月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

 

 

第83話 1973年 『平和の条件』

 01/

 戒厳令のフィリピンで新憲法が発布。

 マルコス大統領に強大な権限が与えられる。 

 少年チャンピオンで手塚治虫の「ブラック・ジャック」の連載が始る。

  

   

 西ドイツは、奇跡の復興と言われ、

 他の欧州諸国のGNPを抜き去り、

 アメリカ、日本に次ぐ、世界有数の経済大国となっていた。

 西ドイツの経済成長、隆盛は、西側陣営の防衛のためであり、

 西側諸国の締め付けが緩和されたことで加速がついた。

 無論、ドイツ人の資質によるところも大きい。

 ベルリンには、東西を分ける壁があり、

 時折、東ドイツから亡命してくる住民がいる。

 ベルリンの壁を秋田系ドイツ人が二人で見詰めていた。

 扉の向こう側は、東ベルリン。

 「国が東西に分割されても世界有数の経済大国か・・・」

 「ドイツ人は、違うね・・・・本当に選民か?」

 「優秀なのは否定しないよ。堕落しているのは頂けないけどね」

 麻薬・SEXの寛容さと広がりは、ドイツの台頭を恐れる周辺国の工作でもある。

 「まじめなドイツ人は怖いからな・・・」

 「音楽は、斬新で良さそうだが・・・・」

 この頃、ハードロックからヘビーメタルの走りが生まれつつあった。

 「伝統音楽を崩しやがって、音楽の乱れは、心の乱れだよ」

 「ベートーベンやモーツアルトの時代じゃないし。ヴァイオリンの時代でもないよ」

 「ヴァイオリンは悪くないよ。響きが良い」

 「イタリア、チェコに負けても?」

 「ふん! あんな荒削りで適当に作っているくせに音が良いのが理解できないね」

 「少なくともヴァイオリンが幾何学じゃなく、感性で作られるのはわかるよ」

 「音楽より、政治と軍事で自立できないと国は駄目になる」

 「少し文化面を見直すのも悪くないさ。それが、まともならね」

 「政治・軍事で抑えられて、いいように利用された結果だよ」

 「人と金と物がそっちへ流れた結果だ。そのうち、メクラになっていく」

 「この壁、壊れる時が来るだろうか」

 「・・・壁が壊れる時は、戦争だよ」

 「ドイツ人は、同族同士で殺し合うだろうか」

 「大戦中はドイツ系同士の戦争だった」

 「しかし、同じ民族より、異民族が殺しやすいね」

 「それは、俺らか」

 「俺は、日系ドイツ人で満足しているよ。ドイツ人も良いが日本人も悪くないさ」

 「それにドイツの伝統は、秋田にありだよ」

 「ティルピッツも秋田の港で記念艦になっている」

 「西ドイツと東ドイツは、アメリカ、イギリス、ソ連、フランスの抑圧で精神を捻じ曲げられて」

 「本当のドイツ人といえない」

 「東西の経済格差を見ると、ドイツ人が優秀も少しばかり怪しいかもしれないな」

 「共産主義は、個人の欲望を抑圧する。当然だな」

 「だが、日本は、賃金格差だけなら、せいぜい、20倍」

 「人間主体で日本をみれば社会主義国。共産主義国だよ」

 「賃金格差だけな」

 「それ以外は、自由競争だ。トップが正当な取り分を得ていないのも不思議だがね」

 「5パーセントの人間が国家の総資産の9割を持つような国が正当かどうか」

 「需要を見つけて供給する」

 「その道を発見して、開拓、整地、必要なサービスを構築」

 「競争しながら生き残って、初めて経済的な自立で、物になる・・・」

 「絵空ごとで終わっている人間が大半だろう」

 「日本より、世界の方が正直だな」

 「日本語は、他の国の言葉を覚えるのに不利だ」

 「実力者は、国内に留まりやすい」

 「当然、賃金格差が大きいと叩かれやすい風潮だろう」

 「足の引っ張り合いも大きい。それで、賃金格差も小さいだろうな」

 「日本の八木アンテナが金で国外に流れたのは良い例だ」

 「日本も海外組が増えれば、当然、年棒に惹かれて、海外に出て行くだろう」

 「モラルの高い間だけだ。いつまで持つかな」

 「レーダーは、ドイツも酷い目にあったよ」

 「日本民族が海外に出るのは、悪くはないよ」

 「孤立した島国から孤立していない島国になるのは、視野が広がっていいだろう」

 「国という枠組みから民族が抜け出せて飛躍できる。ドイツ系の様にね」

 「自縛霊と浮遊霊の違いかな」

 「偏っているのがよくないと、言っているだけだよ」

 「日本は、満州が駄目になったが戦前の勢いは残っている」

 「海外州に1500万」

 「日本人の国外生活者は、300万。市民権を持つものは、300万。日系は、200万」

 「まだまだ、井戸の中の蛙だよ」

 「世界史に関与できるほど根付いていない」

 「ドイツ系の様に世界史の主流で関与できるだけの力はないよ」

 「だけど、白人と違って、植民地を貴族として支配したのと違う」

 「後進国でも生活苦に堪えながら、いや、有色人種と近い位置で根付いているのは評価できるよ」

 「アメリカが失っている排他的なフロンティア・スピリットとも違う」

 「スペイン・ポルトガルに近い融和的なフロンティア・スピリットだな」

 「まあ、日本人は、インドのダリットの反乱でも半分が残っている」

 「血を流すことで、インドの歴史に介入できることを知っているのかな」

 「どうかな。踏みとどまっている半分は、武士というより、サラリーマン根性かもしれない」

 「欧米人の真似をしているだけともいえる」

 「どちらにしろ、インド人の人口に比べたら芥子粒だ」

 「どちらも、一生懸命というのは共通しているよ」

 「だけどダリットも日本人には一目置いている」

 「普通に仕事を与えてくれたことで犠牲も少ないよ」

 「ダリットに協力したことで、カースト側に睨まれている」

 「しかし、犠牲が発言力なんだがな」

 「日本人も、名目上、大戦で負けて臆病者が増えたかな」

 「人権が強くなったからね」

 「死んだライオンより。生きた負け犬が良いと思うよ」

 「・・・・あ・・・出てきた」

 東側の扉から政治犯が手を振りながら出てくる。

 「・・・まったく、東側から出てくるのも、金次第か」

 「引き受け手があれば早いよ」

 「一人、8万マルクか・・・命を賭けるか、金を掛けるかだ」

     ※73年当時で、800万円くらい

 「そんなところだろうな」

 「・・・よう。出迎え、ご苦労」 と、ドイツ人。

 「どうだい。東側は?」

 「・・・んん・・・ロシア女たちが放してくれなくてな。まいったよ」

 「この色事師が。何人殺したんだ」

 「俺じゃないだろう」

 「女どもが俺を忘れたくない一心で戦地から戻った夫たちに毒を盛ったのさ」

 「野暮ったい夫に仕えたくなくてな」

 「良かったな、裏が取られる前に出られて、八つ裂きに遭うところだぞ」

 「しかし、お国のために必死に戦った兵士の妻と娘がスパイに奪われて」

 「毒殺されて、じゃ たまらんな・・・・・・」

 「けっ! ロシア人め、ベルリンでやったことを百倍にして返してやるよ」

 「・・・まあ、こうなると、どっちにも同情する気になれないがね」

 「局長が東側の士気とモラルを知りたいそうだ」

 「・・ああ、わかっている」

 軍事力を支える軍人。

 国家を支える国民のモラルや士気といったメンタル部分も貴重な情報源といえた。

 これは、単純な戦力比より、重要な要素が含まれていたりもする。

  

