、トムキャットのフェニックス・ミサイルの先制攻撃で、

 中ソ航空部隊の指揮官機が撃墜され、陣形が乱されて混乱。

 その後、MiG25の強襲で指揮管制機が撃墜され、宗教連合軍も混乱。

 そして、混乱した状態の航空戦は、乱戦状態から、混戦へと移行していた。

 こうなると、格闘性能に優れた。雷燕2型、MiG19型が強くなっていく。

 そして、F14トムキャットは、格闘戦闘でも強かった。

 「万能戦闘機か・・・・」

 ジンは、割損と思いながらMiG19を撃墜していく、

 どうやら、中国空軍の戦域に入り込んだらしく、無線から中国語が飛び込む。

 指揮管制機がいれば、レーダーと通信を妨害し、

 有利な空域に誘導されるはずだった。

 しかし、指揮管制機が撃墜されると、

 トムキャットのECM。ECCMは、狭い範囲でしかカバーできなかった。

 こうなると、個々の技量に頼るしかなかった。

 トムキャット2機は、巧みに逃げ回るMiG21とMiG19を追い詰め、撃墜していく、

  

 

 09/

 ミュンヘン・オリンピック村。

 インド・パキスタン選手団とソビエト・中国選手団が乱闘。重軽傷者多数。

 オリンピック史上初の出来事。

 その後、よほど、恥ずかしかったのか、

 4ヵ国共同記者会見で、和解した事が発表される。

  

  

 10/

 米ソが戦略兵器制限条約(SALT I)の批准書を交換する。

  

   