  

 扶桑(北東シベリア)州

 ベーリング海の向こう側はアメリカのアラスカ州、

 コリマ川の向こう側は、ソビエト連邦だった。

 北極圏でオーロラは珍しくない、

 北極圏でありながら、同じ緯度のどの地域より発展している。

 この地へ予算を投じることは、投資より投機に近い。

 むろん、回収のスパーンは長く、民間企業は不可能で官民一体で行われていた。

 税制と制度の優遇が認められ、人口が増加傾向にあるような地だった。

 それでも莫大な予算が投じられた結果の開発。

 日本国防省が僻み半分、やっかみ半分。

 つまり全部で・・・・・

 戦後の最大のバカ査定と陰口を叩くほどの予算が注ぎ込まれていた。

 “空母を建造しろよ” と言いたいのだが、やはり資源が欲しいと投機が続けられる。

 採掘の収益より、開発費が大きければ無駄。

 しかし、生産のための設備投資が加わると、少しばかり事情が変わってくる。

 プラス回収にまで天文学的な時間を必要とするのだが、

 日本人の強圧的ボランティア精神と奉公型労働価値説で遮二無二開発してしまう。

 これは、日本民族にしか出来ないだろうという次元で

 文字通り労力の磨り潰しなのだが、

 おかげで扶桑州の開発は、軌道に乗る。

 地下鉄も地の果てまで続いているように見える。

 本当なら軍事基地か、というところだろうが公共施設で側壁にテナント空間がある。

 白人観光客も唖然としながら地下世界を見詰める。

 アメリカ人、ドイツ人

 「・・・こりゃ凄い」

 「・・・線と点だけとはいえ、ここまでやるとはね。呆れるよ」

 「線と点の次は、面かな」

 「そこからは、民間だろうな」

 「しかし、悪くはないよ。オーロラを見ながらの会食と温泉。肌寒くてデートに持って来いだ」

 「デートね。こんな酔狂な金の掛け方、いや、捨て方をする国は、日本ぐらいのものだ」

 「軍事費と違って、掛け捨てではないな」

 「日本は、軍国主義化したくなくて、土建や建設に使ったんじゃないか」

 「それなら、もっと、開発しやすく、金を回収しやすいところに金を掛けても良いと思うがね」

 「海外州にお金を掛けると、国際派が強くなる」

 「国内に掛けるとドメ派が強くなる」

 「折衷案で、扶桑州なのかもしれないな」

 「なるほど・・・・全体主義国家と思ったよ」

 「この国は、むかしから、開国派と攘夷派が戦っている」

 「明治維新は、幕藩側と薩長側の戦いと言いながら」

 「もう一つの側面で開国派と攘夷派の戦いもあった」

 「織田で開国派が勝ち。徳川で攘夷派が勝ち」

 「明治維新では開国派が勝ち。大戦前は攘夷派が勝ち」

 「戦後は、開国派が勝っている」

 「で、今は?」

 「妥協案で扶桑州に金が流れているなら拮抗している、とも言える」

 「北緯60度以北で、これほど不自然に発展しているのは、日本だけだ」

 「平均年齢が高くなれば引き篭もりが増えるかもしれない」

 「その頃、扶桑州は、もっと発展している」

 「その頃は、メイド・イン・扶桑も増えているわけか」

 「まったく、日本は、時代の流れを味方に付けているとしか思えないね」

 「我がドイツは東側の脅威に怯えているというのに、日本は、安穏と将来への投機か」

 「自民族の労力を磨り潰せる国は羨ましいね 」

 「ヒットラーの時代ならともかく、我が国は、権利に五月蠅いから無理だな」

 「ドイツに無理なら、アメリカは不可能だよ。革命が起こる」

 「日本は、飛鳥ガス油田で、羽振りが良くなったのだろうな」

 「これで、扶桑州で、鉄鉱石の鉱脈が発見されたら、さらに日本の国力が増してしまう」

 「燃料を自前で使えるのは、コスト削減で有利だからね」

 「日本株式会社か・・・エコノミックアニマルめ・・・」

 「・・・・・・・・」

 「日本に助けてもらうのか」

 「たぶんね。ウォーターゲート事件。日本との関係を強化して、乗り切りたいと考えている」

 「関係ね・・・」

 「日本政府がアメリカ政府を信任する態度を取るか、日本に妥協を迫るか。分かれるところだ」

 「大統領は、点数稼ぎをしなければ、どうにもならない」

 「やれやれだな」

 「日本、西ドイツ、パキスタン、イギリス、フランス、インドの支援が欲しいものだな」

 「タダとはいかないだろう。日本は、属国じゃないのだから」

 「だから、西ドイツの方からも頼むよ」

 「やれやれ、出雲と秋津を人質に取っているんじゃないのか」

 「ふ・・・・経済が、ここまで、入り組んでしまうと、下手なことはできないな」

 「フランスとイタリアを煽って、出雲で貸しを作ればいいだろう」

 「まさか・・・出雲に地中海艦隊の基地があるからね」

 「出雲を刺激するのは得策じゃない」

 「・・・それで、日本側の要求は?」

 「難民の受け入れだ」

 「チベット独立戦争?」

 「ああ、終わらせたいらしい」

 「もちろん、いい加減に終わらせたいのは、山々だがね」

 「多すぎるだろう。インドは、納得するかな」

 「核になる主要な人間だけでも良いそうだ」

 「リーダーがいなければダリット革命軍は、雲散霧消」

 「平和の条件が必要ということか」

 「つまり、チベット独立戦争のため、難民を引き受けられるアメリカ合衆国は、平和を愛する国」

 「そして、その大統領を信任するとね」

 「それが、アメリカ国内の票に反映される?」

 「難民受け入れのマイナスもある」

 「しかし、同時にプラスもある。黒人が南アフリカに流れて、生産コストが増えている」

 「磨り潰せる労働力が減っていることを考えるなら、インド人の受け入れも悪くない」

 「少なくともメキシカンより国が安定する。票も微妙にプラスになると計算している」

 「なるほどね・・・・」

  

  

 01/27

 キプロスで、チベット独立平和協定が調印

 現在の戦線を国境線とすることでソビエト、中国、チベット、インド、パキスタンが合意。

 チベットは、独立と永世中立国を共同宣言。

 チベットは、資源を売り渡しての独立。

 主権国家、独立国としての価値を得るための代償とも言える。

 これを高いと考えるか、安いと考えるか、人による。

 民族主権に、それだけの価値があると、チベット人が言うのなら、あるのだろう。

 チベットが、独立を得るのも平和を得るのも、それらを得るだけの代償を支払ったからといえる。

 

 ソビエトと中国は、これ以上、モスクワ、北京で銃撃戦をされると野心があっても威信に関わる。

 政府の正統性と治安維持能力を疑われ、

 体制不信で不満分子増大など容認できるものではない。

 そして、十分な戦力がるなら、チベット高原は、スイス以上に攻めにくかった。

 標高4000mの荒野を標準装備以上の重量を背負って行軍など、

 まともな軍事教育を受けた者なら、やらないからだ。

   

   

 キプロス空港

 ジンとスレッガーは、戦功のおかげか、

 チベット独立平和協定調印の随行員になっていた。

 「・・・ジン。ようやく終わったな」

 「ああ・・・」

 「これからどうするんだ。ジン」

 「イタリアのワインでも、のんびり、飲んでみるか」

 「そうだな・・・それも悪くない。イタリアの女は最高なんだよな♪」

 スレッガーは、むふふ状態

 「そ、そういうのは・・・苦手だな」 苦笑

 「いいかあ ジン “今の自分の気持ちを本気にするんじゃない” とか、なんとか、言ってな」

 「押したり引いたりするんだ」

 「・・・・・」 苦笑

 「恋の駆け引き〜♪ 駆け引き〜♪」

 そして、反対方向からロシア側の随行員が向かってくる。

 「・・・ミハイル。ピラミッドを見せてくれるってよ」

 「あの政治局員も、少しは、俺達に気を使う気になったかな」

 「生きて祖国の土を踏めるんなら観光も悪くないさ」

 「そうだな」

 ジン & スレッガー。

 ミハイル & アル・バハロフ

 互いに一べつしただけ、

 宗教連合軍と共産軍の随行軍人たちは擦れ違っていく、

  

   

 03/ 

 北アイルランドの住民投票で、98%がイギリス国内に残留することに賛成する。

 

 水俣病判決で総額9億3000万余りの損害賠償命令が下る。

  

  

 南アフリカ公国連合海軍 in イギリス ポーツマス港

 28000トン級エセックス型 ズールー(ヨークタウンU)、コーサ(フランクリン) 40機×2

  ズールー(ヨークタウンU)

 6000トン級やまぶき型8隻

 空母ズールー

 吾妻・ククルス少尉は、褐色の肌をした日ア混血だった。

 混血優遇政策のおかげで将校への道も早い、

 これも、船板一枚海の底。実力と能力が重視されるべき海上で問題ありな人事といえる。

 下にいる者が、上にいる者より実力があり、能力があるでは組織的な危機といえる。

 しかし、お国事情で、統合が優先される、

 そして、吾妻・ククルス少尉の評価は、可もなく、不可もなく、悪くない、

 空母艦載機は、ハリアだった。

 これは、南アフリカ公国連合海軍だけでなく、

 インド海軍も同じ。

 日本の雷燕2型艦載機型は、離着艦に支障ない。

 比較的小型であることから運用も問題なし、性能もハリアより上。

 しかし、同じ単発で、信頼性も向上しているなら、

 艦載機の運用で柔軟性の高いハリアに切り替えられる。

 27000トン級エセックス空母は、58年、日本で38000トン級空母に大改装されていた。

 ジェット機の運用になると、トン数で心もとないことから、

 この決断は、正しいといえる。

 日本側も、雷燕2型100機弱の空母艦載機で張り合う気もないのか、

 機体の改良もせず、あっさり、退いてしまう。

 そして、この決断も間違っていないだろう。

 インドは、次期主力空母建造自体を検討中であり。

 公国連合海軍も次期主力空母の建造に対し、前向きともいえない。

 国防費でさえ、まず、予算ありきなのは、どこの国も同じだった。

 何しろ、護衛艦隊のバッチシステムの更新も大変な費用がかかり、遅れ気味。

 同じ、やまぶき型でも電子装備の更新差で、主砲の命中率が違う、

 なにより、南アフリカ公国も近代化と産業育成に予算を取られ、

 軍事費縮小が決まっていた。

 次期空母は、より小型の14000トン〜20000トンになりそうだった。

 これでは、ハリアを運用できるか怪しい数字といえた。

 それでも、構わないのだろう。

 手狭な巡洋艦にヘリ格納庫を分散するより、

 1隻にまとめてしまう方が運用と機能で有効性で得になる。

 そして、予算上、黒人国家の機動部隊を見せ付ける最後の機会になるかもしれない。

 「・・・ポーツマス港だ。タリーシャ軍曹」

 「イギリスか・・・・黒人の艦隊も、ようやく、ここまで・・・・・」 感慨深い。

 タリーシャ軍曹は、アメリカ系黒人で元アメリカ海軍だった、

 しかし、南アメリカ公国連合に帰化、

 先祖は、奴隷海岸かららしいが気にすることもないだろう。

 優秀な空母艦載機パイロットで腕だけなら、吾妻・ククルス少尉より上、

 アメリカが人種差別社会なら、

 南アフリカ公国連合も混血優遇政策であり、

 違う意味で人種差別社会といえる。

 海軍は、実力や能力を優先させるべきが実力と能力は二の次になっていた。

 同じアメリカ系黒人と結婚しても階級は据え置き。

 階級を上げたければ、どこかの原住民と結婚するか、日系人と結婚する方が早い。

 そこまでして、南アフリカ公国連合を統一させなければならないのか。

 自由の国・憲法の国アメリカから、

 黒人世界の理想を求めて来たアメリカ系黒人のジレンマがある。

 もちろん、自由恋愛だからといって自分の好きな相手と自由に結婚できるわけがない。

 妥協の恋愛。妥協の結婚。

 自分の望む理想の相手と結婚できる人間など数パーセントに過ぎないだろう。

 社会的地位を据え置きでも同じアメリカ系黒人と、

 社会的地位を押し上げるため違う人種と、で価値観も分かれる、

 「タリーシャ軍曹。イギリスに着いたらバッキンガム宮殿とビッグ・ベンを見ないとな」

 これから白人世界に向かうというのに日ア混血将校は差別を気にしないらしい、

 「お付き合いしますよ。ククルス少尉」

 「イギリスは、アイスランドとのタラ戦争でピリピリしています」

 「あまり羽目を外せないかもしれませんが」

 「それでも、観光ができるよ」

 日ア混血将校はウキウキ気分だった。

 南アメリカ公国連合海軍は、イギリス海軍 → 日本海軍 

  → 南アフリカ公国連合海軍の伝統を受け継いでいる。

 そして、公国連合艦隊の伝統は、育成して培っていく段階で、

 特色が出たり、色褪せたり、優性遺伝化したり、劣性遺伝化したり、

 国情と民族性と戦略的要素が絡んで取捨選択されていく、

 ここにアメリカ海軍の伝統を受け継いだ黒人水兵が入って融合し、

 さらに独自の海軍風紀が作られていく、

 『・・・アメリカ海軍より、少し落ちるかもしれないな』

 『むしろフランス海軍に近い・・・』

 タリーシャ軍曹は、美観優先で実用性二の次の軍服を見ながら考える。

 『・・・それでも・・・いずれ・・・・・』

 