 チリの酒場。

 日本のしょうが焼きがあったりもする。

 アジェンデ大統領の経済政策に反対してストが多発、

 非常事態宣言が出される。

 「・・・やれやれ、参ったねぇ 良くやってくれるよ、CIAは・・・」

 「しょうがないさ。労働者もストを起こした方が余計に金がもらえるのなら、ストもするよ」

 「アメリカも鉱山と通信関連企業をチリに取られて、完全に怒ったかな。商売上がったりだ」

 そこに黄色人がやってくる。

 海外に行くと韓国・朝鮮人は、日本人といる方が安全なのか、

 好き嫌いに関わらず、日本人のそばにいる。

 「お・・・李さん・・・景気は、どうだい?」

 「・・・ソコソコに儲かっているよ。病人と怪我人が増えているからね」

 「腕も上がるってもんだ」

 「あはは・・・・やぶ医者とは、呼ばれてはいないよ」

 「しかし、韓国人で、よく医師になれたものだ」

 「日本語を話す速度も、日本人より速いくらいだ」

 「そう、そう。俺が度忘れした日本語の固有名詞を李さんに出された時は焦ったね」

 「あははは、日本の医学書を必死になって勉強したよ」

 「最近は、英語の医学書も読まないと、いけなくなった」

 「日本語の分かる医者は、何であれ助かるよ」

 「医療用語になると辞書を見ないと困るからね」

 「それに日本人の医師より李さんの方が安い」

 「スペイン語も日本語の辞書を読んで覚えたので、お礼ですよ」

 「だけど、李さん」

 「日本語の医学書を韓国語に翻訳して韓国で出版した方が儲かったんじゃないのか」

 「いやぁ・・・そんなことをしたら自分以外の医者が増えて、実入りが減るでしょう」

 「あはは・・・・・まぁ それも頭が良いと・・・いうんだろうな・・・」

 「に、日本人でも・・・まあ・・・自分だけの特技と情報網にして教えないの、いるよな・・・」

 「り、利益保障だろう」

 「著作権がしっかりしていれば、いいんだがな・・・国としては困るだろうな・・・」

 「しかし、李さんは、何でチリまで?」

 「あ・・・朝鮮動乱で・・・・」

 「まぁ 戦争中だと・・・いろいろあるわな・・・」

 「日本語・・・覚えていて、良かったな」

 「ええ、でも、こっちは、スペイン語ですから、なかなか、大変でした」

 「お客は、日本人の方が多かったですけど・・・」

 「日本人の中にいれば、安全だろう」

 「ありがとうございます。助かりますよ。いろいろ庇ってもらえて」

 「安い治療費で診てもらえるのなら、お互い様だよ」

 「国同士で不仲でも海外に出れば、黄色人で似たもの同士だ」

 「・・・白人が有色人種を人間扱いしないことが海外に出て良くわかります」

 「日本人だけが例外です」

 「そして、日本人のおかげで、有色人種全体が引き上げられている事が良くわかります」

 「日韓併合がなければ、今の韓民族は半島にいなかったかもしれません」

 「それなのに本国は・・・・・」

 「最近は、黒人やパキスタンも認められ始めている」

 「白人の人種差別も、もう、少しなんだけどね」

 「韓国では、黒人やパキスタンだけじゃなく」

 「東南アジア諸国の人間さえも、韓国人を差別していますよ・・・」

 「こんなことなら、独立しなければ良かった・・・」

 「「「・・・・・・・」」」

 「ま、まあ、苦労しても主権があるのは、悪くないよ」

 「そう、そう。韓国の民族資本も育ちつつあるようだし。これからじゃないかな」

 「同族や国を売って作った資本です。日本とは違いますよ」

 「日本も労力を磨り潰されているけどね・・・」

 「売上に対する利潤や手取りなんて酷いものだ・・・」

 「詐欺に近いから、共産国かと思うよ・・・」

 「そうそう、俺らが本国に与えている利益に比べて、貰っている給料なんてな・・・」

 「宮仕え。宮仕え・・・」

 「まあ、国同士で、杓子定規に分けられても。海外じゃな・・・・」

 「焼肉も、キムチも、美味いものは、美味いからね」

 「最近は、チリ人も、日本語を覚えて、日本語圏も拡大しているのでは・・・」

 「それもな。CIAの連中が、うざったくてな」

 「共産主義を目の仇にするのは良いとしても北風で押さえ込むからな・・・」

 「南半球だと南風だな」

 「南半球ではな・・・」

 「しかし、それほど、共産主義を恐れることもないだろう」

 「北ベトナムも共産化しているが南進より、北進と中国を恐れて日本とソ連と友好関係だ 」

 「共産主義を広げているようにも思えない」

 「北ベトナムは、食料自給率がいいからな」

 「それにホーおじさんが良かったんだよ」

 「社会は、停滞、硬直気味だけど不正も、腐敗も、まだ少ないから経済は悪くない」

 「日本とソ連が一緒に緩衝に入って支援しているところは、世界でも例がないからな」

 「日本の利権がある。それに北ベトナムもソビエトより、日本から学ぼうとするし」

 「しかし、チリは、アメリカのお膝元だから厳しいよ」

 「クーデターも起きかねないね」

 「はぁ〜 今のうちにチリの軍部とルート作っとかないとな」

 「できれば、普通選挙でやって欲しいよな」

 「・・・あのう・・・もし、チリの状況が悪化したときは・・・・」 李

 「・・あ・・・そうだな・・・ブラジルが良いかもしれないな」

 「あっちはポルトガル語で軍部独裁。居心地は悪いけど」

 「有色人が多いから差別も少なくて、経済力が強くて実入りが良い 」

 「サンパウロの東洋人街で日本語を話せば、日本人だと思うし、紹介状も書いてやるよ」

 「本当は、秋津州と言いたいが日本の領土だしな」

 「それは、わかっています・・・・」

 「なあに腕の立つ医師で日本語が分かって、治療費が安いのなら喜んで庇うよ」

 「しかし、俺らも、やばくないか」

 「インドより安全だろう・・・たぶん」

 「たぶんかよ・・・・心もとないな・・・」

 「んん・・・しかし、ここで逃げると干されそうだしな」

 「宮仕いの辛いところだよな・・・」

 「死中に活を求めて・・・・」

 「どうするんだよ」

 「んん・・・」

  

   

 