 

 04/ 

 ウォーターゲート事件

 リチャード・クラインディーンスト司法長官と

 ハリー・ハルドマン、ジョン・アーリックマン両大統領補佐官が辞任。

 アメリカ合衆国は、チベット戦争での難民受け入れなど、問題ありの政策を採り、

 諸外国の信任を得ることで、ウォーターゲート事件を乗り切ろうとすしていた。

 諸外国は、アメリカ合衆国の信任と感謝を表明する。

 しかし、アメリカ国内での効果は、あるような、ないような・・・

  

 

 05/

 ヒロシマ、ナガサキ、オワフの非核団体と

 ニュージーランド、オーストラリアが、フランスの核実験を国際司法裁判所に提訴。

   

 

レオパルド戦車 40トン T72戦車 41.5トン

    

戦後の日本戦車開発

  54式 (蔵王) 61式 (蔵王改) 74式 (鞍馬)

全長

8.44 9.41 9.41

車体長×全幅×車高(m)

6.50×3.40×2.40 6.50×3.40×2.40 6.70×3.40×2.30
重量(t) 40 40 40 / 42
馬力(hp) 650 700 800
速度(km) 45 54 63 / 60
航続力(km) 270 300 300
装甲(mm) 25〜120mm 25〜120mm 25〜120mm
乗員 4 4 4
武装 52口径90mm砲 51口径105mm 51口径105mm
12.7mm×1 12.7mm×1 12.7mm×1
6.5mm×1 6.5mm×1 6.5mm×1
      車体の前後が油圧

 

 74式戦車の試作車両が富士のすそ野を走る。

 日本の戦後戦車開発は、捕獲した米英ソ戦車と、

 供与されたドイツの技術を融合させ、独自に進歩していく、

 54式(蔵王)40トン、90mm砲は、M48戦車の影響があり。

 61式(蔵王改)40トン、105mm砲は、時勢に合わせ、防弾を削り、105mm砲装備で中継ぎ。

 74式(鞍馬)40/42トンは、さらに独自色が強くなっている。

 61式同様、ライセンス生産された51口径105mmライフル砲L7A1を装備し、

 800馬力のディーゼルエンジン。時速63km。

 重量が同じ、射撃管制システムなど重くなりエンジンが強化される、

 そして、砲が大きくなると、どこが削られるかというと防弾装甲といえた。

 技術的な向上で可能な限り防弾も強化し、総合的に戦闘力が向上している。

 そして、輸出用と国内用で設計が違うのも、この車両からといえる。

 54式と61式は、外国車両の一掃。

 そして、輸出主導に引っ張られた感があり、中庸だった。

 74式から輸出用は、車内が広め、国内用は、車内が少し狭い。

 これは、たんに日本人が平均的に小柄である点が考慮されたに過ぎない。

 国内用は、防弾に2トン近く余計に回され、質的な差は、大きかった。

 もちろん、外見が同じで設計の違いは、機密。

 「・・・見かけは、カッコいいが、パッとしないな・・・・」

 「車高が低くて、コンパクトで流線型を採用で線が細く見えますからね」

 「遠くから見ると軽戦車ですかね」

 「120mm砲装備のチーフテンに負けそうです」

 「チーフテンと、戦うことはないだろう」

 「しかし、器が小さく見えるのも考えものだな。売れ行きに響く」

 「日本人は、欧米人より小柄ですからね」

 「国内用は、下駄の分だけ装甲を厚くできますよ」

 「車内が狭いということだろう。しかし、日本人も身長が伸びているだろう」

 「それでも、平均すれば、まだ小柄ですからね」

 「車体設計で有利なんですよ。奪われても敵は使いにくいですし」

 「装甲数十ミリ差で撃ち勝つこともありますからね」

 「まあ・・・40トンは、悪くないがね」

 「一応、65年生産のレオパルドより、カッコ良くて総合的に上回りますよ」

 「だが、レオパルドは、改装されている」

 「器は、簡単に変えられませんよ。こっちは最新の射撃管制システムです」

 「・・・・コンパクト過ぎて、何年持つやら・・・・油圧は、前後だけか」

 「はい、ソ連戦車が主砲の俯角を取れずに撃破されていることを思えば、上々かと」

 「チベットの戦訓が生かされるか、別にして、この日本で戦車戦が行なわれるかどうか・・・」

 「どちらかというと、秋津州や出雲州が喜ばれるかもしれませんね」

 「・・・広軌でトンネルが完成すれば、船を使わなくても間宮半島まで持っていける」

 「もっと重くても良かったんだがな」

 「個体性能を上げても日本で戦争するのは、遠ざかっているような・・・」

 「輸出するぐらいですかね。そうなると40トン以下が良いということで・・・・」

 「んん・・・・せめて、こいつをチベット戦線で確認できれば良かったんだがな」

 「現実に戦っていないと、買い手が付きにくいですから」

 「M60戦車とレオパルド戦車は一番人気ですよ」

 「それに、こいつは見かけが華奢ですから」

 「まぁ 南アフリカ公国連合、パキスタン、インドは、付き合いで購入してくれるらしい」

 「東南アジア諸国は、検討中だそうだ」

 「チベットは?」

 「レオパルドだったな」

 「やはり、山岳鉄道で運ぶなら55トンのチーフテンをやめて」

 「52トンのM60より、40トンのレオパルドに決まっている」

 「こっちの方が新しくて性能も良いのに・・・」

 「油圧に対する不安と実績だな」

 「それと傭兵でも、宗教連合軍で肩を並べて戦っている」

 「日本は印パから間接的にだから、どうしても出遅れる」

 「民間は、先行しているようですが」

 「民間だけはな・・・」

 「やはり、生産は抑えられそうですか?」

 「売れ行き次第だな」

 「戦車は、あまり予算が回ってきませんね」

 「今回は、瑞穂の宇宙ロケットに予算を取られたからな」

 「戦車の利益をほかに回されるのは、癪なんですがね」

 「仮に半島で戦争になっても、上は、日和見決め込むらしいから戦車は後回しなんだろうな」

 「国交回復はしないんですかね」

 「儲かるがな」

 「儲かるんですか?」

 「中国は特にそうだ」

 「農薬なんか売ったらバカみたいに使って農業生産を増やすだろう」

 「それだけで、日本の企業は儲かる」

 「・・・でも、農薬って使いすぎると危なくないですか?」

 「飢えて死ぬか、体を壊して死ぬかだ。当然、薬も売れる」

 「なんか、酷いですね。でも、日本に農産物が輸入されてきたら危なくないですか」

 「それに揚子江から農薬が東シナ海に・・・・」

 「危なくても年末にボーナスを払わなければならない社長が、どう考えるかなんて決まっているだろう」

 「自分の子供が障害になっても社員の生活のため、売るかもしれないな」

 「中国側を規制させれば、いいんじゃないですかね」

 「無理」

 「じゃ 日本側で輸入規制」

 「数が多いと無理」

 「・・・なんか、国交回復は、したくないですね」

 「儲かるんだがな・・・」

 「ブーメラン効果で国内企業がやられるのは、いやですよ」

 「個々の企業で乱高下があっても、中国株は、儲かるんだぞ」

 「あはは・・・」

  

  

 05/

 日本、オーストラリアなど16ヵ国がWHOに初めて核実験禁止決議案を提出。

 

 アメリカ、ウォーターゲート特別調査委員会の公聴会が始る。

 

 国連食糧農業機関(FAO)が

 西アフリカ6ヵ国で大旱魃のため1000万人が飢死する恐れがあると発表。

  

  

 06/ 

 西ドイツ連邦議会下院で性犯罪取締法改正案が可決。

 「性」と「ポルノ」が全面的に自由化される。 

 

 リビアがアメリカ系石油会社を国有化する。

  

  

 07/

 ウォーターゲート事件

 上院の公聴会が開かれ、

 ホールドマンの補佐のA・バターフィールドが大統領執務室に盗聴装置が存在することを証言する。

  

  

 08/ 

 ウォーターゲート事件、

 ニクソン大統領が特別検察官A.コックスが要求するテープの提出要求を拒否。

  

  

 09/

 チリの酒場

 総合的で客観的な情報は、先進国で受けた方が良く、

 具体的で肌身で受ける情報は、現地で受けた方がよかった。

 東洋人たちが沈痛な表情でテレビの映像を見詰めていた。

 軍隊が大統領官邸を襲撃している。

 そして、チリで軍事クーデター、アジェンデ大統領の自殺、65歳(誕生:1908/07/26)

 これで、自由の到来だろうか。

 チリの共産主義は終焉し、自由と平和が到来するだろう。

 嘘、ありえない、

 南米全体は軍国主義化する。

 武器を売るには都合がいいもののこの状況だとアメリカ製に決まっている。

 それ以外の民生品とサービスの流通は軍に社会資本を奪われ低下する。

 「チリの共産主義を滅ぼした正義の国アメリカか〜」

 「ウォータゲート事件を誤魔化しやがって」

 「アメリカ国内の不祥事の誤魔化しで、殺されるチリ人は、たまらないな」

 「まぁ 共産主義国だし、あえて反対はしないけど」

 「だけど、軍国主義国家か・・・・デジャブー・・・・」

 「力の信望者は、どこにでもいる」

 「人が力を信奉し、力に屈服するのは不自然ではないよ」

 「正義に惹かれる人間と、力に憧れる人間の差かな」

 「力の方が強いよ。公の場は正義が強いときもあるけどね・・・・」

 「正義か、公の場では、そうでもね」

 「多勢に無勢で路地裏に引き込まれたら大人しくなるさ。それが正義」

 「北ベトナムも、ついでにとか、ならないだろうな」

 「ウォーターゲート事件で、大軍を動かす余力はアメリカにないだろう」

 「政治不信を抱えたままアメリカ合衆国は存続できるか」

 「それとも臭いものに蓋をして押し切りかな」

 「韓国と中国だと、不正腐敗もなんのそのなんだけどな」

 「大陸や半島は、倫理観の欠如してるからな」

 「倫理観の強い者から死んでいくか、殺されていく」

 「腐敗不正で社会が成り立っているから、軌道修正しようとすると殺される」

 「ウォーターゲート事件はニクソン大統領が辞任しない限り、収まらないと思うな」

 「まぁ アメリカが健全なのは良いよ」

 「アメリカ社会は不正腐敗を許さないかもしれないな」

 「アメリカが道徳と信義を守るならニクソン大統領の辞任はプラスだね」

 

 

 10/

 アラブ資本に支援されたスファラディ(東洋)系ユダヤ人と

 ユダヤ資本に支援されたアシュケナジー(白人)系ユダヤ人が衝突。

 シリア、エジプトが、スファラディ(東洋)系ユダヤ人を全面支援。

 

 ウォーターゲート事件

 連邦高裁がニクソンの訴えを退け、テープを提出するように命令。 

 ニクソンがテープの提出の代りにテープの速記録を提出する声明を発表。

 アメリカ、土曜の夜の大虐殺と呼ばれる大量解任劇が始まる。

 E.リチャードソン司法長官辞任。

 特別検察官コックス解任。

 特別検察官、司法長官、司法副長官の執務室がFBIに封鎖。

 ボークが新司法長官となる。

  

  

 イスラエル紛争。

 スファラディ(東洋)系ユダヤ人 VS アシュケナジー(白人)系ユダヤ人

 白人系ユダヤ人の方が有利かと思えばそうでもない。

 チベット戦争が終わるとアラブ資本に傭兵部隊の一部が雇われ、

 東洋系ユダヤ人側についていた。

 そして、チベット独立が達成され、

 中東問題など、どうでも良くなっているパキスタンが信任される、

 元々パキスタンがチベット戦争に全アラブ・イスラムで対処するため、

 スファラディ(東洋)系ユダヤ人の支援を言い出し、

 その経緯から退けなくなっていたともいえる、

 パキスタンは、宗教連合国家でイスラム世界の顔となり、

 その発言も、西側だけでなく、イスラム世界でも意識されていた。

 おかげで、イスラエルは、イスラム系とユダヤ系のイスラエル警察が反り合っている。

 パキスタン系の軍警察がいるのも言い出しっぺが原因だった。

 ウルドゥー語・英語 ←→ ヘブライ語・アラブ語の簡単通訳辞書を見ながら、

 二人のパキスタン軍警察が現地人とシドロモドロで交流し、

 “ハザール人は、出て行け!”  “ハザール人は、カザフスタンに帰れ!”