 パリ。

 欧州共同体(EC)の首脳会議が開かれる。

 出雲州は、EC共同体に準加盟という形になっていた。

 その方がEC、日本とも、都合が良かっただけとも言えた。

 「・・・ようやく、統合が進むな」

 「経済・流通だけでも助かる」

 「ところで、印パと中ソの和解は、国家レベルで、何とかなりそうなのか」

 「さぁね・・・チベットの中立化で話しがつくかもしれないが・・・・」

 「テロ・ゲリラが収まらないだろう」

 「犠牲が大き過ぎる上に密輸された銃器が多すぎる。火種は尽きないよ」

 「相互に政治亡命を認めるらしい」

 「出すのは良いとしても、受け入れは、イヤイヤだろうがね」

 「結局、アメリカに亡命したがるんじゃないか」

 「それは、言えるな」

 「ロシア・中国人がインド・パキスタンに行きたがるとは思えないし。その逆もないな」

 「しかし、ある程度、少数民族の人権を認めないと」

 「どうだろうな」

 「4ヵ国とも少数民族やダリットの人権を認めれば、それこそ国が崩壊する可能性も出てくる」

 「どこまで擦り寄れるかだ」

 「というより、少数派がある程度、妥協できないと血が流れ続けるだろう」

 「その辺の妥協点が問題だな」

  

    

 11/

 アメリカ大統領選挙で、ニクソンが再選

 アメリカとソ連が第2次戦略兵器制限交渉(SALT II)を開始する。

  

 12/

 ウルグアイ空軍のチャーター機フェアチャイルド1227のアンデス山脈遭難事故。

 16人の生存が確認される。

 生存者は死亡者の肉を食べて生き延びたことが判明する。

  

 

 第五次72年度

 “あかまつ” “つめくさ” “つゆくさ” “かまつか”

 “あかしで” “しらかし” “しらすげ” “とだしば”

 東京湾は、満艦飾に彩られ、

 上空は、雷燕2型、月影、幻凰が編隊を組んで新型艦隊を盛り上げていた。

 日本の6000トン級巡洋艦の戦闘能力は、高い。

 155mm砲は、ミサイルと比べて破壊力で劣っているものの、

 射程と命中率でむかしの戦艦を超え、

 対空ミサイル。対空迎撃砲。対潜魚雷など最高水準に達し、

 電子機器も更新している。

 赤レンガの住人たち。

 「・・・・ようやく、戦後の艦艇も、40隻体制か・・・ボチボチだな」

 「中国海軍の増強からすると、十分といえば、十分だが・・・」

 「所詮は、ソ連海軍の払い下げだよ」

 「8000トン級1134型が中国に回航してくるまで、大丈夫だろう」

 「1134型は、漂流するからな」

 「それに、でかくても対潜用だろう。155mm砲一発で誘爆じゃないか」

 「ソ連の原子力潜水艦は、領海からアメリカ本土を狙えるようになった」

 「当然、原子力潜水艦を守るため対潜強化は、するだろうな」

 「我が国も欲しいな。原子力潜水艦。孤島のICBMは不安だよ」

 「海底基地への核ミサイル配備が駄目になったからな・・・」

 「攻守を考えると、どっちともいえないがね」

 「日本の場合、SOSUS網の中なら、原子力潜水艦と戦えそうだけどね」

 「SOSUS網の予算が増えて、艦隊に回ってこなくなると困る」

 「それは、突き上げがきそうだな」

 「大綱見直しで巡洋艦を減らしても空母が欲しいところだ」

 「軍事費を増やしたくても軍人を増やしたくない勢力は、SOSUS網を広げる方を望むだろうな」

 「むかしより豊かで平均年齢が上がって、戦争したがりが減っているのに何を恐れているんだか」

 「票だろう。軍人が増えれば、そっちに票が流れる」

 「いったん勢いがつけば、発言力も大きくなる。そんなところだろう」

 「むかし、軍部に議会を無力化された記憶と民需系の反発かな・・・・・・」

 「量より質を高めたい勢力も多い。電子産業は特にそうだ」

 「JIS規格は、IBMとやりあっているが実のところ、どうなんだ」

 「不利だろうな。市場規模も違うし、開発費や研究員の数も違う」

 「国の予算でカンフル剤を入れても背伸びしても、簡単には追いつけない 」

 「救いがあるとすれば、日本語でプログラムが組めるが価格が高い」

 「日本でIBM系を使う企業も少なくない」

 「経済は、正直だからな」

 「資本主義だからね」

  