 などの張り紙を億劫そうにを破り捨てる。

 イスラム系国家が世界に対し、義務を負う珍事は、あまりない。

 「・・・ったく、毎度毎度、よくやるよ」

 「いい加減に仲良くしろよな」

 本家ユダヤ人と自称ユダヤ人の争いなど、どうでもいいらしく。士気も高くない。

 それでも、少しだけ、誇りが、あるのか、公平にやろうとしているらしい。

 それでも、パキスタン国内の人種差別、民族紛争、言語紛争など棚に上げ、

 偉そうなことを呟いたりする。

 派遣される軍警察は、混血が多く。

 人種差別で苦しめられただけあって、悲哀だけは共感する。

 「・・・世界中、どこもかしこも同じなんだろうな・・・」

 「こんなことは、日本人にやらせればいいんだよ。単一民族で俺たちみたいな苦労はないから」

 「アメリカがやりたがっていたな」

 「あいつら、ウォーターゲート事件でボロボロだから、中東で良い格好したくて仕方がないんだろう」

 「中央アジアが、とりあえず、おさまって、焦点は、中東になるんじゃないか」

 「そういえば、ソ連が軍艦を売りたがっていたよな」

 「軍艦を売るから、海軍基地をくれって、ってか」

 「黒海じゃ、動きにくいからな」

 「しかし、ソ連も戦後なのに良く、金があるな」

 「ICBMを造るの減らしたって、いうぜ」

 「そいつはいい。チベット戦争も少しは、世界平和に役立てたということかな」

 「チベット独立戦争より周辺のテロ・ゲリラ戦争、反乱、鎮圧の犠牲者が多いだろう」

 「変な戦争だったな」

 「チベット民族が人口600万で犠牲者が60万だろう」

 「中国の文革粛清で犠牲者5000万。インドのダリット反乱が犠牲者4000万か・・・」

 「変どころか、ばかげた戦争だよ」

 「インドと中国も犠牲者の数が多過ぎて正確に分からないとか言ってたぞ」

 「ひでぇなあ」

 「人口が減って、一息とか、言ってたやつらがいたな」

 「それも、ひどいなぁ 分かるけど」

 「それに、まだ、くすぶっているから、しばらくは、人が死ぬな・・・」

 「ふぅ 全部剥がしたな・・・」

 「・・・・・・」

 壁紙が剥がされると、少しばかり敵意が減った気もする。

 少し離れた場所で ケンカだぁ〜!! という声。

 白人系ユダヤ人と東洋系ユダヤ人のケンカに決まっている。

 二人のパキスタン軍警察が肩を落とし、ため息混じりに歩いていく、

  

  

 オランダ石油輸出国機構がアメリカとオランダへの石油輸出禁止と石油生産削減を決定。

 第1次オイルショックの始り。

  

 ウォーターゲート事件

 アメリカ連邦地方裁判所で、ニクソンがテープを引き渡すと述べる。

   

 国際的な未来研究団体のローマ・クラブが東京で大会を開く。

 石油関連のメジャー4社が、原油供給量10%削減を決定する。

  

  

 アメリカ政治の大激震。

 そして、チベット独立による余波で中ソとも失墜。

 原油高騰によるオイルショック。

 日本は、飛鳥海底油田のおかげで、経済成長は止まらない。

 世界は “倒れた。大バビロンが倒れた” といった黙示録状態。

 混沌とした世界になっていく、

 大いなるバビロンは、ワシントンであり、ニューヨークであり、モスクワであり、東京であり・・・・

 主要国の大都市だったりする。

 外交的敗北である敗戦。政治不信を招く政治腐敗。経済不信による大恐慌・・・・etc・・・

 黙示録は予言というより、

 人間の欲望をトレースしたに過ぎない側面がある。

 人々が物欲にふければモラルが低下していく、

 失敗が成功の母であるように、

 成功が成長と改革の足枷となり、不正腐敗の温床になっていく、

 世代交代が上手く行けばいい、

 しかし、隆盛を極めた指導者も自分以上の器は分かろうはずもなく、

 まして、新時代の流れなど分かる者は稀。

 そして、自分よりも優れた者を選択するかも、別問題。

 自分以下の後塵を選択し、自分の影響力と栄耀栄華を際立てようとする。

 また、御しやすい者を選択する。

 これを避けるため派閥争いがあったり、下剋上の様なことも起こる、

 結果は諸行無常で、良い者が勝つとは限らず、

 崩壊は当然の帰結と結果であり、延命ができても避け得る道がない、

 おかげで、黙示録も、ところどころ、当たる。

 そして、日本は、飛鳥海底ガス油田のおかげで、オイルショックもなんのその、

 経済成長、真っ盛りで熟練され、洗練され、急成長を遂げていく、

 しかし、生存権確保と共に腐敗が始まるはずが・・・・・・・

 海底油田が、あっても、戦略資源の多くを海外に頼り、鉄鉱石も足りない、

 慢性的な物質の欠乏が不正腐敗を防いだり、

 チベット独立後、増強される極東ソ連軍、

 東シナ海に展開される中国海軍など、

 敵のおかげで、身を引き締めてしまう。

  

 

 インド。

 チベット独立でソ連・中国という敵性国家が無くなると、

 インド人を糾合する口実で困り始める。

 中ソから武器弾薬が流れ込まず。印パからも武器弾薬を送り込まない。

 しかし、現存する武器弾薬は使われていた。

 供給が本当にストップしているのかどうか、互いに信じるしかない、

 ダリットによる反乱は、武器の供給源が断たれても続いている。

 もちろん、アメリカへ難民の道もあったものの全てではない、

 一億のダリットを引き受けてくれる世界など、あろうはずもない。

 当然、ダリットの中でも主導者と有力者だけの難民が許されていく、

 インドのダリットより、少しマシな生活が保障される奴隷としての難民。

 南アフリカ公国連合もインド・ダリットの受入国の一つ、

 鉱山で働かせて楽をしようとか、考えたのだろう。

 ダリットには人権が保障されるだけで良いのだから、それでも救いだったりする。

 元々、南アフリカは、イギリス直属の中間管理職として雇われており、

 インド人は少なくなく、慣れがあった。

 また、アメリカ系黒人も無知無学無教養な狩猟民族系黒人より

 ダリットがマシと思っていたりする。

  

 インドの市街地

 ホテルの一室。

 TVニュースで隣国パキスタン大統領の演説が流されていた。

 『我がパキスタンは世界平和とイスラムの責任として、治安維持に軍警察を準備をする』 と宣言。

 二人の日本人がテラスで、うじゃうじゃといるインド人を見下ろしていた。

 「・・・パキスタンも言うようになったな・・・」

 「パキスタンは、ウルドゥー語が多い。英語も公用語だからね」

 「問題は、他国語を話せる人間がどのくらいいるか。兵士のモラル教育と・・・・金かな」

 「・・・あったっけ・・・金・・」

 「パキスタンは、チベット独立戦争の通り道で宗教連合軍が行き来していたからね」

 「治安が安定していたから、かなり儲けているよ」

 「クーデターが一度でも起きてたら、ヤバかったがね」

 「月影VTOLで大統領が命拾いしたのが良かったんだろうな」

 「しかし、経済は、まだまだなのに国外に派兵とは・・・」

 「たんに国家高揚も兼ねてクーデターを起こしそうな将兵を国外に出したんじゃないか」

 「厄介払いかもね」

 「なるほど・・・・・」

 「しかし、このインドも・・・酷いな・・・」

 死体の山、焼くのが間に合わず。

 聖なる川に死体が流されて行く、行き先は、母なる海。

 その川で衣類を洗い、沐浴できるインド人は、世界最強なのかもしれない。

 「・・・だいぶ。死んだのかな?」

 「・・・・そうは、見えないがね」

 「間に合わないとはいえ、とても聖なる川に見えないね」

 「不浄な物を流せるから、聖なる川だろう」

 「じゃ 揚子江も、黄河も、聖なる川か?」

 「もちろん、今頃、状況は、同じだろうな」

 「やれやれ。日本の年間自殺者と交通事故死の数が可愛く思えるのは、なぜかな」

 「河口沿岸の魚は、良く育つんじゃないか」

 「あはは・・・はぁ〜」

 「少なくとも、焼くより地球の生態系に優しいかもしれない」

 『『しばらく魚はやめるか・・・』』

 市街地の中で銃声音が聞こえる。

 だいぶ減ったのだろうが、まだ、トカレフを持っているダリットはいる。

 日本では、死にかけている人間のそばで助けもせず、

 談笑していたら人でなしか、キチガイ扱いされる。

 ここでは、それが普通。

 違うのは、白いサリーを着た一団が死にかけている人間を連れ

 “死を待つ人々の家” に運んで行くことだろうか。

 “あなたは、望まれて生まれてきたのです”

 「なあ、お互い死にかけたときは “おまえも望まれて、生まれてきたんだ” と言うことにしないか」

 「んん・・・気持ち悪いが死に甲斐があるな」

 「早く死ぬ方が得かな」

 「じゃ 遅く死ぬ方は、徳か」

 「そんな、ところだ。本当は “がんばれ。生きろ!” が、いいんだがな」

 「日本じゃ そうだな。それで奇跡の回復があったり・・・」

 「牧歌的だな日本は、インドだとかえって違和感がある・・・」

 「お、可愛い娘が流れてきたぞ・・・あれは、上層階級だな」

 殺されて、川に流されていく間に衣服が剥ぎ取られていく。

 「・・・あの娘を殺したのか、人類に対する犯罪だな・・・」

 「・・・・・・」 ため息

 日本人町は、中立地帯とか、緩衝地帯に近かった。

 町に住むカーストとダリットは、紛争を町に引き入れないために団結していた。

 おかげで、比較的、犠牲も少ない。

 もっとも、カーストがカーストに向けて発砲し、

 ダリットがダリットに向けて撃つのだから洒落にならないだろう。

  

  

 