  

  

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 月夜裏 野々香です。

 『ミッドウェー海戦のあと』の世界。

 日本の政情は、右派・左派ともに過激ではなく、

 政治思想も史実以下の大同小異。

 政策なんて官僚任せでやっているので、

 議会は、思想も、政策もなく。ご都合主義の権力闘争です。

 国際情勢の都合で、主流派が有色人種派を選択すれば、

 反主流が反対するために欧米派を選択するだけ。

 国際派(開国派)とドメ派(攘夷派)の抗争もあるようですが、

 基本は、事なかれ主義でしょうか、流れに任せてです。

 それでも、健全なのは、史実より国民の利益を考えやすく。

 アメリカに対して、相応に抵抗できる、というところです。

 第二次大戦も、日本の場合、名目上の敗北なので、

 武士の気概も、史実より少し多いかもです。

  

 カップラーメンは、浅間山荘事件がなかったので、

 チベット戦線で、売れ行きに弾みが付く予定です。

  

 企業農法でサラリーマン化した農民のおかげで、

 離農者は史実より少なく自給率は、史実よりソコソコ良いです。

  

 日本のキリスト教徒人口比は、秋田系ドイツ人のおかげで少し増えて、2パーセント。倍です。

  

 1949年に売られ始めた日本の市民権。もう、21年です。

 日本の世界化か。世界の日本化か。

 見方を変えれば、どちらとも言えるのですが、人気は、アメリカ市民権と良い勝負というところです。

 少なくとも、有色人種の世界では、一部の国を除いて、人気ありです。

   

 日本の若年労働力人口(15〜24歳層)は、史実、1960年代で20パーセント。

 70年代なると、急速に低下していきます。

 『ミッドウェー海戦のあと』では、居住空間が広いので、もう少し緩やかです。

 それでも、若年労働人口は、低下傾向で、高齢者が増えていく予定です。

  

 半島は、自国の歴史に対して、かなり虚勢を張ったり、

 怪しいのですが中国とインドの歴史は、本物。真性。

 密度もあるので、こればっかりは、虚勢でなく、間違いなく、本気。

 ぐうの音も出ないところでしょうか。

 むろん、長けりゃ良いというものではありませんが歴史の重みは、あるでしょう。

 

 タラ戦争は、イギリスとアイスランドの間で起きた。

 漁業関係での戦争ですが実体は、紛争という感じで、史実どおりです。

  

 

 ウォーターゲート事件がアメリカ社会に与えた衝撃は大きいと考えられます。

 日本なら公安か、内調が社会党本部に盗聴器を仕掛けた。というところです。

 現実には、そういう事になっていなかったので良かったといえるでしょう。

 たぶん、この事件の後、喜んで探し回って、なかったので落胆したのでは、と、思ったりもします。

 関与のある無しにかかわらず。

 大統領のクビが飛んでも不思議ではない事件といえるでしょう。

   

 北ベトナムやチベット戦争など、一杯、書けそうなのですが大きくなると、

 ページを開くのが大変なので割愛、今回は、やめます。

 それとも、短編で別に書こうかな。という感じです。

  

 1972年です。

 アニメ画像を考えると、海南国経由でも、今のマイナス20パーセントというところでしょうか。

 日中国交回復、したいような、したくないような・・・・・

 

 

レオパルド2

  

  良心回路が・・・ 好きでした。  
 

      最弱ヒーローだそうです

    

 

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よろしくです。  

1972年 昭和47年 誕生酒 (楽天)

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第81話 1971年 『人世、人世で・・・・』
第82話 1972年 『命の価値は』
第83話 1973年 『平和の条件』