 朝鮮半島南岸 日本領

 日本は、半島南岸をかすめるように領有していた。

 そのおかげで、対馬海峡の全域を領海域にできた。

 そして、半島との間接取引など利権は大きく

 半島側の世界各国の貿易代表部と、

 日本領の国境地帯は、ビル群が建ち並んでいた。

 日韓国交回復こそしていないが、

 世界各国とも治外法権に近い半島に陣取り、日本との貿易で儲けていた。

 地峡を挟んで日本と韓国の監視所があった。

 韓国側の監視所に亀甲船に乗った李舜臣の像があり、

 上から見ると “』” 字型で、指先を皇居に向けて建っている。

 どこかで見たポーズだが人物大で小さい、

 日本側は、しょうがないので指先に桜の木を植えている。

 国境警備隊 監視所。

 「・・・半島側の使者が、また来るってよ」

 「国交回復か。諸外国は、日韓国交回復すると、うまみが減って嫌がるんだよな」

 「韓国が日本と対等な関係で国交回復できると、諸外国も、渋々右に倣えだ」

 「だから、韓国は、どうしても、日本と国交回復したいだろうな」

 「韓国は、いまのままでも経済成長しているんだから、それでいいだろう」

 「外国人が持ち家で自分たちが借家住まい」

 「日本に密入国してくるくらいだから、納得していないよ」

 「日本との関係改善で国際的地位を高めたいわけか・・・・」

 「イヤだよ。日本を欧米諸国にけしかけさせたり、欧米諸国を日本にけしかけさせたり・・・・」

 「印パと日本を仲違いさせたり、日本と東南アジア諸国との関係を悪化させたり」

 「日本国内で政争してたら滅茶苦茶喜んで火に油を注ぎ込もうとするし」

 「考えている事が見え透いてるんだよ」

 「仮に戦争になっても、戦場が半島になるとか、考えないのだろうか」

 「争乱起こして漁夫の利で完全自主権なんて・・・51年の朝鮮動乱で懲りただろう」

 「経験より感情を優先するから」

 「そういえば、チベット軍と戦闘して帰還した韓国部隊は英雄部隊だぞ」

 「あははは・・・・」

 「同盟軍と戦闘するなんて、なに考えているんだか・・・・」

 「貧しいから子供を育てられない。どうしても育てようと思えば、一人」

 「男子優遇で女子を殺してしまえば、あぶれた男たちが、やることなんて決まっているよ」

 「荒むな〜」

 「日本に入り込まれたら、カッコウみたいに種付け強姦旅行だな」

 「モテない女だっているし、和姦なら文句ないけど」

 「韓国人の性格じゃ無理だな。待つと我慢は、できない性分だから手当たり次第」

 「駐留アメリカ軍がキムチ嫌いで、半島にいるのを嫌がっているくらいだからな」

 「キムチがそんなに嫌いか? 俺は好きだぞ」

 「まあ、人種間の味覚の差だよ。だけど、戦場では食べない方が良いな」

 「臭いで場所が分かると全滅だよ」

 「そりゃそうだ」

 「それにキムチが赤くなったのも唐辛子のおかげで」

 「日持ちするようになったのも秀吉のおかげなのに・・・」

 「功罪ありだな」

 「何でも日本が悪いように考えるのもパラノイアだし、考えものだよ」

 「ふっ だけど、李舜臣も生きているときは貶められて、死んだ後に祭り上げられるとは・・・」

 「あはは、日本でいうと、頼朝と義経の関係に近いな」

 「ありがち、って事か」

 「頼朝も自らの保身のため源の基盤を潰して、北条家に家督を売り渡したようなものだ」

 「ありがちだな・・・」

 「しかし、不憫だな。日本に作らせれば、もっと、ちゃんとした李舜臣像を造れるのに・・・」

 「学生の工作じゃあるまいし、石で造ったからとか、言い訳もな・・・・」

 「自分の自尊心を守るために他人を不幸にしやすい韓国人と」

 「自分の自尊心を否定して自虐しやすい日本人と、どっちが、幸せかな・・・」

 「幸福なのは、豊かな者だけだろう」

 「日本じゃ型にハマって出世する奴で、韓国じゃズルイやつ」

 「ズルと悪徳を知恵だと思っているような東洋の国とは、国交回復反対」

 「だが日本は年々賃金が増えて来てるし。消費者は下支えを欲してる」

 「労働力と資源も安いから、財界は実入りが良くて食指が動くらしいぞ」

 「搾取されるのは大多数の彼の国の国民だし」

 「日本は程度の低い工場がやられるだけだろう」

 「消費者は安いモノを変えるし、日本全体が損というわけではない」

 「日本で直接輸入するか、諸外国を経由するかだろう」

 「経済は・・・いやだね・・・・わかるけど・・・」

 「しかし、半島は、労働運動が激しいらしいぞ。デモも流血沙汰だ」

 「ふ 話し合えよな」

 「ふっ 儒教があっても半島人は激情型が多いよ」

 「忍耐がないのも即物的なのも無計画も遺伝かね」

 「儒教は、権威主義と年功序列で階級が優遇されるし」

 「一年でも年長者が優遇されるのが気分が良いよ」

 「最近の日本は、生意気なガキが増えてきたからね」

 「でも、敬拝はないだろう。媚びへつらい過ぎ、行き過ぎだね」

 「そうそう、それに異国人には適応されない」

 「自分より年上でも、上司でも、黒人を敬拝したりはしない」

 「実にご都合主義で、いい加減な儒教だよ」

 「自分が年長で上司なら、異国人でも敬拝を強要するからね」

 「あはは・・・独り善がりだな」

  

 

 11/

 ウィーンで開かれていたアラブ石油大臣会議。

 3%の石油削減上積みをすると発表。

  

 

 アラブ

 石油戦略の中東外交会議。

 「飛鳥海底ガス油田があるから、別に構わないけどな」

 「石油は有限だから、自国分は、なるべく使わずに。というのが、いいよ」

 「そりゃそうだが、こういう場合は仕方がないだろう」

 「日米欧で価格を切り崩していければいいけど」

 「パキスタンと南アフリカ公国連合も、かませて欲しいらしいぞ」

 「あそこも、石油が欲しかったんだよな」

 「あまりやりすぎると、飛鳥海底ガス油田の価格が下がって困るそうだ」

 「省エネ政策を進めれば、輸出で帳尻を合わせて見せるよ」

 「たぶん、鉄道整備計画も、そのままいけるだろう」

 「だけど、インドがゴタゴタだと、輸出に響くな」

 「医療品とかは、余計に売れないか」

 「医療品が強いのは、アメリカ。」

 「それにインドだと少し無理をすれば助けられそうでも、とどめを刺しそうだし」

 「荒んでいるな」

 「荒んでいる世界の方が普通かもしれないぞ」

 「とにかく、インドは混乱を収めてもらって、南アジアで反共の橋頭堡がしっかりすれば問題ないだろう」

 「当面は、チベットとパキスタンのラインで反共の橋頭堡を確保して」

 「極東ソ連軍、中国軍の圧力を軽減させれば良いと思うが・・・」

 「敷島(台湾)州と北方領土は、中ソの圧力を受けやすいからな」

 「んん・・・下手な外交工作で墓穴を掘るより。なるようになるで良いんじゃないか」

 「韓国は、どうなんだ」

 「韓国は、共産化してもいいさ」

 「軍事費が上がるな」

 「共産化しなければ、このまま。共産化すれば軍事費増大」

 「軍としては、別に困らないだろう」

 「バランスとりたがりの国際派が五月蠅いからな」

 「韓国共産化は、西日本の国内投資の口実にもなるよ」

 「そりゃなるだろう」

 「しかし、韓国の共産化は遼東半島の孤立を招くからアメリカと海南国が黙ってないと思うが」

 「アメリカはね。海外の軍派遣で国内に聖域を作って根腐れしてるんだよ」

 「ウォーターゲート事件がそうだろう」

 「チベット独立戦争で、中ソはボロボロ」

 「宗教国家連合からアメリカは口出し無用でヘタレているから、日本は相対的に楽だけどね」

 「それで、南アフリカ公国連合とパキスタンの台頭とインドの混乱か・・・」

 「面倒なことは、公国連合とパキスタンにやらせれば喜んでやるだろうな」

 「うんうん。公国連合は、空母機動部隊も持っているし」

 「少し誘導するだけで働いてくれそうだな」

 「艦隊のオーバーホールは、秋津州か、朱雀、昭南州でやるしかないから、それがミソだな」

 「公国連合は、国家高揚で機動部隊を動かしたがっているし」

 「維持費を少し負担してやれば必要な時に動いてくれるだろう」

 「だけど、南アフリカ公国の資源独占は、問題有りじゃないか」

 「今のところ、黒人解放統一政策を除けば、日本よりだろう」

 「それが一番の障害なんだけどね」  

  

  

 12/

 OPECが原油の公示価格を翌年1月1日からバレルあたり7ドルとすることを発表する。

 日本は、飛鳥ガス油田があるため、OPECの値上げも中途半端になってしまい、痛手も緩和される。

  

  

  

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 月夜裏 野々香です。

 チベット独立戦争が終わってしまいました。

 やれやれです。

 今後、米ソ対立の焦点がどこに集まるのか、注目したいところです。

 それとも、一休み、一休み、でしょうか。

 

 

 インド、死を歓迎されたりもする。

 有限な土地、家、食料、資本を配分する場合。人口が少ないと取り分が増えて有利。

 日本では、もう少し、表向き悲しむ事ができる。

 事実悲しいのだろうが、遺産相続の段階になると醜くなったりもする。

 これも珍しいことではない。

 先進国でも、人間同士、組織同士で切磋琢磨。

 弱者を追い詰めて殺していくのも無意識な人口調整といえる。

 逆に日本で、年間3万人が自殺せずに人口が増えていく。

 どちらが恐ろしいだろうか。

 病がなくなり長寿が全うされる。

 素晴らしい世界なのだろうか。

 飢餓がなくなる。

 空中から家や食料でも出せるのだろうか。

 黙示録の最終章。

 死が身近にあり、死を受け入れられる国、インド。

 死を遠避けて、死を受け入れられにくい国、日本。

 

 

 74式戦車

 史実の38トンより微妙に寸法が大きく40トン。

 エンジンも、その分大きくて強いようです。

 国内用と輸出用の違いは、身体が小柄な日本人に合わせて、その分、装甲の厚みが大きいだけ。

 外見は同じです。

 そして、車高が低い分を車体の前後を油圧で補っているだけなので、機構は90式と同じです。

 

 

 この世界では、実体のない土地転がしは、行なわれていません。

 代わりに国産油田で整備計画は、予定通り。

 路線に沿って、土地の価格が上がっていきます。

   

  

 73年です。わたしも子供でした。

 日本沈没のTVを見た衝撃は、いまだに覚えています。

       

  

  

 

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よろしくです。 

1973年 昭和48年 誕生酒 (楽天)

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第82話 1972年 『命の価値は』
第83話 1973年 『平和の条件』
第84話 1974年 『チベット独立、そのあと・・・』